17 / 32
子供時代
第10話 シルフィ、初めての旅行編②
しおりを挟む
男性が歩みを止めて立ち止まったのでそちらに顔を向けると、そこにはお屋敷と呼べるほど立派な外観の建物が建っていた。
ここがどうやらこの男性の自宅らしい。
彼が鉄製の門に手をかけて手前に開くと、ギギギという軋んだ音と共に門がゆっくりと開いた。
するとこの場所から10mほど先にある屋敷の玄関の開いた大きな扉から男性と同年代であろう優しげな顔をした女性が出てきた。
おそらくこの方が奥さんだろう。
先に玄関まで歩いていた男性がその女性に近づき何やら話しかけている。
すると女性が「まぁ!」と嬉しそうに手を叩くとこちらへにこやかに声をかけてきた。
「久しぶりのお客様が来てくださって嬉しいわ!ようこそミンク村へ、何もない小さな村ですけどゆっくりしていってくださいね」
そう言うと女性は玄関の扉を全開にして俺たちを中に招き入れてくれた。
全員が入ったのを確認すると扉を閉める。
「今からご飯を作りますから、皆さんは部屋に荷物を置いてそこで待っていてくださいな」
そう言うと女性は広間を通り過ぎその奥へと向かって歩き出した。
あの奥にどうやら厨房があるらしい。
「言い忘れとったが、儂はこの村の村長をしておるワイマールだ。あれは妻のニナ。何かこの村の事で聞きたい事があれば何でも聞いてくだされ」
そう言うとワイマールさんは広間の階段を上がり2階を案内してくれた。
そして部屋を一通り案内し終わると、「空いてる部屋はあまり汚さなければ好きに使ってくれていい」と言い、1階へ降りていった。
ちょうど4部屋空いていたので1人1部屋使わせて頂くことにしたが、ガイナス様は俺と同室が良いと夕飯が出来たと呼びに来られるまでゴネにゴネてロッゾに白い目で見られていた。
──────────────
「シルフィ、ほらこれも美味しいよ」
……お分かりだろうか。
俺は今ガイナス様の膝の上である。
夕食の用意が出来たと知らせを受け、みんなで1階の食堂へ入ると既にテーブルには食事が置かれていて各々席に着いた。
すると俺の横に座っていたガイナス様はこちらの方を向くと俺の座っている椅子を引き寄せ、俺の体を軽々持ち上げると自分の膝の上に座らせた。
「……………………。」
その流れるような動作にこの屋敷の老夫婦は最初目を丸くしていたが、その後「微笑ましいねぇ」と言って2人ともにこにこしていた。
ちなみにロッゾはワーマイア家で給仕の際に何度も見ている光景なので華麗にスルーし、マッケンさんは最初こそ変な物を見るような目付きで主にガイナス様を見ていたが、「やっぱこの人も竜人だな」と何やら呟いて納得していた。
こうならないようになるべくロッゾの傍に居たのに、ガイナス様恐るべし……。
いや、恐るべしは竜人の番愛か。
こうなると抵抗しても無駄な事は既に学習済みなので、心を無にして給餌を受けていた。
……あ、このビーフシチューみたいなの美味しい。
──────────────
「ご飯美味しかったです!」
俺の言葉にガイナス様たちは頷き、村長の奥さんであるニナさんは「まぁ、嬉しいわ!」と喜んでくれた。
だがしかしすぐその表情は曇ってしまう。
「ほんとはもっとお野菜をふんだんに使ったお料理を出したかったのだけれど、最近は夜になると村へ入ってくる魔物に畑を荒らされてしまうのよね。家畜もたまに襲われてしまうし……」
「そう言えば村の入口に警備兵は立ってないんですね」
「うちみたいな小さな村、若者は居着かずすぐに他所へ出ていってしまうしな。人手も足りんから入口に警備の者を置く余裕もない。国の魔術師に昔頼んで簡易結界で村を覆って魔物が寄り付かないようにはしてもらったが、それもちょっと強い魔物になると防げずに入ってきてしまう」
そう言うと村長のワイマールさんは大きな溜息を吐いた。
「つまり、魔物が入らないよう村の警備をしてくれる者が欲しいって事ですね?」
俺の言葉に村長夫婦だけでなく、ガイナス様たちもきょとんとして俺を見た。
「それはそうなんだが、先程も言うように人が足りないとーー」
「人が足りないなら人以外でもいいですか?」
「人以外……?」
村長が俺の言葉に怪訝な顔をする。
ロッゾはもしやという表情で俺を見た。
ワーマイアの家でそこそこやらかしてる俺を見ているので気付いたのだろう。
「もしかして坊っちゃま、何か作るおつもりで?」
ロッゾの問いかけに俺はにっこりと笑った。
「ーーとりあえず、鉄鉱石を出来るだけたくさん持ってきてもらえます?」
ここがどうやらこの男性の自宅らしい。
彼が鉄製の門に手をかけて手前に開くと、ギギギという軋んだ音と共に門がゆっくりと開いた。
するとこの場所から10mほど先にある屋敷の玄関の開いた大きな扉から男性と同年代であろう優しげな顔をした女性が出てきた。
おそらくこの方が奥さんだろう。
先に玄関まで歩いていた男性がその女性に近づき何やら話しかけている。
すると女性が「まぁ!」と嬉しそうに手を叩くとこちらへにこやかに声をかけてきた。
「久しぶりのお客様が来てくださって嬉しいわ!ようこそミンク村へ、何もない小さな村ですけどゆっくりしていってくださいね」
そう言うと女性は玄関の扉を全開にして俺たちを中に招き入れてくれた。
全員が入ったのを確認すると扉を閉める。
「今からご飯を作りますから、皆さんは部屋に荷物を置いてそこで待っていてくださいな」
そう言うと女性は広間を通り過ぎその奥へと向かって歩き出した。
あの奥にどうやら厨房があるらしい。
「言い忘れとったが、儂はこの村の村長をしておるワイマールだ。あれは妻のニナ。何かこの村の事で聞きたい事があれば何でも聞いてくだされ」
そう言うとワイマールさんは広間の階段を上がり2階を案内してくれた。
そして部屋を一通り案内し終わると、「空いてる部屋はあまり汚さなければ好きに使ってくれていい」と言い、1階へ降りていった。
ちょうど4部屋空いていたので1人1部屋使わせて頂くことにしたが、ガイナス様は俺と同室が良いと夕飯が出来たと呼びに来られるまでゴネにゴネてロッゾに白い目で見られていた。
──────────────
「シルフィ、ほらこれも美味しいよ」
……お分かりだろうか。
俺は今ガイナス様の膝の上である。
夕食の用意が出来たと知らせを受け、みんなで1階の食堂へ入ると既にテーブルには食事が置かれていて各々席に着いた。
すると俺の横に座っていたガイナス様はこちらの方を向くと俺の座っている椅子を引き寄せ、俺の体を軽々持ち上げると自分の膝の上に座らせた。
「……………………。」
その流れるような動作にこの屋敷の老夫婦は最初目を丸くしていたが、その後「微笑ましいねぇ」と言って2人ともにこにこしていた。
ちなみにロッゾはワーマイア家で給仕の際に何度も見ている光景なので華麗にスルーし、マッケンさんは最初こそ変な物を見るような目付きで主にガイナス様を見ていたが、「やっぱこの人も竜人だな」と何やら呟いて納得していた。
こうならないようになるべくロッゾの傍に居たのに、ガイナス様恐るべし……。
いや、恐るべしは竜人の番愛か。
こうなると抵抗しても無駄な事は既に学習済みなので、心を無にして給餌を受けていた。
……あ、このビーフシチューみたいなの美味しい。
──────────────
「ご飯美味しかったです!」
俺の言葉にガイナス様たちは頷き、村長の奥さんであるニナさんは「まぁ、嬉しいわ!」と喜んでくれた。
だがしかしすぐその表情は曇ってしまう。
「ほんとはもっとお野菜をふんだんに使ったお料理を出したかったのだけれど、最近は夜になると村へ入ってくる魔物に畑を荒らされてしまうのよね。家畜もたまに襲われてしまうし……」
「そう言えば村の入口に警備兵は立ってないんですね」
「うちみたいな小さな村、若者は居着かずすぐに他所へ出ていってしまうしな。人手も足りんから入口に警備の者を置く余裕もない。国の魔術師に昔頼んで簡易結界で村を覆って魔物が寄り付かないようにはしてもらったが、それもちょっと強い魔物になると防げずに入ってきてしまう」
そう言うと村長のワイマールさんは大きな溜息を吐いた。
「つまり、魔物が入らないよう村の警備をしてくれる者が欲しいって事ですね?」
俺の言葉に村長夫婦だけでなく、ガイナス様たちもきょとんとして俺を見た。
「それはそうなんだが、先程も言うように人が足りないとーー」
「人が足りないなら人以外でもいいですか?」
「人以外……?」
村長が俺の言葉に怪訝な顔をする。
ロッゾはもしやという表情で俺を見た。
ワーマイアの家でそこそこやらかしてる俺を見ているので気付いたのだろう。
「もしかして坊っちゃま、何か作るおつもりで?」
ロッゾの問いかけに俺はにっこりと笑った。
「ーーとりあえず、鉄鉱石を出来るだけたくさん持ってきてもらえます?」
32
お気に入りに追加
1,628
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

お前とは番いになりたくないと言われたのに何故溺愛されているのでしょうか?
紅月
BL
僕が12歳の頃両親は事故で死んでしまった。
その後孤児院に引き取られて奨学生として貴族から平民が通う学園に通い文官になった。
だがある日、最上位の種族である竜人で公爵家当主である、ルイ・メイアンから僕が公爵様の運命の番である事を知らされる。しかし、僕の魂の色は真っ黒で醜いため僕とは番いになりたくないと契約書を作られてしまった。
この国は無種族が生活しており竜神や獣人は運命のつがいというものが存在する。
おまけに竜人には人の魂の色が見えるらしく相手の感情や思考が魂の色によって分かるらしい。しかし、僕の魂の色はぐちゃぐちゃした濁った色をしていて見るに堪えないらしい。
しかし、ある時から公爵様が契約を違反すれば1億円の罰金が発生するという契約書を作ったのにも関わらずそれを違反して僕を溺愛し始めた。
最強竜人公爵家当主第一騎士団長×孤独な神の愛おし子
主人公ガーベラ23歳
ルイ・メイアン201歳

いつかコントローラーを投げ出して
せんぷう
BL
オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。
世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。
バランサー。
アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。
これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。
裏社会のトップにして最強のアルファ攻め
×
最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け
※オメガバース特殊設定、追加性別有り
.
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
【完結】イケメン騎士が僕に救いを求めてきたので呪いをかけてあげました
及川奈津生
BL
気づいたら十四世紀のフランスに居た。百年戦争の真っ只中、どうやら僕は密偵と疑われているらしい。そんなわけない!と誤解をとこうと思ったら、僕を尋問する騎士が現代にいるはずの恋人にそっくりだった。全3話。
※pome村さんがXで投稿された「#イラストを投げたら文字書きさんが引用rtでssを勝手に添えてくれる」向けに書いたものです。元イラストを表紙に設定しています。投稿元はこちら→https://x.com/pomemura_/status/1792159557269303476?t=pgeU3dApwW0DEeHzsGiHRg&s=19
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
幼馴染達と一緒に異世界召喚、だけど僕の授かったスキルは役に立つ物なのかな?
アノマロカリス
ファンタジー
よくある話の異世界召喚。
ネット小説や歴史の英雄話好きの高校生の洲河 慱(すが だん)
いつものように幼馴染達と学校帰りに公園で雑談していると突然魔法陣が現れて光に包まれて…
幼馴染達と一緒に救世主召喚でテルシア王国に召喚され、幼馴染達は素晴らしいジョブとスキルを手に入れたのに僕のは何だこれ?
王宮からはハズレと言われて追い出されそうになるが、幼馴染達は庇ってくれた。
だけど、夢にみた迄の異世界…
慱は幼馴染達とは別に行動する事にした。
自分のスキルを駆使して冒険する、魔物と魔法が存在する異世界ファンタジー。
現在書籍化されている…
「魔境育ちの全能冒険者は好き勝手に生きる!〜追い出した癖クセに戻って来いだと?そんなの知るか‼︎〜」
の100年前の物語です。
リュカが憧れる英雄ダン・スーガーの物語。
そして、コミカライズ内で登場する「僕スキなのか…」がこの作品です。
その作品の【改訂版】です。
全く同じな部分もあれば、新たなストーリーも追加されています。
今回のHOTランキングでは最高5位かな?
応援有り難う御座います。
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる