転生辺境伯次男はチートが過ぎる

如月 満月

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子供時代

第10話 シルフィ、初めての旅行編②

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男性が歩みを止めて立ち止まったのでそちらに顔を向けると、そこにはお屋敷と呼べるほど立派な外観の建物が建っていた。
ここがどうやらこの男性の自宅らしい。
彼が鉄製の門に手をかけて手前に開くと、ギギギという軋んだ音と共に門がゆっくりと開いた。
するとこの場所から10mほど先にある屋敷の玄関の開いた大きな扉から男性と同年代であろう優しげな顔をした女性が出てきた。
おそらくこの方が奥さんだろう。
先に玄関まで歩いていた男性がその女性に近づき何やら話しかけている。
すると女性が「まぁ!」と嬉しそうに手を叩くとこちらへにこやかに声をかけてきた。

「久しぶりのお客様が来てくださって嬉しいわ!ようこそミンク村へ、何もない小さな村ですけどゆっくりしていってくださいね」

そう言うと女性は玄関の扉を全開にして俺たちを中に招き入れてくれた。
全員が入ったのを確認すると扉を閉める。

「今からご飯を作りますから、皆さんは部屋に荷物を置いてそこで待っていてくださいな」

そう言うと女性は広間を通り過ぎその奥へと向かって歩き出した。
あの奥にどうやら厨房があるらしい。

「言い忘れとったが、儂はこの村の村長をしておるワイマールだ。あれは妻のニナ。何かこの村の事で聞きたい事があれば何でも聞いてくだされ」

そう言うとワイマールさんは広間の階段を上がり2階を案内してくれた。
そして部屋を一通り案内し終わると、「空いてる部屋はあまり汚さなければ好きに使ってくれていい」と言い、1階へ降りていった。
ちょうど4部屋空いていたので1人1部屋使わせて頂くことにしたが、ガイナス様は俺と同室が良いと夕飯が出来たと呼びに来られるまでゴネにゴネてロッゾに白い目で見られていた。





──────────────





「シルフィ、ほらこれも美味しいよ」

……お分かりだろうか。
俺は今ガイナス様の膝の上である。


夕食の用意が出来たと知らせを受け、みんなで1階の食堂へ入ると既にテーブルには食事が置かれていて各々席に着いた。
すると俺の横に座っていたガイナス様はこちらの方を向くと俺の座っている椅子を引き寄せ、俺の体を軽々持ち上げると自分の膝の上に座らせた。

「……………………。」

その流れるような動作にこの屋敷の老夫婦は最初目を丸くしていたが、その後「微笑ましいねぇ」と言って2人ともにこにこしていた。
ちなみにロッゾはワーマイア家で給仕の際に何度も見ている光景なので華麗にスルーし、マッケンさんは最初こそ変な物を見るような目付きで主にガイナス様を見ていたが、「やっぱこの人も竜人だな」と何やら呟いて納得していた。

こうならないようになるべくロッゾの傍に居たのに、ガイナス様恐るべし……。
いや、恐るべしは竜人の番愛か。

こうなると抵抗しても無駄な事は既に学習済みなので、心を無にして給餌を受けていた。

……あ、このビーフシチューみたいなの美味しい。





──────────────





「ご飯美味しかったです!」

俺の言葉にガイナス様たちは頷き、村長の奥さんであるニナさんは「まぁ、嬉しいわ!」と喜んでくれた。
だがしかしすぐその表情は曇ってしまう。

「ほんとはもっとお野菜をふんだんに使ったお料理を出したかったのだけれど、最近は夜になると村へ入ってくる魔物に畑を荒らされてしまうのよね。家畜もたまに襲われてしまうし……」
「そう言えば村の入口に警備兵は立ってないんですね」
「うちみたいな小さな村、若者は居着かずすぐに他所へ出ていってしまうしな。人手も足りんから入口に警備の者を置く余裕もない。国の魔術師に昔頼んで簡易結界で村を覆って魔物が寄り付かないようにはしてもらったが、それもちょっと強い魔物になると防げずに入ってきてしまう」

そう言うと村長のワイマールさんは大きな溜息を吐いた。

「つまり、魔物が入らないよう村の警備をしてくれる者が欲しいって事ですね?」

俺の言葉に村長夫婦だけでなく、ガイナス様たちもきょとんとして俺を見た。

「それはそうなんだが、先程も言うように人が足りないとーー」
「人が足りないなら人以外・・・でもいいですか?」
「人以外……?」

村長が俺の言葉に怪訝な顔をする。
ロッゾはもしやという表情で俺を見た。
ワーマイアの家でそこそこやらかしてる・・・・・・俺を見ているので気付いたのだろう。

「もしかして坊っちゃま、何か作る・・おつもりで?」

ロッゾの問いかけに俺はにっこりと笑った。


「ーーとりあえず、鉄鉱石を出来るだけたくさん持ってきてもらえます?」
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