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子供時代
第7話 勇者召喚の代償
しおりを挟む「……はい。その後もノアローク皇帝の統治時代に『勇者召喚の儀』は2回行われました。2回目はやはり途中で『勇者』が壊れてしまい、最初の召喚と同じく2人目も密かに葬られたようです。しかし3度目にしてようやく壊れない『勇者』の手によって数年かけて世界からほぼ魔物は駆逐されました。……ですが、問題はその後だったのです」
そこまで話すと、マッケンさんは眉間を右手の人差し指でグリグリ押しながら重い溜め息を吐き出した。
チラリとガイナス様を見上げると目を閉じていてこちらは眉間に皺を寄せている。
興味本位で聞いたのだが思った以上に重い内容だった。
しかもまだまだ話は続きそうだし、この後もっと重い内容が来そうな気がして怖い。
でもこちらから聞きたいとせがんだ以上、途中でやめるわけにもいかないので心して聞こうと思う。
「3回目の『勇者召喚の儀』はノアローク皇帝が病で倒れる2年前、主導していたのは彼の息子であるレジオーク皇子でした。3人目の『勇者』は成人前の少女で、レジオーク皇子と勇者の少女は召喚から少し経つと恋仲になったとされています。そして魔物の討伐にも剣技の得意であった彼が聖女の傍に常に付き添っていたそうです。」
1度目や2度目と違い、愛する人が支えてくれるのは精神的にも大きかったのだろう。
3人目の『勇者』は心を壊すこと無く世界を救った。
これで皆が平和になった世界で幸せに暮らしてハッピーエンド、となったらどれだけ良かっただろう。
「レジオーク皇子には幼い頃から親しくしていた許嫁がいました。彼は世界から脅威が去った後、『勇者』ではなく許嫁の女性と結婚したのです。当然、怒った勇者は彼に詰め寄りました。「許嫁がいるなんて聞いていない」、「愛していると言ったのに」、と。……元からレジオーク皇子は『勇者』を利用するつもりで彼女に近づき、献身的に支え、愛を誓ったフリをしていたのです。彼は最初から『勇者』に心を傾けてなどいなかったのです」
ーーそしてそこから悲劇が始まる。
「レジオーク皇子に裏切られて深い悲しみと憎しみに心を支配された『勇者』は、魔物を統べる『魔王』と自称する強大で邪悪な力を持つ存在の手に堕ちてしまったのです。そして魔王の手に堕ちた勇者の少女は手始めにレジオーク皇子の愛する許嫁の女性を拘束した皇子の目の前で魔物によって衰弱死するまで犯させ痛めつけ嬲り尽くしました。最期は人の形を保っているのか分からないほど酷い有様だったと記録されています。目の前の惨劇に皇子は発狂したそうです。ですが『勇者』の復讐はそれで終わりませんでした」
レジオーク皇子に関しては自業自得と言えば自業自得だが、それで片付けられるほど綺麗に終わる話ではない。
むしろ彼の許嫁に関しては完全な被害者だ。
「ほぼ去ったはずの脅威であった魔物が『勇者』の邪悪に歪んだ力によって生み出され、再び世界に姿を現し始めたのです。特にミッガルト国内はいたるところで魔物が急速に溢れ出し、人々は魔物に殺され喰い尽くされていき、国は立て直す暇もなく徐々に衰退していき遂には滅びました。レジオーク皇子に関しては途中で行方不明になったとされ、『勇者』に殺されたとも『魔王』の元へ連れて行かれたとも言われています。そんな世界が再び魔物の脅威によって混沌とする中、ミッガルト以外の国々から『聖女』と呼ばれる神の代行者を名乗る者たちが次々と現れました」
(お、やっと出てきた『聖女』)
……ん?
各国から『聖女』が現れたという事は、『聖女』は1人では無いってことか?
……それにしても、
「神様って何がしたいんだろ」
「奴らはただの愉快犯だよ」
俺がボソッと何気なく呟いた言葉に真横から返答が来て思わず顔を向ける。
するとガイナス様が薄く微笑みながらこちらを見ていた。
「奴らは自分たちの管理する世界の人々がいかに自分たちに面白いものを見せてくれるか、それを見たいが為に人々に度々干渉するのさ。……全く、悪趣味な事だよ」
忌々しそうに語るガイナス様は神様の事を知っているのだろうか?
俺の事を気に入っていたらしい創造神サマと同じ存在なのか、はたまた違う神様なのか……よく分からないな。
「創造………ね」
『世界は神様の為の箱庭』ーーーなんとなくそんな風に思った。
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