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子供時代
第5話 竜王様の護衛
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竜王陛下こと婚約者ことエロ竜人のガイナス様にいたいけな少年の心(中身は前世からも含めて結構大人だが)を弄ばれてなんだか疲労感が半端ない。
そういや前世ではマトモに恋愛してきてないからか、相手から恋愛的な意味で攻められるのに慣れてないとも言える。
告白するのはいつも俺からだったし、振られるのはいつも俺だった。
恋愛ってムズカシイ、今だってよく分からん。
まぁ童貞では無かった事だけが救いと言えば……救いか?
とは言え、それなりに経験してますとまで言えるかは不明だが。
それに今世はたぶん童貞非処女で終わりそうな予感がする。
凄くする。めっちゃする。予感しかない。
むしろ有り得ない可能性だが、もし童貞を誰かに捧げた日には恐ろしい目に合いそうな予感を既にビッシビシと感じる。
処女は……俺、成人までに処女守れる?
子供の頃から尻の心配しないといけないなんて……泣いていい?
おかしいな、俺まだ10歳だぜ……?
──────────────
「突然お邪魔してしまい申し訳こざいません。私はトライア・ドラグーン王国ガイナス竜王陛下付きの主権者警護隊副隊長マッケン・アンガーと申します。こちらにあの馬鹿…じゃなかったガイナス様が居らっしゃるとお聞きしまして……」
(この人今さらっとガイナス様の事馬鹿って言ったな)
応接室のソファに座っている父様や僕の真向かいのソファには、申し訳なさそうに縮こまっている……ように見えなくもない茶色い短髪のゴリマッチョな男性が座っていた。
顔は精悍なイケメンなのだが、とにかく体がすんごいデカい。
ガタイのいいガイナス様よりさらに体が大きく、1人だけでも充分な威圧感がある。
前世の漫画的な感じで言えば世紀末覇者みたいな貫禄がある。
ただしこれは俺が普通の子供だった場合、たぶん大いにビビって大泣きして逃げてる。
ちなみにガイナス様が絡むと背後に暗雲を背負う兄様は学園に通っている為不在だ。
ある意味居なくて正解だった。
母様は今日ものほほんとメイドと一緒に厨房へお菓子を作りに行っている。
最近はシフォンケーキ作りにハマっているらしい。
昨日のシフォンケーキは石のように硬かったが今日は石よりはマシになっていると願いたい。
俺の歯ももちろんの事、父様の歯が心配だ。
「本日、竜王陛下は朝から我が国の国王陛下に呼ばれているとの事で王宮へ向かわれましたよ……渋々」
「……渋々ですか」
「……えぇ、渋々」
そこ強調する意味ある?とつっこみたくなったが、父様も向かいの男性もスンと感情の抜けた真顔をしていたのでなんとなく不穏なものを察し、中身大人な俺は黙って心の中だけでつっこむことにした。
「では大変失礼なのですが、こちらで待たせて頂いてもよろしいでしょうか。ガイナス様にお伝えする事が御座いますので……」
「えぇ、それは構いませんよ」
警護隊のマッケンさんは父様の言葉にほっとした表情をすると僕の方へと顔を向けた。
「シルフィリア様もうちの馬鹿…ガイナス様が申し訳ございません。実はシルフィリア様が御誕生された際にも「アウクシリアで俺の番が産まれた!」と突然同盟国との話し合いの最中に国から飛び出していこうとしたのでその時は皆でボコボ…殴って止めたんですが、この前ちょうど私と隊長が不在な時がありまして、その時を狙っていたのか「そろそろ番も大きくなった事だろうし連れて帰ってくる」と突然言い出してまた国を飛び出そうとしまして……あの時陛下を止めるのに向かわせた我ら警護隊と応援で来てくれた他の部隊を全員威圧で瞬時に卒倒させて結局止められず出て行ってしまわれて……あの野郎」
「………………はぁ」
どこからつっこんでいいのか分からないよ。
てか主権者の警護隊って事は王様を守る人たちって事だよね?
守られる側の竜王様が倒しちゃったら意味ないんじゃ……
「ちなみに最初のシルフィリア様御誕生の際に皆で殴って止めた時は他の王1名と私たち主権者警護隊約60名、近衛兵約1000名、第1騎士団と第2騎士団合わせて約6000名ほどでお止めしました」
「………………はぁ???」
うん。
もはや脳が考えることを放棄し始めたけど、ガイナス様がとんでもなく強いのだけは分かった。
1人に対してその人数で止めるとかいろんな意味でエグい。
ガイナス様って実は魔王か何かかな?
……あ、
「そう言えば、ガイナス様が匂いで番が分かるって仰ってましたけど、その話を聞く限り匂い以外でも分かるんですね」
「…ほう、そんな事を。我ら竜人族も近くに寄れば番の匂いは分かりますが、匂いだけで番を探すのは獣人族だけですよ。我ら竜人族はどんなに遠く離れていようとも番が産まれた瞬間に感覚で分かります。逆に番が亡くなっても感覚で分かりますがね」
感覚ってのはなんだろ、竜人特有の直感てやつかな?
それか第六感?
シックスセンス?……って同じ意味か。
「ただいま、シルフィ」
聞き覚えのある色気たっぷりの声と共にソファに座ったまま背後から抱き締められて頬と頬を合わせてスリスリされる。
「お、お帰りなさい、ガイナス様」
顔を見なくても声で誰か分かるくらいには聞き慣れてしまった。
スリスリされる頬っぺたがちょっと冷たい。
うあ、サラサラの髪がくすぐったい。
そしてめっちゃフローラルないい匂いがする。
「ところでなんでお前がここにいるマッケン」
先程の色気たっぷりな声とは違う一段階下がった冷たい声音にビクッとする。
すると俺の体が強ばったのに気づいたのか腹に回された手がお腹をそっと撫でた。
竜王様、手つきが怪しいです。
「うわぁ……ガイナス様、ショタコンの上にセクハラとかやべぇ奴がさらにやべぇ事にーー」
「シルフィ、すまないがちょっとマッケンを片付けてくる」
「なんか副音声が聞こえた気がしますけど!?」
ガイナス様の言葉に思わずつっこんでしまった。
ところでガイナス様が来てから存在感を消して空気に徹していた父様にチラリと目線を向けるが虚空を見ていまだ空気に徹している。
つまり俺とも目が合わない。
なんだろこの超絶イケメンが空気に徹している残念な光景……。
「ちょ、いでで!ガイナス様!ガイナス様やめろって!自分の護衛を闇魔法で拘束しないでくれません!?俺はアンタに話があって来ただけなんですって!!」
「シルフィとの時間が減るから手短に3文字で説明しろ」
「無理!!!」
あ、マッケンさんが下から生えてるなんかよく分からん黒い触手みたいなのに巻き付かれて青ざめてる。
なんだか話が進まなそうだから俺が助太刀するか……ふぅ。
「ガイナス様」
「なんだい、シルフィ」
あ、ガイナス様の声が一段階下から通常に戻った。
むしろ通常より甘めな声音に聞こえる。
「マッケン様はガイナス様に伝えたい事があるからわざわざここまで来てくださったのです。一緒に用件を聞きませんか?」
「そうだね、うん。そうしよう」
「え、何この差。泣きそう」
黒いうにょうにょした触手がパッと消えて拘束から開放されたマッケンさんが「シクシク」とわざとらしく言いながら嘘泣きしている。
「おい、早くしろ」
いつの間にかソファに座っている俺の横に来て密着して座ったガイナス様は偉そうに腕と足を組みながら向かいで両手で顔を覆って嘘泣きしているマッケンさんに声を掛けた。
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