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子供時代
第4話 エロ竜人
しおりを挟むガイナスというトライア・ドラグーン王国を治める3人の竜王の内の1人が我が家へ突然来訪し俺を勝手に婚約者に決めて慌ただしく帰国し…………たりはしなかった。
なんなら今日も我が家に滞在して、俺の横にいらっしゃる。
あらやだ、いい笑顔……じゃなく。
ちなみに竜王様へのうちの家族の反応は以下。
父様は我が国の国王に「(面倒だから)よろしくー!」と任され諦めモード、兄様は笑顔を貼り付けながらも終始イラついていて、母様はのほほんとしている。
つまり我が家はいつも通りである。
ところで貴方、国を治める竜王陛下では?とさりげなーくさりげなーく遠回しに言ってみたところ、
「大丈夫、残り2人居るから」
……とキラッキラした笑顔で返されました。
いや、残機じゃないんだから。
自由人過ぎない?この人。
とか思ってたら、前に他の竜王も似たような事をして3年くらい帰ってこなかったらしい。
自由すぎだろ、竜人よ。
「自分で言うのもなんだが、竜人はこの世界でほぼ敵無しの最強種族だからね。国を治めるのだって面倒くさがって誰もやりたがらなくてじゃんけんで決めたし。それだって最後の方まで残った俺たち3人がずっとあいこばかりで決着がつかなかったから結局3人で治める事になっただけだし」
「聞きたくなかった、最強の国のそんな裏事情…………」
「はははっ」
はははじゃねーよ!
王様を決めるのがそんな軽いノリだなんて、竜人の国ぐらいだよ。
前世の国の歴史なんてそれこそ血で血を洗うような戦争とかしてたのに……じゃんけんで決めるとか平和でいいな。
「あ、でもじゃんけんで決まらないなら決闘で!とかにはならなかったんですね」
「誰だって怪我したくないだろ?」
「ド正論」
なんとなく竜人て戦闘狂みたいなイメージがあったけど意外とこの世界の竜人て平和主義なんだな。
前世でクラフトゲームの他にやり込んでたRPGの影響でてっきりなんかあると戦いを挑むのかと思ってたわ。
「他に聞きたいことは?」
「えっと……」
にこにこと俺を見つめる竜王様。
なんか前に本か何かで竜人の国を治める3人の若き竜王の1人、黒竜のガイナス・ドラグニアは竜王3人の中で一番冷酷で残忍な人物だとか書いてあった気がしたけど、この顔見るととてもそうとは思えないな。
ほんとに書いてあったのはこの人の事だったのだろうかと疑いたくなる。
「あ、そうだ。最初に俺の事を“番”だって仰ってましたが、“番”とはなんですか?」
「あぁ、竜人や獣人の言う“番”とは己の魂の片割れ。失えない唯一の存在であり死ぬまで共に寄り添う伴侶。分かりやすく言えば運命の相手、だね」
「…………それが僕?」
「あぁ。俺の運命の相手はシルフィ、君だよ。そして君の運命の相手は俺だ」
「あの……僕は何も感じないのですが」
俺の言葉に竜王様ーーガイナスは困ったように笑う。
「人族は竜人族や獣人族みたいには鼻が利かないからね。“番”の匂いを感じ取れないのさ」
「匂いなんてあるんですね。ちなみにどんな匂いなんです?」
俺がそう言うとソファで俺の横に座っていたガイナスは少し触れていた体をさらに俺に寄せて密着させ、項に顔を寄せてきた。
「……ん、やはり甘い匂いがする。とても、食べちゃいたいような」
「ひぇ!?」
首元から囁くような掠れた声が聞こえて思わず上擦った声が出てしまう。
「ねぇ、少しでいいから食べちゃダメ……?」
「ひ、ひえぇぇぇぇ!?」
甘い、それでいて毒を孕むような、堕落に誘い込むような声音にまだ10歳のはずなのに、と言うか男のはずなのに体の内に何かを孕んでしまいそうな危うさを感じて思わず情けない悲鳴をあげてしまった。
「…………ぷっ、はははっ!冗談だよ」
「な!?こ、子供相手にいい大人がセクハラしないでください!」
はははと楽しそうに笑う姿にむぅと頬を膨らます。
俺は怒ってますよという分かりやすいアピールである。
どうだ、あざといだろう!
するとガイナスは笑いを引っ込め、そんな僕の膨らんだ頬を指でちょんちょんとつついた。
そして顔を僕の耳元に寄せると、
「……大人になったらぜぇんぶ食べちゃうから覚悟してね?」
と囁いて、僕の耳に軽く触れるだけのキスをした。
(いやぁぁぁぁぁ!耳が孕むぅぅぅぅぅ!!)
誰かこのエロ竜人をどうにかして欲しい、切実に。
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