転生辺境伯次男はチートが過ぎる

如月 満月

文字の大きさ
上 下
6 / 32
子供時代

第3話 90歳年上の婚約者

しおりを挟む

「ん……あれ……?」

意識が浮上し目を開くと、そこには心配そうに俺の顔を覗き込む父様と兄様がいた。
目の色は違うが2人とも顔がよく似ていて誰が見ても御家族ですねと分かるレベル。
そして100人に聞いてもほぼ100人がイケメンですねと言うであろうイケメンである。
前世の男性アイドルなんか裸足で逃げ出すレベルのご尊顔だ。

俺も髪色は銀髪…でも父様や兄様よりも白に近い銀髪だ。
顔は母様に似たみたいで父様から「シルフィは絶対嫁になんかやらないからな!」って涙ながらに言われたが、俺はまだ10歳だしそもそも嫁じゃなく婿になりたい。
俺、れっきとした男の子。
いくら顔が自他ともに認める美少女顔であっても可愛い女の子の嫁を俺はまだ諦めたわけじゃない。
見てろよ父様、俺は体を鍛えて嫁だなんて言葉も出てこない立派なイケメンマッチョになってやる!!

「シル、大丈夫?」

そんな俺の決意など知らず、16歳になり完全に声変わりした甘いイケボで心配そうに声を掛けてくれた兄様に「大丈夫」と返すと父様と一緒にホッとした顔をしていた。
やはり表情や声音通りとても心配されたようだ。

そもそもなんで俺寝てるんだっけ?


「……すまない」

これまた兄様とは違う色気のあるイケボが聞こえた。
でもなんでか沈んでそうな声にそちらの方に顔だけ向けると、どっかで見たような長い黒髪の男が3人がけのソファに1人座って項垂れていた。

「番に会えたのに興奮しすぎて抱き締めた力が強すぎるのに気づかず気絶させてしまうなど、俺はなんと不甲斐ない男だ……。ここは詫びに俺の角を片方折ってーーー」
「りゅ、竜王陛下・・・・にそんな事させたらこの国が滅びますから!!」



……あらやだ、なにやら大変な事になっているわ。





──────────────





聞こえてきた単語に軽く現実逃避してオカマ口調になっていた間に、気づけば竜王陛下と呼ばれていた黒髪の男性の真向かいのソファに座らされていた。

竜王陛下って事は竜人?(チラチラ)
でも竜っぽい要素なくない?(じろじろ)
あ、でもよく見れば瞳孔が縦長だわ。(チラチラ)

そんな風に無言でチラチラじろじろと観察していると、俺の不躾な視線にさすがに気付いたのか、伏せていた顔を上げて俺と目が合った。
すると先ほどまでどよーんとしていた瞳がまたキラッキラに輝くが、その後徐々にうるうると涙目になった。

……さすがイケメン、あざとい。

「シルフィ、俺の事嫌いになったか……?」
「嫌いになるほど貴方のことを知りません」

絞め殺されるかとは思ったが、悪意を感じなかったので特に嫌いにはなっていない。
だが体がまだギシギシする気がするのでやっぱちょっとはムカつく。イケメン滅べ。

そんな俺の返しが意外だったのかきょとんとした顔の彼はうるうるした目をやめてまたキラキラと瞳を輝かせた。
やっぱそのうるうるおめめわざとだったのね。

「じゃあ俺と結婚してくれるか!?」
「結婚したいほど貴方のことを知りません」

じゃあの意味が分からん。
嫌いでは無いからと言って結婚したいほど好きなわけでもない。
むしろ今はLIKEもLOVEもない。
そんな俺の再度の返しに竜王陛下はまたきょとんとすると1人でなにやらうんうんと頷きにっこりと笑った。

……なんだか嫌な予感のする守りたくない、この笑顔。

「そう言えば名を名乗っていなかったな、失礼した。俺の名はガイナス・ドラグニア。隣のトライア・ドラグーン王国の3人居る王の内の1人だ」
「……ご丁寧にありがとうございます。僕はワーマイア辺境伯家次男、シルフィリアです。竜王陛下におきましては益々のご健勝とごーー」
「大丈夫だ、そのような堅苦しい挨拶は要らん。名は君の父上から聞いていたが本人からも教えて貰えるとは嬉しいな。ではお互い自己紹介も済んだ事だし婚約者としてこれからもよろしくな」
「婚や……………………ん?」

ちょっと待てストップ一時停止しろ。
コンニャクじゃなくて婚約者って言ってる?
婚約者になってくれないか?とかのお伺いじゃなく既に婚約者として決定されてる気がするのだが俺の気のせい?

思わず右隣に座る父様の顔を見上げたらものすごく気まずそうに目を逸らされた。
おいこら、こっちを見ろや。
逆に左隣に座る兄様の顔を見上げたら絶対零度の微笑みを竜王様に向けて浮かべていた。
あ、額に青筋が浮かんでる……。
母様は竜王様が座っているソファの後ろでメイドたちと「やだーうちの子玉の輿だわー」とキャッキャウフフしていた。
さすが母様、いろんな意味で強い。

「シルフィ、俺の番。出来たら子供は20人…いや22人欲しいな」
「子供同士でサッカーさせるんか!?と言うかちょっと!ちょっと待ってください!僕まだ10歳ですしそんな急に」
「ほんの90歳差だな。俺の方が少し年上か」

「………………少し?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた

翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」 そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。 チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜 ・話の流れが遅い ・作者が話の進行悩み過ぎてる

転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!

めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。 ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。 兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。 義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!? このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。 ※タイトル変更(2024/11/27)

助けた竜がお礼に来ました

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26
BL
☆6話完結済み☆ 前世の記憶がある僕が、ある日弱った子供のぽっちゃり竜を拾って、かくまった。元気になった竜とはお別れしたけれど、僕のピンチに現れて助けてくれた美丈夫は、僕のかわいい竜さんだって言い張るんだ。それで僕を番だって言うんだけど、番ってあのつがい?マッチョな世界で野郎たちに狙われて男が苦手な無自覚美人と希少種の竜人との異種間恋愛。 #ほのぼのしてる話のはず  ☆BLランキング、ホットランキング入り本当に嬉しいです♡読者の皆さんがこの作品で楽しんで頂けたのかなととても励みになりました♪

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

お前とは番いになりたくないと言われたのに何故溺愛されているのでしょうか?

紅月
BL
僕が12歳の頃両親は事故で死んでしまった。 その後孤児院に引き取られて奨学生として貴族から平民が通う学園に通い文官になった。 だがある日、最上位の種族である竜人で公爵家当主である、ルイ・メイアンから僕が公爵様の運命の番である事を知らされる。しかし、僕の魂の色は真っ黒で醜いため僕とは番いになりたくないと契約書を作られてしまった。 この国は無種族が生活しており竜神や獣人は運命のつがいというものが存在する。 おまけに竜人には人の魂の色が見えるらしく相手の感情や思考が魂の色によって分かるらしい。しかし、僕の魂の色はぐちゃぐちゃした濁った色をしていて見るに堪えないらしい。 しかし、ある時から公爵様が契約を違反すれば1億円の罰金が発生するという契約書を作ったのにも関わらずそれを違反して僕を溺愛し始めた。 最強竜人公爵家当主第一騎士団長×孤独な神の愛おし子 主人公ガーベラ23歳 ルイ・メイアン201歳

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

ただの新米騎士なのに、竜王陛下から妃として所望されています

柳葉うら
恋愛
北の砦で新米騎士をしているウェンディの相棒は美しい雄の黒竜のオブシディアン。 領主のアデルバートから譲り受けたその竜はウェンディを主人として認めておらず、背中に乗せてくれない。 しかしある日、砦に現れた刺客からオブシディアンを守ったウェンディは、武器に使われていた毒で生死を彷徨う。 幸にも目覚めたウェンディの前に現れたのは――竜王を名乗る美丈夫だった。 「命をかけ、勇気を振り絞って助けてくれたあなたを妃として迎える」 「お、畏れ多いので結構です!」 「それではあなたの忠実なしもべとして仕えよう」 「もっと重い提案がきた?!」 果たしてウェンディは竜王の求婚を断れるだろうか(※断れません。溺愛されて押されます)。 さくっとお読みいただけますと嬉しいです。

処理中です...