転生辺境伯次男はチートが過ぎる

如月 満月

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子供時代

第3話 90歳年上の婚約者

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「ん……あれ……?」

意識が浮上し目を開くと、そこには心配そうに俺の顔を覗き込む父様と兄様がいた。
目の色は違うが2人とも顔がよく似ていて誰が見ても御家族ですねと分かるレベル。
そして100人に聞いてもほぼ100人がイケメンですねと言うであろうイケメンである。
前世の男性アイドルなんか裸足で逃げ出すレベルのご尊顔だ。

俺も髪色は銀髪…でも父様や兄様よりも白に近い銀髪だ。
顔は母様に似たみたいで父様から「シルフィは絶対嫁になんかやらないからな!」って涙ながらに言われたが、俺はまだ10歳だしそもそも嫁じゃなく婿になりたい。
俺、れっきとした男の子。
いくら顔が自他ともに認める美少女顔であっても可愛い女の子の嫁を俺はまだ諦めたわけじゃない。
見てろよ父様、俺は体を鍛えて嫁だなんて言葉も出てこない立派なイケメンマッチョになってやる!!

「シル、大丈夫?」

そんな俺の決意など知らず、16歳になり完全に声変わりした甘いイケボで心配そうに声を掛けてくれた兄様に「大丈夫」と返すと父様と一緒にホッとした顔をしていた。
やはり表情や声音通りとても心配されたようだ。

そもそもなんで俺寝てるんだっけ?


「……すまない」

これまた兄様とは違う色気のあるイケボが聞こえた。
でもなんでか沈んでそうな声にそちらの方に顔だけ向けると、どっかで見たような長い黒髪の男が3人がけのソファに1人座って項垂れていた。

「番に会えたのに興奮しすぎて抱き締めた力が強すぎるのに気づかず気絶させてしまうなど、俺はなんと不甲斐ない男だ……。ここは詫びに俺の角を片方折ってーーー」
「りゅ、竜王陛下・・・・にそんな事させたらこの国が滅びますから!!」



……あらやだ、なにやら大変な事になっているわ。





──────────────





聞こえてきた単語に軽く現実逃避してオカマ口調になっていた間に、気づけば竜王陛下と呼ばれていた黒髪の男性の真向かいのソファに座らされていた。

竜王陛下って事は竜人?(チラチラ)
でも竜っぽい要素なくない?(じろじろ)
あ、でもよく見れば瞳孔が縦長だわ。(チラチラ)

そんな風に無言でチラチラじろじろと観察していると、俺の不躾な視線にさすがに気付いたのか、伏せていた顔を上げて俺と目が合った。
すると先ほどまでどよーんとしていた瞳がまたキラッキラに輝くが、その後徐々にうるうると涙目になった。

……さすがイケメン、あざとい。

「シルフィ、俺の事嫌いになったか……?」
「嫌いになるほど貴方のことを知りません」

絞め殺されるかとは思ったが、悪意を感じなかったので特に嫌いにはなっていない。
だが体がまだギシギシする気がするのでやっぱちょっとはムカつく。イケメン滅べ。

そんな俺の返しが意外だったのかきょとんとした顔の彼はうるうるした目をやめてまたキラキラと瞳を輝かせた。
やっぱそのうるうるおめめわざとだったのね。

「じゃあ俺と結婚してくれるか!?」
「結婚したいほど貴方のことを知りません」

じゃあの意味が分からん。
嫌いでは無いからと言って結婚したいほど好きなわけでもない。
むしろ今はLIKEもLOVEもない。
そんな俺の再度の返しに竜王陛下はまたきょとんとすると1人でなにやらうんうんと頷きにっこりと笑った。

……なんだか嫌な予感のする守りたくない、この笑顔。

「そう言えば名を名乗っていなかったな、失礼した。俺の名はガイナス・ドラグニア。隣のトライア・ドラグーン王国の3人居る王の内の1人だ」
「……ご丁寧にありがとうございます。僕はワーマイア辺境伯家次男、シルフィリアです。竜王陛下におきましては益々のご健勝とごーー」
「大丈夫だ、そのような堅苦しい挨拶は要らん。名は君の父上から聞いていたが本人からも教えて貰えるとは嬉しいな。ではお互い自己紹介も済んだ事だし婚約者としてこれからもよろしくな」
「婚や……………………ん?」

ちょっと待てストップ一時停止しろ。
コンニャクじゃなくて婚約者って言ってる?
婚約者になってくれないか?とかのお伺いじゃなく既に婚約者として決定されてる気がするのだが俺の気のせい?

思わず右隣に座る父様の顔を見上げたらものすごく気まずそうに目を逸らされた。
おいこら、こっちを見ろや。
逆に左隣に座る兄様の顔を見上げたら絶対零度の微笑みを竜王様に向けて浮かべていた。
あ、額に青筋が浮かんでる……。
母様は竜王様が座っているソファの後ろでメイドたちと「やだーうちの子玉の輿だわー」とキャッキャウフフしていた。
さすが母様、いろんな意味で強い。

「シルフィ、俺の番。出来たら子供は20人…いや22人欲しいな」
「子供同士でサッカーさせるんか!?と言うかちょっと!ちょっと待ってください!僕まだ10歳ですしそんな急に」
「ほんの90歳差だな。俺の方が少し年上か」

「………………少し?」
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