38 / 71
38
しおりを挟む
バネッサ視点
この夏。
私の世界は一変した。
王族の方々に混じり、鉱山の視察に同行させていただいた。
意外にもエドウィン殿下も鉱石がお好きで、身の程もわきまえずにすっかり夢中になって話し込んでしまった。
あんなに知識があって私の話しに付き合ってくれた人なんて今までいなかった。女の子達は綺麗に加工されたアクセサリーは好きだけど、石そのものには興味が無いから。
それは殿下も同じだったようで二人で地面に這いつくばって地質について話したりなんかして、その姿のおかしさに気がついて、顔を見合わせて笑った。
その顔もぼんやりしていたけど、キラキラとした金髪が綺麗だと思った。
その後、サラが倒れたと聞いてお見舞いにいくと、両手で目を覆われ次に目を開けたときに、奇跡が起こった。
長きに渡ってぼんやりとしか見えなかった視界が鮮明になったのだ。
サラのその力は秘密だからと、見返りは何も求めなかった。求められたとしても、何をもって返しても返しきれない。まさに奇跡としかいいようの無い力だ。
その目で見たエドウィン殿下は輝く金髪に澄んだサファイアの瞳。
なんてステキ。
見えなかった時は平気だったのに、今はお会いする度にドキドキする。
そのドキドキは緊張だけでは無い事に、すぐに気がついた。
私、エドウィン殿下に恋している。
もちろん殿下には婚約者がいることは知っている。
そんなのは王族だから、政略の為には仕方がない。
そして王族だから、幾人も恋人がいたって咎められる事もない。
ただ殿下のお側にいられるだけでいい。
それだけで私の世界は輝く。
ああ、世界はなんて美しいんだろう。
サラには感謝してもしきれない。
学園では昼食を共にし、休憩時間も一緒に過ごすようになった。
護衛にお兄様がいるのがちょっと気まずい。
だけど気を利かせてくれているのか、皆、少し距離をとってくれている。
天気の良い日は中庭の一角で二人で趣味の鉱石についても話したりできる。
殿下はふと、庭の隅を見て、
「今日もいないな。
もう来ないのかな?」
「なんですの?」
「いや、サミュエルの妹がよくあの木の陰からサミュエルを見に来ていたんだ。
あのクリーム色のふわふわの髪が見え隠れして、まるで小動物が隠れているようで可愛らしかったんだ。」
「サラが?」
「そう。」
サミュエル様は近ごろはルイスといることが多い。
今日も私達とは少し離れたベンチにいる。
「大好きな兄を取られたなんて思っていなければいいのだが。」
…。
違う。
私…私、なんて事を。
どうして気が付かなかったの。
旅行中もサラは楽しくおしゃべりしていたかと思うと急に黙りこんでうつむき頬を染めていた。決まってエドウィン殿下が来られた時じゃなかった?
あの時は私にはまだ見えてなかったけれど、もしかしたらずっとエドウィン殿下を見ていたのではないの?
それなのに私ったらずっと夢中になって殿下を独占していたわ。
サラはずっと何も言わないで私達の話を聞いていた。
時には微笑んだりして。
「あ…あの、私、少し用を思い出したので失礼させていただいてもよろしいでしょうか?」
その場を逃げるように立ち去った。
この夏。
私の世界は一変した。
王族の方々に混じり、鉱山の視察に同行させていただいた。
意外にもエドウィン殿下も鉱石がお好きで、身の程もわきまえずにすっかり夢中になって話し込んでしまった。
あんなに知識があって私の話しに付き合ってくれた人なんて今までいなかった。女の子達は綺麗に加工されたアクセサリーは好きだけど、石そのものには興味が無いから。
それは殿下も同じだったようで二人で地面に這いつくばって地質について話したりなんかして、その姿のおかしさに気がついて、顔を見合わせて笑った。
その顔もぼんやりしていたけど、キラキラとした金髪が綺麗だと思った。
その後、サラが倒れたと聞いてお見舞いにいくと、両手で目を覆われ次に目を開けたときに、奇跡が起こった。
長きに渡ってぼんやりとしか見えなかった視界が鮮明になったのだ。
サラのその力は秘密だからと、見返りは何も求めなかった。求められたとしても、何をもって返しても返しきれない。まさに奇跡としかいいようの無い力だ。
その目で見たエドウィン殿下は輝く金髪に澄んだサファイアの瞳。
なんてステキ。
見えなかった時は平気だったのに、今はお会いする度にドキドキする。
そのドキドキは緊張だけでは無い事に、すぐに気がついた。
私、エドウィン殿下に恋している。
もちろん殿下には婚約者がいることは知っている。
そんなのは王族だから、政略の為には仕方がない。
そして王族だから、幾人も恋人がいたって咎められる事もない。
ただ殿下のお側にいられるだけでいい。
それだけで私の世界は輝く。
ああ、世界はなんて美しいんだろう。
サラには感謝してもしきれない。
学園では昼食を共にし、休憩時間も一緒に過ごすようになった。
護衛にお兄様がいるのがちょっと気まずい。
だけど気を利かせてくれているのか、皆、少し距離をとってくれている。
天気の良い日は中庭の一角で二人で趣味の鉱石についても話したりできる。
殿下はふと、庭の隅を見て、
「今日もいないな。
もう来ないのかな?」
「なんですの?」
「いや、サミュエルの妹がよくあの木の陰からサミュエルを見に来ていたんだ。
あのクリーム色のふわふわの髪が見え隠れして、まるで小動物が隠れているようで可愛らしかったんだ。」
「サラが?」
「そう。」
サミュエル様は近ごろはルイスといることが多い。
今日も私達とは少し離れたベンチにいる。
「大好きな兄を取られたなんて思っていなければいいのだが。」
…。
違う。
私…私、なんて事を。
どうして気が付かなかったの。
旅行中もサラは楽しくおしゃべりしていたかと思うと急に黙りこんでうつむき頬を染めていた。決まってエドウィン殿下が来られた時じゃなかった?
あの時は私にはまだ見えてなかったけれど、もしかしたらずっとエドウィン殿下を見ていたのではないの?
それなのに私ったらずっと夢中になって殿下を独占していたわ。
サラはずっと何も言わないで私達の話を聞いていた。
時には微笑んだりして。
「あ…あの、私、少し用を思い出したので失礼させていただいてもよろしいでしょうか?」
その場を逃げるように立ち去った。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
【完結】魅了が解けたあと。
乙
恋愛
国を魔物から救った英雄。
元平民だった彼は、聖女の王女とその仲間と共に国を、民を守った。
その後、苦楽を共にした英雄と聖女は共に惹かれあい真実の愛を紡ぐ。
あれから何十年___。
仲睦まじくおしどり夫婦と言われていたが、
とうとう聖女が病で倒れてしまう。
そんな彼女をいつまも隣で支え最後まで手を握り続けた英雄。
彼女が永遠の眠りへとついた時、彼は叫声と共に表情を無くした。
それは彼女を亡くした虚しさからだったのか、それとも・・・・・
※すべての物語が都合よく魅了が暴かれるとは限らない。そんなお話。
______________________
少し回りくどいかも。
でも私には必要な回りくどさなので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
逆行令嬢は聖女を辞退します
仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。
死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって?
聖女なんてお断りです!
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
死んで巻き戻りましたが、婚約者の王太子が追いかけて来ます。
拓海のり
恋愛
侯爵令嬢のアリゼは夜会の時に血を吐いて死んだ。しかし、朝起きると時間が巻き戻っていた。二度目は自分に冷たかった婚約者の王太子フランソワや、王太子にべったりだった侯爵令嬢ジャニーヌのいない隣国に留学したが──。
一万字ちょいの短編です。他サイトにも投稿しています。
残酷表現がありますのでR15にいたしました。タイトル変更しました。
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる