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 陛下は治癒の効果が現れ、すこぶる元気になられたそうだ。
 だけどまだまだ治療は続けなくてはいけない。王様にはこの旅行中に何度かお会いして治療する事になった。
 良かった。倒れたかいがあったよ。
 兄様はずっと倒れたあたしの側にいてくれたらしい。心配かけちゃったな。
 今も、
「お風呂は長湯してはいけないよ。」
「お腹がすいただろう?食事を部屋に運んでもらおうね。」
 とかいがいしく世話をする。
「ありがとう兄様。せっかく旅行に来たのに、遊べなくてごめんね。」
「いいんだよ。そんな事より陛下の病気を見つけるなんてお手柄だぞ。」
 本当に良かった。
 これで王様は死ぬ事は無い。
 そしたらエディの王室での立場だって前ほどは悪くはならないはず。
 食事が終わると、部屋をノックする音がした。
「サラ、具合はどう?」
 バネッサだ。
「もう大丈夫よ。」
「驚いたわ、急に熱を出すなんて。」
 王様には聖女である事や治癒能力は隠してもらうようお願いしておいた。
 バネッサは私が暇なんじゃないかと、手持ちの本を持ってきてくれたのだった。
 鉱石の本だった。
「もっと面白い物語の本でもあれば良かったんだけど、手持ちの本はこんなのしかなくてごめんね。」
「ううん、ありがとう。バネッサは本当に鉱石が好きなのね。」
「ええ、私、目が悪いから遠くの美しい景色はよく見えないのだけど、鉱石は手にとって見る事ができる物だから大好きなの。」
 そうだったんだ。バネッサにはこの別荘地の美しい景色は見えてなかったんだ。
 それなのに私達は綺麗な景色やお城にはしゃいだりしていたんだわ。
 口には出さなかったけれど、きっとさみしく感じていたはずだ。
「私の母様も生まれつき目が悪いの。
 でもね、光だけはかろうじて感じる事ができてね、この間もサファイアを日に透かして綺麗だって喜んでいたのよ。」
「そうだったの。お気の毒ね。
 私は生まれつきでもないし、なんとか生活できるからまだありがたいって思わなくちゃね。」
「生まれつきじゃないの?」
「ええ、幼い頃の火事で火の粉が目に入ってしまったの。」
 生まれつきじゃないのなら治せるんじゃないの?
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