23 / 71
23
しおりを挟む
サミュエル視点
サラ、どうか目を覚まして。
横たわるベッドの側で祈る。
サラは陛下の治療中に魔力切れで意識を失ってしまった。
陛下に同行していた治癒師は、
「魔力切れですな。
まったく、素人が治癒師の真似事などするからです。
多少使えるからといい気になってひけらかすとこういう目にあうんですよ。
陛下には私達優秀な治癒師が何人もついて、最高水準の治療をしているのですよ。それを否定するなんて!
あーまったく困ったものだ。」
さんざんに言われてしまった。
サラの耳に入らなくて良かった。
サラの実力は僕達親子しか知らないから信じてもらえないのは仕方がない。
これでもし変化がなく、陛下に万が一のことがあっても、もう仕方がない。信じなかったほうが悪いのだ。
放っておけばいい。
サラは優しすぎる。
採掘場でもそうだ。
エドウィン殿下とお話するのだと、あんなに鉱石について勉強してきたのに、殿下とバネッサの間に割って入る事が出来なかった。
なのに、それを幸せそうな笑顔で見ているなんて…。
僕は胸が張り裂けそうに辛かったのに。
サラを幸せにしてあげたい。
悲しみを隠すような笑顔じゃなくて、心から笑ってほしい。
エドウィン殿下は駄目だ。
もっとサラを大切にしてくれて、誰からも祝福される関係の相手でなくては。
次の日の朝になってもサラは目覚めなかった。
だが、陛下が部屋を訪れた。
浮腫みがとれた、すっきりとした顔で。血色もよい。
「見てくれ!昨日までとはまったく違う!
寝覚めも良く、侍女達が顔を見て驚いたぞ。
サラはまだ目覚めないのか?」
「…はい。」
昨晩の横柄な治癒師は陛下の後ろで小さくなっていた。
「誠に申し訳ございませんでした!」
「…。」
どうでもいい。
その日はずっと寝たきりのサラに付き添った。
少しうとうとしていたようだ。
目を覚ましすと、夕日の差し込む窓に向かってひざまづき、神に祈りを捧げるサラの姿を見た。
サラは毎日朝夕にお祈りを捧げる。
その姿は神々しい。
日の光に溶けて天に登っていくようだ。
抱きしめたい衝動をぐっとこらえる。
こちらに気付いたサラが見つめる。
「兄様?
あの…ごめんなさい。
心配おかけしましたよね?」
サラのほうが心配そうではないか?
ハッ!いけない!知らずに涙が頬を伝っていたようだ。
「すまない、取り乱してしまった。
良かったよ、目が覚めて。」
どれだけ近くにいても決して僕からは触れてはいけない。
僕達は兄と妹。
近くてとても遠い。
サラ、どうか目を覚まして。
横たわるベッドの側で祈る。
サラは陛下の治療中に魔力切れで意識を失ってしまった。
陛下に同行していた治癒師は、
「魔力切れですな。
まったく、素人が治癒師の真似事などするからです。
多少使えるからといい気になってひけらかすとこういう目にあうんですよ。
陛下には私達優秀な治癒師が何人もついて、最高水準の治療をしているのですよ。それを否定するなんて!
あーまったく困ったものだ。」
さんざんに言われてしまった。
サラの耳に入らなくて良かった。
サラの実力は僕達親子しか知らないから信じてもらえないのは仕方がない。
これでもし変化がなく、陛下に万が一のことがあっても、もう仕方がない。信じなかったほうが悪いのだ。
放っておけばいい。
サラは優しすぎる。
採掘場でもそうだ。
エドウィン殿下とお話するのだと、あんなに鉱石について勉強してきたのに、殿下とバネッサの間に割って入る事が出来なかった。
なのに、それを幸せそうな笑顔で見ているなんて…。
僕は胸が張り裂けそうに辛かったのに。
サラを幸せにしてあげたい。
悲しみを隠すような笑顔じゃなくて、心から笑ってほしい。
エドウィン殿下は駄目だ。
もっとサラを大切にしてくれて、誰からも祝福される関係の相手でなくては。
次の日の朝になってもサラは目覚めなかった。
だが、陛下が部屋を訪れた。
浮腫みがとれた、すっきりとした顔で。血色もよい。
「見てくれ!昨日までとはまったく違う!
寝覚めも良く、侍女達が顔を見て驚いたぞ。
サラはまだ目覚めないのか?」
「…はい。」
昨晩の横柄な治癒師は陛下の後ろで小さくなっていた。
「誠に申し訳ございませんでした!」
「…。」
どうでもいい。
その日はずっと寝たきりのサラに付き添った。
少しうとうとしていたようだ。
目を覚ましすと、夕日の差し込む窓に向かってひざまづき、神に祈りを捧げるサラの姿を見た。
サラは毎日朝夕にお祈りを捧げる。
その姿は神々しい。
日の光に溶けて天に登っていくようだ。
抱きしめたい衝動をぐっとこらえる。
こちらに気付いたサラが見つめる。
「兄様?
あの…ごめんなさい。
心配おかけしましたよね?」
サラのほうが心配そうではないか?
ハッ!いけない!知らずに涙が頬を伝っていたようだ。
「すまない、取り乱してしまった。
良かったよ、目が覚めて。」
どれだけ近くにいても決して僕からは触れてはいけない。
僕達は兄と妹。
近くてとても遠い。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
【完結】魅了が解けたあと。
乙
恋愛
国を魔物から救った英雄。
元平民だった彼は、聖女の王女とその仲間と共に国を、民を守った。
その後、苦楽を共にした英雄と聖女は共に惹かれあい真実の愛を紡ぐ。
あれから何十年___。
仲睦まじくおしどり夫婦と言われていたが、
とうとう聖女が病で倒れてしまう。
そんな彼女をいつまも隣で支え最後まで手を握り続けた英雄。
彼女が永遠の眠りへとついた時、彼は叫声と共に表情を無くした。
それは彼女を亡くした虚しさからだったのか、それとも・・・・・
※すべての物語が都合よく魅了が暴かれるとは限らない。そんなお話。
______________________
少し回りくどいかも。
でも私には必要な回りくどさなので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
【完結】聖女を害した公爵令嬢の私は国外追放をされ宿屋で住み込み女中をしております。え、偽聖女だった? ごめんなさい知りません。
藍生蕗
恋愛
かれこれ五年ほど前、公爵令嬢だった私───オリランダは、王太子の婚約者と実家の娘の立場の両方を聖女であるメイルティン様に奪われた事を許せずに、彼女を害してしまいました。しかしそれが王太子と実家から不興を買い、私は国外追放をされてしまいます。
そうして私は自らの罪と向き合い、平民となり宿屋で住み込み女中として過ごしていたのですが……
偽聖女だった? 更にどうして偽聖女の償いを今更私がしなければならないのでしょうか? とりあえず今幸せなので帰って下さい。
※ 設定は甘めです
※ 他のサイトにも投稿しています
大好きな旦那様はどうやら聖女様のことがお好きなようです
古堂すいう
恋愛
祖父から溺愛され我儘に育った公爵令嬢セレーネは、婚約者である皇子から衆目の中、突如婚約破棄を言い渡される。
皇子の横にはセレーネが嫌う男爵令嬢の姿があった。
他人から冷たい視線を浴びたことなどないセレーネに戸惑うばかり、そんな彼女に所有財産没収の命が下されようとしたその時。
救いの手を差し伸べたのは神官長──エルゲンだった。
セレーネは、エルゲンと婚姻を結んだ当初「穏やかで誰にでも微笑むつまらない人」だという印象をもっていたけれど、共に生活する内に徐々に彼の人柄に惹かれていく。
だけれど彼には想い人が出来てしまったようで──…。
「今度はわたくしが恩を返すべきなんですわ!」
今まで自分のことばかりだったセレーネは、初めて人のために何かしたいと思い立ち、大好きな旦那様のために奮闘するのだが──…。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。
みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」
魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。
ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。
あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で運命的な出会いをする。
【2024年3月16日完結、全58話】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる