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   サミュエル視点

 サラ、どうか目を覚まして。
 横たわるベッドの側で祈る。
 サラは陛下の治療中に魔力切れで意識を失ってしまった。
 陛下に同行していた治癒師は、
「魔力切れですな。
 まったく、素人が治癒師の真似事などするからです。
 多少使えるからといい気になってひけらかすとこういう目にあうんですよ。
 陛下には私達優秀な治癒師が何人もついて、最高水準の治療をしているのですよ。それを否定するなんて!
 あーまったく困ったものだ。」
 さんざんに言われてしまった。
 サラの耳に入らなくて良かった。
 サラの実力は僕達親子しか知らないから信じてもらえないのは仕方がない。
 これでもし変化がなく、陛下に万が一のことがあっても、もう仕方がない。信じなかったほうが悪いのだ。
 放っておけばいい。
 サラは優しすぎる。
 採掘場でもそうだ。
 エドウィン殿下とお話するのだと、あんなに鉱石について勉強してきたのに、殿下とバネッサの間に割って入る事が出来なかった。
 なのに、それを幸せそうな笑顔で見ているなんて…。
 僕は胸が張り裂けそうに辛かったのに。
 サラを幸せにしてあげたい。
 悲しみを隠すような笑顔じゃなくて、心から笑ってほしい。
 エドウィン殿下は駄目だ。
 もっとサラを大切にしてくれて、誰からも祝福される関係の相手でなくては。
 次の日の朝になってもサラは目覚めなかった。
 だが、陛下が部屋を訪れた。
 浮腫みがとれた、すっきりとした顔で。血色もよい。
「見てくれ!昨日までとはまったく違う!
 寝覚めも良く、侍女達が顔を見て驚いたぞ。
 サラはまだ目覚めないのか?」
「…はい。」
 昨晩の横柄な治癒師は陛下の後ろで小さくなっていた。
「誠に申し訳ございませんでした!」
「…。」
 どうでもいい。
 その日はずっと寝たきりのサラに付き添った。
 少しうとうとしていたようだ。
 目を覚ましすと、夕日の差し込む窓に向かってひざまづき、神に祈りを捧げるサラの姿を見た。
 サラは毎日朝夕にお祈りを捧げる。
 その姿は神々しい。
 日の光に溶けて天に登っていくようだ。
 抱きしめたい衝動をぐっとこらえる。
 こちらに気付いたサラが見つめる。
「兄様?
 あの…ごめんなさい。
 心配おかけしましたよね?」
 サラのほうが心配そうではないか?
 ハッ!いけない!知らずに涙が頬を伝っていたようだ。
「すまない、取り乱してしまった。
 良かったよ、目が覚めて。」
 どれだけ近くにいても決して僕からは触れてはいけない。
 僕達は兄と妹。
 近くてとても遠い。
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