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  ヴァイオレット視点

 どういう事?
 ここは私の知っている小説の世界じゃなかったの?
 転生した時は絶望したわ。
 私は悪役令嬢だもの。
 だけどストーリーを知っている私ならば結末を変える事が出来るはずだった。
 なぜならこの小説のヒロインは世間をなめていたから。
 王子も世間知らず。
 私は自己を高め非の打ち所の無い令嬢になってザマァしてやればいいのよ。
 私なりに筋書きを考えた。
 ヒロインのサラは聖女で治癒魔法を使えた。
 小説では特別な存在のように書かれていたが、実際の聖女は国の所有物。
 だけどサラはちょっと頭が弱いからそんな事には気づかず、いい気になって誰かまわず治療していた。自己流の治癒方法らしいけど、患者の身体を触って治す。そんな事をされれば年ごろの男性は恋と勘違いする。
 そうやってサラは味方を増やしていたから、それを逆手に取ってやろう。
 誰かまわず男を誘惑するあばずれと。
 私はそれを注意する素振りで悪い噂を広めればいい。
 エドウィンがサラに恋をするのも仕方がない。
 性格がきつく、貞淑な婚約者とは違い、サラはべたべた触る。
 やりたい盛りの童貞がそんな事をされれば下心が勝つに決まっている。
 それならそれで放っておけばいい。
 私が狙うのは第二皇子ジュリアスだ。
 エドウィンの母の王妃はとうに亡くなり、もうすぐジュリアスの母がその地位につく。
 そして王様はもうすぐ死ぬ。
 継承権はエドウィンにあるが、世情はジュリアスと新しい王妃に向かうだろう。
 エドウィンの愚かさを世が知れば、これ幸いに廃嫡となるはず。
 のはずだったのに。
 死ぬはずだった元婚約者サミュエルがエドウィンを教育しだした。中身は無くてもエドウィンは王子らしくなってしまった。
 そしてヒロインのサラがサミュエルの妹?
 これは間違いなく、サラも転生者でストーリーを知っているんだわ。
 うかつに事を進めるわけにはいかなくなった。
 悪い噂を広めようにもサラは自分が聖女であることも治癒師であることも隠している。
 中途半端に卑しい生まれの母子だと噂を流してもサミュエルがかわいがっているらしいからと、悪く言う者は少ない。
 逆に私とサミュエルの確執が噂されるはめに。
 サミュエルが私に未練があり、悪く言っているように言ってはみても、あの地位と容姿に加え、成績も良く性格もよい。私のほうが不利だ。
 それになぜサラはエドウィンにアプローチしないのかしら?
 向こうが手を出さないとこっちは動きようがない。
 このままエドウィンと結婚したらいいって言うの?
 あーっ!もうっ、わからないっ!
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