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4日目

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 ピンポーン!
 チャイムが聞こえた時、俺はまだベッドの中にいた。
 隣のイクタを乗りこえて玄関のドアを開けると尊臣がたっていた。
 目をそらして頬を染めて?
俺「何?」
佐々野「お…おはよう。」
俺「おはよう?…何時?」
 ちょっと寝ぼけていた。
 昨晩は遅くまでイクタの買ってきた新しいゲームをしてしまったから。
佐々野「8時半くらい。」
俺「…おはよう。」
佐々野「…ごめん。早いよね。」
俺「いいけど。上がって。」
佐々野「う…うん。」
 なんだろ?
俺「あっ!」
 長袖Tシャツとボクサータイプのパンツ一枚の格好だった。しかも朝○○した状態。
俺「あー…あー、コーヒー飲む?朝飯は?」
 ごまかしながらズボンをあわててはいた。
佐々野「一緒に食べるかなと思って、朝早くからやってる所の焼きたてのパン買ってきた。」
俺「あ、いい匂いする。サンキュ。」
 お湯を沸かす俺の背後で、
佐々野「…本当に一緒に寝てたんだ。」
 ベッドのイクタを見つめてた。
林「んー…?誰?何?」
俺「佐々野君来たよ。」
 ピンポーン!
 あ、たぶん今度はユウキだ。
 勝手にドアを開けて入ってきた。
有木「はよ。なんや佐々野早いな。」
佐々野「有木君も早いね。」
有木「おう。俺はこれからも毎朝マナベにコーヒー入れてもらう予定や。」
俺「やめて。」
林「やめて。」
佐々野「やめろ。」
有木「ちょ、イクタお前なんちゅう格好!」
 俺と同じく長袖Tシャツとパンツ。
 しかも俺のTシャツ着てやがるので小柄なイクタにはぶかぶか。おかげでパンツとアレの状態はわからないけど。ちなみにパンツは洗濯したのがあったのでイクタの自前だ。
林「彼シャツー。(笑)」
俺「お前の部屋に着替えとりに行くの面倒だって言ってさ。」
林「やっぱりマナベの部屋のほうがいいや。ベッド広いし。」
有木「お前らほんまどういう関係?」
俺「お互いのエロゲの推しを知る関係?」
林「お互いのチンポジを知る関係?」
 四年間寮で同室だったイクタとは特別仲が良かった。ふざけたし、バカな話もよくした。
 四人でテーブルを囲み大きなパンを手でちぎりとって食べる。
佐々野「パン、いっぱい買ってきて良かった。」
俺「ありがとう、うまい。」
林「これ高級食パンってやつ?」
有木「俺らおって良かったやん。これ二人で食えんやろ。」
俺「残ったらサンドイッチとかにするから無理に食べなくていいよ。」
佐々野「サンドイッチ食べたかった。」
俺「お弁当作る?」
佐々野「いや、店予約した。」
有木「どっかいくん?」
林「二人だけで行きたいんだって。」
有木「なんでお前ちょっとふてくされてん?」
林「ちょっとショックだったんだもん!」
有木「俺と遊びに行けばいいやん。」
俺「店予約って?」
佐々野「ちょっと遠出しようと思って。」
俺「何着て行けばいい所だよ?」
 尊臣はちょっといい服着てる。
 いつもちょっといい服だけど。
佐々野「アレンはどんな服でもカッコいいよ。」
有木「アレン?誰や?」
俺「俺。」
有木「らしい名前やな。」
俺「そうか。」
有木「ますます黒髪が違和感やな。」
林「だよね、ピンクでもいいくらい。」
俺「この日本人顔で?」
有木「確かに顔は日本人だよな。」
林「でもなんか違うんだよね。いい意味で。」
佐々野「綺麗なんだよ。」
俺「やめろよ。」
有木「遠出って車?」
佐々野「ああ。」
有木「で、予約のいる店いくん?」
佐々野「そうだけど。」
林「佐々野君ん家ってお金持ちっぽい。」
有木「親の金かよ。」
佐々野「まあ元は親の金だけど、投資とかで増やした金だよ。車は叔父のを借りただけだ。」
俺「前に乗せてもらった車だよな。俺、車あんまり詳しく無いけど左側にハンドルあった。」
佐々野「ベンツだから。」
有木「セレブかよ。」
林「スパダリかよ。」
佐々野「親と叔父がな。」
有木「そういや佐々野もこないだからなんか感じ違うな。」
林「メガネ無いとイケメンって漫画みたい。」
俺「飯食ったら出てってね、着替えるから。」
有木「いてもいいやん。脱げや。」
林「はーい、有木んち行くよ。佐々野も一回出ようか。」
佐々野「あ、うん。」
有木「なんや、ええやん。」
林「アレンは人前で着替えるの嫌いなんだよ。」
俺「別に大丈夫だけど、なんか恥ずいじゃん。」
有木「イクタは一緒に寝るほど平気やん。」
俺「イクタは慣れたから。」
有木「ほんまお前らなんなん?」
林「ほら、ジェラってないで行くよ。」
 尊臣に合わせたあんまりチャラく見えないキレイめなコーデにしてみた。
 少し離れた駐車場に止めてあった車に乗って出かける。
俺「どこ行く?」
佐々野「海まで。」
俺「今度は寝ないよ。(笑)」
佐々野「寝ててもいいよ。(笑)
 林君とは特別仲がいいんだね。」
俺「んー弟みたいな感じ?まあ四年も一緒に生活してたら情もわくよ。」
佐々野「複雑だけどさっきは部屋に林君達がいてくれて良かった。」
俺「パンか?」
佐々野「あ、いや…あんな格好で出迎えちゃ駄目だよ。」
俺「あー…や、悪かった。」
佐々野「気をつけてね。」
俺「うん。」
佐々野「…わかってる?」
俺「うん、失礼だよね。もう社会人なんだし。」
佐々野「わかってないね。春から林君いないんだよ?林君とあんな格好で寝てるのもどうかと思うけど、有木君が近くに住んでであんな格好見せるかと思うと心配だよ。」
俺「ユウキが好きなのはイクタだよ?」
佐々野「本当にわかってないね。好きじゃなくたって欲情はするし、有木君だってアレンの事好きになるかもしれないし、好きにならない保証なんてないし、さみしさに負けて近くのアレンに慰めてもらおうなんて浅ましい考えからいつのまにか本気になって、というかアレンの事好きにならないはずないし…あ、ごめん。」
俺「そういうとこ、ちょっと引くってば。(笑)」
 尊臣は突然饒舌になるな。
 今日は絶対寝てはいけない。
 当たり前だけど、こいつ俺に欲情する。
佐々野「着いたよ。」
俺「…ん?」
 …寝てしまった。
 昨日遅くまでゲームしていたからだ。
俺「ごめん、寝てた。」
佐々野「いいよ。」
 うわ…いい事あったみたいな笑顔。
俺「わー江ノ島だ。」
 楽しい。でもなんだろ?何かを参考にしたようなお決まりのデートコースみたい。
 昼食は思った通りちょっといい店。
俺「ここ高いんじゃ…。」
佐々野「俺が誘ったんだから俺がおごるよ。昨日ごちそうになったし。」
 昼はカレーだったし、夜は塩サバ焼いただけなんだけどな。
 なんか気恥ずかしい。
 回りはカップルか映え写真が欲しい女子ばっかりで男性カップルはいない。
 ちょっといい服着てきたのがまたデートっぽくて気まずい。
 おしゃれなコース料理を食べながら。
佐々野「今日は付き合ってくれてありがとう。」
俺「いや、俺のほうこそ。」
佐々野「一度でいいからしてみたかったんだ。こんなベタなデート。」
俺「なんか俺、ずっとお姫様扱いされてるみたいで恥ずかしいんだけど?」
 車のドアは開けてくれるし、車道側を歩いてくれるし。
佐々野「本当はもっと色々してあげたいし、どろどろに甘やかしたい。
 好きな人とデートなんてきっともう一生出来ないだろうから。」
俺「尊臣って、尽くすタイプだよね。」
佐々野「気持ち悪いかな?」
俺「なんで?」
佐々野「いや…俺って気持ち悪いらしいから。」
俺「誰がそんな事?」
 まあ、確かにイメチェンする前の尊臣は知らない奴から見たら大きくて無口で暗くてちょっと不気味に見えたかもしれないけど。
佐々野「小学生の頃に同級生でね、好きな子がいたんだ。その頃はまだ自分はゲイだと自覚してなくて、とにかくその子に気に入られたくて当時流行っていたカードゲームのレアカードをあげたんだ。
 だけどその後、偶然他の同級生と話しているのを聞いてしまって。
 その子は俺の事は気持ち悪いけどお金持ちの家の息子でなんでもくれるし、おごってくれる便利な奴なんだって言っていたんだ。
 呆れた事にそんな事を聞いた後も俺はその子に欲しいと言われたらあげたし、おごったし、宿題も写させてあげていたんだ。」
 うわ…それどこの俺?
佐々野「でもだんだんと邪険に扱われるようになって、気持ち悪いから近寄るなって言われたんだ。」
俺「俺はそんな風には思わないよ。
 今の尊臣は客観的に見てもカッコいいし、優しいからさ、女だったら惚れない要素が無いよ。」
佐々野「女だったらか。(笑)」
俺「あー、悪い。男でも惚れるよ。(笑)」
佐々野「ちょっと惚れてくれた?(笑)」
俺「おお。」
佐々野「嘘でも嬉しいよ。
 たとえ同情で付き合ってくれているのでも、感謝している。」
俺「同情なんて言うなよ。俺だって楽しいし、感謝してるよ、コレうまいし。」
佐々野「昨日の塩サバも美味しかったよ。
 俺、告白して良かった。」
 帰りはちゃんと寝ないで帰って来た。
 けど二人とも口数は少なく、東京に近づくにつれさらに沈黙が続いた。
俺「楽しいとさ、帰りは寂しくなるよね。」
佐々野「アレンもそうなんだ。ちょっと嬉しい。俺だけが楽しくて、さみしいのかと考えてた。」
俺「俺、尊臣の事けっこう好きだよ?」
佐々野「…うん。」
 アパートについてしまった。
俺「今日はありがとう。」
佐々野「明日も会える?」
俺「もちろん。」
 車のドアに手をかけた時だった。
佐々野「あ…。」
俺「ん?」
佐々野「なんでもない。」
俺「?おやすみ。」
佐々野「…。」
俺「何?」
 なんだろ?まさかキスしたいとか?
佐々野「…て。」
俺「ん?」
佐々野「手、つなぎたかった。」
俺「なんだ、手くらいならいいよ。」
 差し出した右手は両手でそっと包まれた。
 尊臣の手はゴツゴツとして骨っぽくて大きくて、ずっとハンドルを握ってたらか熱っぽい。
佐々野「ごめん、手汗…。」
俺「あはは、大丈夫。おやすみ。」
佐々野「おやすみ。また明日。」
俺「また明日な。」
 予想外に楽しかった。
 あんなに大事にされた事無いからか?
 俺、あいつの事友達以上に好きになりはじめているかも。
 
 
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