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   レナード視点

 強い!
 こいつ、見た目どおりの優男とは違う。
 流れるような美しい太刀筋は基本に忠実。
 だからこそかろうじて避けきれてはいるが、間合いを詰められれば致命傷を…っ!そう思った瞬間、間合いを詰められた。
 殺気?
 背筋がざわっとして思わず魔法を放ってしまった。
 地面から氷の刃が突き出す。
 しまった!
 やってしまった。
 だがジュリアス殿下の身体は…飛んだ?
 まるで羽でも生えているかのように宙に浮いた。そしてゆっくりと地上に降り立つ。
「申し訳ございません!」
「いやっ!すごいね!魔法も使えるんだ!」
 興奮ぎみに頬を染めて笑っている。
「兄上以外でこんなに戦える人は初めてだ!」
「殿下も魔法を?」
「ああ、属性はなんだかよくわからないけど色々使えるよ。空は飛べないけど、結構高くは飛べるんだ。」
 ジュリアス殿下を馬鹿にしていた上級生も唖然として押し黙っている。
「兄上!なんて事を…ジュリアス殿下に万が一の事があればどうなさるおつもりですか!」
 ミシェルの言うとおりだ。
「誠に申し訳ございませんでした。」
 更にミシェルは、
「魔法を使ってしまった事はうっかりでは済まされませんよ!ジュリアス様。何なりとお気の済むよう罰をお与え下さい。」
「え?魔法を使っちゃいけないの?
 兄上と手合わせする時はよく死なない程度に殺されるよ?兄上は雷を使うから。」
「学生の手合わせでは使ってはいけないのです!」
「そう、では私が悪かった。
 相手が本気を出さない程度に、遊びでやれば良いという事だったのですね。
 ならばここでは学ぶべき事は無いです。」
 指導者を見る。
 正直殿下を馬鹿にしていたであろう指導者は、ばつが悪るそうに目をそらした。
「レナード、楽しかった。
 またやろう。授業じゃない時にね。
 それと、僕に敬語は、やめてくれないかな?
 レナードのほうが年上なんだから。」
「それは…。」
「ね、頼むよ。」
「…はい。」
「それから…。」
 くいくいと指でこちらに来いと示す。
 耳に唇を寄せ、周りに聞こえないように。
(罰が欲しいなら、毎朝おこしに来ること。
 だけどそれは秘密だ。)
「いいな、くれぐれも内密にな!」
「はい、畏まり…。」
「ほらっ!」
「あ…わかったよ。」
「うん、それでいい。ミシェルも畏まらないでね。僕達はクラスメイトなんだから。」
 ところで死なない程度に殺されるとはどのような状態なのだろう。
 
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