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第二章、国王を粛正するまで

第35話・「森で待ち構えた魔族の末路」

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 村長は村に訪れた旅人を魔王軍へ差し出すことで報酬をもらい私腹を肥やしていた。それもその報酬の一部を村民に分け与えることで悪いことだという感情を薄れさせ、共犯者に仕立て上げていた。村民達は旅人を魔王軍へ差し出すことが仕事とまで思っている。そして、その旅人ことソルは魔王軍と対峙する。





 魔族は笑みを浮かべながら両爪をソルの腹に向かって突き出す。
 両爪はとてつもなく硬いものへ突き立てたために、バキッ!という音が鳴り響き折れてしまった。
 
 「な、なんだ?!」

 そこにいたのは、全身の筋肉がムキムキな赤黒い巨体の鬼。
 魔族はいきなり現れた巨体の鬼に慄く、あきらかな格上だ。確実に勝てないと悟り反転して逃げようとする。

 「ギャッ!!!」

 赤黒い巨体の鬼は図体に似合わず、瞬時に魔族の体を片手で握る。
 
 ふむ、この鬼強いな。
 あの魔族の爪を折るほどの強度に加え、巨体から繰り出される瞬発力。これで遠距離攻撃があれば兵器だろ。

 「グッ、お前、ら、殺す!!!!」

 魔族は巨体の鬼に握られながら何かしたようだ。
 すると魔族の周囲の空間が歪められ洞窟のようなものが現れる。そこからたくさんの魔族が出てくる。

 「ひゃっ、ひゃっ、ぴぎゅ」

 「うるさい」

 ソルの一言で魔族は巨体の鬼に握り殺される。いつの間にかソルの瞳は狂気に染まっている。
 うーん、こうなったら実験に付き合ってもらうしかないよな。
 今度はあの強い鬼を何体召喚できるかやってみよう。イメージが大事。
 
 「鬼召喚」

 ものすごい数の魔法陣が地面に描かれ、そこから赤黒い巨体の鬼が一斉に出てくる。
 
 「な、なんだぁ!?」
 
 「おかしいぞ!ど、どうして高位の鬼があんなにも!」

 「か、勝てない!逃げよう、ギィヤァ!」

 ものすごい数の巨体の鬼を見て、魔族達は騒ぎ出し全員が逃走を図ろうとする。
 全鬼は瞬時に魔族達を握りにいく、羽の生えた魔族も飛んで逃げようとしたが巨体の鬼はジャンプし魔族を握って着地する。

 ・・・ものすごい光景だな、これ。
 ソルは笑ってしまう。鬼達がみんな玩具を持っているかのように魔族を握っている。握れなかった鬼達はぼーっとソルの指示を待っている状態だ。
 鬼を何体召喚できたか調べるのは、俺一人では面倒くさすぎる。たくさん召喚できたとだけ覚えておこう。
 でも全員の鬼が魔族を握りに行く姿は圧巻だった、素晴らしい。
 
 握られた魔族達は当然のようにわめく。
 ソルへ助けを乞うもの、ソルを罵倒するもの、魔王様に縋るものなど様々だ。俺が魔王様だけどな。

 どいつもこいつも自分が傷つきたくないなら他者を傷つけるなよとソルは溜息をつく、全員に一から説教したいが面倒だ。
 俺を殺しにきたのだから殺されてもしょうがないを適用しよう。
 ソルは自分の考えを正当化する。

 「やれ」

 巨体の鬼達は一斉に魔族を握りこむ。
 巨体の鬼に握られた魔族達はいたるところから血が噴き出し、見るも無残な姿となった。
 
 「グロッ!!!」

 ソルはこの光景を作り出した張本人ではあったが、鬼達の所業に引いていた。輩を処分することは当然だと思っていても人間的な感情も持ち合わせているのがソルである。 
 鬼達の召喚解除を行う。

 ・・・

 この魔族達の死体どうしよう、放置するとやばいかな?
 シャーロットへメッセージを送る。

 シャーロット、大量の魔族達が森で死んでんだけど放置しとくとまずい?
 そうですね、生態系が崩れてしまう可能性もあるので後で処分しておきますよ。
 助かった、ありがとう。それでひとつお願いがあるのだが・・・
 かしこまりました。後はお任せください

 「ふ一、ひと仕事終わったな。次は村かぁ」
 
 ソルは村のもの達がどういう反応をしてくるかを考えながら、村へと戻っていく。
 
 村に辿り着くと村民達は誰も外へ出ていないようだったので、村長宅を訪ねる。

 「村長、今帰りました」

 「うお!ソ、ソル様!!!まさか、モンスターを討伐できたのですか!?」

 「え、ええ。森にいたのはモンスターではなく魔族でしたが」

 「そ、そうでしたか。それはめでたい!今日は宴会をしようと準備しておったのです。是非参加してください」

 「分かりました」

 村長はうろたえながらソルを出迎える。
 ソルは、村長のうろたえに多少引きながら宴に参加することとする。宴までの間、ベッドでゆっくりしてくだされとのことで一室へ通された。
 ベッドに寝ころがってぼーっとしていると、シャーロットからメッセージが入る。

 村長や村民達はソル様を魔王軍に捧げた祝杯をあげようとしておりましたが、ソル様が帰ってきたことにより大パニックになっております。
 はぁ、クズばっかりだな。これからクズ共の宴会に付き合うと思うと疲れるよ。
 皆殺しにしては?
 それが手っ取り早いんだけど、この後どうするのか見てみたいよね。俺への報酬も支払わないといけないから手を打ってくるだろうしさ。あとは人間の食事がおいしいのかも検証したいからこの後もがんばるよ。
 かしこまりました、ご自愛ください。
 ありがと。

 あの輩共、ここからどうするのか色々と楽しみだ。
 ソルは狂気に染まった目をしながら時を待つ。
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