上 下
27 / 36
第一章、魔王を粛清するまで 

第27話・魔王戦3「死を呼ぶ配下」

しおりを挟む
 魔王は塔のモンスター達のLvを下げて次期魔王候補のLvが上がらないようにしたり、魔王に挑戦できる相手を次期魔王パーティーではなく次期魔王候補のみが挑戦できるように仕組みを変えた。これは魔王が保身と道楽を行うためだった。ソルは怯えたように魔王へと挑む。





 「分かり、ました。死にたくないので戦います。ゾンビ、召喚!」

 以前にも召喚した黒い鎧に盾と剣を持った90体の前衛ゾンビと、黒い鎧に盾と杖を持った10体の後衛ゾンビをずらっと並べて召喚する。
 よかった、100体召喚なんて試したことなかったけどできた。あまりにもゾンビの数が多いと不審がられそうだし、魔王が喜ぶ数としてはちょうどいいと思う。

 「フハハハハハハハ!よいぞよいぞ!なかなかに強そうなゾンビ達じゃないか、この我を倒せるかもしれないぞ!さあ見せてくれ、勇者を倒した力を!」

 ソルと魔王の戦いが始まる。

 魔王は2m50cm程度の大柄にも関わらず、俊敏な動きを見せる。
 前衛ゾンビ達は連携をとりながら矢継ぎ早に剣で斬りかかるが、魔王は剣で攻撃を受け流し、時には回避しながら1体ずつゾンビを斬っていく。ゾンビ達の鎧は上位装備なので脆くはないはずだが、魔王の剣はバターのように鎧ごと斬ってしまう。
 
 「ああ、楽しいな!毎日が退屈で遊びや運動をすることもない、我は本当に辛い人生を送っているのだ。ソルには感謝してもしきれんな」

 魔王は前衛のゾンビと戦いながら楽しそうに話す。
 前衛のゾンビ達は魔王に斬られる前提のゾンビを用意しておいて、その隙を別のゾンビが斬りかかったり、複数体同時に斬りかかる等、様々な方法で攻め立て続けるが魔王は楽しそうに一体ずつ斬っていく。
 後衛のゾンビも前衛のゾンビと連携し、魔王に当てられるタイミングを計りながら様々な魔法を打ちこみ続けるが、飛んでくる魔法も剣で斬り余裕の構えを見せている。
 突如、魔王が後方に位置していた後衛のゾンビのところまで瞬時に移動し、1体だけ斬るとソルに邪悪な笑みを向け、前衛ゾンビの集団へ戻っていく。

 「ソル、楽しんでくれているかな?少しずつ味方がいなくなっていく恐怖を」



 魔王がゾンビ達を1体ずつ丁寧に斬り続け、後衛のゾンビはすでに全員死んだ。前衛ゾンビも残り30体程度となっている。
 
 「さあ、もう少しでソルの番だ。まずは右腕、次に左腕、右足、左足、首を斬って頭だけのソルと話しをすることにしよう。さぞ楽しいだろう・・・な?」

 イキリ倒す魔王はソルが恐怖した顔を拝もうと振り返ると、ソルの後ろにガブリエル、ヴィシャ、シャーロット、アンが控えていた。

 「魔王、もう少しだ。がんばれよ」

 ソルは狂気を宿した目をして魔王を応援する。

 「魔王と相対することになるとは」

 「私一人で殺せる」

 「ふふふ、本当に醜い魔王ね。殺したくなっちゃう」

 「ソル兄!僕に!僕にやらせてよ!」

 ソルは魔王がゾンビ達と戦っている間に配下4人を召喚しておき、メッセージで魔王への攻撃は待てと指示した。これは魔王を絶望させるためにソルが用意した演出だった。
 ここで疑問となってくるのが、配下4人が魔王より強いのか?という問題である。
 実は、配下4人が魔王より強いかどうかソル自身知らなかったのだが、推測はできていた。勇者は俺より格上だったことから100Lv以上と推測、それを圧倒したアンは少なくとも130Lvはあるのではとなり、アンと同格の4人全員で攻め立てれば魔王を倒せると判断していた。みんなの声を聞くに、魔王を殺すなんて余裕と言い出したことにはびっくりしたが。
 
 魔王は先ほどまでゾンビを1体ずつ丁寧に殺していたが、冷や汗をダラダラと流し大慌てで回転斬りをすると、残りのゾンビ全員が斬られる。
 
 「だぁっ!どぅ、どどどぉーして、シ!?」

 「うふふ、黙りなさい。あなた程度が喋る権利を持っていると思っているの?」

 「シャーロット!抜け駆けは禁止だよ!」

 魔王は喋っている最中にシャーロットの闇魔法で口を縫い付けられる。さらにシャーロットは魔王の頭に直接語り掛ける。
 
 わたくしのことをソル様に一言でも喋ってみなさい。地獄なんて生温いと思うような体験をさせた後、生きていくのが辛い状況にしてあげる。
 
 魔王は額から滝のような汗があふれ出す。
 
 「ごめんなさい、アン。あまりにも醜い口だったから縫い付けておきたかったの」

 「うー、もう!ソル兄、魔王殺していい?」

 「待った待った!アン、魔王が俺を殺そうとしてきたら殺してもいいけど、それ以外で殺すのは禁止だ」

 「えー・・・魔王!早くソル兄を殺しに来て!」

 アンよ、その言葉はどうなんだ。主従関係はどこへいったとソルは苦笑いを浮かべる。
 

 な、なんなのだこれは。
 おかしい、おかしいぞ、現実とは思えん。
 ソルはなんの変哲もない召喚士だったのだろう?あの時に報告を受けている。だが、あの4人を召喚できるような存在であれば少なからずその片鱗を見せてもおかしくないはずだ。な、何がどうなっているのだ・・・おかしい、なにもかもがおかしい。
 魔王は滝のような汗を流しながら考え続ける。

 ソルは魔王へ最後の言葉を投げかける。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界でネットショッピングをして商いをしました。

ss
ファンタジー
異世界に飛ばされた主人公、アキラが使えたスキルは「ネットショッピング」だった。 それは、地球の物を買えるというスキルだった。アキラはこれを駆使して異世界で荒稼ぎする。 これはそんなアキラの爽快で時には苦難ありの異世界生活の一端である。(ハーレムはないよ) よければお気に入り、感想よろしくお願いしますm(_ _)m hotランキング23位(18日11時時点) 本当にありがとうございます 誤字指摘などありがとうございます!スキルの「作者の権限」で直していこうと思いますが、発動条件がたくさんあるので直すのに時間がかかりますので気長にお待ちください。

願いの守護獣 チートなもふもふに転生したからには全力でペットになりたい

戌葉
ファンタジー
気付くと、もふもふに生まれ変わって、誰もいない森の雪の上に寝ていた。 人恋しさに森を出て、途中で魔物に間違われたりもしたけど、馬に助けられ騎士に保護してもらえた。正体はオレ自身でも分からないし、チートな魔法もまだ上手く使いこなせないけど、全力で可愛く頑張るのでペットとして飼ってください! チートな魔法のせいで狙われたり、自分でも分かっていなかった正体のおかげでとんでもないことに巻き込まれちゃったりするけど、オレが目指すのはぐーたらペット生活だ!! ※「1-7」で正体が判明します。「精霊の愛し子編」や番外編、「美食の守護獣」ではすでに正体が分かっていますので、お気を付けください。 番外編「美食の守護獣 ~チートなもふもふに転生したからには全力で食い倒れたい」 「冒険者編」と「精霊の愛し子編」の間の食い倒れツアーのお話です。 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2227451/394680824

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

処理中です...