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死神さん。
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最初に触れたのは、膝下くらいまで浸かる、生温い水だった。
ありえないくらい透き通っていたのを覚えてる。
私は中学校の制服姿に、身を包んでいた。
あたりをゆっくり見渡す。
その水の両端にはとても遠いながらも、岸があった。
辺りは白い霧に覆われていてぼやけはているが、ちろちろと見える。
私は、とりあえず足を運ぶ。
重い水の中を、ジャプン。ジャプン。と。足を高くあげて。
あの岸をめがけて。
なんで私はこんなところにいるのだろうか。
少し意識もぼんやりとしながら、進む。
「ねぇ。」
突然頭上から、声がしてきた。ふと見上げると、
黒いボロボロの布のようなものに身を包み、
下はガウチョパンツのような黒のズボン。靴は黒いブーツ。ズボンと靴の間の肌は真っ白だ。黒なので余計際立つ。
髪の毛は全体的に黒っぽい茶。
前髪は左に流しめで、右はピンで止めてある。
全体的に緩やかなウェーブがかったふんわりとした髪型だ。
フードのようなものをかぶっており、
身長は、170くらい。目が赤かった。
口は猫のようにふニャンとしている。全体的にほっそりとしている男性だった。
だが、決定的に普通の人とは違う点があった。
右手に鎌を持っているのだ。
「何じーっと見てるの。」
私は愕然とした。
多分顔に出ているだろう。
てか、そんな鎌持ってる人に普通に話しかけられるか。
「あー、これ?レーヴァテインって言うんだよねー前にお店行った時一目惚れしてさー」
心読まれてるのか、私は。
「さっきっから声出てるよ?」
「ファッ!?」
私は少し後ろに引き下がる。
男も引き下がる私に合わせて近寄る。
「えー、気がついてなかったの?ウケる。」
クスクスと笑う。
私は少し腹が立ったので話を切り出した。
「ここはどこですか?」
彼を睨むように見た。
「そんな敵対心丸出しにしなくても……ここは、三途の川のど真ん中だよ。」
……。は?
今三途の川と言った。
三途の川なんて、漫画でしか聞いたことのない、言わば、絵本の世界的な夢のところだぞ!?
てかあの世なんてほんとにあるのか?
「やっぱ混乱しちゃったよ。めんどー。」
「どういう事ですか、なんかの撮影ですか?」
「なんかの撮影だとしても、こんなに綺麗な場所、日本にはないでしょ。」
「じゃあ何なんですか!?」
彼は後頭部を掻きむしり、少し顔をこわばらせて言った。
「そろそろ気がついたら?あんた、死んだんだよ。」
……唾を飲む。目を見開く。身体が熱くなる。
「死んだ?」
私は彼にに連れられて、彼の家?に着いた。
家は質素で、なんか、スタイリッシュだけど、こじんまりとした一軒家だった。
「説明してあげる。ここにずっといるのは俺にとっても都合悪いし、」
この一言だけを聞いたら、私は意識が遠のき、気がついたら、家の目の前。
どうやってきたのかは、よく分からなかった。
「どーぞ」
玄関を開けてもらい、中に入る。
「お邪魔します。」
玄関を通り、リビングに入る。中はモノトーンの家具でいっぱいで、スッキリとしていた。
二階は吹き抜けで、広い。
あたりを見回していた私に「座ってていいよ。あ、汚さないでね。」
と言って彼はキッチンへと向かった。鎌は玄関へと立てかけたようだ。
私は二人用ソファに腰掛けた。
ふんわりとしていて、座った瞬間にスパイシーな香りがした。ミントのような爽快感のある香りだ。ソファーの前には机とテレビまでもがあり、
家の中はまんま「一般的」な感じだった。
「あまり現世と変わらないでしょ?」
彼が隣に座ってきた。机の上にはいつの間にか、飲み物と摘めるくらいのお菓子が置いてあった。
「は、はい。」
私は、あまり顔を合わせられずにいた。
チラチラと見る感じだ。ただの変人だ、と、自分で強く思った。
「俺、一般的大好きだからね。落ち着くんだよ。こういう方が。」
私がさっき思ったことだ、知ったことのように言う。
「また心読みましたか?」
「俺、心読めないもん。」
「嘘つけ。私が慌てたことも分かってたじゃないですか。」
少し強気で問う。
「顔見ればわかる。だってあんた、慌てるとすぐ目が泳ぐんだもん。他にも、珍しいもの、驚いたもの、そういうの見ても泳ぐよね。」
自分でも気が付かなかったことを指摘されて、少し戸惑う。
「ほらまた。」
「……なんか悔しいですね」
「変なとこで負けず嫌い。そこも面白い。」
またクスクスと笑う。
もう苛立ちなんて起きなかった。
「……なんで私は三途の川にいたんですか?」
私は彼に聞いた。もう真剣な話だ。
すると彼も、その私の気持ちを察したかのように顔色を変えた。
「船から落とされとんだよ。」
船?
私は顔を顰めた。
彼は話を続ける。
「三途の川を渡るには船がいる。まぁ、重い罪を犯した人は自分で渡るけど。あんたの場合、多分短い生涯だったから、船が供給されたんだと思う。でも、乗せられない条件があった。」
私は彼の話をついていけるだけついていこうと、話に食いついた。そして彼は、一息置いて言った。
「それは『心残り』だと、俺は思う。」
「心残り……?……」
私の心残り。
正直、考えても浮かばなかった。
あんな世界に心残りもクソもない。
「まぁ、浮かばないよねー。俺もあったよーそういう時期」
彼は後ろに手を組み、さらに深くソファーに寄りかかった。
「え?そういう時期ってことは……」
「まぁ、それはそれとしてさ。」
「あ、はい。」
彼は空を仰ぎながらに話し始めた。
「そうなると、厄介なのはあんたのこれからなんだよ。」
「私のこれから?」
私は首を傾げる。彼は言葉を続けた。
「このまんま三途の川に留まれたら、あんたは一生成仏できない。んでまた現世に戻って幽霊と化して過ごすことになる。まぁ、現世を学校で例えると補習ってとこですね。」
そういう感じでみじかな言葉で言ってもらえると本当に助かります。やっと話が見えてきた。
それを見透かしたかのように彼は笑った。次は、爽やかに。
「そいで、幽霊にも様々な種類があるの。地縛霊、浮遊霊、その他もろもろ。いちばん厄介なのが悪霊の類ね。」
「悪霊……」
「幽霊ってある程度の期間をすぎても心残りがあったり、念が強すぎたりすると、悪霊になるんだよ。そいで、生きてる人間を殺そうとするやつまで出てくる。それは俺らにとっても邪魔で邪魔で。」
「……で?」
彼は急に止まった、そして一言。
「……ちょっと休憩させて、疲れた」
「あっ、はい。」
彼は少し飲み物を口に含み、また話を再開させる。
「あんたは今、それになりかねないでしょ?人間の時間と幽霊の時間って感じ方が違うの。あっちはまだ生きてるから少し長いけどこっちは死んでるからね。あんたの今の状態じゃ絶対1人で成仏はむり。だから、提案。」
彼は立ち上がり、私の前に立ったと思ったら、私の目線に合わせて、しゃがみ込んだ。
「俺の助手になってよ。」
「じょひゅ!?、」
勢い余って噛んでしまった。
彼はにやりと笑った。
その笑顔には明らかにブラックが入っている。
ホワイトなんて一割もない。
「そう。助手さん。君みたいな幽霊って初めてなんだよねー
三途の川のど真ん中でぼーっと突っ立ってるの。」
「ん、突っ立ってたくて、突っ立ってたんじゃないですけど。」
少しむすっとした態度をとる。多分、ここまで私の態度は最悪に等しいであろう。
「分かってるわかってる。そんで、このまんま君離してもさっき言ったように、自分じゃ成仏出来ないでしょ?だったらさ、俺と一緒にいた方が、君の将来的にも、俺的にも楽なんだよね」
彼は目を輝かせてこう言った。
「俺と一緒に、「死神」やろーよ。」
そう。俺は死神。
それだけど、彼女を助けに来たんだよ。
彼女は三途の川のど真ん中でぼーっとしてたのにも関わらず、
三途の川の主に襲われなかった。
それは、彼女には多分特別な力があるからだ。
霊感ではなく、特別な、なにかの力。
どこで発揮されるのかは分からないけど。俺はそれを見てみたい。まぁ、好奇心ってやつですね。
彼女は死んだはずなのに生気さえ感じられる。
これからが楽しみだな。
彼女はキョトンとして目をぱちくりさせた。
「あ、えーとー……死神って?」
そのまんまだよ?
俺は微笑む
「俺は死神なの。まぁ、仕事はある程度わかるでしょ?鎌持ってたし。魂を天に運ぶ仕事。そして、悪霊だの幽霊だのを退治する。」
彼女の顔は少しづつ歪んでいった。
まぁ、無理もない。俺も最初はこんな感じだったよ。
「あんたも対象になりかねないし、俺はあんたを助けたいんだよ、お願い。」
強ばった彼女の右頬を片手で包み、そして、顎へと進める。
彼女はぴくぴくとした。
だんだんと顔も赤くなっていく。
「ねぇ?どうなの?」
少し吐息多めに呟いてみた。
彼女は暗示をかけられたかのようだった。
目はおっとりとして、
力も抜けていって遂にはソファーに寄りかかった。
実質俺はなんもしてない。
そんな力なんてないし。
そして彼女は言った。
「私にそんなこと出来ない。私はダメで、嫌われ者で、不器用で可愛げなんてないクズだから。」
少ししどろもどろしすぎ。イラついたのもあったし、
だから俺、言ってやったんだ。
「可愛げが無いとか、嫌われ者とか、不器用とか、クズとか、ダメとか、大歓迎。死神に全部当てはまってるよ!おめでとう!」
と。
彼女はとろんとした目から、一気に夢から覚めたような目になった。
「死神なんて誰でもなれるよ。というか、いちいちうるさい。俺がなれって言ってんだからなれよ。なに?俺じゃ不満?」
俺はわざと自虐してみた。
お、目が泳ぎ出した。
「そんな、事、無い。私のこと助けてくれたし……」
きっと頭と心の中ではいろんなこと考えてんだろうな。
それを口に出すのが苦手な子なんだろう。
少しずつ分かってきた。
「じゃあ、やってくれる?」
また、吐息多め攻撃。トドメの必殺!
彼女は少し考え込んで、
その重い口を開いたんだ。
「……やらせて下さい。」
ってね。吐息強い笑
続く
ありえないくらい透き通っていたのを覚えてる。
私は中学校の制服姿に、身を包んでいた。
あたりをゆっくり見渡す。
その水の両端にはとても遠いながらも、岸があった。
辺りは白い霧に覆われていてぼやけはているが、ちろちろと見える。
私は、とりあえず足を運ぶ。
重い水の中を、ジャプン。ジャプン。と。足を高くあげて。
あの岸をめがけて。
なんで私はこんなところにいるのだろうか。
少し意識もぼんやりとしながら、進む。
「ねぇ。」
突然頭上から、声がしてきた。ふと見上げると、
黒いボロボロの布のようなものに身を包み、
下はガウチョパンツのような黒のズボン。靴は黒いブーツ。ズボンと靴の間の肌は真っ白だ。黒なので余計際立つ。
髪の毛は全体的に黒っぽい茶。
前髪は左に流しめで、右はピンで止めてある。
全体的に緩やかなウェーブがかったふんわりとした髪型だ。
フードのようなものをかぶっており、
身長は、170くらい。目が赤かった。
口は猫のようにふニャンとしている。全体的にほっそりとしている男性だった。
だが、決定的に普通の人とは違う点があった。
右手に鎌を持っているのだ。
「何じーっと見てるの。」
私は愕然とした。
多分顔に出ているだろう。
てか、そんな鎌持ってる人に普通に話しかけられるか。
「あー、これ?レーヴァテインって言うんだよねー前にお店行った時一目惚れしてさー」
心読まれてるのか、私は。
「さっきっから声出てるよ?」
「ファッ!?」
私は少し後ろに引き下がる。
男も引き下がる私に合わせて近寄る。
「えー、気がついてなかったの?ウケる。」
クスクスと笑う。
私は少し腹が立ったので話を切り出した。
「ここはどこですか?」
彼を睨むように見た。
「そんな敵対心丸出しにしなくても……ここは、三途の川のど真ん中だよ。」
……。は?
今三途の川と言った。
三途の川なんて、漫画でしか聞いたことのない、言わば、絵本の世界的な夢のところだぞ!?
てかあの世なんてほんとにあるのか?
「やっぱ混乱しちゃったよ。めんどー。」
「どういう事ですか、なんかの撮影ですか?」
「なんかの撮影だとしても、こんなに綺麗な場所、日本にはないでしょ。」
「じゃあ何なんですか!?」
彼は後頭部を掻きむしり、少し顔をこわばらせて言った。
「そろそろ気がついたら?あんた、死んだんだよ。」
……唾を飲む。目を見開く。身体が熱くなる。
「死んだ?」
私は彼にに連れられて、彼の家?に着いた。
家は質素で、なんか、スタイリッシュだけど、こじんまりとした一軒家だった。
「説明してあげる。ここにずっといるのは俺にとっても都合悪いし、」
この一言だけを聞いたら、私は意識が遠のき、気がついたら、家の目の前。
どうやってきたのかは、よく分からなかった。
「どーぞ」
玄関を開けてもらい、中に入る。
「お邪魔します。」
玄関を通り、リビングに入る。中はモノトーンの家具でいっぱいで、スッキリとしていた。
二階は吹き抜けで、広い。
あたりを見回していた私に「座ってていいよ。あ、汚さないでね。」
と言って彼はキッチンへと向かった。鎌は玄関へと立てかけたようだ。
私は二人用ソファに腰掛けた。
ふんわりとしていて、座った瞬間にスパイシーな香りがした。ミントのような爽快感のある香りだ。ソファーの前には机とテレビまでもがあり、
家の中はまんま「一般的」な感じだった。
「あまり現世と変わらないでしょ?」
彼が隣に座ってきた。机の上にはいつの間にか、飲み物と摘めるくらいのお菓子が置いてあった。
「は、はい。」
私は、あまり顔を合わせられずにいた。
チラチラと見る感じだ。ただの変人だ、と、自分で強く思った。
「俺、一般的大好きだからね。落ち着くんだよ。こういう方が。」
私がさっき思ったことだ、知ったことのように言う。
「また心読みましたか?」
「俺、心読めないもん。」
「嘘つけ。私が慌てたことも分かってたじゃないですか。」
少し強気で問う。
「顔見ればわかる。だってあんた、慌てるとすぐ目が泳ぐんだもん。他にも、珍しいもの、驚いたもの、そういうの見ても泳ぐよね。」
自分でも気が付かなかったことを指摘されて、少し戸惑う。
「ほらまた。」
「……なんか悔しいですね」
「変なとこで負けず嫌い。そこも面白い。」
またクスクスと笑う。
もう苛立ちなんて起きなかった。
「……なんで私は三途の川にいたんですか?」
私は彼に聞いた。もう真剣な話だ。
すると彼も、その私の気持ちを察したかのように顔色を変えた。
「船から落とされとんだよ。」
船?
私は顔を顰めた。
彼は話を続ける。
「三途の川を渡るには船がいる。まぁ、重い罪を犯した人は自分で渡るけど。あんたの場合、多分短い生涯だったから、船が供給されたんだと思う。でも、乗せられない条件があった。」
私は彼の話をついていけるだけついていこうと、話に食いついた。そして彼は、一息置いて言った。
「それは『心残り』だと、俺は思う。」
「心残り……?……」
私の心残り。
正直、考えても浮かばなかった。
あんな世界に心残りもクソもない。
「まぁ、浮かばないよねー。俺もあったよーそういう時期」
彼は後ろに手を組み、さらに深くソファーに寄りかかった。
「え?そういう時期ってことは……」
「まぁ、それはそれとしてさ。」
「あ、はい。」
彼は空を仰ぎながらに話し始めた。
「そうなると、厄介なのはあんたのこれからなんだよ。」
「私のこれから?」
私は首を傾げる。彼は言葉を続けた。
「このまんま三途の川に留まれたら、あんたは一生成仏できない。んでまた現世に戻って幽霊と化して過ごすことになる。まぁ、現世を学校で例えると補習ってとこですね。」
そういう感じでみじかな言葉で言ってもらえると本当に助かります。やっと話が見えてきた。
それを見透かしたかのように彼は笑った。次は、爽やかに。
「そいで、幽霊にも様々な種類があるの。地縛霊、浮遊霊、その他もろもろ。いちばん厄介なのが悪霊の類ね。」
「悪霊……」
「幽霊ってある程度の期間をすぎても心残りがあったり、念が強すぎたりすると、悪霊になるんだよ。そいで、生きてる人間を殺そうとするやつまで出てくる。それは俺らにとっても邪魔で邪魔で。」
「……で?」
彼は急に止まった、そして一言。
「……ちょっと休憩させて、疲れた」
「あっ、はい。」
彼は少し飲み物を口に含み、また話を再開させる。
「あんたは今、それになりかねないでしょ?人間の時間と幽霊の時間って感じ方が違うの。あっちはまだ生きてるから少し長いけどこっちは死んでるからね。あんたの今の状態じゃ絶対1人で成仏はむり。だから、提案。」
彼は立ち上がり、私の前に立ったと思ったら、私の目線に合わせて、しゃがみ込んだ。
「俺の助手になってよ。」
「じょひゅ!?、」
勢い余って噛んでしまった。
彼はにやりと笑った。
その笑顔には明らかにブラックが入っている。
ホワイトなんて一割もない。
「そう。助手さん。君みたいな幽霊って初めてなんだよねー
三途の川のど真ん中でぼーっと突っ立ってるの。」
「ん、突っ立ってたくて、突っ立ってたんじゃないですけど。」
少しむすっとした態度をとる。多分、ここまで私の態度は最悪に等しいであろう。
「分かってるわかってる。そんで、このまんま君離してもさっき言ったように、自分じゃ成仏出来ないでしょ?だったらさ、俺と一緒にいた方が、君の将来的にも、俺的にも楽なんだよね」
彼は目を輝かせてこう言った。
「俺と一緒に、「死神」やろーよ。」
そう。俺は死神。
それだけど、彼女を助けに来たんだよ。
彼女は三途の川のど真ん中でぼーっとしてたのにも関わらず、
三途の川の主に襲われなかった。
それは、彼女には多分特別な力があるからだ。
霊感ではなく、特別な、なにかの力。
どこで発揮されるのかは分からないけど。俺はそれを見てみたい。まぁ、好奇心ってやつですね。
彼女は死んだはずなのに生気さえ感じられる。
これからが楽しみだな。
彼女はキョトンとして目をぱちくりさせた。
「あ、えーとー……死神って?」
そのまんまだよ?
俺は微笑む
「俺は死神なの。まぁ、仕事はある程度わかるでしょ?鎌持ってたし。魂を天に運ぶ仕事。そして、悪霊だの幽霊だのを退治する。」
彼女の顔は少しづつ歪んでいった。
まぁ、無理もない。俺も最初はこんな感じだったよ。
「あんたも対象になりかねないし、俺はあんたを助けたいんだよ、お願い。」
強ばった彼女の右頬を片手で包み、そして、顎へと進める。
彼女はぴくぴくとした。
だんだんと顔も赤くなっていく。
「ねぇ?どうなの?」
少し吐息多めに呟いてみた。
彼女は暗示をかけられたかのようだった。
目はおっとりとして、
力も抜けていって遂にはソファーに寄りかかった。
実質俺はなんもしてない。
そんな力なんてないし。
そして彼女は言った。
「私にそんなこと出来ない。私はダメで、嫌われ者で、不器用で可愛げなんてないクズだから。」
少ししどろもどろしすぎ。イラついたのもあったし、
だから俺、言ってやったんだ。
「可愛げが無いとか、嫌われ者とか、不器用とか、クズとか、ダメとか、大歓迎。死神に全部当てはまってるよ!おめでとう!」
と。
彼女はとろんとした目から、一気に夢から覚めたような目になった。
「死神なんて誰でもなれるよ。というか、いちいちうるさい。俺がなれって言ってんだからなれよ。なに?俺じゃ不満?」
俺はわざと自虐してみた。
お、目が泳ぎ出した。
「そんな、事、無い。私のこと助けてくれたし……」
きっと頭と心の中ではいろんなこと考えてんだろうな。
それを口に出すのが苦手な子なんだろう。
少しずつ分かってきた。
「じゃあ、やってくれる?」
また、吐息多め攻撃。トドメの必殺!
彼女は少し考え込んで、
その重い口を開いたんだ。
「……やらせて下さい。」
ってね。吐息強い笑
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