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たまごぱんに隠し味
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我が家は父子家庭だ。
母は身体が弱く1年前に他界した。
優しい人だった。
母が亡くなってからは、父が毎朝キッチンに立ってお弁当の準備をしてくれていた。
女子高生なんだから私が作るよ、と言っても
「いや、作りたいから作るんだ」
言い出したら聞かない。
パジャマに寝癖の髪、眠気の残る顔。母の愛用していたエプロンを身につけてお弁当を作ってくれている。
* * *
午前授業が終わってランチタイム。
お弁当箱を開くと、今日は、ロールパンにたまごとレタス、ウインナーが挟まった“たまごぱん”が3つ並んでいた。
これは、母の得意としていた料理のひとつだ。
マヨネーズと塩胡椒の塩梅がとても良い“たまごぱん”
少し甘めに仕上げてあるのが母の味。
母が亡くなってから、父はこの味付けを再現しようと努力していた。
時々こうしてお弁当に入れてくれて、私を喜ばせてくれる。
「いただきます!」
手を合わせて、
がぶっと“たまごぱん”をひと齧り…
「ん!」
思わず声が出て鼻にツンと来る辛さに眉根を寄せた。
「どうしたの?」
一緒にお弁当を食べている彼氏が心配する。
「あ、うん…“たまごぱん”に予想外の“辛子”が入っててびっくりした」
「隠し味かな?」
(そういえば…)
昨日、『彼氏ができた』という事実をスマホが原因で父に知られたばかり。
何も隠そうとしていたわけではない。
話そうと思って、きっかけを考えていた矢先だった。
(お父さん、黙っていたことに…いじけたんだ!)
“たまごぱん”の予想外の辛さに涙と鼻水が出てきた。
彼氏がポケットからハンカチを取り出して「はい、どうぞ」と渡してくれる。
きっかけは“たまごぱん”一択。
迷うことは無い。
* * *
家に帰ったら全力。
空のお弁当箱をきれいに洗い流して、ハンカチを貸してくれた彼氏の話を父にしよう。
いっぱい、話をしよう。
-fin-
母は身体が弱く1年前に他界した。
優しい人だった。
母が亡くなってからは、父が毎朝キッチンに立ってお弁当の準備をしてくれていた。
女子高生なんだから私が作るよ、と言っても
「いや、作りたいから作るんだ」
言い出したら聞かない。
パジャマに寝癖の髪、眠気の残る顔。母の愛用していたエプロンを身につけてお弁当を作ってくれている。
* * *
午前授業が終わってランチタイム。
お弁当箱を開くと、今日は、ロールパンにたまごとレタス、ウインナーが挟まった“たまごぱん”が3つ並んでいた。
これは、母の得意としていた料理のひとつだ。
マヨネーズと塩胡椒の塩梅がとても良い“たまごぱん”
少し甘めに仕上げてあるのが母の味。
母が亡くなってから、父はこの味付けを再現しようと努力していた。
時々こうしてお弁当に入れてくれて、私を喜ばせてくれる。
「いただきます!」
手を合わせて、
がぶっと“たまごぱん”をひと齧り…
「ん!」
思わず声が出て鼻にツンと来る辛さに眉根を寄せた。
「どうしたの?」
一緒にお弁当を食べている彼氏が心配する。
「あ、うん…“たまごぱん”に予想外の“辛子”が入っててびっくりした」
「隠し味かな?」
(そういえば…)
昨日、『彼氏ができた』という事実をスマホが原因で父に知られたばかり。
何も隠そうとしていたわけではない。
話そうと思って、きっかけを考えていた矢先だった。
(お父さん、黙っていたことに…いじけたんだ!)
“たまごぱん”の予想外の辛さに涙と鼻水が出てきた。
彼氏がポケットからハンカチを取り出して「はい、どうぞ」と渡してくれる。
きっかけは“たまごぱん”一択。
迷うことは無い。
* * *
家に帰ったら全力。
空のお弁当箱をきれいに洗い流して、ハンカチを貸してくれた彼氏の話を父にしよう。
いっぱい、話をしよう。
-fin-
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