イクメン召喚士の手記

まぽわぽん

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42『歪みと亀裂は』の書

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魔物はに敏感だ。
その筆頭が"勇者"であり、勇者の痕跡が色濃く残る場所や物、人物にも該当する。
あとはにも…。
持つべき本能が、より強い魔力に惹かれるのか。

空間に"歪み"が現れると亀裂が入る。何にしても、魔物はそれらに誘導されて世界に召喚されていた。

「市街地よりも宮廷の彼方此方あちらこちらに"歪み"が現れるのは、とても興味深いものだがね」

宮廷魔術士の木蓮モクレンは広大な敷地を歩きながら、報告されている"歪み"に防御魔法を施していた。魔法を駆使すれば、消滅とまでは行かないが亀裂が入るのを遅らせることが可能だと、実験結果で周知されている。

「何故こうも頻繁に魔物を感じるのか…実に面白いよ」

"勇者"最終選抜試験で、命より大切な"転生者加護"に手を下そうとした『宮廷』に思うのは、激怒。

仕返しを考えたくなるじゃない?

イライラした気持ちで、加護が"勇者候補"を辞したあと"召喚士"から現職に転職した。元々が魔法の使い手でもあったので、すんなりと宮廷には潜入できたが。

さて、
"世界を危機に陥れる歪み"を放置していていいわけではないけれど…ね。

一箇所のスルー。
報告されていない"歪み"から、赤黒い光線が時おり姿を見せは亀裂を徐々に広げていた。
魔物が此処を越えるのは、まだまだ先の見通しである。
注目したいのは、越えてくる魔物を誰が求めているのか?魔物は何処に向かうのか?今はそれだけ。

木蓮は程度の状態を視認すると踵を返した。
…が、

「こんな敷地の隅でコソコソと散歩か?宮廷魔術士よ」

威圧的な声に立ち止まる。
濃紺の外套に紅水晶のピアスを身に付けた男が立ち塞がっていた。否が応でも顔が広く知れた宮廷騎士団長だ。

「コソコソ?慎重に、の間違いではないのかな。それに、残念ながら散歩ではなく仕事の最中なんだけれどね。僕に用事かい?」
「話が早くていい。貴様の所持する奴隷は息災かと思ってな」

一瞬の絶句。
動揺したことを歯噛みする。

「…訊かれる意味がわからない。宮廷騎士団長のきみには何ら関係ないと思うけれどね。僕の愛し子については」
「愛し子?ハッ、冗談はよさないか。奴隷はゴミの端くれだ。…まぁいい。俺は無駄話は好きじゃない、要件を言おう。
貴様の奴隷がどんなゴミか、いずれにしろ処分する前に確認したいと俺の主人が求めている。女帝陛下の要望だ。理解は得られるな?」

この男も奴隷。その主人は"世界皇帝陛下"だ。
陛下の腰に下げた剣は、常に不可思議な気配を纏っていた。魔物が敏感となる魅了の類いに共通した気配を。
…警戒はしていた。疑惑の矛先は自然と向いていたものだが、

「理解だって?」

即ち"命令"
木蓮は一笑に伏した。
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