お嬢様と魔法少女と執事

星分芋

文字の大きさ
上 下
125 / 164

第五十話②『彼の行動』

しおりを挟む


 兜悟朗とうごろうとの放課後の時間がとても充実感で満たされ、嶺歌れかは帰宅してからもその幸せを噛み締めていた。

 彼と二人きりで過ごす時間が増えている事に喜びを感じながら兜悟朗の顔を鮮明に思い浮かべる。

(大好きです……)

 目を閉じて彼に心の中で告白をする。

 瞼の中に映る兜悟朗は優しく微笑みながら、光栄で御座いますと口にして綺麗な一礼を返してくる。最近はそんな妄想をする事が増えていた。



 予想外な事に兜悟朗はそれ以降も高頻度で嶺歌に会いにきてくれていた。

 しかしあの日以降は、突然校門前に現れるという事はなく、今朝の内に必ず兜悟朗本人からレインで連絡が入るようになっていた。

 嶺歌は意中の相手からのレインに胸を高鳴らせるのと同時に、お誘いまでもらえるというまるでご褒美のような二点セットがとても嬉しく、毎日のように兜悟朗とのやり取りを見返している程だった。

兜悟朗とうごろうには最近、たくさん休みを取るよう背中を押しましたの! 効果は絶大ですのね!!』

 形南あれなと話をした際に嶺歌れかは彼女にそんな話を聞いた。形南のその気持ちも、兜悟朗が行動をしてくれた気持ちも純粋に嬉しい。

 嶺歌は形南に感謝の言葉を述べながら、最近の平尾との進展具合を聞いてみた。

「もうキスはしたんだよね? どうだった??」

 しかし形南はまあ! と声を出しながら全力で否定の声を出してきた。

「そのような事はまだですのっ!! いやですわ、嶺歌ってば」

 形南は嬉しそうに興奮した様子でそう口にする。妄想して気分が高まっているのかもしれない。

 だが嶺歌はとっくにしているであろうと思っていたため意表をつかれた気分だった。

「告白したらすると思ってたわ、あれなはまだしたくないの?」

 素朴な疑問をぶつけてみると、形南は尚も嬉しそうな声で『勿論したいですの!』と即答する。そうしてそのまま言葉を続けた。

『そのような行いに躊躇いはありませんのよ、恋人同士なのですからお父様も容認なさって下さるでしょう。ですが、正様のタイミングに合わせたいのですの』

 形南は平尾と付き合い始めてから彼の事を下の名で呼ぶようになっていた。

 それが嶺歌にはとても微笑ましく、嬉しい事に思える。

 スキンシップの進展はカップルそれぞれだ。それゆえに嶺歌もこれ以上の野暮な言葉を口にするのは控える事にした。形南と平尾のペースで少しずつ絆を深める事が一番いいに決まっている。

「そっか、あれならしいね。進展したら絶対教えてよ」

 嶺歌はそう言って笑う。形南の方も電話口で笑みをこぼしてくれているのが声の調子で分かった。

 形南達が付き合い始めて間もない頃、形南には平尾との付き合った時の経緯を既に事細かく聞いていた。

 平尾の方から告白をしたという点にとても驚いたが、以前彼がクラスメイトの前で堂々と発言した姿を思い出し直ぐに納得をしていた。彼はここぞという時にやる男だと嶺歌も平尾の印象を改めているからだ。

 親友と友人の二人の吉報を喜んだ後は、嶺歌も兜悟朗への想いに時間を費やす。

 考えようと思わなくても自然と彼の事を考えてしまう。兜悟朗も嶺歌の事をそんな風に思ってくれる日が、いつかは来てくれるのだろうか。

(あたし次第だよね)

 彼が嶺歌の事を異性として見てくれているのかは不明のままだ。だがそれでも待つだけというのは自分の性に合わない。

 嶺歌は少しでも彼に意識してもらえるようにと再度、気持ちを強く固めるのであった。


第五十話『彼の行動』終

            next→第五十一話
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

不人気プリンスの奮闘 〜唯一の皇位継承者は傍系宮家出身で、ハードモードの無理ゲー人生ですが、頑張って幸せを掴みます〜

田吾作
青春
21世紀「礼和」の日本。皇室に残された次世代の皇位継承資格者は当代の天皇から血縁の遠い傍系宮家の「王」唯一人。  彼はマスコミやネットの逆風にさらされながらも、仲間や家族と力を合わせ、次々と立ちはだかる試練に立ち向かっていく。その中で一人の女性と想いを通わせていく。やがて訪れる最大の試練。そして迫られる重大な決断。  公と私の間で彼は何を思うのか?

黄昏は悲しき堕天使達のシュプール

Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・  黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に  儚くも露と消えていく』 ある朝、 目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。 小学校六年生に戻った俺を取り巻く 懐かしい顔ぶれ。 優しい先生。 いじめっ子のグループ。 クラスで一番美しい少女。 そして。 密かに想い続けていた初恋の少女。 この世界は嘘と欺瞞に満ちている。 愛を語るには幼過ぎる少女達と 愛を語るには汚れ過ぎた大人。 少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、 大人は平然と他人を騙す。 ある時、 俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。 そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。 夕日に少女の涙が落ちる時、 俺は彼女達の笑顔と 失われた真実を 取り戻すことができるのだろうか。

日給二万円の週末魔法少女 ~夏木聖那と三人の少女~

海獺屋ぼの
ライト文芸
ある日、女子校に通う夏木聖那は『魔法少女募集』という奇妙な求人広告を見つけた。 そして彼女はその求人の日当二万円という金額に目がくらんで週末限定の『魔法少女』をすることを決意する。 そんな普通の女子高生が魔法少女のアルバイトを通して大人へと成長していく物語。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

スカートなんて履きたくない

もちっぱち
青春
齋藤咲夜(さいとうさや)は、坂本翼(さかもとつばさ)と一緒に 高校の文化祭を楽しんでいた。 イケメン男子っぽい女子の同級生の悠(はるか)との関係が友達よりさらにどんどん近づくハラハラドキドキのストーリーになっています。 女友達との関係が主として描いてます。 百合小説です ガールズラブが苦手な方は ご遠慮ください 表紙イラスト:ノノメ様

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...