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第七章 終わりという名の始まり
210 長い階段 ディオスside
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ディオスが階段を下りていくと上の階で、激しい爆発音がした。
「アス??ジークハルトか??…大丈夫かなぁ…アス…」
きちんと逃げてくれるといいのだけどと不安に思いながらディオスははやくラスティを連れてアスの所に戻らないとと階段を下る。
「…妙に長いな……」
先が見えない螺旋階段。
まるで闇に落ちていくよう。
奇妙な感覚に、これは妖精の惑わしの魔法かと顔をしかめる。
上の花園から下は妖精の領域なのだろう。
アスの眷属である妖精たちは、ラスティを守るためにこの階段に惑わしの魔法をかけたのか。
そもそもかかっているのかは、ディオスにもわからない。
進んでいる感覚はあるがそれも惑わされているかもしれない。
「…まぁ…アスの所に戻されるならアスを今度はアスを連れて行けばいいし…最悪…階段使わず落ちれば行けないかな…」
ディオスはそう言いながらため息をつく。
知識はある。
妖精の惑わしについての。
迷っているから惑わされるのだ。
「俺が未だに迷っているからか。」
妖精の使う、惑わしの魔法は人の心に作用する。
ディオスが未だに迷っているから進まないのだ。
人の精神に作用しているというなら、ディオスは自分はずっと足踏みでもしているのだろうかと第三者視点を考えて吹き出しそうになる。
上の階でのアスの瞳は、ラスティと同じ顔で別の金の瞳が自分を見た時怒られた気がした。
ー あんた馬鹿ですか!!!
声なき彼の罵声が聞こえて気がする。
実際、怒っていたしそのくらい怒っていたと思う。
ジークハルトに押し付けて逃げてしまった彼には後でしっかり怒られよう。
ー 今更迷ってどうするんですか!!
ー 覚悟を決めなさい!!
アスの声で再生されるそれに苦笑する。
今、彼は自分どころではないだろう。
暴走したジークハルトを止めるので必死のはずだ。
この声は、自分が求めている妄想だ。
上から爆発音がする。
妙に爆発音が何度も響いているが、魔力のそれがアスではなくノルンだとディオスは感じる。
「…まずいな…」
ここでだらだらしているのをノルンにバレたらジークハルトと同じ…いや、それ以上の目に合うだろう。
といってすぐに覚悟が決まるかと言うと決まらない。
何を怖がっているのかと思いながらも少し足を止めて目を閉じる。
ラスティのことをゆっくり考えてみる。
どうしたいのか。
そう思っているとアスの声で再生されるそれに苦笑する。
ー 離れていいの?
ー いなくなっていいの?
ー 寂しいくせに。
ー 狂気に染まる程…おかしくなるくせに。
それがラスティのためでも?
ー 嘘つき。
ー 自分のためでしょ?
ー 自分が可愛いいから。
ー 自分が変わるのが怖いから。
そうやって、「また」見捨てるのか?
アスの声がいつの間にかディオスの声に変っていた。
そうアスの声ではないのだ。
自分を責めているのはやはり自分で、自分が可愛いからこうやって立ち止まっているだけだった。
「私は確かに…獣なんだ。醜い獣なんだよ。」
怖いさとディオスは思う。
自分の醜い本性を知って、知られてラスティに…アスに…皆に拒絶されるのが。
「溺れるだろう…何も王としての責務もほおりだしてしまうかもしれない。」
だから、怖いとディオスはため息をつく。
決めたのに、まだ怖がってる。
迷っている。
「そんな…母上も好きですけど…父上を待たせすぎですよ。」
肩に小さな気配。
ゆっくりと目を開けると先に光が見えた。
闇に落ちていくような螺旋階段は普通の階段になっていた。
金色の鳥が肩に鎮座している。
「そんなことだろうと思って使い魔を飛ばしたんです。ジークハルトとノルンが戦って大変なのでさっさと行きましょう。」
小鳥はディオスを促す。
ディオスは首を傾げた。
「…本体はどうなってるの?」
ディオスの言葉にアスはため息をついた。
「ジークハルトとノルンの戦闘の中心にいるのですよ…気絶の一つくらいします。」
意識を全て小鳥の使い魔に移動させたのかとディオスはため息をつく。
そんなことをしたら体に戻れなくなる可能性もある。
「ええ、自力で戻れませんので母上と父上の用事をはやく終わらせて助けてください。まぁ…できせば戦闘狂同士の戦いも長く続きそうなのでそちらも止めてほしいです。」
ディオスは苦笑しつつ頷く。
「…アス…」
小鳥は可愛らしく首を傾げた。
「ありがとう…」
ディオスのどうしても迷う性質を知っているアスは、この惑いの魔法にディオスが抜け出せない状態になることを分かっていたのだろう。
「…仕方ないです。陛下は大人だ…しがらみが多くて経験値が邪魔になることも多い。経験値が人を臆病にさせることもあるのも知っています…それを超えたら…開き直る場合もあると思いますけど。陛下に迷うなという事は難しいでしょう。臆病になって父上を悲しませるのは阻止しますけど…陛下の…母上の迷って迷っていい未来をつかもうとするところはきらいっではないので。まぁ…父上のことを迷うのは、ムカつきますけどね。」
そうかと頷くディオスに世話がやけますねぇとアスはため息をついた。
「…しかし…はやくアスの意識を体に戻さないと…ジークハルトが暴走すすか…というか…アスが私を選んだと弟子ったら…私とも決闘するとか言いそうだ…」
なんですか?それ??と首をかしげるアスにディオスは、気持ち伝わって無くないか?ジークハルト…とディオスは頭を痛めながら歩き出した。
「アス??ジークハルトか??…大丈夫かなぁ…アス…」
きちんと逃げてくれるといいのだけどと不安に思いながらディオスははやくラスティを連れてアスの所に戻らないとと階段を下る。
「…妙に長いな……」
先が見えない螺旋階段。
まるで闇に落ちていくよう。
奇妙な感覚に、これは妖精の惑わしの魔法かと顔をしかめる。
上の花園から下は妖精の領域なのだろう。
アスの眷属である妖精たちは、ラスティを守るためにこの階段に惑わしの魔法をかけたのか。
そもそもかかっているのかは、ディオスにもわからない。
進んでいる感覚はあるがそれも惑わされているかもしれない。
「…まぁ…アスの所に戻されるならアスを今度はアスを連れて行けばいいし…最悪…階段使わず落ちれば行けないかな…」
ディオスはそう言いながらため息をつく。
知識はある。
妖精の惑わしについての。
迷っているから惑わされるのだ。
「俺が未だに迷っているからか。」
妖精の使う、惑わしの魔法は人の心に作用する。
ディオスが未だに迷っているから進まないのだ。
人の精神に作用しているというなら、ディオスは自分はずっと足踏みでもしているのだろうかと第三者視点を考えて吹き出しそうになる。
上の階でのアスの瞳は、ラスティと同じ顔で別の金の瞳が自分を見た時怒られた気がした。
ー あんた馬鹿ですか!!!
声なき彼の罵声が聞こえて気がする。
実際、怒っていたしそのくらい怒っていたと思う。
ジークハルトに押し付けて逃げてしまった彼には後でしっかり怒られよう。
ー 今更迷ってどうするんですか!!
ー 覚悟を決めなさい!!
アスの声で再生されるそれに苦笑する。
今、彼は自分どころではないだろう。
暴走したジークハルトを止めるので必死のはずだ。
この声は、自分が求めている妄想だ。
上から爆発音がする。
妙に爆発音が何度も響いているが、魔力のそれがアスではなくノルンだとディオスは感じる。
「…まずいな…」
ここでだらだらしているのをノルンにバレたらジークハルトと同じ…いや、それ以上の目に合うだろう。
といってすぐに覚悟が決まるかと言うと決まらない。
何を怖がっているのかと思いながらも少し足を止めて目を閉じる。
ラスティのことをゆっくり考えてみる。
どうしたいのか。
そう思っているとアスの声で再生されるそれに苦笑する。
ー 離れていいの?
ー いなくなっていいの?
ー 寂しいくせに。
ー 狂気に染まる程…おかしくなるくせに。
それがラスティのためでも?
ー 嘘つき。
ー 自分のためでしょ?
ー 自分が可愛いいから。
ー 自分が変わるのが怖いから。
そうやって、「また」見捨てるのか?
アスの声がいつの間にかディオスの声に変っていた。
そうアスの声ではないのだ。
自分を責めているのはやはり自分で、自分が可愛いからこうやって立ち止まっているだけだった。
「私は確かに…獣なんだ。醜い獣なんだよ。」
怖いさとディオスは思う。
自分の醜い本性を知って、知られてラスティに…アスに…皆に拒絶されるのが。
「溺れるだろう…何も王としての責務もほおりだしてしまうかもしれない。」
だから、怖いとディオスはため息をつく。
決めたのに、まだ怖がってる。
迷っている。
「そんな…母上も好きですけど…父上を待たせすぎですよ。」
肩に小さな気配。
ゆっくりと目を開けると先に光が見えた。
闇に落ちていくような螺旋階段は普通の階段になっていた。
金色の鳥が肩に鎮座している。
「そんなことだろうと思って使い魔を飛ばしたんです。ジークハルトとノルンが戦って大変なのでさっさと行きましょう。」
小鳥はディオスを促す。
ディオスは首を傾げた。
「…本体はどうなってるの?」
ディオスの言葉にアスはため息をついた。
「ジークハルトとノルンの戦闘の中心にいるのですよ…気絶の一つくらいします。」
意識を全て小鳥の使い魔に移動させたのかとディオスはため息をつく。
そんなことをしたら体に戻れなくなる可能性もある。
「ええ、自力で戻れませんので母上と父上の用事をはやく終わらせて助けてください。まぁ…できせば戦闘狂同士の戦いも長く続きそうなのでそちらも止めてほしいです。」
ディオスは苦笑しつつ頷く。
「…アス…」
小鳥は可愛らしく首を傾げた。
「ありがとう…」
ディオスのどうしても迷う性質を知っているアスは、この惑いの魔法にディオスが抜け出せない状態になることを分かっていたのだろう。
「…仕方ないです。陛下は大人だ…しがらみが多くて経験値が邪魔になることも多い。経験値が人を臆病にさせることもあるのも知っています…それを超えたら…開き直る場合もあると思いますけど。陛下に迷うなという事は難しいでしょう。臆病になって父上を悲しませるのは阻止しますけど…陛下の…母上の迷って迷っていい未来をつかもうとするところはきらいっではないので。まぁ…父上のことを迷うのは、ムカつきますけどね。」
そうかと頷くディオスに世話がやけますねぇとアスはため息をついた。
「…しかし…はやくアスの意識を体に戻さないと…ジークハルトが暴走すすか…というか…アスが私を選んだと弟子ったら…私とも決闘するとか言いそうだ…」
なんですか?それ??と首をかしげるアスにディオスは、気持ち伝わって無くないか?ジークハルト…とディオスは頭を痛めながら歩き出した。
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