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第七章 終わりという名の始まり
205 妨害しますよ。 ノルンside
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上の階で激しい戦いの音が続いている。
ノルンは、ほぅとため息をついた。
マールの実力がここまでとはと思いながら、広間の真ん中で剣を構える。
罠代わりの魔石は至る所に埋め込んでいるが、所詮は子供だまし。
ディオスとジークハルトは止めるつもりはない。
多少足止めして精神的にダメージは与えるつもりではあるが。
ロイスは確実にここで足止めして、もし降りてきたらトリスティは仕留めるつもりだ。
上の派手な音からおそらくマールはトリスティとやりあっているだろう。
と案の定、上からの通路口からロイスが顔をのぞかせた。
ノルンの顔を見ると眉を寄せる。
それからあきらめたように、中に入ってくる。
ジークハルトの姿も見えるが、ディオスの姿はまだ見えない。
転移よけは行っているのでここを通り抜けるしか下に居るラスティとアスの所にはいくことができない。
さて、どうするかなと思いながら、ロイスを見つめる。
「ノルン、ここを通してくれないか?」
真正面からそう言われてノルンは苦笑する。
「通すつもりでしたらここで剣を構えていることはないでしょう?」
それもそうだが…とロイスは息を吐いた。
「…先日の言葉を…謝りたい…別に君の仕事についてを貶めるつもりで言ったことではない…。」
ノルンは、先日?と首をかしげる。
たしか少し前にロイスに、パートナーとして家族になってほしいと言ってきて、ラスティの従者を辞めてほしいと言われたて…まぁ切れたなとノルンは思う。
別に、ロイスのパートナーになることも家族になることも…ラスティの従者を結果的に辞めねばならなくなってしてもそれはそれだとノルンは思う。
切れたのは、単純に自分がロイスより弱いと思われているという事と、結果的にラスティの従者を辞めねばならないかもしれないが、辞める必要が無い状態からやめろと言われたことだったと思う。
「…そうですね…私はラスティの従者として…アス様の従者になることについても検討している段階です。そのこれからというところで、貴方のために辞めろと言われて少々腹も立ちましたが…今ここになっているのはそのことのためではありません。」
ロイスは分かっていると頷く。
「ああ…謝っておかねば私の気が済まなかっただけだ。」
ノルンはふんと鼻を鳴らす。
「貴方の気分なぞ今の私には関係ありません。用が済んだならおかえりください。」
ロイスは、ため息をつく。
「それは出来ない…陛下とジークハルトに先にすすんでもらわねばならないからな。」
ノルンはおやおやと肩をすくめた。
「まぁ…100歩譲って陛下はラスティ様を迎えに来たと思いますけど…ジーク様は何故ですか?しつこい男はよけいに嫌われますよ?」
ロイスが顔をひきつらせた。
「…言ってやるな…」
順当にいけば、ノルンとマールのどちらかがアスの教育係になる予定だ。
教育係としてはノルンだろう。
ラスティの従者は、なんだかんだと仲の良いマールが続けた方がいいとノルンは思っている。
なので、ノルンはアスを優先することにした。
ディオスとラスティは、二人ともそろそろ頭が冷えたところだろう。
そもそもディオスは愛情が調整できないから足踏みしまくるが、一旦踏み外すとおそらくこちらが止めないと危険なほどラスティを離さなくなるのは想像できる。
極端なのだ。
この国の王族の感情の揺れ幅、おかしいですよねぇ。
ノルンの正直な感想だった。
特に血の濃いディオスとジークハルトは異常である。
ラスティはそろそろ、ディオスの重い愛情を受け止めるほどの器には育ったと思う。
なので、まだ幼いアスを守る方を優先したほうがいいだろうとノルンは思う。
ここでジークハルトの心は一回折っておかないとアスが危険だ。
ラスティは自覚が無いだろうが、ディオスの扱いが上手い。
うますぎてディオスが不安になっているのだが、それも今回の騒ぎで落ち着くだろう。
だが、アスはジークハルトの重い愛情をかわす能力はまだ無い。
このままだったら監禁されてもおかしくないですから。
ロイスが、眉を寄せた。
「…これ以上、折ってやるな…さんざんバルハルト様とジェン様にやられた後だ。」
ノルンはほうと息を吐く。
なるほど、自分の息子の異常性を良く知っているお二人にやられた後ですかとノルンは苦笑する。
ならば自分がやることはロイスの足止めになる。
「そうですか…一つ聞いていいですか?」
ロイスはなんだと首をかしげる。
「…トリスティは来ています?」
ロイスは頷く。
「ああ…マールのところに残っている。」
ノルンは、そうですかと頷く。
そして、にっこりと優しく微笑む。
「マールを放置してここに来ていたら息の根を止めてやろうと思っていたのですが…」
残念ですねと微笑むノルンにロイスは背筋に嫌な感覚が走る。
と同時に、体に歓喜を感じていた。
ノルンは強い。
強者と戦うことはロイスには喜びだった。
このような時ではないとノルンと戦うなどないだろうと思う。
「貴方も大概ですよねぇ…」
ノルンはそう言うと苦笑して、ロイスに向かって鋭い突きを繰り出す。
ロイスはそれをかわし、剣を抜く。
その間にノルンは、後ろに下がり魔力の塊を無数に生み出しロイスに叩きつけた。
ロイスはそれをかわしながらノルンに距離をとった。
ノルンの周りには、無数の魔力の塊が浮かんでいる。
ディオス達が横を走り抜けようとすればそれが襲い掛かるだろう。
この広間全体に埋め込んだ魔石も淡く光り発動状態になる。
ノルンはにやりと微笑んだ。
「別に…あなたが産んでもいいのですよね?私の子供。うふふ…負けませんよ?」
弟と同じようなことを言っているノルンだった。
ノルンは、ほぅとため息をついた。
マールの実力がここまでとはと思いながら、広間の真ん中で剣を構える。
罠代わりの魔石は至る所に埋め込んでいるが、所詮は子供だまし。
ディオスとジークハルトは止めるつもりはない。
多少足止めして精神的にダメージは与えるつもりではあるが。
ロイスは確実にここで足止めして、もし降りてきたらトリスティは仕留めるつもりだ。
上の派手な音からおそらくマールはトリスティとやりあっているだろう。
と案の定、上からの通路口からロイスが顔をのぞかせた。
ノルンの顔を見ると眉を寄せる。
それからあきらめたように、中に入ってくる。
ジークハルトの姿も見えるが、ディオスの姿はまだ見えない。
転移よけは行っているのでここを通り抜けるしか下に居るラスティとアスの所にはいくことができない。
さて、どうするかなと思いながら、ロイスを見つめる。
「ノルン、ここを通してくれないか?」
真正面からそう言われてノルンは苦笑する。
「通すつもりでしたらここで剣を構えていることはないでしょう?」
それもそうだが…とロイスは息を吐いた。
「…先日の言葉を…謝りたい…別に君の仕事についてを貶めるつもりで言ったことではない…。」
ノルンは、先日?と首をかしげる。
たしか少し前にロイスに、パートナーとして家族になってほしいと言ってきて、ラスティの従者を辞めてほしいと言われたて…まぁ切れたなとノルンは思う。
別に、ロイスのパートナーになることも家族になることも…ラスティの従者を結果的に辞めねばならなくなってしてもそれはそれだとノルンは思う。
切れたのは、単純に自分がロイスより弱いと思われているという事と、結果的にラスティの従者を辞めねばならないかもしれないが、辞める必要が無い状態からやめろと言われたことだったと思う。
「…そうですね…私はラスティの従者として…アス様の従者になることについても検討している段階です。そのこれからというところで、貴方のために辞めろと言われて少々腹も立ちましたが…今ここになっているのはそのことのためではありません。」
ロイスは分かっていると頷く。
「ああ…謝っておかねば私の気が済まなかっただけだ。」
ノルンはふんと鼻を鳴らす。
「貴方の気分なぞ今の私には関係ありません。用が済んだならおかえりください。」
ロイスは、ため息をつく。
「それは出来ない…陛下とジークハルトに先にすすんでもらわねばならないからな。」
ノルンはおやおやと肩をすくめた。
「まぁ…100歩譲って陛下はラスティ様を迎えに来たと思いますけど…ジーク様は何故ですか?しつこい男はよけいに嫌われますよ?」
ロイスが顔をひきつらせた。
「…言ってやるな…」
順当にいけば、ノルンとマールのどちらかがアスの教育係になる予定だ。
教育係としてはノルンだろう。
ラスティの従者は、なんだかんだと仲の良いマールが続けた方がいいとノルンは思っている。
なので、ノルンはアスを優先することにした。
ディオスとラスティは、二人ともそろそろ頭が冷えたところだろう。
そもそもディオスは愛情が調整できないから足踏みしまくるが、一旦踏み外すとおそらくこちらが止めないと危険なほどラスティを離さなくなるのは想像できる。
極端なのだ。
この国の王族の感情の揺れ幅、おかしいですよねぇ。
ノルンの正直な感想だった。
特に血の濃いディオスとジークハルトは異常である。
ラスティはそろそろ、ディオスの重い愛情を受け止めるほどの器には育ったと思う。
なので、まだ幼いアスを守る方を優先したほうがいいだろうとノルンは思う。
ここでジークハルトの心は一回折っておかないとアスが危険だ。
ラスティは自覚が無いだろうが、ディオスの扱いが上手い。
うますぎてディオスが不安になっているのだが、それも今回の騒ぎで落ち着くだろう。
だが、アスはジークハルトの重い愛情をかわす能力はまだ無い。
このままだったら監禁されてもおかしくないですから。
ロイスが、眉を寄せた。
「…これ以上、折ってやるな…さんざんバルハルト様とジェン様にやられた後だ。」
ノルンはほうと息を吐く。
なるほど、自分の息子の異常性を良く知っているお二人にやられた後ですかとノルンは苦笑する。
ならば自分がやることはロイスの足止めになる。
「そうですか…一つ聞いていいですか?」
ロイスはなんだと首をかしげる。
「…トリスティは来ています?」
ロイスは頷く。
「ああ…マールのところに残っている。」
ノルンは、そうですかと頷く。
そして、にっこりと優しく微笑む。
「マールを放置してここに来ていたら息の根を止めてやろうと思っていたのですが…」
残念ですねと微笑むノルンにロイスは背筋に嫌な感覚が走る。
と同時に、体に歓喜を感じていた。
ノルンは強い。
強者と戦うことはロイスには喜びだった。
このような時ではないとノルンと戦うなどないだろうと思う。
「貴方も大概ですよねぇ…」
ノルンはそう言うと苦笑して、ロイスに向かって鋭い突きを繰り出す。
ロイスはそれをかわし、剣を抜く。
その間にノルンは、後ろに下がり魔力の塊を無数に生み出しロイスに叩きつけた。
ロイスはそれをかわしながらノルンに距離をとった。
ノルンの周りには、無数の魔力の塊が浮かんでいる。
ディオス達が横を走り抜けようとすればそれが襲い掛かるだろう。
この広間全体に埋め込んだ魔石も淡く光り発動状態になる。
ノルンはにやりと微笑んだ。
「別に…あなたが産んでもいいのですよね?私の子供。うふふ…負けませんよ?」
弟と同じようなことを言っているノルンだった。
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