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第七章 終わりという名の始まり
200 目を覚ますと地下でした
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落ちる。
落ちる。
闇へと落ちる。
それはいつかの最後のように。
僕の最後はいつもそう。
そして星が落ちてきて。
僕の世界は炎の中に。
落ちる。
落ちる。
闇の中に。
闇と言う安寧の中に。
世界は再生の眠りにつく。
眠ることのできない王の魂だけを置いて。
僕は何故か泣きながら目を覚ました。
そこは、花畑の中。
明るいけれど空はない。
天井ははるかに高い闇が広がっている。
星はない。
明るいのは花自体がキラキラと光を放っているから。
僕は幻想的なその花の海の中で、一人でいたのだろう。
静かな花畑に一人でいることに僕は不安を感じなかった。
何故か安心してしまうその場所をもう一度見回す。
風もないはずなのに花が揺れた。
ふわりと小さな竜に姿を変えた、竜が僕の目の前にそっと降りてきた。
竜に名前があるのは知っているけれど。
僕が呼ぶのは違うと思っている。
たぶん、竜の名は妖精女王とアスだけが呼べるのだろうと思う。
『すまんな。主が。。。』
竜はそういうとため息をついた。
『主は、どうしてもお主と王に幸せになってもらいたいだけなのだ。』
僕は分かっていると頷いて膝を抱えた。
「アスのことは怒ってないよ。僕もあの場所にいたくなかった。陛下の言いたいことはわかるけど…僕ではどうにもならないことなんだって思い知らされたから。」
竜は、少し考えてから頷く。
『王の番は、今も王が番だと思っているか?』
僕は頷くと竜は満足そうにうなずく。
『変わっておらぬな?』
僕は頷く。
『自分の胸を見てみると良い。』
僕は、竜に言われるまま自分の服の中を覗いた。
そこにあったはずの紋章が無くなっていた。
『主は、王の望みをかなえた。だが、王の望み通りにはやはりならなかったという事だ。』
竜は、仕方ないなと頷く。
『王の番よ…お主の答えを聞きたい。どうしたい?』
僕は僕をかしげる。
『主は。今やこの世界の主。物理的なことならばお主の願いもかなえることができる。王から離れたいというならば王の手が届かぬところにお主を送ることもできる。お主が王を恨むというならば、主は王と敵対しよう。お主の望みは何だ。』
僕は竜の言葉を、聞き考える。
「物理的なこと…」
竜は頷く。
『主は、陽の欠片のようにはならぬと誓約をした。そのために精神的なことは操れぬ。王の心をお主に縛り付けるなどと言う願いはかなえられぬ。』
竜の言葉に僕は、ゆっくりと竜の言葉を考える。
僕の望みは、生きたいことだ。
もちろん、永遠とかではなくて…いつも死んでいた先を見てみたいと思っていた。
その望みは叶う。
だから、これ以上望んでも贅沢だろうと思う。
けれど、ずっと陛下のパートナーになるのだと思っていたこの10年はとても幸せだった。
続くと思いたかった。
陛下の傍に居るようになったこの生ではいろいろなことを知った。
今までの僕は、今と同じで膝を抱えてうずくまっていただけで何もしてこなかった。
今回は違うと思っていた。
色々、知らなかったことも知ったし頑張ったのだから。
弟君を失った悲しみが陛下を傷つけたままだと知った。
僕を殺すだけだと思っていた攻略対象達やリオン達のこともたくさん知った。
ジークハルトのことだって今までより仲良くなれたと思う。
陛下のことを一番知ったと思う。
そして、少しでも陛下の悲しみを癒せるのではないかと思ったけれど、それは僕の思い上がりだったのだろう。
結局、僕はこうやって膝を抱えてうずくまっている。
頑張っても頑張っても、結局僕のやったことではなく皆が何とかしてくれただけだ。
僕がいなくったって世界は進んだだろう。
別に僕が、いなくったって陛下はいつも通り生きていくだろう。
なんだか、どうでもいいやと僕は投げやりな思考になっていく自分を止めなかった。
『王の番よ。お主の嘆きも…わからんでもないが、お主がおらねば主はこの世界を守ろうなどと思わなかった。』
僕は竜を見る。
小さな姿になっているが竜は威厳に満ちていた。
嘘は言わぬと竜は頷く。
『お主がこの世界を、お主の周りの者を守ろうと必死な思いが主を育て、主と言う新しい神をこの世界に生み出したのだ。お主の背を見て主は育った。だから、主はお主を父と呼ぶのだ。自分を否定してやるな。』
竜の言葉に僕は、そうだねとつぶやく。
まだ、心の中はどろどろしたままだけれど、うつむいて目に入った光る花はやっぱりきれいで泣きたくなった。
「なんで、僕はこんなに弱いのかなぁ。繰り返しの生の記憶もある程度力もあるはずなのに。どうしても悩んで動けなくなってしまう。弱いままだ。」
答えは期待していなかった言葉に竜は、首を傾げた。
『強さは弱さにもなり、弱さは強さにもなる。考え方次第だ。王の番は今は弱っている。傷ついている。だから弱さが表に出るのもしかたがなかろう。だが…お主は強い。ここで少し心をいやすと良い。』
竜は、だがとため息をついた。
『お主の以前の生で王が狂った理由は忘れてくれるなよ?』
竜の言葉に僕は、そういえばなんで陛下は狂ったんだっけと首を傾げた。
「うーん…」
竜は、呆れたようにため息をついた。
落ちる。
闇へと落ちる。
それはいつかの最後のように。
僕の最後はいつもそう。
そして星が落ちてきて。
僕の世界は炎の中に。
落ちる。
落ちる。
闇の中に。
闇と言う安寧の中に。
世界は再生の眠りにつく。
眠ることのできない王の魂だけを置いて。
僕は何故か泣きながら目を覚ました。
そこは、花畑の中。
明るいけれど空はない。
天井ははるかに高い闇が広がっている。
星はない。
明るいのは花自体がキラキラと光を放っているから。
僕は幻想的なその花の海の中で、一人でいたのだろう。
静かな花畑に一人でいることに僕は不安を感じなかった。
何故か安心してしまうその場所をもう一度見回す。
風もないはずなのに花が揺れた。
ふわりと小さな竜に姿を変えた、竜が僕の目の前にそっと降りてきた。
竜に名前があるのは知っているけれど。
僕が呼ぶのは違うと思っている。
たぶん、竜の名は妖精女王とアスだけが呼べるのだろうと思う。
『すまんな。主が。。。』
竜はそういうとため息をついた。
『主は、どうしてもお主と王に幸せになってもらいたいだけなのだ。』
僕は分かっていると頷いて膝を抱えた。
「アスのことは怒ってないよ。僕もあの場所にいたくなかった。陛下の言いたいことはわかるけど…僕ではどうにもならないことなんだって思い知らされたから。」
竜は、少し考えてから頷く。
『王の番は、今も王が番だと思っているか?』
僕は頷くと竜は満足そうにうなずく。
『変わっておらぬな?』
僕は頷く。
『自分の胸を見てみると良い。』
僕は、竜に言われるまま自分の服の中を覗いた。
そこにあったはずの紋章が無くなっていた。
『主は、王の望みをかなえた。だが、王の望み通りにはやはりならなかったという事だ。』
竜は、仕方ないなと頷く。
『王の番よ…お主の答えを聞きたい。どうしたい?』
僕は僕をかしげる。
『主は。今やこの世界の主。物理的なことならばお主の願いもかなえることができる。王から離れたいというならば王の手が届かぬところにお主を送ることもできる。お主が王を恨むというならば、主は王と敵対しよう。お主の望みは何だ。』
僕は竜の言葉を、聞き考える。
「物理的なこと…」
竜は頷く。
『主は、陽の欠片のようにはならぬと誓約をした。そのために精神的なことは操れぬ。王の心をお主に縛り付けるなどと言う願いはかなえられぬ。』
竜の言葉に僕は、ゆっくりと竜の言葉を考える。
僕の望みは、生きたいことだ。
もちろん、永遠とかではなくて…いつも死んでいた先を見てみたいと思っていた。
その望みは叶う。
だから、これ以上望んでも贅沢だろうと思う。
けれど、ずっと陛下のパートナーになるのだと思っていたこの10年はとても幸せだった。
続くと思いたかった。
陛下の傍に居るようになったこの生ではいろいろなことを知った。
今までの僕は、今と同じで膝を抱えてうずくまっていただけで何もしてこなかった。
今回は違うと思っていた。
色々、知らなかったことも知ったし頑張ったのだから。
弟君を失った悲しみが陛下を傷つけたままだと知った。
僕を殺すだけだと思っていた攻略対象達やリオン達のこともたくさん知った。
ジークハルトのことだって今までより仲良くなれたと思う。
陛下のことを一番知ったと思う。
そして、少しでも陛下の悲しみを癒せるのではないかと思ったけれど、それは僕の思い上がりだったのだろう。
結局、僕はこうやって膝を抱えてうずくまっている。
頑張っても頑張っても、結局僕のやったことではなく皆が何とかしてくれただけだ。
僕がいなくったって世界は進んだだろう。
別に僕が、いなくったって陛下はいつも通り生きていくだろう。
なんだか、どうでもいいやと僕は投げやりな思考になっていく自分を止めなかった。
『王の番よ。お主の嘆きも…わからんでもないが、お主がおらねば主はこの世界を守ろうなどと思わなかった。』
僕は竜を見る。
小さな姿になっているが竜は威厳に満ちていた。
嘘は言わぬと竜は頷く。
『お主がこの世界を、お主の周りの者を守ろうと必死な思いが主を育て、主と言う新しい神をこの世界に生み出したのだ。お主の背を見て主は育った。だから、主はお主を父と呼ぶのだ。自分を否定してやるな。』
竜の言葉に僕は、そうだねとつぶやく。
まだ、心の中はどろどろしたままだけれど、うつむいて目に入った光る花はやっぱりきれいで泣きたくなった。
「なんで、僕はこんなに弱いのかなぁ。繰り返しの生の記憶もある程度力もあるはずなのに。どうしても悩んで動けなくなってしまう。弱いままだ。」
答えは期待していなかった言葉に竜は、首を傾げた。
『強さは弱さにもなり、弱さは強さにもなる。考え方次第だ。王の番は今は弱っている。傷ついている。だから弱さが表に出るのもしかたがなかろう。だが…お主は強い。ここで少し心をいやすと良い。』
竜は、だがとため息をついた。
『お主の以前の生で王が狂った理由は忘れてくれるなよ?』
竜の言葉に僕は、そういえばなんで陛下は狂ったんだっけと首を傾げた。
「うーん…」
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