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間話 陰の欠片

間話 アスの親孝行? アスside

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簡単に終わってしまった。
まぁ、大変なのはラスティの方だろう。

今も、これからも。

僕は、単純に言えばこっそり入ってこっそり大切なものを壊すだけの、泥棒みたいなことをしているだけだ。

問題は山積。
正直言って後始末が大変だ。
周りの国も今回の騒ぎで王国に攻めてくるかもしれない。
教会の神が消えたのだから。
まぁ、陛下とバルハルト公とジェン公、ジークハルトとロイスもいる。
戦力として見劣りもないし、僕もこの国を守護するだろう。
外の国との戦いは何とかなると思う。

一つ気がかりがあるとしたら陛下とラスティだ。

ラスティはこれから陛下と幸せに生きていけるだろう。
そのことは、うんうんと僕は満足する。
僕自身は、一旦、仮契約したジークハルトと契約を切って、リハビリをしっかりする。
まともに動けるようになったら、一人でのんびり世界を回りたいと思う。

僕の役目はこれで終わり。

いや、もう一つ。
親孝行しないと…とここまで運んでくれた陛下を見る。
陛下も付き合うことはなかったのだけれども。
たぶん、上で戦っているバルハルト公とジェン公の方が大変だろう。
教会の講堂で帰還の魔法陣を守って戦ってくれているはずだ。
まぁ、そろそろ、ジークハルトとロイスも到着しているだろうけれど。
ノルンとロイスはどうするのかなと思うがそれは二人にまかせる。
満足そうな僕に陛下は、苦笑する。

「終わったという事でいいのかい?」

陛下に僕は頷く。
そして、二人きりだという事で、最後に聞くことにした。
自分に強化魔法をかける。
はやくこの魔法をかけないくとも良いようになりたいなと思う。

「へーかは…ラスティを…父上をどうするつもりですか?」

そう、聞きたかったこと。
ラスティは陛下が大好きだ。
まぁ前世の記憶と、陽の欠片の所為で情緒不安定というか、いろいろあって暴走気味だけど。
陛下がこれからもささえてくれるものと信じたい。

「……私もいいおじさんだからね…そろそろ…妃の任も解いてもいいかと思うのだよ。」

陛下は情けない顔でそう言う。
嫌な癖にと僕は思う。
離れたくないのだろうに。

うっかり呆れたため息が出てしまった。

陛下も陛下で色々あるから仕方ないけれど。
基本的にはヘタレだから。
うん。
ヘタレである。
僕はあきれ返るしかない。
何度も言う。
何度だって言っていい。
というか言う。

陛下はヘタレである。
本当にそういうところがダメなのだ。

この世界でたぶん、一番強いのに。
本気の子には、弱くなってしまう。
気を使いすぎて逃げている。
ラスティという人生を抱えることを逃げているのだ。
だから、仲も進まない。
進まないというか進める気がない。

陛下はラスティにはもっといい相手がいると思っている。
多少手は出しても、最後まで手を出してないとのはそういうつもりだからだ。
微妙に手を出しているのだってからかい半分と、『俺』の状態のラスティが押せ押せ状態でようやくである。

まぁ、年齢もあるけれど。
18までは、育てるつもりと思っているから。
ただ、18になったら手放す気だ。

いい加減にしてほしいところだ。

ラスティもラスティで、陛下に釣り合っていないと思っているから積極的にはいかない。
『俺』の時の記憶を返したからかなりのたうち回っているが、中身の精神年齢を考えると馬鹿か!!と言わんばかりの純情ぶりで僕はちょっとひく。
へたしたら陛下より年上になるレベルの精神年齢でもいいはずなのに、ラスティは何を考えているのか。

僕もそろそろ我慢の限界である。

まぁ、周りで見ているバルハルト公とジェン公などは、もっといじいじするだろう。
というか、いじいじしているのがわかる。

とっとと食っちまえとバルハルト公などは言葉に出すレベルだ。
まぁ…ラスティも学生の身分も持っているから今すぐとは僕は言わないけれども。

だが、そろそろもう少し進んでいただきたい。
せっかくの機会だ。
僕はここで陛下の考えを変えていただきたい。

ということで…僕はしっかりここで陛下をたぶらかそうと思う。
うん?たぶらかすというのは言葉が違うか?

でもそう。
ここでしっかり陛下を煽る?焚きつける?とかなんとかしておかないと、僕的に…なんで僕ここまでしてるの??と空しくなってしまうので。

よしと気合を入れる。
陛下は不思議そうに僕を見ている。

まぁ…そうだろう。

目の前で突然気合を入れ始めたのだから。

強化魔法まで使って。

僕はくるりと勢いよく陛下の方に向いた。
陛下は少し何かを感じたのか後ずさったがすぐ背中は壁なので陛下の足が止まる。
僕は陛下を逃がさないように彼の横に両手をつく。

これで僕の方が背が高ければ壁ドンとかで恰好が付くのだろうけれど。
僕は陛下を覗き込むように見上げる。

「ねぇ、陛下、ラスティを手放すなら…僕がもらっていーい?」

にっこりと意地悪く笑う。

「…アス?」

陛下の顔が引きつって声がワントーン低くなった。
怒るくらいなら手放すなんて言うな。

「だって、陛下…いらないのでしょう?」

陛下は目を見開いた。

「いらないなんて…違う…私が…」

僕は目を細める。

「陛下は、ラスティの十年を無駄にするの?ラスティは陛下のお妃様にきちんとなるために頑張ってた。違う?なのに陛下はそのラスティの努力も何もかも無視して手放すの?ラスティは陛下のお妃様になるために…隣にいて恥ずかしくないように頑張ってたのに?」

まぁ、ラスティは意外に能天気だから何も考えてないところはあるけれども。
陛下好きなのは、前世からだし結構長く思っているのだから、そろそろ報われてもいいだろうと思う。
すごく困った顔をしている陛下に僕はますます目を細めて睨む。

「陛下がいらないというのは…その努力を誰より見ていた僕は許せないです。だから…陛下がいらないというなら僕はラスティとパートナー契約して二人で地下に降ります。」

陛下は目を見開いて焦る。
地下は僕のホームだから…陛下にも本気を出せば負けない。
ラスティを、囲って陛下に…皆から姿を画することもできる。
もちろん、ラスティが望んだからだけども。

さぁどうする?陛下?

僕は、顔色を失って僕を見つめる陛下をにらみつけていた。

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