不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

文字の大きさ
上 下
217 / 233
間話 陰の欠片

間話 アスの親孝行? アスside

しおりを挟む
簡単に終わってしまった。
まぁ、大変なのはラスティの方だろう。

今も、これからも。

僕は、単純に言えばこっそり入ってこっそり大切なものを壊すだけの、泥棒みたいなことをしているだけだ。

問題は山積。
正直言って後始末が大変だ。
周りの国も今回の騒ぎで王国に攻めてくるかもしれない。
教会の神が消えたのだから。
まぁ、陛下とバルハルト公とジェン公、ジークハルトとロイスもいる。
戦力として見劣りもないし、僕もこの国を守護するだろう。
外の国との戦いは何とかなると思う。

一つ気がかりがあるとしたら陛下とラスティだ。

ラスティはこれから陛下と幸せに生きていけるだろう。
そのことは、うんうんと僕は満足する。
僕自身は、一旦、仮契約したジークハルトと契約を切って、リハビリをしっかりする。
まともに動けるようになったら、一人でのんびり世界を回りたいと思う。

僕の役目はこれで終わり。

いや、もう一つ。
親孝行しないと…とここまで運んでくれた陛下を見る。
陛下も付き合うことはなかったのだけれども。
たぶん、上で戦っているバルハルト公とジェン公の方が大変だろう。
教会の講堂で帰還の魔法陣を守って戦ってくれているはずだ。
まぁ、そろそろ、ジークハルトとロイスも到着しているだろうけれど。
ノルンとロイスはどうするのかなと思うがそれは二人にまかせる。
満足そうな僕に陛下は、苦笑する。

「終わったという事でいいのかい?」

陛下に僕は頷く。
そして、二人きりだという事で、最後に聞くことにした。
自分に強化魔法をかける。
はやくこの魔法をかけないくとも良いようになりたいなと思う。

「へーかは…ラスティを…父上をどうするつもりですか?」

そう、聞きたかったこと。
ラスティは陛下が大好きだ。
まぁ前世の記憶と、陽の欠片の所為で情緒不安定というか、いろいろあって暴走気味だけど。
陛下がこれからもささえてくれるものと信じたい。

「……私もいいおじさんだからね…そろそろ…妃の任も解いてもいいかと思うのだよ。」

陛下は情けない顔でそう言う。
嫌な癖にと僕は思う。
離れたくないのだろうに。

うっかり呆れたため息が出てしまった。

陛下も陛下で色々あるから仕方ないけれど。
基本的にはヘタレだから。
うん。
ヘタレである。
僕はあきれ返るしかない。
何度も言う。
何度だって言っていい。
というか言う。

陛下はヘタレである。
本当にそういうところがダメなのだ。

この世界でたぶん、一番強いのに。
本気の子には、弱くなってしまう。
気を使いすぎて逃げている。
ラスティという人生を抱えることを逃げているのだ。
だから、仲も進まない。
進まないというか進める気がない。

陛下はラスティにはもっといい相手がいると思っている。
多少手は出しても、最後まで手を出してないとのはそういうつもりだからだ。
微妙に手を出しているのだってからかい半分と、『俺』の状態のラスティが押せ押せ状態でようやくである。

まぁ、年齢もあるけれど。
18までは、育てるつもりと思っているから。
ただ、18になったら手放す気だ。

いい加減にしてほしいところだ。

ラスティもラスティで、陛下に釣り合っていないと思っているから積極的にはいかない。
『俺』の時の記憶を返したからかなりのたうち回っているが、中身の精神年齢を考えると馬鹿か!!と言わんばかりの純情ぶりで僕はちょっとひく。
へたしたら陛下より年上になるレベルの精神年齢でもいいはずなのに、ラスティは何を考えているのか。

僕もそろそろ我慢の限界である。

まぁ、周りで見ているバルハルト公とジェン公などは、もっといじいじするだろう。
というか、いじいじしているのがわかる。

とっとと食っちまえとバルハルト公などは言葉に出すレベルだ。
まぁ…ラスティも学生の身分も持っているから今すぐとは僕は言わないけれども。

だが、そろそろもう少し進んでいただきたい。
せっかくの機会だ。
僕はここで陛下の考えを変えていただきたい。

ということで…僕はしっかりここで陛下をたぶらかそうと思う。
うん?たぶらかすというのは言葉が違うか?

でもそう。
ここでしっかり陛下を煽る?焚きつける?とかなんとかしておかないと、僕的に…なんで僕ここまでしてるの??と空しくなってしまうので。

よしと気合を入れる。
陛下は不思議そうに僕を見ている。

まぁ…そうだろう。

目の前で突然気合を入れ始めたのだから。

強化魔法まで使って。

僕はくるりと勢いよく陛下の方に向いた。
陛下は少し何かを感じたのか後ずさったがすぐ背中は壁なので陛下の足が止まる。
僕は陛下を逃がさないように彼の横に両手をつく。

これで僕の方が背が高ければ壁ドンとかで恰好が付くのだろうけれど。
僕は陛下を覗き込むように見上げる。

「ねぇ、陛下、ラスティを手放すなら…僕がもらっていーい?」

にっこりと意地悪く笑う。

「…アス?」

陛下の顔が引きつって声がワントーン低くなった。
怒るくらいなら手放すなんて言うな。

「だって、陛下…いらないのでしょう?」

陛下は目を見開いた。

「いらないなんて…違う…私が…」

僕は目を細める。

「陛下は、ラスティの十年を無駄にするの?ラスティは陛下のお妃様にきちんとなるために頑張ってた。違う?なのに陛下はそのラスティの努力も何もかも無視して手放すの?ラスティは陛下のお妃様になるために…隣にいて恥ずかしくないように頑張ってたのに?」

まぁ、ラスティは意外に能天気だから何も考えてないところはあるけれども。
陛下好きなのは、前世からだし結構長く思っているのだから、そろそろ報われてもいいだろうと思う。
すごく困った顔をしている陛下に僕はますます目を細めて睨む。

「陛下がいらないというのは…その努力を誰より見ていた僕は許せないです。だから…陛下がいらないというなら僕はラスティとパートナー契約して二人で地下に降ります。」

陛下は目を見開いて焦る。
地下は僕のホームだから…陛下にも本気を出せば負けない。
ラスティを、囲って陛下に…皆から姿を画することもできる。
もちろん、ラスティが望んだからだけども。

さぁどうする?陛下?

僕は、顔色を失って僕を見つめる陛下をにらみつけていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

処理中です...