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間話 陰の欠片
間話 へーかとアス アスside
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祭壇に座る僕を見て陛下は、目を細めて言った。
「…ラスティは?」
僕は地下に行きましたと答えた。
陛下はすこし考えてため息をついた。
苦しそうに。
「アスも…私がラスティに過保護だと思うかい?」
僕は首を横に振った。
「いいえ…へーかは…ははうえは…ちちうえをあいしているから…しょーがなぁいです」
未だ片言の僕に陛下はどこか情けない表情を向ける。
「…アスは…やさしいな…皆は、そう言うのだよ。過保護だと。」
僕は首をかしげる。
まぁ過保護だろう。
けど仕方ない。
「たからものはかくすものでは?」
僕の言葉に陛下は苦笑する。
そうだねと。
「…アスは…ラスティと私の願いだったら…隠れてくれるかい?」
僕は、頷く。
だって、ずっと隠れていたのだ。
覚えていないだろう。
僕を隠したのは…貴方の生まれる前の貴方だというのに。
砕けた僕を、地下に泣きながら…自分もボロボロで殆どが次の生に行ってしまっているというのに、わずかに残った昔の貴方が、僕を地下に封じだのだ。
守りたいからと。
覚えていなくても魂は同じだなと僕は思う。
黒くの奥底で、陰の欠片が苦笑している。
「アスは…」
陛下は…結構病んでいるよなぁと思う。
ラスティには見せないようにしているけど。
バルハルト公とジェン公は心配そうに僕らを見ている。
僕は、陛下に向かって手を広げた。
たぶん、陛下は僕がここに居たことで分かってしまったのだろう。
ラスティは、自分の足で立てるし戦える。
陛下がすべてを守る必要は思う無いのだと。
でも…陛下にはそういう存在が必要なのだ。
僕は陛下のパートナーにはなれない。
けれど…子供にはなれる。
「へーか…ははうえ…」
どうして僕が片言でしかしゃべれないのか。
まともにうごけないのは何故か。
陛下も無意識だったのだろう。
だから、困惑した。
そして、僕を見ていて自分の欲望を知った。
自分を全面的に頼るものが陛下は欲しかったのだ。
それが陛下の存在を支えるから。
傷つきすぎた陛下の魂は、多少狂ってしまっている。
愛が怖い。
いや。愛を受けることが怖い。
ただ、愛する存在が欲しいのだ。
返さなくていいから愛したい。
陛下の歪んでしまった愛情。
ラスティは、そうだった。
ただ愛せた。
けど、今のラスティは陛下がただ愛して守るだけの子供ではない。
自分で立てる。
歩ける。
陛下は、ラスティが一人前になったら自分から離れると信じている。
自分に自信がないから。
自分が陛下は嫌いだから。
自分と言う人間を陛下は価値を見出せないから。
だから綺麗なものを守りたいと思っている。
自分を純粋に信じてくれる綺麗なものに惹かれる。
そのきれいなものを守っていれば、守れれば陛下は幸せだと信じている。
「…アスは…分かっているのに…私をそうやって頼ってくれるの?」
陛下の言葉に僕は頷く。
「…はい。ラスティも…ちちうえもですよ…」
陛下の顔がゆがむ。
泣きそうに。
悲しい人だと思う。
そして。
幸せな人だと思う。
「へーか…だいすき…」
ぎゅうと抱きしめられつつ僕はかなしくなる。
陛下は、僕も愛してくれているけれど。
それは、家族愛でしかない。
子供として愛してくれている。
だから、ここにとどまってくれる。
ラスティの所に行きたいはずなのに。
ぐっと我慢して。
子供の僕を守ろうと立ち止まってくれた。
すごくうれしいけれど。
ちょっぴりさみしい。
「だから…へいか…ははうえ…ぼくは…おとうとがほしいです。」
きっと大丈夫ですから。
ラスティを助けるために…欠片として決着をつけましょう。
陛下の中の僕の兄弟にそう語りかけた。
「…ラスティは?」
僕は地下に行きましたと答えた。
陛下はすこし考えてため息をついた。
苦しそうに。
「アスも…私がラスティに過保護だと思うかい?」
僕は首を横に振った。
「いいえ…へーかは…ははうえは…ちちうえをあいしているから…しょーがなぁいです」
未だ片言の僕に陛下はどこか情けない表情を向ける。
「…アスは…やさしいな…皆は、そう言うのだよ。過保護だと。」
僕は首をかしげる。
まぁ過保護だろう。
けど仕方ない。
「たからものはかくすものでは?」
僕の言葉に陛下は苦笑する。
そうだねと。
「…アスは…ラスティと私の願いだったら…隠れてくれるかい?」
僕は、頷く。
だって、ずっと隠れていたのだ。
覚えていないだろう。
僕を隠したのは…貴方の生まれる前の貴方だというのに。
砕けた僕を、地下に泣きながら…自分もボロボロで殆どが次の生に行ってしまっているというのに、わずかに残った昔の貴方が、僕を地下に封じだのだ。
守りたいからと。
覚えていなくても魂は同じだなと僕は思う。
黒くの奥底で、陰の欠片が苦笑している。
「アスは…」
陛下は…結構病んでいるよなぁと思う。
ラスティには見せないようにしているけど。
バルハルト公とジェン公は心配そうに僕らを見ている。
僕は、陛下に向かって手を広げた。
たぶん、陛下は僕がここに居たことで分かってしまったのだろう。
ラスティは、自分の足で立てるし戦える。
陛下がすべてを守る必要は思う無いのだと。
でも…陛下にはそういう存在が必要なのだ。
僕は陛下のパートナーにはなれない。
けれど…子供にはなれる。
「へーか…ははうえ…」
どうして僕が片言でしかしゃべれないのか。
まともにうごけないのは何故か。
陛下も無意識だったのだろう。
だから、困惑した。
そして、僕を見ていて自分の欲望を知った。
自分を全面的に頼るものが陛下は欲しかったのだ。
それが陛下の存在を支えるから。
傷つきすぎた陛下の魂は、多少狂ってしまっている。
愛が怖い。
いや。愛を受けることが怖い。
ただ、愛する存在が欲しいのだ。
返さなくていいから愛したい。
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ただ愛せた。
けど、今のラスティは陛下がただ愛して守るだけの子供ではない。
自分で立てる。
歩ける。
陛下は、ラスティが一人前になったら自分から離れると信じている。
自分に自信がないから。
自分が陛下は嫌いだから。
自分と言う人間を陛下は価値を見出せないから。
だから綺麗なものを守りたいと思っている。
自分を純粋に信じてくれる綺麗なものに惹かれる。
そのきれいなものを守っていれば、守れれば陛下は幸せだと信じている。
「…アスは…分かっているのに…私をそうやって頼ってくれるの?」
陛下の言葉に僕は頷く。
「…はい。ラスティも…ちちうえもですよ…」
陛下の顔がゆがむ。
泣きそうに。
悲しい人だと思う。
そして。
幸せな人だと思う。
「へーか…だいすき…」
ぎゅうと抱きしめられつつ僕はかなしくなる。
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それは、家族愛でしかない。
子供として愛してくれている。
だから、ここにとどまってくれる。
ラスティの所に行きたいはずなのに。
ぐっと我慢して。
子供の僕を守ろうと立ち止まってくれた。
すごくうれしいけれど。
ちょっぴりさみしい。
「だから…へいか…ははうえ…ぼくは…おとうとがほしいです。」
きっと大丈夫ですから。
ラスティを助けるために…欠片として決着をつけましょう。
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