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第六章 運命の一年間
188 作戦開始 ディオスside
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バルハルトとジェンと合流したディオスはノルンと連絡を取る。
怒っていますよ?という言葉に、ごめんと伝えてくれと返し、二人が捕縛した暴れていた人たちを転移魔法で地下に送る。
この人物たちの世話で下は混乱するだろう。
しばらくは、時間が稼げるはずだとディオスは、頭をかく。
怒られるのは、承知しているし、この場合だと王自ら乗り込むのは下策だろう。
だが、教会の中で待っているだろう者はラスティ達で勝てる相手ではない。
ディオス自身も勝てる見込みは無いのだ。
バルハルトとジェンがすでに教会の近くに陣を作っていた。
操られていない騎士団たちが守る簡易の陣に逃げ込んでくる市民を地下に送る転移魔法陣を作る。
いくつか、転移の魔法陣を書きこむ魔石をつくり足の速い騎士数人に持たせて城と避難所に走るように命じた。
彼らは、早々に走り出す。
「おいおい…敵に奪われたらどうするんだ。」
ディオスは、竜が守っているし、あの空間にいったら正気に戻るだろうと軽く答える。
実際あの空間の主はアスだ。
陰の欠片と言うこの世界の神の対の者だという。
心を読む竜王と妖精王は、あの空間に入った人が主を害する者ならば即座に深い眠りにつかせるだろう。
それこそ、陽の欠片本人が行くくらいでなければ安全と言える。
大切なものは殆ど安全な所に居る。
これから行く場所に、大切なものはまだ会いるけれど。
ディオスは、ふと思う。
「聖者が、王を倒せはめでたしめでたしだったか?」
かつてリノがノーマと名が変わった時に彼が言っていた話だ。
全てが本当ではないだろうが、ディオスはなんとなくその部分は本当のように感じていた。
繰り返しの世界の記憶がすべてではないがあるディオスは、それは正解なのだろうと考えていた。
「物騒なことを言うな。」
バルハルトにとがめられディオスは、はいはいとおざなりの返事を返す。
最後まで足掻くつもりではあるが、それでラスティ達が無事ならばいいかもしれないと思う自分も確かにいるのだ。
繰り返しの悲劇を見続けた心はすでに疲弊してる。
別に自分のことなどどうでもいい。
そう思っていたはずだ。
ただ、ラスティを傍に置いて欲がでた。
もっと一緒に居たいと思った。
「……」
それにと、もう一人増えた息子を思い浮かべる。
強化魔法を使わねば未だに幼児のような青年。
その目は、無垢ではあるが思慮深く甘い琥珀色の瞳が真実を射抜く。
ーへーか。あした、ほんをよんでほしいな。ー
目が覚めた彼が言った言葉だ。
明日の約束が欲しいと、そっと言われた言葉に彼はこのことを見越していたのだろう。
「…勝てる見込みがあるのか?」
バルハルトの言葉にディオスは首を横に振った。
「わからんな。」
相手は世界を滅ぼすこともできる力を持っている。
おそらく対抗出来るとしたら、アスなのだろう。
だが、そのアスも体に馴染んでいないために戦うどころではない。
ふっとディオスは周りを見る。
闘いの気配があたりに満ちていた。
剣の音。
炎の音。
煙の臭い。
爆発音。
人々の悲鳴。
人々の怒号。
様々な戦いの気配。
ディオスは、唇を噛みしめた。
過去に、大切なものを失ったあの時を思い出す。
だが、今その思いに再びとらわれるのは間違いだという事もディオスは分かっている。
だが、どこか自分がいなくなって収まるならそれでもいいかと思ってしまう。
「しっかりしろ…」
ジェンが短く一言だけ言う。
バルハルトが頷いた。
「今日で片付けよう。明日からは片付けにも悩まされるだろうが…城に仕事も溜まってるんだ。」
さっさっと片付けて日常にかえるぞ。
そう笑うバルハルトにディオスは頷く。
「そうだな。」
そう言って歩き出すと、ディオスは誰かに呼ばれた気がして振り返る。
バルハルトも振り返り目を見開いた。
そこにはいつの間にか、トリスティがぼんやりと立っている。
「…トリスティ…」
トリスティは、ゆるく首を横に振る。
「へい…か…しんで…くださ…ちが…にげ…んんぅ…しんで……くだ……」
トリスティは、苦しみながら逃げろといい、再び死ねと言う。
胸をつかみ、トリスティは喘ぎながら逃げろと言葉を吐く。
ディオスは、眉を寄せら。
ジェンは、小さく舌打ちするとトリスティに眠りの魔法をかける。
硬質な何かがはじける音がした。
「くそ…効かないか…」
トリスティは、おそらく命じられているモノの声を必死に抗っているのだろう。
ディオスは、唇を噛みしめて剣に手を添える。
いっそ楽にした方がと言う考えが頭をよぎる。
トリスティは、それを察したほっとしような笑みを見せる。
苦しみをおわらせてほしいと。
必死にディオスの行動に抵抗をしないように、勝手に戦おうとする体を彼は抑えている。
「…ちがうな…」
ディオスは剣から手を離す。
トリスティの体が大きく揺れた。
瞳が絶望に染まる。
ジェンがため息をつきトリスティの足元に魔力を巡らす。
ディオスはジェンの魔力を使い魔法陣を描く。
2人で力を合わせて強力な魔法陣をくみ上げる。
バルハルトは眉をよせた。
「…危険だろう…」
ディオスは、ああと頷く。
「けど…ここでトリスティを死なせた方が…あの子達に怒られると思わないか?」
バルハルトはため息をついた。
「まぁ…あっちの方が今は戦力充実しているか。時間稼ぎにもなるだろうし」
バルハルトの言葉と同時に魔法陣が輝く。
光が収まった後にはトリスティは消えていた。
ディオスは、教会を睨みながらつぶやく。
「…まぁ…トリスティの無事を祈るかな…」
怒っていますよ?という言葉に、ごめんと伝えてくれと返し、二人が捕縛した暴れていた人たちを転移魔法で地下に送る。
この人物たちの世話で下は混乱するだろう。
しばらくは、時間が稼げるはずだとディオスは、頭をかく。
怒られるのは、承知しているし、この場合だと王自ら乗り込むのは下策だろう。
だが、教会の中で待っているだろう者はラスティ達で勝てる相手ではない。
ディオス自身も勝てる見込みは無いのだ。
バルハルトとジェンがすでに教会の近くに陣を作っていた。
操られていない騎士団たちが守る簡易の陣に逃げ込んでくる市民を地下に送る転移魔法陣を作る。
いくつか、転移の魔法陣を書きこむ魔石をつくり足の速い騎士数人に持たせて城と避難所に走るように命じた。
彼らは、早々に走り出す。
「おいおい…敵に奪われたらどうするんだ。」
ディオスは、竜が守っているし、あの空間にいったら正気に戻るだろうと軽く答える。
実際あの空間の主はアスだ。
陰の欠片と言うこの世界の神の対の者だという。
心を読む竜王と妖精王は、あの空間に入った人が主を害する者ならば即座に深い眠りにつかせるだろう。
それこそ、陽の欠片本人が行くくらいでなければ安全と言える。
大切なものは殆ど安全な所に居る。
これから行く場所に、大切なものはまだ会いるけれど。
ディオスは、ふと思う。
「聖者が、王を倒せはめでたしめでたしだったか?」
かつてリノがノーマと名が変わった時に彼が言っていた話だ。
全てが本当ではないだろうが、ディオスはなんとなくその部分は本当のように感じていた。
繰り返しの世界の記憶がすべてではないがあるディオスは、それは正解なのだろうと考えていた。
「物騒なことを言うな。」
バルハルトにとがめられディオスは、はいはいとおざなりの返事を返す。
最後まで足掻くつもりではあるが、それでラスティ達が無事ならばいいかもしれないと思う自分も確かにいるのだ。
繰り返しの悲劇を見続けた心はすでに疲弊してる。
別に自分のことなどどうでもいい。
そう思っていたはずだ。
ただ、ラスティを傍に置いて欲がでた。
もっと一緒に居たいと思った。
「……」
それにと、もう一人増えた息子を思い浮かべる。
強化魔法を使わねば未だに幼児のような青年。
その目は、無垢ではあるが思慮深く甘い琥珀色の瞳が真実を射抜く。
ーへーか。あした、ほんをよんでほしいな。ー
目が覚めた彼が言った言葉だ。
明日の約束が欲しいと、そっと言われた言葉に彼はこのことを見越していたのだろう。
「…勝てる見込みがあるのか?」
バルハルトの言葉にディオスは首を横に振った。
「わからんな。」
相手は世界を滅ぼすこともできる力を持っている。
おそらく対抗出来るとしたら、アスなのだろう。
だが、そのアスも体に馴染んでいないために戦うどころではない。
ふっとディオスは周りを見る。
闘いの気配があたりに満ちていた。
剣の音。
炎の音。
煙の臭い。
爆発音。
人々の悲鳴。
人々の怒号。
様々な戦いの気配。
ディオスは、唇を噛みしめた。
過去に、大切なものを失ったあの時を思い出す。
だが、今その思いに再びとらわれるのは間違いだという事もディオスは分かっている。
だが、どこか自分がいなくなって収まるならそれでもいいかと思ってしまう。
「しっかりしろ…」
ジェンが短く一言だけ言う。
バルハルトが頷いた。
「今日で片付けよう。明日からは片付けにも悩まされるだろうが…城に仕事も溜まってるんだ。」
さっさっと片付けて日常にかえるぞ。
そう笑うバルハルトにディオスは頷く。
「そうだな。」
そう言って歩き出すと、ディオスは誰かに呼ばれた気がして振り返る。
バルハルトも振り返り目を見開いた。
そこにはいつの間にか、トリスティがぼんやりと立っている。
「…トリスティ…」
トリスティは、ゆるく首を横に振る。
「へい…か…しんで…くださ…ちが…にげ…んんぅ…しんで……くだ……」
トリスティは、苦しみながら逃げろといい、再び死ねと言う。
胸をつかみ、トリスティは喘ぎながら逃げろと言葉を吐く。
ディオスは、眉を寄せら。
ジェンは、小さく舌打ちするとトリスティに眠りの魔法をかける。
硬質な何かがはじける音がした。
「くそ…効かないか…」
トリスティは、おそらく命じられているモノの声を必死に抗っているのだろう。
ディオスは、唇を噛みしめて剣に手を添える。
いっそ楽にした方がと言う考えが頭をよぎる。
トリスティは、それを察したほっとしような笑みを見せる。
苦しみをおわらせてほしいと。
必死にディオスの行動に抵抗をしないように、勝手に戦おうとする体を彼は抑えている。
「…ちがうな…」
ディオスは剣から手を離す。
トリスティの体が大きく揺れた。
瞳が絶望に染まる。
ジェンがため息をつきトリスティの足元に魔力を巡らす。
ディオスはジェンの魔力を使い魔法陣を描く。
2人で力を合わせて強力な魔法陣をくみ上げる。
バルハルトは眉をよせた。
「…危険だろう…」
ディオスは、ああと頷く。
「けど…ここでトリスティを死なせた方が…あの子達に怒られると思わないか?」
バルハルトはため息をついた。
「まぁ…あっちの方が今は戦力充実しているか。時間稼ぎにもなるだろうし」
バルハルトの言葉と同時に魔法陣が輝く。
光が収まった後にはトリスティは消えていた。
ディオスは、教会を睨みながらつぶやく。
「…まぁ…トリスティの無事を祈るかな…」
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