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第六章 運命の一年間
184 準備 ロイスside
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目を覚ますと見慣れない空間だった。
話だけは聞いていた場所だという事はすぐにわかった。
報告にあった、魔石の洞窟の奥。
巨大な竜が鎮座するそこは、ロイスにとって安全な所なのだと妙に上機嫌なノルンが言っていた。
ここには、ディオス、ラスティ、ジークハルト、マールがに居るという。
ディオスの師匠の…現在は門番の騎士が隣の部屋に寝ているとノルンが言っている。
バルハルトとジェンは上でここに送り込む人たちを保護しているのだという。
自分も手伝うととロイスは申し出たが、地上に出たらロイスは操られる可能性があるのだと言われた。
記憶が曖昧で、ここにいるということがそう言う事なのだろう。
ラスティ達を危険な目に合わせたらしいことはうっすらと覚えている。
「ロイス?」
ノルンが不思議そうにロイスを見つめている。
ロイスはかなり気持ちが下がっていた。
それはそうだろうなとノルンは思うが、特には何も言わなかった。
「…ロイス…入り口の転移石はどうしました?」
ロイスは首をかしげる。
「転移石…」
少し考えて思い出す。
この洞窟にラスティの魔石探しを付き合った時の入り口に置いた転移するするための魔石。
穴に落ちたラスティとマールを救出するためにディオスをバルハルトが来た後、自分たちは転移石を回収をしていない。ラスティとマールが帰って来た時に使うかもしれないとそのままにしている。
「ここからは使えませんが…もう少し上に登れば使えるかもしれません。普通の人には無理でもあなたとジークハルトには可能でしょう?」
ロイスは眉を寄せる。
「しかし…俺とジークハルトは外に出たら操られる可能性があのだろう?」
ノルンはそうですねと頷く。
「でも…戦いが始まればそれどころではなくなるでしょう。」
ふふっとノルンは微笑む。
ロイスは種息をついた。
この、ノルンと言う従者は美しく華奢な外見を持つ。
一見、弱そうな彼だが、かなりの強者だ。
ジークハルトやロイスとも渡り合える力を持つ魔法剣士でもある。
侮れば痛い目に合う。
だが、ノルンは自分の力を隠している。
ラスティやディオス達、城の者たちにすらノルンは上手く隠している。
周りの者は知らない裏の顔があるのだ。
ディオスは分かっていて、ラスティに害がないために黙っているだけだろうが。
基本的にはマールが、ラスティの傍についていて、彼を補佐している。
ノルンは裏で奔走する。
その構図が出来ているのだ。
弟のマールすら知らないであろう。
自分の兄が美しく華奢な外見を利用し主や弟に近づいてくる男たちを篭絡し、排除していることを。
彼らのためならば、己の肉体すらも利用していることも。
「……で?今度はどこのやつをたらし込んできたんだ?」
うふふと笑うノルンにロイスはため息をつく。
ノルンには常に何人か相手がいることが多い。
ラスティやマールに良からぬことをしようとする者たちを叩きのめして…自ら教育と称して従わせていることが多いと言った方がいいのかもしれない。
あまりというか褒められてことではないが、力を持つ者としての権利をノルンは存分に使用していた。
一部の騎士たちはノルンの餌食になり、まぁ自業自得だが、ノルンを恐れている状態だった。
ロイスとしては、そんなノルンの裏の顔の方が好ましいと思っている。
ラスティやマール、ジークハルトも可愛いとは思うし好ましいが、ノルンを敵にしてまでどうにかしようとは思わない。そもそもラスティとジークハルトは主の一族で、マールはノルンの弟だという立場だ。
悪く思うところもない。
我ながら悪趣味だなとも思いながらも、暗躍するノルンを一番好ましいとロイスは感じていた。
「貴方といるのは楽ですね。」
ノルンはそういいながら、苦笑する。
有能過ぎる従者のおかげでラスティの周りは、いろいろな意味で掃除されている。
ノルンが傍に居る限り、ラスティの目に見難いものは見えないだろう。
「ノルンの主思いには頭が下がるな。」
ロイスは心からそう思いつぶやく。
ノルンは少し考えて、首を横に振った。
「私のこれは…忠誠心などではないです。正直…自分でもよくわからないのですが…たぶん…贖罪のように感じています…ラスティ様を幸せな一生を過ごさせる…それを叶えなければ…許されない…そう思います。」
ノルンの言葉にロイスはそうかと頷く。
「…それに…この世界は多分…教会の神がいなくなったら変わるだろう。」
ロイスは首を傾げた。
「ノルン」
ロイスの問いかけにノルンは首を横に振る。
「アスが現れて…私も何か変わったのだと思う…あの子は教会の神の対だけと真逆の存在で真実を照らす光だ。教会の神はやはりこの世界の神で…この世界にルールを敷いている…でもアスはその神に縛られない。あの竜や…貴方はみたかどうかわからないけど…妖精がこの洞窟には居る。古に居たという…女性の姿をもってね。」
ノルンの言葉にロイスは首を傾げた。
「…古に居た…と言うのはわからないが…アスがカギだというのだな。」
そうとノルンは頷く。
「だから…君にお願いしたいんだ…私が最も信頼する…君にね?」
話だけは聞いていた場所だという事はすぐにわかった。
報告にあった、魔石の洞窟の奥。
巨大な竜が鎮座するそこは、ロイスにとって安全な所なのだと妙に上機嫌なノルンが言っていた。
ここには、ディオス、ラスティ、ジークハルト、マールがに居るという。
ディオスの師匠の…現在は門番の騎士が隣の部屋に寝ているとノルンが言っている。
バルハルトとジェンは上でここに送り込む人たちを保護しているのだという。
自分も手伝うととロイスは申し出たが、地上に出たらロイスは操られる可能性があるのだと言われた。
記憶が曖昧で、ここにいるということがそう言う事なのだろう。
ラスティ達を危険な目に合わせたらしいことはうっすらと覚えている。
「ロイス?」
ノルンが不思議そうにロイスを見つめている。
ロイスはかなり気持ちが下がっていた。
それはそうだろうなとノルンは思うが、特には何も言わなかった。
「…ロイス…入り口の転移石はどうしました?」
ロイスは首をかしげる。
「転移石…」
少し考えて思い出す。
この洞窟にラスティの魔石探しを付き合った時の入り口に置いた転移するするための魔石。
穴に落ちたラスティとマールを救出するためにディオスをバルハルトが来た後、自分たちは転移石を回収をしていない。ラスティとマールが帰って来た時に使うかもしれないとそのままにしている。
「ここからは使えませんが…もう少し上に登れば使えるかもしれません。普通の人には無理でもあなたとジークハルトには可能でしょう?」
ロイスは眉を寄せる。
「しかし…俺とジークハルトは外に出たら操られる可能性があのだろう?」
ノルンはそうですねと頷く。
「でも…戦いが始まればそれどころではなくなるでしょう。」
ふふっとノルンは微笑む。
ロイスは種息をついた。
この、ノルンと言う従者は美しく華奢な外見を持つ。
一見、弱そうな彼だが、かなりの強者だ。
ジークハルトやロイスとも渡り合える力を持つ魔法剣士でもある。
侮れば痛い目に合う。
だが、ノルンは自分の力を隠している。
ラスティやディオス達、城の者たちにすらノルンは上手く隠している。
周りの者は知らない裏の顔があるのだ。
ディオスは分かっていて、ラスティに害がないために黙っているだけだろうが。
基本的にはマールが、ラスティの傍についていて、彼を補佐している。
ノルンは裏で奔走する。
その構図が出来ているのだ。
弟のマールすら知らないであろう。
自分の兄が美しく華奢な外見を利用し主や弟に近づいてくる男たちを篭絡し、排除していることを。
彼らのためならば、己の肉体すらも利用していることも。
「……で?今度はどこのやつをたらし込んできたんだ?」
うふふと笑うノルンにロイスはため息をつく。
ノルンには常に何人か相手がいることが多い。
ラスティやマールに良からぬことをしようとする者たちを叩きのめして…自ら教育と称して従わせていることが多いと言った方がいいのかもしれない。
あまりというか褒められてことではないが、力を持つ者としての権利をノルンは存分に使用していた。
一部の騎士たちはノルンの餌食になり、まぁ自業自得だが、ノルンを恐れている状態だった。
ロイスとしては、そんなノルンの裏の顔の方が好ましいと思っている。
ラスティやマール、ジークハルトも可愛いとは思うし好ましいが、ノルンを敵にしてまでどうにかしようとは思わない。そもそもラスティとジークハルトは主の一族で、マールはノルンの弟だという立場だ。
悪く思うところもない。
我ながら悪趣味だなとも思いながらも、暗躍するノルンを一番好ましいとロイスは感じていた。
「貴方といるのは楽ですね。」
ノルンはそういいながら、苦笑する。
有能過ぎる従者のおかげでラスティの周りは、いろいろな意味で掃除されている。
ノルンが傍に居る限り、ラスティの目に見難いものは見えないだろう。
「ノルンの主思いには頭が下がるな。」
ロイスは心からそう思いつぶやく。
ノルンは少し考えて、首を横に振った。
「私のこれは…忠誠心などではないです。正直…自分でもよくわからないのですが…たぶん…贖罪のように感じています…ラスティ様を幸せな一生を過ごさせる…それを叶えなければ…許されない…そう思います。」
ノルンの言葉にロイスはそうかと頷く。
「…それに…この世界は多分…教会の神がいなくなったら変わるだろう。」
ロイスは首を傾げた。
「ノルン」
ロイスの問いかけにノルンは首を横に振る。
「アスが現れて…私も何か変わったのだと思う…あの子は教会の神の対だけと真逆の存在で真実を照らす光だ。教会の神はやはりこの世界の神で…この世界にルールを敷いている…でもアスはその神に縛られない。あの竜や…貴方はみたかどうかわからないけど…妖精がこの洞窟には居る。古に居たという…女性の姿をもってね。」
ノルンの言葉にロイスは首を傾げた。
「…古に居た…と言うのはわからないが…アスがカギだというのだな。」
そうとノルンは頷く。
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