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第六章 運命の一年間
170 悪い予感
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「しかし…気持ち悪いな…」
陛下が、アスの頭を撫でながらため息をついた。
もちろんアスが気持ち悪いのではないだろうが、陛下はじっとアスを何か言いたげに見つめている。
「…誰かの思惑を感じる。この子のでもないだろうし…お前の言う陽の欠片の仕業でもないだろう。」
子竜はうむと頷く。
『天の欠片も関係ないだろう。そもそも、この世界は、天の欠片が陽の欠片に与えると決めた。責任を取らせるために。そのため、天の欠片としては…主と王の欠片はここに居る必要はない。どちらかといえば…はやく天に帰って来いと思っているはずだ。まぁ…我も直接あったわけでもないが。』
陛下の説明で何となくわかったようなわからないような僕は大人しく黙る。
「なら…残っているのは…星の欠片か?」
子竜は、神の欠片の考えはわからんが状況的にそれだろうと思うと陛下を見る。
陛下も眉をよせた。
アスの頭を撫でつつ陛下は考えているようだ。
「……なぜだろうな…」
子竜はふむと眉を寄せる。
『直接会ったことは無いのだが…星の欠片は自分を慕ってくれていると思っている陽の欠片を可愛がっていた。陽の欠片を一人にするのは嫌なのだろう。それと陰の欠片と王の欠片に帰ってきてほしくないとも思っているはずだ。天の欠片にお仕置きされたくはないからな。』
陛下は、やれやれと頭をかく。
「その星の欠片は直接何かできるのか?」
子竜は出来ないだろうなと首をかしげる。
「ただ、天に帰った魂に仕掛けをする可能性はある。王の欠片の現身であるお主と主…陰の欠片の現身に宿っていたそなたの番は、天に帰れなかったので、その可能性は少ないだろうが…気をつけねばならぬだろう。」
陛下は眉を寄せた。
「しかし…なぜ王の欠片の魂と、ラスティの魂とアスの魂は天に帰らなかった?肉体が死んだのなら魂は天に帰るのだろう。役目は終わっていたみたいだし…帰れたのではないのか?」
子竜はふむと頷く。
『王の欠片は帰れたはずだが、陰の欠片が心配だったのだろう。王の魂は、主の魔石に寄り添って時を待っていた。王の番の魂は、元々は主の魂が生み出した主の一部のような魂だ。主の骸が地下にあったので魂のみになると魔石の中へと帰っていた。王の欠片と王の番の魂は、あの地下の魔石で生まれ変わるまでの間過ごしていたため縁が深くなったのだ。』
陛下は眉を寄せる。
『もっと単純に言うべきだろうか…主の魂を…陰の欠片を人質にしていたのだ。実際は聖者の魂の中に封印されていたのだか…主の魂は、陽の欠片に利用されるのを防ぐためにも自身を封じていたのだろう。それでも力は奪われてしまったのだが、代わりに魂は守ったのだ。主の力が完全に戻るのは数か月はかかるだろうが…この眠りで三分の一ほどは急激に戻しているのだろう。だが…それ以上は、緩やかに戻すことになるだろう。器が壊れてしまうからな。』
主の力は期待するなよと子竜は言う。
『かわりに我が力を貸そう。王は、小鳥の使い魔を欲しいと思っていたのだろう。我を使ってもいいぞ?』
陛下はいやいやと首を横に振った。
「小鳥の使い魔でなくてもいい。アスの魂を宿す器が小鳥程度しか作れないと思っていたからだよ。君がそのままで力を貸してくれるならそれでいい。できれば子竜のその姿の方が助かるのだがね。」
分かったと頷く子竜はちらりと僕を見た。
少し考えてからアス傍に寄り添うと丸くなって僕を見る。
「…どうしたの?」
子竜は、首をかしげた。
『しばらくここに王の番はいるのだろう?』
うんと僕は頷く。
『ならば我は主の傍でそなたを見張っておる。』
陛下は苦笑すると、ロイスを見る。
「ロイスもジークも起きそうにないなぁ。」
子竜はしばらく寝かせておけと陛下に言う。
陛下は首をかしげた。
『小一時間でその騎士は起きるだろう。主と縁を結んでおいた方がその騎士のためだ。』
陛下は首をかしげる。
『王よ…気をつけろ。動くぞ?』
子竜はそういうと、首をアスの手に置いた。
「動く?」
僕が問うと子竜はうむと頷く。
『気をつけろ、王の番。』
子竜はそういうと目を閉じた。
陛下は、少し考えてからバルハルト公とジェン公の所にいくと言って部屋の外に出た。
ノルンとマールが毛布をジークとロイスに掛けると処理の終わった書類の整理を始めた。
僕も書類を進めようと書類に向かう。
静かにペンが動く音だけが部屋に響く。
静寂の時の中、僕は何が動くのだろうと考える。
教会だろう、けれどなにか別の不安がよぎる。
こうやって穏やかに過ごせる時が終わるような気がして、胸がざわざわとする感覚を抱えながら、ペンを動かしていた。
陛下が、アスの頭を撫でながらため息をついた。
もちろんアスが気持ち悪いのではないだろうが、陛下はじっとアスを何か言いたげに見つめている。
「…誰かの思惑を感じる。この子のでもないだろうし…お前の言う陽の欠片の仕業でもないだろう。」
子竜はうむと頷く。
『天の欠片も関係ないだろう。そもそも、この世界は、天の欠片が陽の欠片に与えると決めた。責任を取らせるために。そのため、天の欠片としては…主と王の欠片はここに居る必要はない。どちらかといえば…はやく天に帰って来いと思っているはずだ。まぁ…我も直接あったわけでもないが。』
陛下の説明で何となくわかったようなわからないような僕は大人しく黙る。
「なら…残っているのは…星の欠片か?」
子竜は、神の欠片の考えはわからんが状況的にそれだろうと思うと陛下を見る。
陛下も眉をよせた。
アスの頭を撫でつつ陛下は考えているようだ。
「……なぜだろうな…」
子竜はふむと眉を寄せる。
『直接会ったことは無いのだが…星の欠片は自分を慕ってくれていると思っている陽の欠片を可愛がっていた。陽の欠片を一人にするのは嫌なのだろう。それと陰の欠片と王の欠片に帰ってきてほしくないとも思っているはずだ。天の欠片にお仕置きされたくはないからな。』
陛下は、やれやれと頭をかく。
「その星の欠片は直接何かできるのか?」
子竜は出来ないだろうなと首をかしげる。
「ただ、天に帰った魂に仕掛けをする可能性はある。王の欠片の現身であるお主と主…陰の欠片の現身に宿っていたそなたの番は、天に帰れなかったので、その可能性は少ないだろうが…気をつけねばならぬだろう。」
陛下は眉を寄せた。
「しかし…なぜ王の欠片の魂と、ラスティの魂とアスの魂は天に帰らなかった?肉体が死んだのなら魂は天に帰るのだろう。役目は終わっていたみたいだし…帰れたのではないのか?」
子竜はふむと頷く。
『王の欠片は帰れたはずだが、陰の欠片が心配だったのだろう。王の魂は、主の魔石に寄り添って時を待っていた。王の番の魂は、元々は主の魂が生み出した主の一部のような魂だ。主の骸が地下にあったので魂のみになると魔石の中へと帰っていた。王の欠片と王の番の魂は、あの地下の魔石で生まれ変わるまでの間過ごしていたため縁が深くなったのだ。』
陛下は眉を寄せる。
『もっと単純に言うべきだろうか…主の魂を…陰の欠片を人質にしていたのだ。実際は聖者の魂の中に封印されていたのだか…主の魂は、陽の欠片に利用されるのを防ぐためにも自身を封じていたのだろう。それでも力は奪われてしまったのだが、代わりに魂は守ったのだ。主の力が完全に戻るのは数か月はかかるだろうが…この眠りで三分の一ほどは急激に戻しているのだろう。だが…それ以上は、緩やかに戻すことになるだろう。器が壊れてしまうからな。』
主の力は期待するなよと子竜は言う。
『かわりに我が力を貸そう。王は、小鳥の使い魔を欲しいと思っていたのだろう。我を使ってもいいぞ?』
陛下はいやいやと首を横に振った。
「小鳥の使い魔でなくてもいい。アスの魂を宿す器が小鳥程度しか作れないと思っていたからだよ。君がそのままで力を貸してくれるならそれでいい。できれば子竜のその姿の方が助かるのだがね。」
分かったと頷く子竜はちらりと僕を見た。
少し考えてからアス傍に寄り添うと丸くなって僕を見る。
「…どうしたの?」
子竜は、首をかしげた。
『しばらくここに王の番はいるのだろう?』
うんと僕は頷く。
『ならば我は主の傍でそなたを見張っておる。』
陛下は苦笑すると、ロイスを見る。
「ロイスもジークも起きそうにないなぁ。」
子竜はしばらく寝かせておけと陛下に言う。
陛下は首をかしげた。
『小一時間でその騎士は起きるだろう。主と縁を結んでおいた方がその騎士のためだ。』
陛下は首をかしげる。
『王よ…気をつけろ。動くぞ?』
子竜はそういうと、首をアスの手に置いた。
「動く?」
僕が問うと子竜はうむと頷く。
『気をつけろ、王の番。』
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陛下は、少し考えてからバルハルト公とジェン公の所にいくと言って部屋の外に出た。
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静寂の時の中、僕は何が動くのだろうと考える。
教会だろう、けれどなにか別の不安がよぎる。
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