183 / 233
第六章 運命の一年間
165 誕生もしくは復活 マールside
しおりを挟む
バルハルトにディオスがさっさとしろとため息をついた。
「お前…何をぐずぐずしているんだ??」
バルハルトの言葉にディオスは肩を震わす。
マールはここまで自信のなさそうなディオスを見たのは初めてかもしれないと思う。
「…分かってる…」
バルハルトは眉を寄せる。
「俺には魔術の構成はわからんが…知識の範囲では問題ないと思うのだが…何か問題なのか?」
バルハルトはわからないというが、彼の魔術レベルはジェンに次ぐと言っていいとマールは思っている。
魔力量は多くないようだが、ジェンのパートナーとして暮らしている所為か知識はあるのだ。
普段は筋肉馬鹿のような言動をしているが、それは周りの目を欺くためだとマールは知っていた。
奥の間にいる時にはバルハルトは王宮での言動とは違うからだ。
ラスティは奥の間のバルハルトのほうばかり見ているから知らないだろうが。
「問題はないはずだ…失敗したくないから…完璧だと思っている…けど…少し…自信がない…」
あ?とバルハルトがディオスを睨んだ。
「正直…世界がどうこうなるとか…どうでもいい…ラスティが望むなら滅ぼしてもいいくらい、どうでもいい。けど…アスの体作るの失敗するのは、想像するだけで嫌でどうしようって感じなんだ。世界滅ぼす方が簡単なんだものさぁ~」
ディオスの言葉にバルハルトはこぶしを握る。
「だぁぁ!!お前馬鹿か!!ほんとに馬鹿か!!錯乱してんじゃねぇよ!!!」
バルハルトに殴られてようやくディオスを始めた。
マールは、悶々とした思いを感じながら儀式を眺める。
「王は主を大切にしてくれそうだのぉ…」
竜はそう言って苦笑する。
「愛情がわからぬと言いながら愛情深い、矛盾を抱える存在であるがな…」
マールは、竜の言葉を聞きながら首をかしげる。
「我と戦い、また話しながら王は主を復活させる魔術を構築していた。歪んではおるが主を受け入れようと努力はしておるようではあるがな。」
ディオスは、竜と話している間に構築した魔術を構築していたのだろう。
多数の魔法陣が魔石を囲った。
少しかんがえているようだったがディオスは、ゆっくりと魔石を眺めている。
「王族として…迎えたいからね…」
最初あった時は多少の警戒はあったはずのディオスはすっかりアスにほだされていた。
息子として迎える気なのだ。
ディオスは、剣を抜くと自身の後ろ髪をバッサリと切ってしまった。
バルハルトとマールが目を見開いて慌てているとディオスは自分の切った髪を魔石に押し付ける。
魔石の中に金の髪が消えていく。
竜は、ほぅと感心したように息を吐いた。
「王は、更に縁を望んだか。髪には魔力が宿る。主にそれをささげるという事は王の魔力も主は得ることになる。王は主を主従として結ぶつもりはないようだな。代わりに、縁で結んだ。髪の魔力を身の内に取り込ませることで、親子関係となるか。」
竜が感心しているが、マールはそれはおそらくディオスのけじめなのだろうと思う。
アスを息子として愛するための。
「なるほど…王としては王の番に操をたてるためということか。」
竜は、主は魅力的だからと頷いているが、マールは竜の主が魅力的というところは置いておいて、王が予防線を張ったのだろうなと思う。
アスは良い子だった。
けれども、竜が骸とする魔石と結びついたアスが先ほどまで自分たちの傍にいたアスのままという保証はない。
竜は、マールの思考を読みとったのか、そういう考え方もあるのだなと感心していた。
金の魔力に包ませて魔石は人の形をとっていく。
ゆっくりと形になったその姿は、ラスティにはよく似ているが更に華奢な姿だった。
だが、身長はラスティより高く、どちらかと言うと可愛らしい雰囲気をもつラスティとは違って、美しいと思わせる何かを、持っていた。
「成功したようだな…」
バルハルトの言葉がマールの耳に入る。
マールは、アスに見とれていたことに気が付いた。
宙に浮いていたアスの体がぐらりと揺れる。
支えていた魔力が切れたのだろう。
ふっと下へとアスの体は落ちてくる。
ディオスは腕の中に落ちてきた彼に自分のマントを脱いでかけた。
そして優しく包むとほっと息を吐いた。
「はぁ…成功したかな…」
そうつぶやくとディオスは再度息を吐く。
ディオスは、その場でアスを抱えたまま座り込んだ。
「おい…大丈夫か?」
バルハルトの言葉にディオスは、頷く。
「うーん…やっぱりこうなったか…外見は指定してなかったから魂の形に添ったのだとは思うのだけど。」
そういうとディオスは竜を見る。
「うむ…主そものも…見事だ。王よ」
満足そうな竜の様子にディオスは、はぁと息を吐く。
「ラスティに似たのではなく、ラスティが似ているという事かい?」
竜は、さてと首をかしげる。
「卵が先が鶏が先かと聞かれても我も応えかねる。」
ディオスは、そうとだけ呟くと腕の中のアスを見る。
「うん…眠っているだけだ…魂が定着するのは少し時間がかかるかな…でもきちんと結ばれているから離れることはないな…」
バルハルトが、ラスティを抱き上げたのでマールは少ししびれた足を延ばす。
竜は、とことこと尻尾を揺らしながらディオスの傍に歩いて行った。
「さて…王よ…我はどうする?」
ディオスは少し考えてから、アスを抱えるとマールと見た。
「マール…頼めるかい?」
マールは、はいと頷くと竜の元へしびれをごまかしつつ歩いていくと抱えあげた。
「ジークが暴れてそうだけど…帰ろうか…転移するよ」
ディオスの言葉と共に皆の足元に魔法陣が浮かぶ。
ふとディオスは周りを見渡した。
「避難所にするのは…いいかもね…ここ…」
「お前…何をぐずぐずしているんだ??」
バルハルトの言葉にディオスは肩を震わす。
マールはここまで自信のなさそうなディオスを見たのは初めてかもしれないと思う。
「…分かってる…」
バルハルトは眉を寄せる。
「俺には魔術の構成はわからんが…知識の範囲では問題ないと思うのだが…何か問題なのか?」
バルハルトはわからないというが、彼の魔術レベルはジェンに次ぐと言っていいとマールは思っている。
魔力量は多くないようだが、ジェンのパートナーとして暮らしている所為か知識はあるのだ。
普段は筋肉馬鹿のような言動をしているが、それは周りの目を欺くためだとマールは知っていた。
奥の間にいる時にはバルハルトは王宮での言動とは違うからだ。
ラスティは奥の間のバルハルトのほうばかり見ているから知らないだろうが。
「問題はないはずだ…失敗したくないから…完璧だと思っている…けど…少し…自信がない…」
あ?とバルハルトがディオスを睨んだ。
「正直…世界がどうこうなるとか…どうでもいい…ラスティが望むなら滅ぼしてもいいくらい、どうでもいい。けど…アスの体作るの失敗するのは、想像するだけで嫌でどうしようって感じなんだ。世界滅ぼす方が簡単なんだものさぁ~」
ディオスの言葉にバルハルトはこぶしを握る。
「だぁぁ!!お前馬鹿か!!ほんとに馬鹿か!!錯乱してんじゃねぇよ!!!」
バルハルトに殴られてようやくディオスを始めた。
マールは、悶々とした思いを感じながら儀式を眺める。
「王は主を大切にしてくれそうだのぉ…」
竜はそう言って苦笑する。
「愛情がわからぬと言いながら愛情深い、矛盾を抱える存在であるがな…」
マールは、竜の言葉を聞きながら首をかしげる。
「我と戦い、また話しながら王は主を復活させる魔術を構築していた。歪んではおるが主を受け入れようと努力はしておるようではあるがな。」
ディオスは、竜と話している間に構築した魔術を構築していたのだろう。
多数の魔法陣が魔石を囲った。
少しかんがえているようだったがディオスは、ゆっくりと魔石を眺めている。
「王族として…迎えたいからね…」
最初あった時は多少の警戒はあったはずのディオスはすっかりアスにほだされていた。
息子として迎える気なのだ。
ディオスは、剣を抜くと自身の後ろ髪をバッサリと切ってしまった。
バルハルトとマールが目を見開いて慌てているとディオスは自分の切った髪を魔石に押し付ける。
魔石の中に金の髪が消えていく。
竜は、ほぅと感心したように息を吐いた。
「王は、更に縁を望んだか。髪には魔力が宿る。主にそれをささげるという事は王の魔力も主は得ることになる。王は主を主従として結ぶつもりはないようだな。代わりに、縁で結んだ。髪の魔力を身の内に取り込ませることで、親子関係となるか。」
竜が感心しているが、マールはそれはおそらくディオスのけじめなのだろうと思う。
アスを息子として愛するための。
「なるほど…王としては王の番に操をたてるためということか。」
竜は、主は魅力的だからと頷いているが、マールは竜の主が魅力的というところは置いておいて、王が予防線を張ったのだろうなと思う。
アスは良い子だった。
けれども、竜が骸とする魔石と結びついたアスが先ほどまで自分たちの傍にいたアスのままという保証はない。
竜は、マールの思考を読みとったのか、そういう考え方もあるのだなと感心していた。
金の魔力に包ませて魔石は人の形をとっていく。
ゆっくりと形になったその姿は、ラスティにはよく似ているが更に華奢な姿だった。
だが、身長はラスティより高く、どちらかと言うと可愛らしい雰囲気をもつラスティとは違って、美しいと思わせる何かを、持っていた。
「成功したようだな…」
バルハルトの言葉がマールの耳に入る。
マールは、アスに見とれていたことに気が付いた。
宙に浮いていたアスの体がぐらりと揺れる。
支えていた魔力が切れたのだろう。
ふっと下へとアスの体は落ちてくる。
ディオスは腕の中に落ちてきた彼に自分のマントを脱いでかけた。
そして優しく包むとほっと息を吐いた。
「はぁ…成功したかな…」
そうつぶやくとディオスは再度息を吐く。
ディオスは、その場でアスを抱えたまま座り込んだ。
「おい…大丈夫か?」
バルハルトの言葉にディオスは、頷く。
「うーん…やっぱりこうなったか…外見は指定してなかったから魂の形に添ったのだとは思うのだけど。」
そういうとディオスは竜を見る。
「うむ…主そものも…見事だ。王よ」
満足そうな竜の様子にディオスは、はぁと息を吐く。
「ラスティに似たのではなく、ラスティが似ているという事かい?」
竜は、さてと首をかしげる。
「卵が先が鶏が先かと聞かれても我も応えかねる。」
ディオスは、そうとだけ呟くと腕の中のアスを見る。
「うん…眠っているだけだ…魂が定着するのは少し時間がかかるかな…でもきちんと結ばれているから離れることはないな…」
バルハルトが、ラスティを抱き上げたのでマールは少ししびれた足を延ばす。
竜は、とことこと尻尾を揺らしながらディオスの傍に歩いて行った。
「さて…王よ…我はどうする?」
ディオスは少し考えてから、アスを抱えるとマールと見た。
「マール…頼めるかい?」
マールは、はいと頷くと竜の元へしびれをごまかしつつ歩いていくと抱えあげた。
「ジークが暴れてそうだけど…帰ろうか…転移するよ」
ディオスの言葉と共に皆の足元に魔法陣が浮かぶ。
ふとディオスは周りを見渡した。
「避難所にするのは…いいかもね…ここ…」
0
お気に入りに追加
505
あなたにおすすめの小説
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?
名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。
そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________
※
・非王道気味
・固定カプ予定は無い
・悲しい過去🐜のたまにシリアス
・話の流れが遅い

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる