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第六章 運命の一年間
165 誕生もしくは復活 マールside
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バルハルトにディオスがさっさとしろとため息をついた。
「お前…何をぐずぐずしているんだ??」
バルハルトの言葉にディオスは肩を震わす。
マールはここまで自信のなさそうなディオスを見たのは初めてかもしれないと思う。
「…分かってる…」
バルハルトは眉を寄せる。
「俺には魔術の構成はわからんが…知識の範囲では問題ないと思うのだが…何か問題なのか?」
バルハルトはわからないというが、彼の魔術レベルはジェンに次ぐと言っていいとマールは思っている。
魔力量は多くないようだが、ジェンのパートナーとして暮らしている所為か知識はあるのだ。
普段は筋肉馬鹿のような言動をしているが、それは周りの目を欺くためだとマールは知っていた。
奥の間にいる時にはバルハルトは王宮での言動とは違うからだ。
ラスティは奥の間のバルハルトのほうばかり見ているから知らないだろうが。
「問題はないはずだ…失敗したくないから…完璧だと思っている…けど…少し…自信がない…」
あ?とバルハルトがディオスを睨んだ。
「正直…世界がどうこうなるとか…どうでもいい…ラスティが望むなら滅ぼしてもいいくらい、どうでもいい。けど…アスの体作るの失敗するのは、想像するだけで嫌でどうしようって感じなんだ。世界滅ぼす方が簡単なんだものさぁ~」
ディオスの言葉にバルハルトはこぶしを握る。
「だぁぁ!!お前馬鹿か!!ほんとに馬鹿か!!錯乱してんじゃねぇよ!!!」
バルハルトに殴られてようやくディオスを始めた。
マールは、悶々とした思いを感じながら儀式を眺める。
「王は主を大切にしてくれそうだのぉ…」
竜はそう言って苦笑する。
「愛情がわからぬと言いながら愛情深い、矛盾を抱える存在であるがな…」
マールは、竜の言葉を聞きながら首をかしげる。
「我と戦い、また話しながら王は主を復活させる魔術を構築していた。歪んではおるが主を受け入れようと努力はしておるようではあるがな。」
ディオスは、竜と話している間に構築した魔術を構築していたのだろう。
多数の魔法陣が魔石を囲った。
少しかんがえているようだったがディオスは、ゆっくりと魔石を眺めている。
「王族として…迎えたいからね…」
最初あった時は多少の警戒はあったはずのディオスはすっかりアスにほだされていた。
息子として迎える気なのだ。
ディオスは、剣を抜くと自身の後ろ髪をバッサリと切ってしまった。
バルハルトとマールが目を見開いて慌てているとディオスは自分の切った髪を魔石に押し付ける。
魔石の中に金の髪が消えていく。
竜は、ほぅと感心したように息を吐いた。
「王は、更に縁を望んだか。髪には魔力が宿る。主にそれをささげるという事は王の魔力も主は得ることになる。王は主を主従として結ぶつもりはないようだな。代わりに、縁で結んだ。髪の魔力を身の内に取り込ませることで、親子関係となるか。」
竜が感心しているが、マールはそれはおそらくディオスのけじめなのだろうと思う。
アスを息子として愛するための。
「なるほど…王としては王の番に操をたてるためということか。」
竜は、主は魅力的だからと頷いているが、マールは竜の主が魅力的というところは置いておいて、王が予防線を張ったのだろうなと思う。
アスは良い子だった。
けれども、竜が骸とする魔石と結びついたアスが先ほどまで自分たちの傍にいたアスのままという保証はない。
竜は、マールの思考を読みとったのか、そういう考え方もあるのだなと感心していた。
金の魔力に包ませて魔石は人の形をとっていく。
ゆっくりと形になったその姿は、ラスティにはよく似ているが更に華奢な姿だった。
だが、身長はラスティより高く、どちらかと言うと可愛らしい雰囲気をもつラスティとは違って、美しいと思わせる何かを、持っていた。
「成功したようだな…」
バルハルトの言葉がマールの耳に入る。
マールは、アスに見とれていたことに気が付いた。
宙に浮いていたアスの体がぐらりと揺れる。
支えていた魔力が切れたのだろう。
ふっと下へとアスの体は落ちてくる。
ディオスは腕の中に落ちてきた彼に自分のマントを脱いでかけた。
そして優しく包むとほっと息を吐いた。
「はぁ…成功したかな…」
そうつぶやくとディオスは再度息を吐く。
ディオスは、その場でアスを抱えたまま座り込んだ。
「おい…大丈夫か?」
バルハルトの言葉にディオスは、頷く。
「うーん…やっぱりこうなったか…外見は指定してなかったから魂の形に添ったのだとは思うのだけど。」
そういうとディオスは竜を見る。
「うむ…主そものも…見事だ。王よ」
満足そうな竜の様子にディオスは、はぁと息を吐く。
「ラスティに似たのではなく、ラスティが似ているという事かい?」
竜は、さてと首をかしげる。
「卵が先が鶏が先かと聞かれても我も応えかねる。」
ディオスは、そうとだけ呟くと腕の中のアスを見る。
「うん…眠っているだけだ…魂が定着するのは少し時間がかかるかな…でもきちんと結ばれているから離れることはないな…」
バルハルトが、ラスティを抱き上げたのでマールは少ししびれた足を延ばす。
竜は、とことこと尻尾を揺らしながらディオスの傍に歩いて行った。
「さて…王よ…我はどうする?」
ディオスは少し考えてから、アスを抱えるとマールと見た。
「マール…頼めるかい?」
マールは、はいと頷くと竜の元へしびれをごまかしつつ歩いていくと抱えあげた。
「ジークが暴れてそうだけど…帰ろうか…転移するよ」
ディオスの言葉と共に皆の足元に魔法陣が浮かぶ。
ふとディオスは周りを見渡した。
「避難所にするのは…いいかもね…ここ…」
「お前…何をぐずぐずしているんだ??」
バルハルトの言葉にディオスは肩を震わす。
マールはここまで自信のなさそうなディオスを見たのは初めてかもしれないと思う。
「…分かってる…」
バルハルトは眉を寄せる。
「俺には魔術の構成はわからんが…知識の範囲では問題ないと思うのだが…何か問題なのか?」
バルハルトはわからないというが、彼の魔術レベルはジェンに次ぐと言っていいとマールは思っている。
魔力量は多くないようだが、ジェンのパートナーとして暮らしている所為か知識はあるのだ。
普段は筋肉馬鹿のような言動をしているが、それは周りの目を欺くためだとマールは知っていた。
奥の間にいる時にはバルハルトは王宮での言動とは違うからだ。
ラスティは奥の間のバルハルトのほうばかり見ているから知らないだろうが。
「問題はないはずだ…失敗したくないから…完璧だと思っている…けど…少し…自信がない…」
あ?とバルハルトがディオスを睨んだ。
「正直…世界がどうこうなるとか…どうでもいい…ラスティが望むなら滅ぼしてもいいくらい、どうでもいい。けど…アスの体作るの失敗するのは、想像するだけで嫌でどうしようって感じなんだ。世界滅ぼす方が簡単なんだものさぁ~」
ディオスの言葉にバルハルトはこぶしを握る。
「だぁぁ!!お前馬鹿か!!ほんとに馬鹿か!!錯乱してんじゃねぇよ!!!」
バルハルトに殴られてようやくディオスを始めた。
マールは、悶々とした思いを感じながら儀式を眺める。
「王は主を大切にしてくれそうだのぉ…」
竜はそう言って苦笑する。
「愛情がわからぬと言いながら愛情深い、矛盾を抱える存在であるがな…」
マールは、竜の言葉を聞きながら首をかしげる。
「我と戦い、また話しながら王は主を復活させる魔術を構築していた。歪んではおるが主を受け入れようと努力はしておるようではあるがな。」
ディオスは、竜と話している間に構築した魔術を構築していたのだろう。
多数の魔法陣が魔石を囲った。
少しかんがえているようだったがディオスは、ゆっくりと魔石を眺めている。
「王族として…迎えたいからね…」
最初あった時は多少の警戒はあったはずのディオスはすっかりアスにほだされていた。
息子として迎える気なのだ。
ディオスは、剣を抜くと自身の後ろ髪をバッサリと切ってしまった。
バルハルトとマールが目を見開いて慌てているとディオスは自分の切った髪を魔石に押し付ける。
魔石の中に金の髪が消えていく。
竜は、ほぅと感心したように息を吐いた。
「王は、更に縁を望んだか。髪には魔力が宿る。主にそれをささげるという事は王の魔力も主は得ることになる。王は主を主従として結ぶつもりはないようだな。代わりに、縁で結んだ。髪の魔力を身の内に取り込ませることで、親子関係となるか。」
竜が感心しているが、マールはそれはおそらくディオスのけじめなのだろうと思う。
アスを息子として愛するための。
「なるほど…王としては王の番に操をたてるためということか。」
竜は、主は魅力的だからと頷いているが、マールは竜の主が魅力的というところは置いておいて、王が予防線を張ったのだろうなと思う。
アスは良い子だった。
けれども、竜が骸とする魔石と結びついたアスが先ほどまで自分たちの傍にいたアスのままという保証はない。
竜は、マールの思考を読みとったのか、そういう考え方もあるのだなと感心していた。
金の魔力に包ませて魔石は人の形をとっていく。
ゆっくりと形になったその姿は、ラスティにはよく似ているが更に華奢な姿だった。
だが、身長はラスティより高く、どちらかと言うと可愛らしい雰囲気をもつラスティとは違って、美しいと思わせる何かを、持っていた。
「成功したようだな…」
バルハルトの言葉がマールの耳に入る。
マールは、アスに見とれていたことに気が付いた。
宙に浮いていたアスの体がぐらりと揺れる。
支えていた魔力が切れたのだろう。
ふっと下へとアスの体は落ちてくる。
ディオスは腕の中に落ちてきた彼に自分のマントを脱いでかけた。
そして優しく包むとほっと息を吐いた。
「はぁ…成功したかな…」
そうつぶやくとディオスは再度息を吐く。
ディオスは、その場でアスを抱えたまま座り込んだ。
「おい…大丈夫か?」
バルハルトの言葉にディオスは、頷く。
「うーん…やっぱりこうなったか…外見は指定してなかったから魂の形に添ったのだとは思うのだけど。」
そういうとディオスは竜を見る。
「うむ…主そものも…見事だ。王よ」
満足そうな竜の様子にディオスは、はぁと息を吐く。
「ラスティに似たのではなく、ラスティが似ているという事かい?」
竜は、さてと首をかしげる。
「卵が先が鶏が先かと聞かれても我も応えかねる。」
ディオスは、そうとだけ呟くと腕の中のアスを見る。
「うん…眠っているだけだ…魂が定着するのは少し時間がかかるかな…でもきちんと結ばれているから離れることはないな…」
バルハルトが、ラスティを抱き上げたのでマールは少ししびれた足を延ばす。
竜は、とことこと尻尾を揺らしながらディオスの傍に歩いて行った。
「さて…王よ…我はどうする?」
ディオスは少し考えてから、アスを抱えるとマールと見た。
「マール…頼めるかい?」
マールは、はいと頷くと竜の元へしびれをごまかしつつ歩いていくと抱えあげた。
「ジークが暴れてそうだけど…帰ろうか…転移するよ」
ディオスの言葉と共に皆の足元に魔法陣が浮かぶ。
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