不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第六章 運命の一年間

157 守護者 アスside

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バルハルトに守られる形で、マールとアスはディオスの後ろについて歩く。
荷物の大半は、祭壇の奥に置いているので身軽な姿だ。
バルハルトと待っていてもいいけれどとディオスは言っていたが、それはバルハルトが拒否した。

ディオスに何かあれば、加勢するつもりなのだろう。
魔力は枯渇状態でも魔石があれば時間稼ぎくらいは出来るとマールはディオスに訴えた。
アスは、邪魔になるなら留守番したほうがいいかとも思ったが、何か引っかかっていてついていく選択をした。
何かが呼んでいる。
そうアスは思っていた。
この洞窟の主がいる場所に向かう通路は、琥珀の魔石がゴロゴロと転がっていた。
良質なそれを余裕があったら拾って帰りましょうとマールはアスに言うと楽し気に笑っている。
バルハルトが呑気だなと苦笑した。
ディオスも気負っていないようだった。
ただ、アスだけが何かこの先に進みたくないと感じていた。
恐怖を感じるのだ。

広い広間のようなところにたどり着く。
そこには、白い竜が眠っていた。
たぶん、寝ているのだとはおもう。
目を閉じて大きな体で座っている。
後ろの何かを守っているようにも感じた。
何か懐かしい気持ちになったのは何故だろうとアスは思う。
本来なら岩肌だったはずの壁も床も天井もびっしりと琥珀色の魔石に変化している。
中心にいる竜がそれだけの存在という事だろう。
ディオスはここにいるようにと言うと中に入っていった。
白い竜が顔をあげて首を傾げた。

『聖者の従者ではないな、王族か。』

しゃべる竜にディオスは目を丸くする。

「へぇ…少しやりにくいかな…」

竜はアスの方に目を向ける。
しばらく竜は首をかしげていたが頷いた。

『そうか…そういうことか…ならば…王として責を果たせ。』

竜は立ち上ると翼を広げる。
羽ばたきの風圧でよろけたアスとマールをバルハルトが支えた。
立ち上ると高い天井に頭が当たるのではないかと言うほど竜は強大だった。
ディオスは首をかしげる。

「何がそういうことなのか教えてほしいのだが?」

ディオスの言葉に竜は、咆哮を上げ彼に向けて炎を吐いた。
激しい炎を、ディオスは横に走ることで避ける。
ちらりとアスとマールの方に炎が届いていないいことは確認し竜はディオスのみを狙っていることは確信する。

「何か知らないが、俺以外は巻き込まないということか…都合はいいが…紳士な竜だな…」

そう言いながらディオスは剣を構えて竜に向かって走る出す。

『我を魔物と侮るか!!』

まっすぐに走ってくるディオスにいら立ったように竜は炎を吐く。
ディオスはまともに炎を浴びたようにアスには見えた。

「陛下!!!」

飛び出そうとするアスをバルハルトが抱えてとめる。

「大丈夫だ、落ち着け」

バルハルトの言葉にアスは、ディオスの方をみる。
ディオスの姿はそこには無く。竜の首をめがけて上から落ちてくるところだった。

『なるほど…転移か…』

竜は羽でディオスの剣を受けそのままディオスを跳ね飛ばす。
ディオスは、笑いながら壁に足をつき床に降り立った。

「あはは~いいな、強い…すごく強い…ますます君の核が欲しいな!!!」

竜は、唸るとアスの方に再び目を向ける。
まるで無事かどうかと確認するような竜の瞳にアスは一瞬戸惑う。
どこか納得したように、竜は唸るとディオスを見る。

「弱点は何かなぁ~」

そう言いながら、ディオスは魔法陣を展開して大きなつららのような氷の塊を無数に呼びだす。
そのまま氷の塊は竜に襲い掛かった。
竜は、軽く翼を振ることで氷の塊を砕く
そして、ディオスの方に再び炎を吐こうとしたがその場にはディオスはいない。
今度は腹の近くに転移して、竜の腹を切りつけようとしているところだった。
竜はそれを尻尾で薙ぎ払うことで防ぐ。

「氷は効かないか~」

後ろに飛びのいて尻尾を避けたディオスは首を傾げつつ、土の塊をぶつけるが竜は軽く羽で防いだ。
あの羽を攻略しないことには竜を傷つけるのは難しそうだなとアスは思う。
妙にテンションの高いディオスもアスには気になるところだった。

「遠距離の魔法って結構物理~」

そう言いながら次々と属性を変えながらディオスは塊を竜にぶつけている。
竜はダメージを受けているそぶりはない。
ハラハラしているアスとマールを抱えるようにしながらバルハルトはため息をついた。

「強敵がうれしいんだろうが…遊びが過ぎるぞ…」

大丈夫なのかと、アスがバルハルトを見上げると彼は問題ないと頷く。

「それに…あれは倒してはダメな部類の守護竜だな…力を認めさせさえすれば望みのものをくれるだろう。」

見ろ、とバルハルトはアスとマールに竜の背後の壁を見るように言った。
竜に殆ど隠れているが何か装飾された壁が見える。

ー祭壇…あれは…祭壇…いや…墓だ…ー

琥珀に包まれたその装飾を目に入れた瞬間、アスは意識が遠のくのを感じた。

「アス!!!」

バルハルトがアスの名を呼んでいる。

「アス様!!!」

マールも呼んでいる。
だが、アスは深い闇に落ちていくような感覚を覚える。

恐怖は感じない。
アスは、あの墓に呼ばれていたのだと感じながら意識を閉じた。
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