不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第六章 運命の一年間

156 眠る従者 アスside

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振られましたとアスは思う。
でもと、ディオスの膝の上で少しだけディオスにもたれかかる。
使い魔として、傍に置いてくれるのは変化は無いようだとアスはマールを見る。
ラスティの寝てる間に少しくらい甘えさせてもらおうとアスは開き直る。

人の姿でこうやっていられるのもあと少し。
大きな核をディオスは手に入れようとしてくれているのが何となくわかる。

人の姿は無理でも犬とかそっちになれたらディオスを守るために戦えるくらいの使い魔になれるかもしれない。
そんなことを思いながらディオスに、もたれているとディーが慰めるように肩に止まって頬にすり寄っている。
ふわふわのディーに癒されながら、やっぱり小鳥もこうやってディオスやラスティを癒せるしいいなと思う。
ディオスにも撫でられ、人の姿最後のご褒美と思いながらマールを見ると違和感を感じる。
マール…呼吸がおかしい…あれ…起きてない??とアスは、マールを観察していて気が付いたのだ。

ーどうしよう…マール…寝てるふりして起きるに起きれなくなってるみたいだ。ー

ディオスは、バルハルトが帰ってくるかどうかの方を気にしているので寝たふりマールに気が付いていない。
別にマールに聞かれてもいいけれども…気まずいなとアスは思う。
とはいってもこのままではマールも起きれない。
アスは、よしと立ち上るとマールの傍に座る。

「マールの熱とか大丈夫かなぁ~」

そう言いながら額にぺたりと手を置く。
気温が低いので手も冷たい。
驚いて起きるだろうと思ったのだ。
ひゃぁ!!!とかわいらしい悲鳴が上がった。
思ったより手が冷たかったのだろう。
思惑以上の驚きの声を上げてマールは飛び起きた。

「ふぁわわわわ」

マールは悲鳴を上げてしまったことに慌てている。
ディオスが後ろで驚いているが寝たふりは気が付かれていないようだ。

「マール起きたんだね。痛いところはなぁい?」

アスは、寝たふりきがついてませんという表情でマールに問う。
マールは少し考えていたが、はいと頷いた。

「あの…どちらでしょう?ラスティ様ですか?もう一人のラスティ様ですか?」

区別がつかなくてとマールに言われてアスは、どうしようと悩む。
しかし、嘘をついてもいいことはない。

「えっと…もう一人の方です。」

マールがそうですかと不安げにアスを見つめる。
ラスティはと目が訴えていた。

「寝てるみたいで…ごめんね…俺で…」

マールが慌てて首を振った。
ディオスの様子からラスティに何か問題が出ているという事ではないだろうと判断したようだ。

「ご無事なら問題ないです。それにもう少し寝てた方がいいと思います。ラスティ様は、どうやら考えすぎて睡眠不足だったみたいだし。」

最近眠れていない日もあったようだから良く寝てるなら良かったとマールは笑った。
入口の方に大きな影が滑り込んできた。

「どうした!!今の変な悲鳴!!!」

バルハルトが慌てて穴に飛び込んできたのだ。
ディオスが、マールがアスに触られてびっくりして飛び起きたと説明している。

「うん?アス?」

バルハルトはアスを見てから名前が決まったのかと楽し気に笑った。

「そうか…準備が出来たという事だな。で…養もごぉごふ!!!!」

突然ディオスはバルハルトの口を塞いだ。
何をやっているのだろうとアスとマールは首をかしげるが、ディオスとバルハルトは何か声をひそめて話している。

「知らないのか?結構話していたような…」

バルハルトが怪訝そうにディオスを見ている。

「いや…ほら万が一があるでしょ?」

バルハルトは、まぁそうかと頷く。
2人は少し離れて隅で話しているようだったのでアスは、マールの様子を見る。

「痛いところはない?」

マールはアスをじっと見ていたが、はいと頷く。

「でも…魔力が…使い過ぎで回復できていないみたいで…」

落ちる速度を下げたり、なんとかラスティと自分が無事に下に降りれるようにマールは枯渇寸前まで魔力を使い続けたらしく回復には数日かかるだろうと眉を寄せた。

「そっか…」

ところで…とマールはアスを見る。

「アス様とお名前があったのですか?」

アスは、目を丸くする。

「様はいらないよ。俺は使い魔みたいなものだし。陛下が…アスってつけてくれた。」

良い名前ですとマールはにこやかに微笑む。
アスは、ありがとうと微笑み返しているとディオスとバルハルトの話が終わったらしい。
ディオスが後ろからアスを抱える。

「マールは…魔力枯渇状態は治ってないみたいだね…バル、たのめる?」

バルハルトが困った顔で頷く。

「竜種だったから俺よりディオスが適任だからな…仕方ない。後方の守りは任せろ。おそらくかなりの古竜だ。」

ディオスは、そうかと頷く。
抱きしめられているアスは真っ赤になって湯気でもでそうな勢いになっている。
マールは、じろりとディオスを睨んだ。

「陛下…アスの気持ちに応える気が無いのに…その態度は…」

ディオスは、ああと頷くがやめない。

「まぁ…そうなのだけど…アスには私に慣れてもらわないと。この子はこれからこういう扱いだよ。」

マールが首をかしげる。

「側室ですか?」

ディオスは、違うよと首を横に振った。

「ああ…でもマール…この子は王家の者になるから、この子がいいと言ってもそれなりにあつかってやって。」

マールは目を丸くする。

「側室でもない王家の者…つまり…使い魔でなく…愛玩用にするつもりですか?……流石にそれは陛下を、軽蔑しますが。」

マールはぎろりとディオスを睨む。

「いや…何を想像してるの???ちょっと傷つくのだけど。まあぁいいや…マールも楽しみにしてね。」

そういうとディオスはよいしょっと、アスを抱えたまま立ち上るとそのまま彼の胸に顔をよせる。

ー何か…におわれてる??これって…猫吸い系のあれなのでは…ー

アスは、ふと小鳥ではなく猫とかになるのだろうかと思う。

「ん~やっぱりラスティとはちょっと匂いが違うかな…」

いやぁぁぁ~とアスは内心叫ぶ。
汗をかいているしほこりっぽいところにいたのだ。
せめてお風呂に入ってからにしてほしかった。
泣きそうになりながら思う。

マールは変質者を見るような目つきでディオスを見ている。
バルハルトはため息をついた。

「なんでだろうなぁ…もう一人のラスティ…いや…アスか…なんか庇護欲と言うか何かをくすぐられる。」

だろう?とディオスは頷く。

「ラスティとは別に目が離せないんだよね~危なっかしくて。」

結局、切れたマールに止められるまでアスはディオスに抱き着かれていた。

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