不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

文字の大きさ
上 下
172 / 233
第六章 運命の一年間

154 名前 ディオスside

しおりを挟む
方法を考えながら、ふと帰ってこないバルハルトのことがディオスは気になた。

「こんなところで、のほほんとしていたらいけないのだろうけどねぇ。」

迎えに行こうかなと思ったが、もう一人のラスティにここを任せるのは少し不安だった。
魔物との戦闘経験のないもう一人のラスティはもし最弱の魔物でも戦えないだろう。

ーまぁ…何とかはすると思うのだけど…過保護とバルに怒られるかなぁ。ー

ディオスはそう思いながら、入り口の方を見た。
バルハルトは、走竜を解体するといって祭壇の外の通路にいる。
痩せているあの走竜には、自分たちに食べれる肉が残っていない。

ーまぁ…食べようと思ったら工夫したら毒はないから食べれないところはないけども…今は、そこまで飢えてないしなぁ。ー

とは言っても放置していれば、生き残っているかもしれない危険な生き物が集まってくる可能性はある。
罠でもしかける餌にするつもりだろうなとディオスはバルハルトは考えて入り口から目を放す。
バルハルトはしばらく帰ってこないだろうと十分魔力の溜まったディーをもう一人のラスティの頭の上に乗せた。

「バル遅いねぇ」

もう一人のラスティは、そうですねと心配そうに顔を曇らせた。
優しい子だと思うながら少し、バルハルトに嫉妬の感情が浮かぶ。
独占欲が強いと思いながらふと何故バルハルトに嫉妬を感じたのだろうとディオスは不思議に思う。
もう一人のラスティに感じる愛情は違うはずだ。

ー嫉妬ではない??もしかして…子供を取られる父親の感覚??ー

若干すっかりもう一人のラスティを自分の子供認定している自分にディオスは引いた。
自己嫌悪しつつ、帰ってこないバルハルトに意識を向ける。

バルハルトが危険な状態になるようなことはない。

ディオスが周りを確認したときに見つからなかったのでこの洞窟の生き物はそこまで多くは無いだろう。
だが、野生の生き物の中には気配をきれいに期してしまう種類も多い。

とは言ってもバルハルトはディオス以上にその危険性が分かっている。
遅れを取るようなこともない。

どちらかといえば、もう一人のラスティと気絶しているマールの方が危険だ。
走竜は体が大きかったのでこの穴に入れなかったが、小さい狂暴な生き物も多い。
もう一人のラスティがマールを守りつつ戦えるかと言うと実戦経験がない分難しいだろう。

彼らの危険を考えれば、転移でそうそうに早く帰った方がいい。
だが、今回はラスティともう一人のラスティのための核を手に入れるつもりだ。
奥に感じる魔力の主ならばよい核が手に入るとディオスは思っている。

それにと全く目覚める気配の無いラスティを思う。
そろそろ限界なのだろう。
ラスティよりもう一人のラスティの存在は脆い。
無意識にラスティはそれを察して自分の意識を封じる形でもう一人のラスティを生かしているのだ。
もう一人のラスティの意志が独立し始めて、二人とも情報を補完しきれなくなっている。
はやく分離させた方がいいとディオスは核を手に入れたらすぐに分離させようと考える。

時間をかけない方がいい。
一度戻れば、ディオスが動くことができなくなる。
騎士団で編成を組みなおしバルハルトとジークハルト、ロイスがここに再び来ることになるだろう。
そんなに悠長にしていたらおそらくラスティももう一人のラスティも持たない。

今なら、ディオスの手が下せる。
ここで、今日のうちに終わらせるとディオスは考えている。
バルハルトは、そんなディオスの考えはお見通しなのだろう。
マールが目覚めて彼の状態がわかれば、その時点でどうするか決めるつもりだ。

もう一人のラスティは実戦経験が無い。
だからマールが目覚めて問題ないなら彼に守ってもらう。
その場合は、ディオスとバルハルトで奥の大物を狩るつもりだ。
だが、マールの状況が悪ければ、ディオスかバルハルトのどちらかが戦いに行く。
彼らを守るものが必要になるからだ。

今回はディオスが戦いに行くつもりだ。

バルハルトはおそらくディオスが狩りに行くつもりなのを止めはしないだろう。
ディオスはやることがあるから無謀な無茶をしないと考えている。
もう一人のラスティとラスティを分離させるなどと言うことはディオスにしかできない。

ジェンは技術的には出来るがこの方法には親密度というものが高くなければならない。
魂に触れなければならないからだ。
ディオスとジェンで言えばラスティと親密度の高い。
成功率を考えるとディオスがやらねばならないことだ。

そうなると必要になるものがある。

「…名前…」

もう一人のラスティを個人として縛るもの。
それが、名だった。
もう一人のラスティには名前がない。
そのためにあやふやになっている。
ディーからの情報で、ラスティともう一人のラスティは名前のことを話していた。
おそらくその時から彼の個としての固定が、進んでいるのだろう。

無意識にラスティは彼に名を与えた。
まだ、曖昧なそれでも十分にもう一人のラスティを個として縛っている。

分離させるために下準備としてもう一人のラスティの個を確実にしたい。
それにずっと、もう一人のラスティという言い方も可哀そうだとディオスは、苦笑する。

「ん~アス…?どっちかな?どっちにするの?」

ディーの記録ではアスカとアスナを言っていたと思うがどっちにするのだろうとディオスは彼に問う。
アスカというのが彼に似合うと何となく思う。
ラスティはそちらを無意識に選んでいる。
ディオスは、こっそりと彼に鑑定を使い、その名で固定されつつあることを確認した。

『それは……でも…やっぱり…』

その名前は、ともう一人のラスティはうつむく。
完全に名が固定化していないのはもう一人のラスティに抵抗があるからのようだ。
もう一人のラスティは、うつむき、苦し気に眉を寄せた。
その様子にもう一人のラスティが名前を受け取れないと考えているとディオスは感じた。

「特別な名前かい?」

もう一人のラスティは頷く。

『はい。』

もう一人のラスティは理由を言わない。
ディーの伝えてくる情報でなんとなく理由は察していた。
ディオスはラスティの魂の以前の名前なのだろうと考えていた。
ラスティは、はっきりとした言及は避けていたが繰り返しの記録以外に、もっと前の記録が魂にのこっている。
この世界には稀にそういう者はいるのだ。
生まれ変わりは普通に信じられている。
御伽噺の兄弟の生まれ変わりだと思われているディオスも一応稀人の一種だ。
記録は持っていないから、違うと本人は思っているが。

「なら…アスと呼ぼうか。」

少し戸惑っていたが、もう一人のラスティは頷く。
妥協案でしかない。
彼の名は、殆どアスカとされている。
だが、呼び名としてはアスで問題ない。
アスという呼び名で彼が個として確定すれば、術式は安定する。
術式にはアスカで登録するが。
ディオスの提案にもう一人のラスティが頷いたので名が確定した。
ディオスは鑑定で彼の状態を再度確認する。
しっかりとアスカという名になっているが今はそのことをもう一人のラスティは知らない。

「はい…うれしいです。」

ディオスは、彼の声の響きが変わったことを感じる。
気が付いているものは少なかっただろうが、アスの声は少しだけ違和感を感じさせるものがあった。
微妙に響きに違和感があったのだ。
おそらく彼の存在がこの世界とはわずかにすれていたからだろう。
それがなくなった。
名前を付けたことでこの世界に、魂を持つ者として判断された。
もう一人のラスティ…アスがこの世界に固定化されたのだろう。
早速術式を構成する。
基本の基本でバルハルトを待つ間に少し改良するつもりだが。
これで儀式を行う準備が揃ったなとでディオスは思う。
アスは、少し考えてから嬉しそうに笑った。

「ふふ…よい思い出が出来ました。」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

処理中です...