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第六章 運命の一年間
151 嫉妬 ディオスside
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「やっぱりいたね。」
ラスティが目を丸くして、そして悲し気に眉を寄せた。
『陛下?どうして…いえ…その…』
妙に戸惑っているようすに、ディオスはおや?と首をかしげる。
最初に見た時の彼の印象からディオスは目の前のラスティがいつもの彼ではないことは分かっていた。
これは、もう一人のラスティか?と彼にわからないようにディオスは眉をよせる。
彼は、どうしてもディオスを怖がっているのだ。
ラスティは、観念したように穴の外に出てくる。
『あの…申し訳ございません…ラスティは…その気を失っているみたいで…『俺』です…。』
怒られると覚悟しているようなもう一人のラスティにディオスは困ったなぁと頭をかく。
やはり、緊張しているようだ。
そんなに自分が怖いのだろうかとディオスは、内心ため息をつく。
「マールは?」
ディオスの問いかけに、彼は奥にと言うので中に入るとマールが毛布でくるまれて眠っていた。
荷物もここに運び込んでいる。
どうやら、もう一人のラスティが一人でマールを保護して荷物も集めていたようだ。
『二人とも…まだ目を覚まさなくて…』
申し訳ないというふうに彼は頭を下げる。
ディオスは、参ったなぁと頭をかいた。
もう一人のラスティがいなければ気絶していた二人は今頃、走竜の腹の中だっただろう。
彼の意識が別にあったことで今回は助かった。
彼が悪いものではないという事も、ディオスは分かっている。
好ましいと思っているが、少し嫉妬心もある。
パートナーであるラスティと常に一緒に居るものだからだ。
嫉妬しても仕方ないということも分かっているのだが、怖がられているという事もあってディオスは複雑だった。
何かにつけてラスティが彼を頼りにしていることや、こうやって助けるのも彼だ。
ーラスティも私に遠慮してしまうけれど…この子には素直に甘えているー
それを自分は少しうらやましく感じてしまう。
その嫉妬心をもう一人のラスティは感じているのかもしれない。
『申し訳ありません…』
しゅんと肩を落としてしまう彼にディオスは、いや…とつぶやく。
よく頑張ったと思うが、怒られると思っているのかもう一人のラスティは泣きそうな顔でうつむいたままだ。
見かねたバルハルトは、もう一人のラスティの頭をがしがしと撫でた。
「何を謝っている。お前はマールとラスティを守ったのだから胸をはれ。」
彼は、バルハルトの言葉に顔を上げた。
バルハルトを見上げる彼の眼が少し嬉しそうに細められる。
ディオスはますます自分が不機嫌になるのを感じていた。
バルには可愛らしく笑うのに…と少しむっとしてしまう。
「…ディオス…お前なぁ…」
バルハルトの呆れ顔にディオスの機嫌は余計に低下していく。
ディオスのこの態度が悪いと彼も分かっているのだ。
もう一人のラスティのこともディオスは愛している。
ラスティに向けている感情とは違うが。
もう一人の息子のように愛している。
実際、今も可愛いと思っているのだが、怖がられてしまう。
バルハルトにうれし気に笑いかけているのに、ディオスを見ると戸惑ったようにおびえる。
バルハルトには可愛らしく笑いかけるのに自分からは逃げようとばかりする。
少しばかり悲しくなるのは仕方の無いことだろうとディオスはバルハルトを睨んだ。
「はぁ…こんなにお前を慕っているのにその態度は無いだろう。嫌われてると思わせたいのか?違うだろう?」
慕っている?と内心思いながらディオスはちらりともう一人のラスティを見る。
バルハルトの陰から泣きそうな顔でディオスを見上げている。
怖がっているではないかと思いながらディオスがバルハルトを見ると馬鹿かとため息をつかれた。
「大丈夫だ。もう一人のラスティ、そんなに悲しそうな顔をするな。ディオスはお前を嫌っていないから。」
でも…ともう一人のラスティは小さく呟く。
『いいえ…大丈夫です。ありがとうございます。バルハルト様。分かっています…だって…『俺』は…陛下の大事なラスティに寄生してるようなものではないですか…嫌われても…仕方ないのです…。でも…ラスティの願いだから『俺』を生かすためにお傍に置いていただけるだける。本当はお役に立ちたいけれど…『俺』は魔力も作れませんし…申し訳なくて。』
今だって結局ラスティの体を危険にさらしているわけですからと肩を落とす。
バルハルトは、どうするつもりだとディオスを見る。
彼の眼はディオスの所為だぞと訴えていた。
「いや…君は…私が怖いのかと…」
もう一人のラスティは首をかしげてディオスを見る。
『陛下は…とても素敵です…怖くないです…その…申し訳なくて……』
申し訳ない?とディオスは思う。
「…怖がってない?」
はいともう一人のラスティは頷く。
バルハルトをディオスが見ると肩をすくめられた。
「こっちに来なさい?」
おずおずともう一人のラスティはディオスの前に来た。
「怒っていないから…」
もう一人のラスティは、悲しそうにディオスを見上げる。
『だって…『俺』は…ずっと陛下をだましていたんですよ?陛下の…大切なラスティに寄生していた…魔物と同じものです…』
魔法陣で生み出された人格と言う意味では魔導生物の魔物に近いかとディオスは思う。
「魔物といってもカワイイから問題ないな。騙していたというよりは黙っていただけだろう?」
私たちは君をもう一人のラスティとして認識しているのだから、別に嫌っていないだろう?消そうなどと思っていないよ?とディオスが言うと彼は真っ赤に頬を染めてうつむいてしまった。
どうやら、ディオスに可愛いと言われてうれしかったようだ。
ディオスは、バルハルトを見る。
「…バル…この子…可愛いんだが…」
バルハルトは今更か!!!とディオスの後頭部を殴ってから大きくため息をついた。
ラスティが目を丸くして、そして悲し気に眉を寄せた。
『陛下?どうして…いえ…その…』
妙に戸惑っているようすに、ディオスはおや?と首をかしげる。
最初に見た時の彼の印象からディオスは目の前のラスティがいつもの彼ではないことは分かっていた。
これは、もう一人のラスティか?と彼にわからないようにディオスは眉をよせる。
彼は、どうしてもディオスを怖がっているのだ。
ラスティは、観念したように穴の外に出てくる。
『あの…申し訳ございません…ラスティは…その気を失っているみたいで…『俺』です…。』
怒られると覚悟しているようなもう一人のラスティにディオスは困ったなぁと頭をかく。
やはり、緊張しているようだ。
そんなに自分が怖いのだろうかとディオスは、内心ため息をつく。
「マールは?」
ディオスの問いかけに、彼は奥にと言うので中に入るとマールが毛布でくるまれて眠っていた。
荷物もここに運び込んでいる。
どうやら、もう一人のラスティが一人でマールを保護して荷物も集めていたようだ。
『二人とも…まだ目を覚まさなくて…』
申し訳ないというふうに彼は頭を下げる。
ディオスは、参ったなぁと頭をかいた。
もう一人のラスティがいなければ気絶していた二人は今頃、走竜の腹の中だっただろう。
彼の意識が別にあったことで今回は助かった。
彼が悪いものではないという事も、ディオスは分かっている。
好ましいと思っているが、少し嫉妬心もある。
パートナーであるラスティと常に一緒に居るものだからだ。
嫉妬しても仕方ないということも分かっているのだが、怖がられているという事もあってディオスは複雑だった。
何かにつけてラスティが彼を頼りにしていることや、こうやって助けるのも彼だ。
ーラスティも私に遠慮してしまうけれど…この子には素直に甘えているー
それを自分は少しうらやましく感じてしまう。
その嫉妬心をもう一人のラスティは感じているのかもしれない。
『申し訳ありません…』
しゅんと肩を落としてしまう彼にディオスは、いや…とつぶやく。
よく頑張ったと思うが、怒られると思っているのかもう一人のラスティは泣きそうな顔でうつむいたままだ。
見かねたバルハルトは、もう一人のラスティの頭をがしがしと撫でた。
「何を謝っている。お前はマールとラスティを守ったのだから胸をはれ。」
彼は、バルハルトの言葉に顔を上げた。
バルハルトを見上げる彼の眼が少し嬉しそうに細められる。
ディオスはますます自分が不機嫌になるのを感じていた。
バルには可愛らしく笑うのに…と少しむっとしてしまう。
「…ディオス…お前なぁ…」
バルハルトの呆れ顔にディオスの機嫌は余計に低下していく。
ディオスのこの態度が悪いと彼も分かっているのだ。
もう一人のラスティのこともディオスは愛している。
ラスティに向けている感情とは違うが。
もう一人の息子のように愛している。
実際、今も可愛いと思っているのだが、怖がられてしまう。
バルハルトにうれし気に笑いかけているのに、ディオスを見ると戸惑ったようにおびえる。
バルハルトには可愛らしく笑いかけるのに自分からは逃げようとばかりする。
少しばかり悲しくなるのは仕方の無いことだろうとディオスはバルハルトを睨んだ。
「はぁ…こんなにお前を慕っているのにその態度は無いだろう。嫌われてると思わせたいのか?違うだろう?」
慕っている?と内心思いながらディオスはちらりともう一人のラスティを見る。
バルハルトの陰から泣きそうな顔でディオスを見上げている。
怖がっているではないかと思いながらディオスがバルハルトを見ると馬鹿かとため息をつかれた。
「大丈夫だ。もう一人のラスティ、そんなに悲しそうな顔をするな。ディオスはお前を嫌っていないから。」
でも…ともう一人のラスティは小さく呟く。
『いいえ…大丈夫です。ありがとうございます。バルハルト様。分かっています…だって…『俺』は…陛下の大事なラスティに寄生してるようなものではないですか…嫌われても…仕方ないのです…。でも…ラスティの願いだから『俺』を生かすためにお傍に置いていただけるだける。本当はお役に立ちたいけれど…『俺』は魔力も作れませんし…申し訳なくて。』
今だって結局ラスティの体を危険にさらしているわけですからと肩を落とす。
バルハルトは、どうするつもりだとディオスを見る。
彼の眼はディオスの所為だぞと訴えていた。
「いや…君は…私が怖いのかと…」
もう一人のラスティは首をかしげてディオスを見る。
『陛下は…とても素敵です…怖くないです…その…申し訳なくて……』
申し訳ない?とディオスは思う。
「…怖がってない?」
はいともう一人のラスティは頷く。
バルハルトをディオスが見ると肩をすくめられた。
「こっちに来なさい?」
おずおずともう一人のラスティはディオスの前に来た。
「怒っていないから…」
もう一人のラスティは、悲しそうにディオスを見上げる。
『だって…『俺』は…ずっと陛下をだましていたんですよ?陛下の…大切なラスティに寄生していた…魔物と同じものです…』
魔法陣で生み出された人格と言う意味では魔導生物の魔物に近いかとディオスは思う。
「魔物といってもカワイイから問題ないな。騙していたというよりは黙っていただけだろう?」
私たちは君をもう一人のラスティとして認識しているのだから、別に嫌っていないだろう?消そうなどと思っていないよ?とディオスが言うと彼は真っ赤に頬を染めてうつむいてしまった。
どうやら、ディオスに可愛いと言われてうれしかったようだ。
ディオスは、バルハルトを見る。
「…バル…この子…可愛いんだが…」
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