不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第六章 運命の一年間

145 魔石捜索

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「ここです」

少し広い空間に出た。
ここが二階の奥らしい。
岩壁の中にキラキラと光る石が見える。
変化した魔石だろう。
岩壁の中のものを取り出すのは難しそうだが、床にもよさそうな魔石が落ちている。
僕が壁の石を見ていた所為だろう。
ロイスが壁に剣を突き立てた。

『ダメだ!!剣がダメになっちゃう!!』

慌てた『俺』の声が僕の口から飛び出た。
ロイスが少し目を丸くしたが微笑んだ。

「大丈夫ですよ。ここの石はやわらかいので剣でも取れます。」

そう言うと大きめの魔石を取り出してくれた。
大きくてきれいな石が僕の手の中で光っている。

「これいいね…。」

候補の一つとしてどうだろうと『俺』に言うと相性が良いと思うという返事だった。
ロイスが僕を見ながら微笑む。

「さっきの声は…もう一人のラスティですか?」

僕はあれ?と思ってロイスを見る。

「少し雰囲気が違うように感じたのです。声も同じなのに…不思議ですね。」

そうなのかと僕は思うと少しうれしくなった。

「そっか…ちょっとうれしいな。僕と『俺』は…一人だけど…少しずつ考え方も違うから…『俺』が個人だって…僕と違う自我を持ってる子だって認められたみたいに思える…。」

ロイスは、にっこりと微笑んだ。

「どちらも可愛らしくてお優しいというのは伝わってきますけど…よくよく感じてみたら確かに…別の方なのだなと思いました。」

ロイスの言葉に僕は首をかしげた。

「ご自分の…存在のための核を探しているのに…私の剣の心配をしてはいけませんよ?」

微笑むロイスに僕は答えなかった。
『俺』への言葉だろう。

『…はい……』

自分のことを考えてくだいねとロイスは微笑んだ。
まぁ『俺』はお人好しだよなぁと僕は思う。
そしてロイスに目を向けると、妙に優しい目をしている。
いつもの僕にも彼は優しい目で見てくれるけど…熱を感じるのは何故だろう。
まさかとちらりとリオンを見ると呆れたような目をロイスに向けていた。

もしや『俺』はロイスの好みなのだろうか…あの一言で???ないない。

僕の様子に気が付いたリオンが首を横に振った。

「若干雰囲気が違う時があるなと言うのは皆気が付いていたことだよ。」

リオンがため息をついた。

「ラスティはラスティだからね…あの子の元は僕の悪戯だけど器を作っただけだ。」

同じ環境で育った兄弟みたいなものだよ、とリオンは続けた。
皆には、原因についてはぼかしているらしい。
陛下が、世界が繰り返しているというのは皆に言ってるのか言ってないのか、たまに話が食い違う。
まぁ、こういうときは黙っているのが一番だろう。
リオンの悪戯書きの魔法陣に僕が子供の頃に引っかかっていてという感じで、僕の中のもう一人のラスティは説明されているようだと思う。

「そうだね。でもそれなら僕がおにいちゃんだよね。弟のために頑張るぞ!!」

僕の言葉に『俺』の反論が聞こえたが無視した。

「…若干、もう一人のラスティのほうがしっかりしてそうなのはなんでだろうな。」

ロイスの言葉は無視する。

ひどい…僕は精神年齢はここにいる子達より上なのに。

とにかく良いものをさがそう。
僕たちが話している間にマールとトリスティはもくもくと魔石を探していた。

「ほら…しゃべってないで。これなんかどうだ?」

トリスティが渡してくれた魔石もよさそうだ。

「うん。ありがとう。」

僕は他にも、良さそうな石を探す。

「ここの石って…珍しいね…」

ここの魔石は皆、黄色をしていた。
黄色と言うよりは、前世で見たことのある宝石のように見えた。

琥珀だ。

大きめで傷の無い石を集める。
広間の中央にとりあえずとまとめる。
みんな、よさそうな魔石を確認しつつ集めてくれていた。
魔力を強く感じる石を集めてくれてる。
僕は、集まった集めるのではなく、集まった石に鑑定をかけて仕分けしていくことにした。

「うー、荷物もここに置いとくね。」

リオンは身軽になるために荷物も集めた魔石の仕分けをしている僕の傍に固めて置いた。
マールもならばと荷物を置いて僕の背の後ろに置いた。
腰につけていたノーマの魔石を入れた袋も自分の置いた袋の横に置いた。

「荷物は背もたれにしてください。」

僕はマールの言葉に甘えて荷物を背もたれにして魔石を鑑定を繰り返していた。

なかなか強そうな石が多くてほっとする。
この中で相性のいいものがあればいいのだけれど。
なんとなく、最初にロイスがとってくれた石がよさそうな気もする。
そう思って『俺』を促すと困ったような声が聞こえた。

『どれでもいいよ』

おいおい…なんで投げやりになってるの?
僕の感情を読み取ったのか違う違うと慌てたような彼の感情が伝わってきた。

『いや…なんだかどれもしっくりくるんだ。さっき言ってリオンがいただろう。この魔石の元の魔物がいるって。たぶんその魔物の魔力が相性がいいのだと思う。この琥珀色の魔石ならどれでも馴染む感覚がするから。』

そうかと僕は頷いてなら、魔力の強いものをとにかく選べばよさそうだなと思う。
やっぱりロイスが見つけてくれたものかなとそれだけは別に胸ポケットの中にいれた。

他にも数個候補をカバンにいれて、集めてくれた魔石の中で大きめの魔石をカバンに詰めた。
動きに邪魔にならないくらいの石をできるだけ持って帰るつもりだ。
マールが苦笑しつつ同じように集めてくれている。
ここの魔石は相性がいい。
彼に相性がいいということは僕にも相性が良かったのだ。
この魔石で何か作れないだろうかと思ったのだ。

トリスティもロイスもそれに気が付き仕方ないなと魔石を持って帰ってくれるみたいだった。
2人も持っていた荷物を仕分けしている僕の周りに置くと、荷物のポケットを開けてここに居れたらいいと笑った。
僕は言葉に甘えて負担にならないであろう重さを考えつつよさそうな魔石をつめる。
そろそろ帰る時間だろうと持って帰らない魔石は隅に返しておくことにした。
集めた魔石を壁側に移動しているとマールも一緒に移動させてくれている。
他の三人は、他にもいいものがないかなと居ながら壁に埋め込まれている魔石を確認してくれていた。
リオンは、ふと首をかしげた。

「そろそろ…帰る時間かなぁ…あれ?…マール…」

僕と一緒に残った魔石を広間の隅に移動させる作業をしていたマールをリオンが呼んだ。

「なんか…あの袋…光ってない?」

マールが、え?と自分が僕の傍に置いていたノーマの魔石をつめていた袋をみた。
僕も傍にあるその袋を見る。

「うそ!!なんで??」

マールが慌てて走ってくる。
発動していると僕も魔石の袋から離れようと立ち上る。
ロイスとトリスティが、逃げろと声をあげた。

僕がマールの方へ走りだろうとした瞬間に僕の足元がなくなった。
僕を庇おうとしたマールと一緒に僕の体は宙に投げ出さた。


リオンの悲鳴が聞こえる。




………






真っ暗な穴に落ちていく瞬間…どこかで小鳥の鳴き声を聞いたような気がしたのだった。

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