不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第六章 運命の一年間

143 初めての冒険 まだ入り口

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街を離れて森の小道に入る。
この辺は薬草や果物などを街の人も取りに来る小道で整備されてる。
奥に無いることは禁止されているが、森の浅いところは大人と一緒なら入っていいことになっている。

「この森の奥に洞窟があることはあまり知られていませんが。」

そういって苦笑するロイスにそうなんだと頷く。
ロイスに案内をされながら洞窟に向かう。

「危険はないとは言っても普通に森の奥の洞窟なので普段は封鎖しています。」

洞窟への道は騎士団が封鎖しているのだとロイスが説明してきた。
見張りはいないが許可がないと入れないように洞窟に向かう道に鉄で出来たような武骨な門があった。
門には、少し魔力を感じる。
ロイスが門に手をかざすと門がゆっくりと開いた。
登録された魔力に反応して門が開くのだ。

「ここで入った人数を確認しているのです。」

ロイスがそう説明してくれた。
許可されている時間までにここを出る様子が無いと捜索隊が来るのだという。

「余裕を見て、二日申請していますが、今日中には普通は終わるでしょう。」

ロイスはそう言うとトリスティを見た。
申請したのはトリスティだという。

「そうだな。とはいっても終わらなくても今日は帰るけど。野宿をさせることは出来ないぞ?」

ロイスは、ええと苦笑した。
そのため、野宿の用意はしていない。
リオンが万が一はもってると胸を張ったが、ロイスとトリスティはため息をついた。
今日中と言っていたが、夕方には帰らないとなとトリスティがリオンを軽く睨んだ。

「5時間くらいしか時間がないってこと?」

リオンが少し口を尖らせる。
ロイスはええと頷く。

「この場合は君が原因なんですけどね?リオン様。夜の祈りはどうするつもりなんですか?」

リオンは、ああと眉をよせた。
僕とマールは一応、夜の装備も持っている。
といっても灯りくらいだ。
僕が初心者という事で明るいうちに帰る予定だが、帰りが暗くなっても、それはそれ。
暗くなった時の訓練をしてもいいかという話も出ていた。
夜になったら、ジークハルトも陛下も王宮に帰っているので、ジークハルトが合流したいとも言ってた。
つまり、僕らはどうとでもなる。
乱入したリオンのためにはやく帰らないとならないのだ。

「僕一人先に帰るっていうのもありでしょ?人数分準備されているわけだし。」

そういって、リオンはロイスを指さした。
ロイスが、転移の魔石を人数分門にはめ込む作業を行っている。
これで、何かあった場合転移の魔石を使えばここまで戻れる。
ただ、この転移の魔石は少し難がある。
今回の洞窟くらいの深さならいいが、もっと深い洞窟だと使えないのだ。
転移の魔法は難しいので遠くの転移は魔石では難しい。
短距離はできるけども。
魔法陣をきっちり書いていたらもう少し距離は伸びる。

そうそう転移魔法まで使える人は…いたな。

陛下とジークハルト、ジェン公はたまに長距離の転移をやってしまう。
あの人たちは規格外という事で。
でも結構魔力を消耗するとかいっていたような気もするけどどうだったかな。

最近、記憶がぼんやりとしていることがある。

『俺』が言うには、二人分の器でない体に自我が出来てしまった人格が入っているからだろうとのこと。
彼は、自分が僕の中から居なくなれば大丈夫と言うけれど…微妙に嫌な予感がしているのはなんでだろう。

そうそう転移魔法について考えてえいたんだっけ。

僕は緩く頭をふった。
リオンも育ったら出来たっけ?ゲームでだけど。
僕がそんなことを考えてるとトリスティの止める声がした。

「いやいや…自覚してくれリオン…君は聖者だ。一人で帰らせて何かあったら王家と教会の関係が悪くなる。今は表面上では上手くやっているのだから。」

トリスティの言葉にリオンはああと頷く。
特に今はダメだとロイスも頭を振る。
リオンは、やれやれと肩をすくめた。

「そうだねぇ…ジークハルトがラスティではなく、陛下についているくらい不穏ではあるけれど。」

まぁなとトリスティが眉を寄せる。
マールは首をかしげた。

「何か…あったのですか?」

トリスティがリオンを睨んだ。
だがリオンはラスティにその話もするつもりだっただろうと苦笑する。

「教会に不穏な動きがあるんだ。次期聖者が候補は一応現れるけど…聖者には認定できなくていないからね。僕の力は弱まる一方だ。新しい聖者を教会は欲している。結界で守られているこの国にいたら実感できないだろうけど…魔物を倒して歩ける聖者が欲しいのだろうね。」

この国が平和だから実感は薄いが、結界の外の国々は未だに戦いが行われている。
魔物もかなり強くなってきているという。
リオンは、聖者としての力が戦いに向いていないことと、後継者が現れないため、教会が温存したままだ。
闘いに明け暮れている国では徐々に助けてくれない教会から信者が離れているようだ。
リオンが戦いに出るか…戦いに向いた次期候補者が教会は欲している。
別に時期後継者が戦えなくとも後任がいればリオンに戦わせればいいとも考えているようだが。

「そもそも、聖者教会の教えが強きものを優先するよう名だったり教えだったりするからねぇ。それを利用して戦いの理由にする王も多いから教会としても責任がある。」

リオンの言葉にロイスは頷く。

「この国もそうやって何度も攻められた。今は、陛下と騎士団の強さと結界のおかげで避けられているが…平和に慣れた騎士団の弱体化は囁かれている。陛下も普段は温厚な方だから、結界を消去する装置を開発している国もあると聞く。いくつかの国は我が国を攻めようと計画している。」

安心はできないなとロイスは眉を寄せた。

「陛下も何度か外で命を狙われているが…すべて撃退してしまって騎士団長が守りがいが無いとため息をついていたな。温厚そうに見える分、質が悪いとも。」

ロイスの言葉に僕は青くなるが、皆だろうなと頷く。

「陛下、最強だものね。」

リオンの言葉にため息をつく。

「でも…心配なのだけど。」

僕の言葉にトリスティがそうだなと優しく微笑んだ。



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