160 / 233
第六章 運命の一年間
142 初めての冒険 -ようやく出発-
しおりを挟む
ようやく、全員の準備が終わった。
一番時間がかかっていたのは、何故かリオンだ。
持っていく魔石のどれにしようか迷っていたようだが、回復魔法より野営用の結界魔法や敵から見えなくなる魔石を選んでいるのは謎だ。
「なんで野営用…」
そんなに危険があるのだろうかと僕は首をかしげた。
リオンは回復はまだ自力で出来る。
だから、補助的なものを持っていくのだと今回のクエストには関係なさそうなものを抱えていた。
「逆になんで皆もってないのさ。」
リオンの言葉にロイスが泊まる気が無いからだとため息をつく。
「ええ~やだ、泊まろうよ!!」
ダメだとトリスティは、頭を抱える。
ロイスが、トリスティの肩を叩いた。
「まぁ…リオン様だから。」
どういう意味だよとリオンは憤慨している。
皆、まぁいいいかと苦笑しつつ、立ち上がった。
リオンは、頬を膨らませながら僕の隣に立った。
なんとなく不安になった僕はリオンに声をかけた。
「何か見えたの?」
リオンは一応予知があると言われている。
本人は予知ではないとは言っているが。
その言葉にトリスティの眉が上がった。
ロイスもリオンの言葉を待ってる。
マールは、めんどくさそうにリオンをみた。
たぶん、マールが一番リオンを理解しているのだろう。
危険だとしたらリオンが隠す要素がない。
危険だからと騒いでいるはずだ。
「ううん、見えてないよ。僕っていつもこんな感じなんだよ。その…体質がトラブルメーカーだから…普通に必要なものは皆が持ってるでしょう。だから、起こりそうな可能性があることに対しての準備を持っていくようにしているだ。」
トラブルメーカーという自覚があるのもどうかと思うが。
リオンは主人公体質…いや…ヒロインたものなと僕は納得する。
僕は僕でトラブルメーカーの素質はあるのだろうけれど…いや…巻き込まれ体質というものだろうか。
確かに、あのゲームでは何かヒロインがトラブルでも起こさないと話は進まない。
そのトラブルの被害者が僕なのだが。
僕はなんとなく、出番が終わった感があるが、リオンにとってはこれからなのだ。
「転ばぬ先の杖っていうよね~」
この世界では言わないが、リオンは上機嫌でそんなことを言う。
失敗しないように、前もって十分な準備をしておくことは必要だろう。
僕は、何とも言えない顔でリオンを見る。
リオンは準備しているからと安心して失敗しそうなところも怖いが。
どうしてだろう。
リオンは準備した以上の何かを引き寄せそうな感覚がするのだ。
トラブルメーカーとはそういうものだろう。
「まぁ…あの洞窟は今のところは危険は無いと思うんだよね。」
今のところ?と僕は首をかしげたがリオンは、頷いただけで何も言わなかった。
リオンはその代わりにと、マールを見る。
僕も同じようにマールを見た。
リオンの言葉を受けてマールが何か始めたからだ。
微妙にマールがなにかもぞもぞして妙な動きをしている。
持っていたカバンから小さな革袋を出してベルトを外した。
マールはベルトに小さな袋を付け直していた。
予備の魔石を入れているのだという。
「ノルンとノーマもいくつかくれたんですけど…今回は使うことはないかなと思って奥に入れておいたのですけど。リオンが不安だから外に出します。」
そう言いながらマールは数を確認している。
ベルトを付け直したがベルトが下に下がってしまう。
魔石が重いのだろう。
「ううーん…そうだ…!!ラスティ様!!」
ノーマの作ってくれたという魔石を取り出して袋に分けるとマールは僕のベルトにつけた。
半分半分でちょうどいいい位置にベルトは固定された。
「すいません。ラスティ、でも…やっぱり…ノルンの魔石は僕のより質がいいです。ラスティ様、こちらを念のため持っていてください。ノルンの作った魔石は魔物除けや気配を消すものです。高レベルの魔物はいないと思いますが、かなり高位の魔物からも姿をくらませることができますから。」
攻撃用のものはないが、防除と逃げるためのものもあるとマールは説明してくれた。
一応聞かなくともわかるけれども僕は頷きつつそれを確認する。
マールの方は、ノーマが作ってくれたものらしい。
「ノーマのものは…少し荒いんですよね。大丈夫だとは思うのですが…あの子のものをラスティ様にはわたせません。リオン様が来るならどうしても役に立ちたいってこれを渡してきましたけど…そういうところが信用させないんだって言っても聞かないし。」
魔石のつくり方が荒いから、魔力が抜ける可能性もあるしとマールは顔をしかめる。
ノルンとマールは、ノーマと仲良くしているが微妙にわだかまりがのこったままのようだ。
まぁ、ノーマは王家の者より教会の者を大切にしている傾向はたしかにある。
今は、王家に教会の意見を伝える立場になっていることもあって教会側とみられているのもあるだろう。
ノルンとマールは、ノーマを僕の傍から離そうとしているようで、最近僕はノーマを見ていない。
あまり変わっていないようだけれど。
彼はジークハルトの側近として今は動いているから会うこともあまりないという理由もある。
まぁ…彼の場合はジークハルトのというよりはエスターよりだけれど。
僕の表情を読み取ったのだろう。
トリスティが苦笑した。
「まぁ…ノーマは主のジークハルトよりはエスターの傍に行きたがるからな。ノルンとマールの気持ちもわかるがほどほどにな。」
トリスティは、そう言いながらマールの頭を撫でた。
少し不満げにマールはトリスティを見上げたが、しかたないと頷く。
トリスティは苦く笑ってから僕を見た。
僕がへらりと笑うと少し遠慮がちにトリスティも笑った。
気にすることはない。
いつもの調子が戻ってきているトリスティに少し安心する。
「さぁ口ばかり動かさないで足も動かして。」
苦笑するロイスにはーいと返事をすると皆に笑われた。
一番時間がかかっていたのは、何故かリオンだ。
持っていく魔石のどれにしようか迷っていたようだが、回復魔法より野営用の結界魔法や敵から見えなくなる魔石を選んでいるのは謎だ。
「なんで野営用…」
そんなに危険があるのだろうかと僕は首をかしげた。
リオンは回復はまだ自力で出来る。
だから、補助的なものを持っていくのだと今回のクエストには関係なさそうなものを抱えていた。
「逆になんで皆もってないのさ。」
リオンの言葉にロイスが泊まる気が無いからだとため息をつく。
「ええ~やだ、泊まろうよ!!」
ダメだとトリスティは、頭を抱える。
ロイスが、トリスティの肩を叩いた。
「まぁ…リオン様だから。」
どういう意味だよとリオンは憤慨している。
皆、まぁいいいかと苦笑しつつ、立ち上がった。
リオンは、頬を膨らませながら僕の隣に立った。
なんとなく不安になった僕はリオンに声をかけた。
「何か見えたの?」
リオンは一応予知があると言われている。
本人は予知ではないとは言っているが。
その言葉にトリスティの眉が上がった。
ロイスもリオンの言葉を待ってる。
マールは、めんどくさそうにリオンをみた。
たぶん、マールが一番リオンを理解しているのだろう。
危険だとしたらリオンが隠す要素がない。
危険だからと騒いでいるはずだ。
「ううん、見えてないよ。僕っていつもこんな感じなんだよ。その…体質がトラブルメーカーだから…普通に必要なものは皆が持ってるでしょう。だから、起こりそうな可能性があることに対しての準備を持っていくようにしているだ。」
トラブルメーカーという自覚があるのもどうかと思うが。
リオンは主人公体質…いや…ヒロインたものなと僕は納得する。
僕は僕でトラブルメーカーの素質はあるのだろうけれど…いや…巻き込まれ体質というものだろうか。
確かに、あのゲームでは何かヒロインがトラブルでも起こさないと話は進まない。
そのトラブルの被害者が僕なのだが。
僕はなんとなく、出番が終わった感があるが、リオンにとってはこれからなのだ。
「転ばぬ先の杖っていうよね~」
この世界では言わないが、リオンは上機嫌でそんなことを言う。
失敗しないように、前もって十分な準備をしておくことは必要だろう。
僕は、何とも言えない顔でリオンを見る。
リオンは準備しているからと安心して失敗しそうなところも怖いが。
どうしてだろう。
リオンは準備した以上の何かを引き寄せそうな感覚がするのだ。
トラブルメーカーとはそういうものだろう。
「まぁ…あの洞窟は今のところは危険は無いと思うんだよね。」
今のところ?と僕は首をかしげたがリオンは、頷いただけで何も言わなかった。
リオンはその代わりにと、マールを見る。
僕も同じようにマールを見た。
リオンの言葉を受けてマールが何か始めたからだ。
微妙にマールがなにかもぞもぞして妙な動きをしている。
持っていたカバンから小さな革袋を出してベルトを外した。
マールはベルトに小さな袋を付け直していた。
予備の魔石を入れているのだという。
「ノルンとノーマもいくつかくれたんですけど…今回は使うことはないかなと思って奥に入れておいたのですけど。リオンが不安だから外に出します。」
そう言いながらマールは数を確認している。
ベルトを付け直したがベルトが下に下がってしまう。
魔石が重いのだろう。
「ううーん…そうだ…!!ラスティ様!!」
ノーマの作ってくれたという魔石を取り出して袋に分けるとマールは僕のベルトにつけた。
半分半分でちょうどいいい位置にベルトは固定された。
「すいません。ラスティ、でも…やっぱり…ノルンの魔石は僕のより質がいいです。ラスティ様、こちらを念のため持っていてください。ノルンの作った魔石は魔物除けや気配を消すものです。高レベルの魔物はいないと思いますが、かなり高位の魔物からも姿をくらませることができますから。」
攻撃用のものはないが、防除と逃げるためのものもあるとマールは説明してくれた。
一応聞かなくともわかるけれども僕は頷きつつそれを確認する。
マールの方は、ノーマが作ってくれたものらしい。
「ノーマのものは…少し荒いんですよね。大丈夫だとは思うのですが…あの子のものをラスティ様にはわたせません。リオン様が来るならどうしても役に立ちたいってこれを渡してきましたけど…そういうところが信用させないんだって言っても聞かないし。」
魔石のつくり方が荒いから、魔力が抜ける可能性もあるしとマールは顔をしかめる。
ノルンとマールは、ノーマと仲良くしているが微妙にわだかまりがのこったままのようだ。
まぁ、ノーマは王家の者より教会の者を大切にしている傾向はたしかにある。
今は、王家に教会の意見を伝える立場になっていることもあって教会側とみられているのもあるだろう。
ノルンとマールは、ノーマを僕の傍から離そうとしているようで、最近僕はノーマを見ていない。
あまり変わっていないようだけれど。
彼はジークハルトの側近として今は動いているから会うこともあまりないという理由もある。
まぁ…彼の場合はジークハルトのというよりはエスターよりだけれど。
僕の表情を読み取ったのだろう。
トリスティが苦笑した。
「まぁ…ノーマは主のジークハルトよりはエスターの傍に行きたがるからな。ノルンとマールの気持ちもわかるがほどほどにな。」
トリスティは、そう言いながらマールの頭を撫でた。
少し不満げにマールはトリスティを見上げたが、しかたないと頷く。
トリスティは苦く笑ってから僕を見た。
僕がへらりと笑うと少し遠慮がちにトリスティも笑った。
気にすることはない。
いつもの調子が戻ってきているトリスティに少し安心する。
「さぁ口ばかり動かさないで足も動かして。」
苦笑するロイスにはーいと返事をすると皆に笑われた。
0
お気に入りに追加
506
あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる