不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第六章 運命の一年間

136 リオンの誤算

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『まぁ…疑似人格ってやつで…消えるのはしかたないと理解しているんだが…』

ものすごく『俺』が困っているので僕は、どうしたの?と声をかける。
けっして、消えろと催促したわけではないのだが、すごく傷ついた感情が伝わってきて焦る。

「違うから!!そっちではないから!!困ってるみたいだから!!僕としては消えてほしくないよ!!」

消えたくないというなら方法考えようよと僕は必死に彼にそう言う。
『俺』は若干傷ついたと言いながら、そうではないと眉を寄せた。

『いっそ…前二つの死因だったらよかったのだけどな。』

リオンが首をかしげる。

「え?一番、苦しんだりしないかなと思ったんだけど。」

僕は死因と言われて少し考える。
最初は毒殺、次は殺人…物騒だな…こう考えると。
物騒なのだけど。

最後は…たぶん…。

『衰弱死だろう?ラスティ自身まで衰弱させることにならないか?』

人格だけ衰弱するということはないのではないだろうかと『俺』は言う。
つまり肉体も衰弱しなければならないだろう。
が、リオンは首を傾げた。

「陛下がラスティを衰弱するのをただ見てるだけと言うのは無いと思うのだよね。」

だから、別の死因かなぁとリオンは言う。

「たとえば……」

そこでリオンは顔を赤くする。
僕が首をかしげると、とても困ったように首を横に振った。
頬を両手で覆って首を振りながらリオンはつぶやく。

「だめだめ…ちょっとまって…僕…失敗したの??ここまで来て???」

バタバタするリオンに僕はため息をつく。
ともかく、『俺』をいきなり失うという事はなさそうだ。
けれども、リオンの試練をなんとかするというのは必須らしい。
それには、やはり僕の死が必要という事で。

『でも…なんか…曖昧なんだが…お前、前回の生でなんか言われてなかったか?』

リオンはうんうん悩んでいる。

「ラスティを無事に生かして試練を果たしてくれるように誘導しなさい。っていってたっけ……あの…くそやろう…思い出したらレスリル先生、殴りたくなってきた。」

僕が首をかしげると『俺』が気にするなと言ってきた。
曖昧な情報しかここは与えられていないなと『俺』はつぶやく。
リオンは前回の生の最後の時を彼の神である四番目の子どもと合っていたようだと『俺』は言う。
その情報は断片しかないと『俺』は首をかしげた。

「リオンの記憶というよりは、情報として与えられているみたいだな。『俺』がラスティに出てきたのは、リオンの魔法陣が大きな理由だと思うが…もしかしたら意識が生まれたのは、四番目か五番目がその魔法陣に手を加えた可能性があるのだと思う。」

リオンが何故かのたうち回っているので『俺』がそう教えてくれた。
『俺』が色々知っていたのは、その知識があったからだろうという。
どうやら、疑似人格として自覚したときにリオンに封じられていた情報をかなり得たらしい。
あのプルプル魔石の使い方もその情報からなんとなく思いついたのではないのかなと『俺』は僕に言った。
ただ、言葉にするまでは、なんとなくという感覚だったという。
あとは、今日、王宮から出てから自分が疑似人格ではないかと言う考えがはっきりとしたという。
もしかしたら、王宮に仕込んだというリオンの魔法陣の影響かもしれないと『俺』は不服そうにつぶやいた。

『ただ…なんでリオンが突然レスリルを殴りたいと言っているのかは…分からないな… 』

そういう個人的な情報はないぞと『俺』はため息をつく。

『なんか…気持ち悪いよな…『俺』はどうやらリオンの道具みたいだし。』

僕はため息をつく。

「道具なんていわないでよ…でも…僕とは別の人格っていうことなのだよね。」

うんと『俺』は言う。
僕はそうか頷きながら一つの可能性を考え付いた。

『うん?何か変なことを考えていないか?』

流石は一心同体。
別の者だと言いながらも僕のことを一番わかっているのはやはり彼なのだろう。
思いついたことは僕には無理だ。
けれども…陛下ならと思う。

「リオンの神様は…生かせて試練をって言ったのなら…君を殺すのはたぶん間違いだ。」

僕の言葉に、『俺』はそうか?と答える。
違っていても何とかなるだろう。
ただ、僕もそろそろいい加減怒っているのだ。
さんざん死んで来た。
これで最後と言うならば、徹底的にその神様に逆らってやろうと思ったのだ。
良いだろう。
僕は『俺』を失うのはまっぴらごめんだ。

『俺』というラスティが死ぬ…いや…表舞台から消えるという意味のキーワードが欲しいならそれを与えればいい。
彼をラスティでは、なくせばいいのだ。
僕は、陛下に頼んで『俺』の人格を移せる体を作ってもらえないか相談するつもりだった。
人の姿は無理かもしれないが。
使い魔の魔術を応用すれば、彼に器が作れるのではないか。
それで彼に名を与えて、ラスティでなくせばいい。
それには…陛下の協力が必要だった。
僕の使い魔の技術では彼を移せる器が作れない。
自分が使い魔を作れるようになって…陛下の力の強力さを思い知った。
ディーの存在だ。
今は自分で使い魔を作れるから、ディーを僕が使うことはない。
けれども、ディーは今もいるし、僕を守ってくれている。
僕が使い魔すら作れないような状態になれば、陛下との伝令になってくれるだろう。
それだけ多機能のディーの一番すごいところはずっと存在していることだ。
僕の作った使い魔は三日と持たないし、命令以外はこなせない。
けれど…陛下の使い魔たちは違う。
まるで自分の意思を持っているかのようで…いや…持っているのだろう。

『…お前の考えは…わかったけど…陛下は…協力してくれるだろうか。』

僕は首をかしげる。
『俺』はまぁいいけど…と呆れたようにつぶやいたのだった。
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