不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第六章 運命の一年間

134 聖者リオンの試練

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リオンの私室で僕はリオンとマールと一緒に、ジークハルトたちの帰りを待っていた。
ウェルタを教会の警備の騎士と一緒に一旦、騎士団の地下にあるという牢に隔離してくると言って僕とマールはその後に再び迎えに来るという。

「本当に体調に問題はない?」

念のためと解毒剤も飲み、今は魔石の解毒の魔法を纏っている。
一応、問題はないと神官にも見てもらったのだが、リオンはただただ心配そうだった。

「うん。」

マールは首を傾げた。

「それにしても…最近…また魔石がうまく固まっていなかったようでしたので、どうしたのかと思っていましたが……本当に実験をしていたのですね。」

リオンがそうなの?とマールを見た。

「たまに普通に失敗もしてたけどね。」

僕の言葉に、マールはやっぱりと笑っていた。
リオンは首をかしげる。

「結局どうなって、ラスティは助かったの?」

僕はえーっと…と少し考える。
仕方ないなと『俺』が僕と変わった。

『やわらかい魔石が出来る時の条件としては…力が足りない時と…力が多すぎる時だよね…まずは…力が足りない魔石を作る…』

そう言って『俺』は少しだけ力の足りない魔石を作った。
それから、魔石を二つに分ける。
大きいものと小さいものに分けている。

『こっちの小さいほうに力を追加して、パンパンにするイメージで…』

大きい方を、『俺』はマールに渡した。

『それで…この魔石に…条件付けをしてその条件を満たしたら起動するようにして…。』

そう言いながら『俺』は魔石に魔法陣を書きこむと、目の前に置いてあったクッキーを小さい魔石に置くと小さい魔石は淡く光ると大きい魔石の所に転移して取り込まれた。
大きい魔石は小さい魔石をクッキーごと包み込んでいる。

『元々同じ魔石だったから、力を均等にしようとする力が働くみたいで、片方が持っている力を取り込もうとして転移させるみたいだね。』

そう言って『俺』は、ため息をつく。

『念のために…この魔石と同じものを奥歯に仕掛けてたの。』

変なものとか飲ませれそうになった時に、この魔石が発動するように。
かなりやわらかく作って…大きい方はハンカチに殆どしみこんでいるくらいなものだった。
小さいほうが、転移して一応ゼリー状に戻ったようなものだった。
魔力は封じられていたが、元々すでに魔力が込められていた魔石は動いた。
だから、ブレスレットのような目立つ魔石は、奪われていたのだが。
プルプル失敗魔石がまさかハンカチにしみこんでいるとは思わなかっただろう。

『賭けではあったけどね…もしあの状態で暴力とか振るわれてたらどうなってたかわからないけど…彼は僕には興味がなかったみたいだから…助かったな。』

プルプル魔石が一体化して安定した状態ならばその魔力を使って2・3回はあの状況なら魔法が使えるのだと『俺』はいう。
本当に彼が、僕に何かするつもりなら、『俺』は反撃するつもりだったらしい。
元々魔力がなく、僕から引き出して使用している『俺』は魔石から魔力を引き出すのも上手い。
魔石は書きこまれた魔法しか使えないものと思っていた僕らは、へぇと『俺』を見る。
リオンが少し難しい顔をしていたが、それなら出来るかなとつぶやいた。

「リオン?」

するりと『俺』は引っ込んだ。
僕が李リオンに声をかけるとリオンは頷きながら魔石を手に取った。

「魔法陣を書きこむ前の魔石なら…今の状態の僕でもできるみたいだ…書きこんであるものは難しいけど」

僕はリオンの言葉に首をかしげる。
リオンは、プレスレットを撫でた。

「聖者と呼ばれるものは…試練を与えられるんだ。一人前の聖者になるためにね。」

そういってリオンは笑う。

「僕の力は不安定でしょう?だから試練を見送ろうっていう話も出ているんだけど…僕は試練を受けようと思っているんだ。」

リオンはそう言って笑う。

「力の不安定なことをどうしようかと思っていたんだけど…この方法はいいね。プルプル魔石も使い道が出来そうだし。形が安定しないならいっそ水くらいまで不安定にして…服にでもしみこませていたらいいかもしれない。」

僕はため息をつく。

「いつも濡れてる服を着るつもり?ハンカチとかでいいでしょ?」

僕の言葉にリオンはそうだねぇと考えている。
身に着けるものに魔力を貯蔵して置く。
良いかもしれないけれど、危険は無いのだろうか。
僕がそう思っていたら、『俺』がとりあえず短期間試して少しづつ時間を延ばすなど段階を踏んだ方がいいとつぶやいた。
そこまで長期間は持って歩かないように『俺』はしていたらしい。
リオンはそうかと返事をしながらかんがえている。

「えっと…リオンの試練ってどんなの?」

リオンはそうだねぇとつぶやく。

「基本的には、神殿に願いを送ってきた人の頼みを聞くところから始めるみたい。」

最初はお使いとかだよ。
そうリオンは笑った。
しばらくは王都の依頼をするだろうという。
ジークハルトやロイス、トリスティに手伝いを頼むかもとリオンは笑う。

「辺境に行くのは…流石に一人かな…みんな忙しそうだし」

皆、僕を害していないので、辺境に追放されえるようなこともない状態だ。
それぞれ仕事を持っているし長期間は王都を離れられない。
皆の運命を捻じ曲げたせいで、今度はリオンが困ることになった。
見ないように目を背けていたことだ。


僕は、そうなんだと頷きながら何か出来ないだろうかと考えていた。


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