151 / 233
第六章 運命の一年間
133 ぶるぶる魔石の使い道
しおりを挟む
バンと音を立てて扉が開いた。
男はつまらないなと口を尖らせた。
怒気を纏ったジークハルトとロイスが同時に扉を蹴りで壊したらしい。
ぶらぶらと大きく左右に揺れる扉が、ギイギイをきしんだ音を立てている。
リオンとマールがお互いを庇うように立っていた。
そして、呆然とした表情のトリスティが男を見つめている。
トリスティが、絞り出すような声でつぶやく。
「ウェルタ…」
ウェルタ、と聞いて僕は目だけで男を…ウェルタを見る。
記憶の中のウェルタはもっと華やかで陽気な男だったと眉を寄せる。
どこか陰気な気配を纏ったウェルタは、ひひっと少し不気味に絞り出すような声をだした。
「…どうしてこんなことを…」
トリスティの言葉にウェルタはさらに笑う。
「あはは…頭のいい君がわからないの?本当に??」
蔑むように、気が付いてもらえないことを悲しむようにウェルタは笑う。
僕は、顔を上げて彼らを見た。
マールが一瞬ほっとしたような表情を見せてからジークハルトを見る。
ジークハルトはロイスを見た。
ヴェルタは、そんな様子を見てにやりと笑う。
「はは…お妃さまを助けたいの?いいよ…もう用は無いから。」
ジークハルトはウェルタを睨む。
「どういうことだ…」
ウェルタは笑う。
「ああ、お妃さまには薬を飲ませただけで何もしていないよ。可哀そうだから身動きできないように縛ってあげただけ。あの薬って効果がすごいみたいだからね。」
トリスティの顔色が変わった。
「まさか…お前…最近問題になっている中毒性のあの薬をラスティ様に…」
ウェルタはそうだよと笑った。
「そうだよ、でもいいでしょ?この子はもう旦那様がいるのだから、可愛がってもらえばそれでいいのだから。」
トリスティは首を横に振った。
「お前…本当にどうしたというんだ。…解毒剤を飲ませないと…ジークハルト…」
ジークハルトが頷いてウェルタを警戒しながら僕に近づいた。
ウェルタは動かない。
ロイスもジークハルトを守るように一緒に僕の傍に座った。
「ラスティ…ごめんな…俺たちが傍にいたら…」
ロイスがジークハルトの肩をつかむ。
「しっかりしろ…大丈夫だ。ラスティは正気の眼をしている。今なら間に合う。はやく解毒剤を飲まして…いや…その前に薬を吐かせないと。」
そうだなとジークハルトが僕の猿轡をとる。
僕は、ほっと息を吐いた。
「……おもったより…平気そうか?」
おやっとジークハルトが首をかしげる。
ロイスも、あれという風に僕を見た。
聞きたいのは僕の方だ。
何ともないのだから。
解毒剤飲んでないけど。
ウェルタはそんな僕を見て首をかしげた。
ジークハルトとロイスは僕の様子を見て縄を全て外してくれた。
『ねぇ…きみさ…ブレスレット返して。あれ陛下にもらった大切なものなんだ。』
ウェルタはぎょっとしたように僕をみる。
トリスティは首をかしげた。
「ウェルタ…おまえ…脅しただけか?」
ウェルタは首を横に振った。
「そんなはずない…飲ませた…確かに飲んだのに…なんで…」
だから僕が聞きたいと思っていると、『俺』がため息をついた。
『飲んでないよ。』
ジークハルトとロイスがぎょっとしたように僕を見る。
『俺』は手首を動かしながらめんどくさそうにウェルタに言う。
『まぁ…こういう事の予測の範囲だ。王妃という者は、狙われるのが前提にあるからね。危険なことにならないように、意外に色々仕込んでいるんだよ。口にはいれられたけど…こっそり出した。それだけだ。』
そう言って『俺』はポケットからハンカチを出す。
ハンカチを広げると、プルプル魔石が何か液体を包んで揺れていた。
『奥歯にこの魔石の部品を仕込んでいたんだ。奥歯を噛みしめたら口の中のものをこの魔石の中に転送して封じることができるようになっていてね。君に飲まされた薬を飲んだふりをして転送させたというわけ。』
内心唖然としている僕に『俺』はやれやれと苦笑する。
『解毒剤を作っても、その解毒剤を効かないようにしている改良版がでて、解毒剤を役に立たなくさせているのには、気が付いていたよ。作っても作っても次の時にはうまく効かないってことがつづいていたからね。何か問題点があるのかって色々工夫してたけど…どうにもダメだった。巧妙にやってたみたいだから…解毒剤を改良しても改良しても上手く行かなかったのは…そういうことだったのろう?』
ウェルタがひひっと笑う。
「そうだよ…」
『俺』はだろうなと頷く。
『だからさ…そういうことがあったから…別の方法を考えていた時に思いついたんだ。まぁ…失敗作の魔石に面白い性能があったことを気が付いて…魔石を改良したらこうなった。』
どうなったらそうなるんだ!!
僕の心の中の叫びが、外に聞こえるわけもなく。
『俺』が楽し気にウェルタを見た。
僕はほっと息を吐く。
とりあえず助かったのだから。
ウェルタは、呆然と僕を見ている。
ばかなと彼の唇が音を出さすにそう動いた。
『残念でした。おとなしくしなさい。』
唖然としているウェルタをトリスティが抑え込んだ。
ジークハルトとロイスは僕をぺたぺた触って異常がないか調べている。
「…この馬鹿…」
ジークハルトの言葉に僕はごめんねと言いながら頭を下げる。
「やめろ…頭なんて下げるな…これも仕事だ…でも…これ以上仕事を増やすな。」
ジークハルトの言葉を聞きながら、僕はほっと息を吐いた。
男はつまらないなと口を尖らせた。
怒気を纏ったジークハルトとロイスが同時に扉を蹴りで壊したらしい。
ぶらぶらと大きく左右に揺れる扉が、ギイギイをきしんだ音を立てている。
リオンとマールがお互いを庇うように立っていた。
そして、呆然とした表情のトリスティが男を見つめている。
トリスティが、絞り出すような声でつぶやく。
「ウェルタ…」
ウェルタ、と聞いて僕は目だけで男を…ウェルタを見る。
記憶の中のウェルタはもっと華やかで陽気な男だったと眉を寄せる。
どこか陰気な気配を纏ったウェルタは、ひひっと少し不気味に絞り出すような声をだした。
「…どうしてこんなことを…」
トリスティの言葉にウェルタはさらに笑う。
「あはは…頭のいい君がわからないの?本当に??」
蔑むように、気が付いてもらえないことを悲しむようにウェルタは笑う。
僕は、顔を上げて彼らを見た。
マールが一瞬ほっとしたような表情を見せてからジークハルトを見る。
ジークハルトはロイスを見た。
ヴェルタは、そんな様子を見てにやりと笑う。
「はは…お妃さまを助けたいの?いいよ…もう用は無いから。」
ジークハルトはウェルタを睨む。
「どういうことだ…」
ウェルタは笑う。
「ああ、お妃さまには薬を飲ませただけで何もしていないよ。可哀そうだから身動きできないように縛ってあげただけ。あの薬って効果がすごいみたいだからね。」
トリスティの顔色が変わった。
「まさか…お前…最近問題になっている中毒性のあの薬をラスティ様に…」
ウェルタはそうだよと笑った。
「そうだよ、でもいいでしょ?この子はもう旦那様がいるのだから、可愛がってもらえばそれでいいのだから。」
トリスティは首を横に振った。
「お前…本当にどうしたというんだ。…解毒剤を飲ませないと…ジークハルト…」
ジークハルトが頷いてウェルタを警戒しながら僕に近づいた。
ウェルタは動かない。
ロイスもジークハルトを守るように一緒に僕の傍に座った。
「ラスティ…ごめんな…俺たちが傍にいたら…」
ロイスがジークハルトの肩をつかむ。
「しっかりしろ…大丈夫だ。ラスティは正気の眼をしている。今なら間に合う。はやく解毒剤を飲まして…いや…その前に薬を吐かせないと。」
そうだなとジークハルトが僕の猿轡をとる。
僕は、ほっと息を吐いた。
「……おもったより…平気そうか?」
おやっとジークハルトが首をかしげる。
ロイスも、あれという風に僕を見た。
聞きたいのは僕の方だ。
何ともないのだから。
解毒剤飲んでないけど。
ウェルタはそんな僕を見て首をかしげた。
ジークハルトとロイスは僕の様子を見て縄を全て外してくれた。
『ねぇ…きみさ…ブレスレット返して。あれ陛下にもらった大切なものなんだ。』
ウェルタはぎょっとしたように僕をみる。
トリスティは首をかしげた。
「ウェルタ…おまえ…脅しただけか?」
ウェルタは首を横に振った。
「そんなはずない…飲ませた…確かに飲んだのに…なんで…」
だから僕が聞きたいと思っていると、『俺』がため息をついた。
『飲んでないよ。』
ジークハルトとロイスがぎょっとしたように僕を見る。
『俺』は手首を動かしながらめんどくさそうにウェルタに言う。
『まぁ…こういう事の予測の範囲だ。王妃という者は、狙われるのが前提にあるからね。危険なことにならないように、意外に色々仕込んでいるんだよ。口にはいれられたけど…こっそり出した。それだけだ。』
そう言って『俺』はポケットからハンカチを出す。
ハンカチを広げると、プルプル魔石が何か液体を包んで揺れていた。
『奥歯にこの魔石の部品を仕込んでいたんだ。奥歯を噛みしめたら口の中のものをこの魔石の中に転送して封じることができるようになっていてね。君に飲まされた薬を飲んだふりをして転送させたというわけ。』
内心唖然としている僕に『俺』はやれやれと苦笑する。
『解毒剤を作っても、その解毒剤を効かないようにしている改良版がでて、解毒剤を役に立たなくさせているのには、気が付いていたよ。作っても作っても次の時にはうまく効かないってことがつづいていたからね。何か問題点があるのかって色々工夫してたけど…どうにもダメだった。巧妙にやってたみたいだから…解毒剤を改良しても改良しても上手く行かなかったのは…そういうことだったのろう?』
ウェルタがひひっと笑う。
「そうだよ…」
『俺』はだろうなと頷く。
『だからさ…そういうことがあったから…別の方法を考えていた時に思いついたんだ。まぁ…失敗作の魔石に面白い性能があったことを気が付いて…魔石を改良したらこうなった。』
どうなったらそうなるんだ!!
僕の心の中の叫びが、外に聞こえるわけもなく。
『俺』が楽し気にウェルタを見た。
僕はほっと息を吐く。
とりあえず助かったのだから。
ウェルタは、呆然と僕を見ている。
ばかなと彼の唇が音を出さすにそう動いた。
『残念でした。おとなしくしなさい。』
唖然としているウェルタをトリスティが抑え込んだ。
ジークハルトとロイスは僕をぺたぺた触って異常がないか調べている。
「…この馬鹿…」
ジークハルトの言葉に僕はごめんねと言いながら頭を下げる。
「やめろ…頭なんて下げるな…これも仕事だ…でも…これ以上仕事を増やすな。」
ジークハルトの言葉を聞きながら、僕はほっと息を吐いた。
0
お気に入りに追加
506
あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた
やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。
俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。
独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。
好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け
ムーンライトノベルズにも掲載しています。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる