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第六章 運命の一年間
127 『俺』と温室
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誕生日から数日。
ようやく落ち着いてきた僕に『俺』が一日体を貸してほしいとお願いされた。
執務も『俺』が片付けてくれて、というか『俺』の方が手際がいい。
僕が、首を傾げていると前世の記憶の所為だろうと『俺』は笑ってた。
ー今日は何をするの?
僕の言葉に『俺』はゼリーを作りたいとのこと。
ーゼリー好きだね?
僕の言葉に『俺』はうんと頷いた。
『俺』は少しうつむいた。
『俺がつくると未だにプルプル魔石だからな…』
少し拗ねた声でそう言われて僕は、ああと頷く。
『俺』はどうやら魔力や神力に馴染まないらしい。
使い魔とかはなんとか作れるのだが、魔石は無理なようだ。
普通は使い魔の方が難しいはずなのだけれど。
僕が最初に作っていたプルプルの物体を作ってしまう。
確かにゼリーっぽい。
ーあれを見てたら食べたくなるとか?
そんな感じだと『俺』は頷く。
温室に行くとミントに似た薬草を『俺』は収穫を始める。
ーミントゼリー?
実際は違うのだが。
『俺』はうんと頷く。
材料を集めて『俺』は、研究室で何故かゼリーを作り始める。
料理長の邪魔はしたくないからと少し恥ずかしそうにしていたのは最初に作った時に料理長に褒められ続けたからだろう。
前世の記憶の中のものであり、自分の発明ではなかったから恥ずかしくなったと『俺』は言っていた。
新しいものを作るつもりかなと思いながら、僕はまったりと『俺』の手元を見ていた。
味見をして『俺』はうげっと眉を寄せた。
『薬草が多かったみたいだ…苦い…』
そう?と僕は思う。
意外に『俺』は甘党のようだ。
味覚は、『俺』のほうがお子様だよなと、この前陛下に僕の方が子供といわれたことを思い出して口を尖らせた。
『俺』は苦笑しつつ、量を調整している。
『今度は…甘いかな…』
甘すぎたらしく顔をしかめる。
幾度か試してから納得のいく味になったのだろう。
レシピのようなものを書くと今度は弾力を試し始めた。
固くなったりやわらかくなったり。
何度か試していたけど少しやわらかめのゼリーを作って満足したようだ。
それから何故か『俺』は魔石を作り出した。
ゼリーに負けず劣らずプルプルだが。
ー…何してるの??
『俺』はうんと頷いてから首を傾げた。
『似てるでしょ?』
だからどうしたと思わず突っ込むと、『俺』はうんと頷く。
『ゼリーでイメージしてからやってみたらうまく行くかなぁと…』
僕はため息をつく。
余計に悪化しているような気がすると…。
ーたまに…子供っぽくない?
僕の言葉に『俺』はそうかなと首を傾げた。
『これでも色々考えた結果なんだけど…うん…でも上手く行かないな…もう少し…いい?』
今日は一日、表に出てればいいよと言うと『俺』はありがとうと言って魔石を何やら作っている。
僕がプルプル魔石を作っていた時に見守っていてくれたみんなはこんな気持ちだったのかなと思う。
なにか…がんばれって思う。
真剣に頑張っている『俺』の思いが伝わっている所為だけど。
少しでもうまくって思ってるのがわかる。
ー力抜いて…焦らないで。
僕の言葉に『俺』は驚いたようだった。
少し考えて、ありがとうと嬉しそうな感情が伝わってくる。
『薬草を貰ってもいい?』
僕が植えたものだからと『俺』に言われて僕は、ついでに種を植えておいてというと『俺』は笑った。
種を置いてある場所に行きいくつか種の袋を持つと『俺』は手慣れた様子で空いた花壇に種を植えはじめる。
ーでも…突然どうしたの?
僕の言葉に『俺』は何でもないよと言ったが少し考えて頷いた。
『俺って何かなって…どうなるんだろうなと思った』
手でゆっくりと土をならしながら『俺』は大切そうに種を植えている。
『この種が大きくなる頃に…『俺』は…いるのかなって』
僕は眉を寄せる。
ー不吉なこと言わないでほしいな。
『俺』は首を横に振ると水やりを始める。
少しゆっくりと水をやってから『俺』はつぶやいた。
『…たぶん…三番目の死を…いや試練を超えることが出来たら…『俺』は消えてしまいそうだって陛下の言葉を聞いて思ったんだ。そうなんだよな…ラスティの中には…三人いるってことになるんだなって。二人ではなかった。』
僕は首をかしげる。
『本来のラスティ、稀人と陛下が言う異世界の人間、あとは五番目の子ども。』
なるほどと僕は思う。
『たぶん、今は…ラスティと稀人の異世界人が表に出ていて、五番目の子どもは寝てるという事なのだと思う。仮に…君がラスティで『俺』が異世界人と考えたら…『俺』は別にいらないと思う。』
僕は、それはどうかなと思う。その異世界の記憶があるから僕は運命に逆らっているわけだし。まぁ結構あきらめモードで流されまくってた時期があるので偉そうにはいえないけども。
『ただ…『俺』は魔法陣の影響で出てきたというなら…そのあたりが解消されたら消えるのかなと思う。』
だから、何かしたいと思ったと『俺』はつぶやく。
たとえば…陛下が美味しいと言ってくれたゼリーの新作作ったり、薬草を植えておいたりということなのだろうか。
ー陛下も言っていただろう。消えないと思う。今まで一緒だったんだし…もとに戻るのだって考えたら…僕も消えるのかな?
『俺』はそんなことは…といいかけて黙ってしまった。
消えるにしろ同化するにしろ…今の自分たちはいないという事だ。
『…もしかしたら…そのためのなのだろうか…』
眉を寄せて『俺』はつぶやく。
『一応…『俺』もラスティだと言えるのかな…』
僕は、今さら何を言っているのだろうかと思いつつ頷いていた。
ようやく落ち着いてきた僕に『俺』が一日体を貸してほしいとお願いされた。
執務も『俺』が片付けてくれて、というか『俺』の方が手際がいい。
僕が、首を傾げていると前世の記憶の所為だろうと『俺』は笑ってた。
ー今日は何をするの?
僕の言葉に『俺』はゼリーを作りたいとのこと。
ーゼリー好きだね?
僕の言葉に『俺』はうんと頷いた。
『俺』は少しうつむいた。
『俺がつくると未だにプルプル魔石だからな…』
少し拗ねた声でそう言われて僕は、ああと頷く。
『俺』はどうやら魔力や神力に馴染まないらしい。
使い魔とかはなんとか作れるのだが、魔石は無理なようだ。
普通は使い魔の方が難しいはずなのだけれど。
僕が最初に作っていたプルプルの物体を作ってしまう。
確かにゼリーっぽい。
ーあれを見てたら食べたくなるとか?
そんな感じだと『俺』は頷く。
温室に行くとミントに似た薬草を『俺』は収穫を始める。
ーミントゼリー?
実際は違うのだが。
『俺』はうんと頷く。
材料を集めて『俺』は、研究室で何故かゼリーを作り始める。
料理長の邪魔はしたくないからと少し恥ずかしそうにしていたのは最初に作った時に料理長に褒められ続けたからだろう。
前世の記憶の中のものであり、自分の発明ではなかったから恥ずかしくなったと『俺』は言っていた。
新しいものを作るつもりかなと思いながら、僕はまったりと『俺』の手元を見ていた。
味見をして『俺』はうげっと眉を寄せた。
『薬草が多かったみたいだ…苦い…』
そう?と僕は思う。
意外に『俺』は甘党のようだ。
味覚は、『俺』のほうがお子様だよなと、この前陛下に僕の方が子供といわれたことを思い出して口を尖らせた。
『俺』は苦笑しつつ、量を調整している。
『今度は…甘いかな…』
甘すぎたらしく顔をしかめる。
幾度か試してから納得のいく味になったのだろう。
レシピのようなものを書くと今度は弾力を試し始めた。
固くなったりやわらかくなったり。
何度か試していたけど少しやわらかめのゼリーを作って満足したようだ。
それから何故か『俺』は魔石を作り出した。
ゼリーに負けず劣らずプルプルだが。
ー…何してるの??
『俺』はうんと頷いてから首を傾げた。
『似てるでしょ?』
だからどうしたと思わず突っ込むと、『俺』はうんと頷く。
『ゼリーでイメージしてからやってみたらうまく行くかなぁと…』
僕はため息をつく。
余計に悪化しているような気がすると…。
ーたまに…子供っぽくない?
僕の言葉に『俺』はそうかなと首を傾げた。
『これでも色々考えた結果なんだけど…うん…でも上手く行かないな…もう少し…いい?』
今日は一日、表に出てればいいよと言うと『俺』はありがとうと言って魔石を何やら作っている。
僕がプルプル魔石を作っていた時に見守っていてくれたみんなはこんな気持ちだったのかなと思う。
なにか…がんばれって思う。
真剣に頑張っている『俺』の思いが伝わっている所為だけど。
少しでもうまくって思ってるのがわかる。
ー力抜いて…焦らないで。
僕の言葉に『俺』は驚いたようだった。
少し考えて、ありがとうと嬉しそうな感情が伝わってくる。
『薬草を貰ってもいい?』
僕が植えたものだからと『俺』に言われて僕は、ついでに種を植えておいてというと『俺』は笑った。
種を置いてある場所に行きいくつか種の袋を持つと『俺』は手慣れた様子で空いた花壇に種を植えはじめる。
ーでも…突然どうしたの?
僕の言葉に『俺』は何でもないよと言ったが少し考えて頷いた。
『俺って何かなって…どうなるんだろうなと思った』
手でゆっくりと土をならしながら『俺』は大切そうに種を植えている。
『この種が大きくなる頃に…『俺』は…いるのかなって』
僕は眉を寄せる。
ー不吉なこと言わないでほしいな。
『俺』は首を横に振ると水やりを始める。
少しゆっくりと水をやってから『俺』はつぶやいた。
『…たぶん…三番目の死を…いや試練を超えることが出来たら…『俺』は消えてしまいそうだって陛下の言葉を聞いて思ったんだ。そうなんだよな…ラスティの中には…三人いるってことになるんだなって。二人ではなかった。』
僕は首をかしげる。
『本来のラスティ、稀人と陛下が言う異世界の人間、あとは五番目の子ども。』
なるほどと僕は思う。
『たぶん、今は…ラスティと稀人の異世界人が表に出ていて、五番目の子どもは寝てるという事なのだと思う。仮に…君がラスティで『俺』が異世界人と考えたら…『俺』は別にいらないと思う。』
僕は、それはどうかなと思う。その異世界の記憶があるから僕は運命に逆らっているわけだし。まぁ結構あきらめモードで流されまくってた時期があるので偉そうにはいえないけども。
『ただ…『俺』は魔法陣の影響で出てきたというなら…そのあたりが解消されたら消えるのかなと思う。』
だから、何かしたいと思ったと『俺』はつぶやく。
たとえば…陛下が美味しいと言ってくれたゼリーの新作作ったり、薬草を植えておいたりということなのだろうか。
ー陛下も言っていただろう。消えないと思う。今まで一緒だったんだし…もとに戻るのだって考えたら…僕も消えるのかな?
『俺』はそんなことは…といいかけて黙ってしまった。
消えるにしろ同化するにしろ…今の自分たちはいないという事だ。
『…もしかしたら…そのためのなのだろうか…』
眉を寄せて『俺』はつぶやく。
『一応…『俺』もラスティだと言えるのかな…』
僕は、今さら何を言っているのだろうかと思いつつ頷いていた。
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