不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第六章 運命の一年間

122 一歩

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『俺』はさっさと風呂に入り汚れを落とすとノルンの用意した服に着替える。
髪を乾かしながら僕に変わるか?と声をかけてくる。
僕は、少し考えてもう少しとつぶやくと『俺』は、ため息をついた。

『扉をさっさと開けて、行ってみたら案外こんなものかって思えると思うんだが?』

もったいないなぁ、と『俺』は僕に言った。

『お前の誕生日だろう?皆お前を祝ってくれている…お前のいままでの頑張りの成果で仲良くなった奴らだっているだろう?おまえがその言葉を受けないでどうするんだよ。』

『俺』の言葉に僕は、うっと唸ってしまった。

『いつまで甘えているんだ?不誠実だとは思いはしないのか?』

僕は、『俺』に怒られ渋々交代した。
『俺』は満足そうによしと笑った気配を送ってきたがそのあとは静かになった。
彼と僕が別の意識だと認識した後、『俺』と僕は互いが言いたいことが違う時は意識がわかれているような感覚がするが、特に意見がない時は僕と『俺』区別がでない。
『俺』が感じていることも僕が感じていることもどちらが表に出ている時でもどちらでもなくなる。
なんというか変な感じしかしないが、いったい何だろうと思う。

『俺』は僕が、この世界の王家の御伽噺の五番目の意識ではないかと言うけれど、僕は最近逆なのでは?とも思う。
まぁ『俺』が僕のストレスか何かの妄想の産物と言う可能性も考えてい居るが。
どうにも、前世の記憶が多少あるとこんな剣と魔法のファンタジーの世界、しかも男ばっかりで男同士で子供までできる僕にとっては未だに謎世界に長く生きているというのに、微妙になんだそれ感を持ってしまう。
たぶん、御伽噺の子供たちは神様感なのだとは思うのだけれど、そもそも前世が無神論者の僕は、どうにも馴染めないのだろう。
『俺』の存在も抑圧されたなんとかで出来た現実逃避の二重人格的なやつではなどと思ってしまう。
などと考えていると『俺』の意識を感じられていた。呆れたようなため息もついでに感じる。

『だから…どうでもいいからお前そういう理屈こねて時間稼ぎするな…さっさと王宮に行け。そんなに陛下の眼が衝撃だったって言うならお前が寝てる間の記憶を渡してやろうか?たぶん、パニック起こすぞ?』

はい?と僕は『俺』の言葉に固まった。

『お前の言う、『俺』がストレスの何とかで出来た仮人格だっていうなら、お前が逃げたいことを引き受ける人格だってことだろう。陛下とラスティはパートバーなんだぞ?多少パートナー…まぁ正式には体をつなげてるわけではないからパートナー未満か?…まぁとにかくそういう手前のことくらいしてるんだが…そういう時はお前無意識に引っ込んでるだろうな。大体この歳で生理現象的なやつの記憶が無いって言うのがおかしいだろうが…。』

そう言って『俺』は記憶を開示してきた。
どうやって隠してたのという悲鳴を飲み込む。
僕は廊下で真っ赤になってうずくまってしまう。
実際は大したことはない。
僕だってやってたちょこっとした口づけとかそういう記憶だけれど、陛下の眼が少し違う。

「あわわ…あわわ…」

僕の動揺というか葛藤と言うか羞恥と言うかその他モロモロを感じ『俺』は、ため息をついた。

『………あのな…ラスティは、陛下のパートナーなんだよ。陛下自身が望んだパートナーだ。最初は…同情とかそう言うのかもしれないけど…もう子供ってわけでもない。ラスティはきちんと育ってるわけだ。陛下がずっと守っていないとならないくらい弱いわけでもないよな?それでも陛下が守ろうとしてくれてるのは、家族だって思ってくれてるということと…きちんとパートバー扱いしてくれてるわけだ。』

『俺』は僕に問いかける。

『そろそろ答えを出せ。』

僕は何の?と首をかしげる。

『陛下に対する態度だ。』

そういうと『俺』は、また気配が消えてしまった。
僕はずるい、いい逃げだと思う。
けれど、彼の言っていることは当たっているのだ。

甘えているという事も、分かっている。
僕にとっての16歳はとても大きな意味がある。
これを超えたら、僕はどうなるのなるのだろう。

中途半端に、『俺』が乾かしていた髪を魔法で乾かす。
もうすぐノルンが迎えに来るだろう。
僕は息を吐くと、窓から外を眺める。

「一度にいろいろ言われてもなぁ…僕は…そこまで器用ではないんだよ。」

まずは、生きて、17歳を迎えて…それからだとダメなのだろうか。
そんなことを思う。
分かっているのだ。
そろそろ、議会から後継者はという話もちらほら出ているとも聞いた。
ジークハルトが次を継いだとしても…その次の王は、陛下の直接血を引いた王子を望むものも多い。

「先なんて…」

無い先を続けさせようと僕はしているのだ。
今までなかった先を…。

「そっか…先…先を考えないとダメなんだよなぁ…」

王宮で待っているだろう大切な人たちとの先を、きちんと考えないとな…僕は、そう思いいたって…ようやく扉に向かって一歩を踏み出すことが出来た。
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