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第五章 変わる関係
120 拾い食い禁止令
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寝室に先に入り陛下を待つ。
窓から見える空には大きな三日月。
綺麗だなぁと思う。
陛下は、ジークハルトを落ち着かせるためにジェン公としばらく話してくると言っていた。
僕は、ぼんやりと本を広げた状態でため息をついた。
どうにも悪い方向にしか考えが行かない。
誰かと離したい…そう思った。
ねぇ…と『俺』に話しかける。
『うん?』
僕の頭の中に響く声。
少し安堵する。
『俺』に僕は思っていた疑問を投げつけた。
「ほんとは…ほんとはさ…君がラスティだったりしない?」
そうずっと思っていたこと。
僕ではない。
彼がほんとにラスティなのでは。
僕の疑問に『俺』は、どうだかねぇと苦笑した。
『俺もラスティの構成要素の一部ではある。だから…ラスティかと言われるとそうだと答えるが…欲しい答えは違うのだろう?』
僕の言葉に『俺』は苦笑しているようだった。
『俺』の問いに僕はそうだと答える。
欲しい答えは違う。
どちらが異分子なのかという事だ。
本物のラスティどっちなのだと。
『俺』はやれやれと肩をすくめた。
『自覚がなかったが…ラスティは、もともと二つの要素が合わさった者だ…どちらが欠けてもラスティではないさ。…だから…片方の要素が天に帰って時は…残った方はラスティではなくなるんだ。どちらかがではない。両方揃ってラスティなのさ。』
だから、そんな寂しいこというなと『俺』は言う。
「でも…なんでこんなことになったのかな…。」
僕の言葉に、『俺』はそうだなとすこしすまなそうな感覚が伝わってきた。。
『王家のお伽話を聞いてそうかと思ったかな…『俺』は…自覚がない時は…前世の記憶部分にまどろんでいた感じだった。半分眠っていて…はっきり『俺』が起きた時は…お前の方がその状態だったのではないか?』
僕はふぅん…とそうかもと思いつつぼんやりしていた時はと考えて固まる。
やっぱりそう言うことだよな…。
彼は…僕の辛い時は出ていたのだ。
表に…死ぬときとか…あとは……。
『やめろ。』
僕の思考を彼は断ち切るように言葉をぶつけてきた。
『俺』が嫌そうな気配を出す。
『悪い記憶ばっかりではないからな。』
僕は思わず無言になっていた。
悪い記憶ではない。…というが…。
「…だって…」
『俺』は気にするなという。
でも彼は…ずっとひどい目にあい続けた。
痛い部分や辛い部分を引き受けて。
『『俺』がお前に存在を知られるという事がいいことだと信じたいな。とりあえず…本気で『俺』に悪いなとか思うなら…絶対に迂闊にもらったものとか食うなよ…。』
僕は、頷く。
そんなことをしたら『俺』がキツイ。
ひどい目に合うだけだ。
「……嫌がるってことはやっぱり嫌だった?」
『俺』はそうでもないとつぶやくが嫌そうだ。
でも陛下を『俺』は慕っている。
「そんなに嫌だった?」
『俺』は、そうでもないけどな…とつぶやく。
やっぱり『俺』は陛下が大好きなのだろう。
『陛下はずっと優しかったし…ジークハルトもそうだ。けど…辛い。あれは…』
『俺』は囁くように言った。
『…俺は…いいけど…辛そうだった。陛下も…ジークハルトも…泣いていた。いつも…いつもだ。だから…あの二人より先に死なないと決めた。今回は絶対に長く生きる。』
そういう『俺』に僕は頷く。
そうだなと思う。
そうしなければと思う。
『だからもらってもだめだし拾い食いも駄目だ。』
いや流石に拾い食いはしない…たぶん。
頷く僕に何度も『俺』は言い続けていた。
窓から見える空には大きな三日月。
綺麗だなぁと思う。
陛下は、ジークハルトを落ち着かせるためにジェン公としばらく話してくると言っていた。
僕は、ぼんやりと本を広げた状態でため息をついた。
どうにも悪い方向にしか考えが行かない。
誰かと離したい…そう思った。
ねぇ…と『俺』に話しかける。
『うん?』
僕の頭の中に響く声。
少し安堵する。
『俺』に僕は思っていた疑問を投げつけた。
「ほんとは…ほんとはさ…君がラスティだったりしない?」
そうずっと思っていたこと。
僕ではない。
彼がほんとにラスティなのでは。
僕の疑問に『俺』は、どうだかねぇと苦笑した。
『俺もラスティの構成要素の一部ではある。だから…ラスティかと言われるとそうだと答えるが…欲しい答えは違うのだろう?』
僕の言葉に『俺』は苦笑しているようだった。
『俺』の問いに僕はそうだと答える。
欲しい答えは違う。
どちらが異分子なのかという事だ。
本物のラスティどっちなのだと。
『俺』はやれやれと肩をすくめた。
『自覚がなかったが…ラスティは、もともと二つの要素が合わさった者だ…どちらが欠けてもラスティではないさ。…だから…片方の要素が天に帰って時は…残った方はラスティではなくなるんだ。どちらかがではない。両方揃ってラスティなのさ。』
だから、そんな寂しいこというなと『俺』は言う。
「でも…なんでこんなことになったのかな…。」
僕の言葉に、『俺』はそうだなとすこしすまなそうな感覚が伝わってきた。。
『王家のお伽話を聞いてそうかと思ったかな…『俺』は…自覚がない時は…前世の記憶部分にまどろんでいた感じだった。半分眠っていて…はっきり『俺』が起きた時は…お前の方がその状態だったのではないか?』
僕はふぅん…とそうかもと思いつつぼんやりしていた時はと考えて固まる。
やっぱりそう言うことだよな…。
彼は…僕の辛い時は出ていたのだ。
表に…死ぬときとか…あとは……。
『やめろ。』
僕の思考を彼は断ち切るように言葉をぶつけてきた。
『俺』が嫌そうな気配を出す。
『悪い記憶ばっかりではないからな。』
僕は思わず無言になっていた。
悪い記憶ではない。…というが…。
「…だって…」
『俺』は気にするなという。
でも彼は…ずっとひどい目にあい続けた。
痛い部分や辛い部分を引き受けて。
『『俺』がお前に存在を知られるという事がいいことだと信じたいな。とりあえず…本気で『俺』に悪いなとか思うなら…絶対に迂闊にもらったものとか食うなよ…。』
僕は、頷く。
そんなことをしたら『俺』がキツイ。
ひどい目に合うだけだ。
「……嫌がるってことはやっぱり嫌だった?」
『俺』はそうでもないとつぶやくが嫌そうだ。
でも陛下を『俺』は慕っている。
「そんなに嫌だった?」
『俺』は、そうでもないけどな…とつぶやく。
やっぱり『俺』は陛下が大好きなのだろう。
『陛下はずっと優しかったし…ジークハルトもそうだ。けど…辛い。あれは…』
『俺』は囁くように言った。
『…俺は…いいけど…辛そうだった。陛下も…ジークハルトも…泣いていた。いつも…いつもだ。だから…あの二人より先に死なないと決めた。今回は絶対に長く生きる。』
そういう『俺』に僕は頷く。
そうだなと思う。
そうしなければと思う。
『だからもらってもだめだし拾い食いも駄目だ。』
いや流石に拾い食いはしない…たぶん。
頷く僕に何度も『俺』は言い続けていた。
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