不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第五章 変わる関係

119 少し戻った日常?

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僕自身がよくわからない状態に陥ったが…なんとか自分の中で折り合いはつけれたと思う。
つけれたはずだ…。
いや…よくわからないし。
いまのところはどうしようもないだろうと開き直っている。
ともかく…今のところは目の前の問題を何とかするべきだろう。
案の定というか…想像通りというか。

『まぁ…そうだな…』

『俺』も困惑している。
まぁ困惑するよな。
目の前では陛下を前にジークハルトが抗議している。
ジークハルトの体は殆どよくなった…と思う。
ある意味…ジークハルトは正気でなかったのだろう。
もしくは、少し前に続いていた変な状態から皆が抜けたのかもしれない。
ジークハルトは自分の任務に戻りたいと陛下に訴えている。
陛下が少し難色を示しているのだが。
ジークハルトの状態は、陛下の治療を受けているから。
その治療をやめたらどうなるかまだ分からない。
それもあるのだが、もう一つ。
ある意味保留していた問題というか…うやむやになっていたらしい問題。

「……ラスティの護衛騎士はやめませんから!!!」

ジークハルトがそう陛下に突然言った。

え??今更それを蒸し返すの??

陛下は目を丸くするし突然のジークハルトの発言に皆困惑した。

いや…王位継承権が妃の護衛騎士っておかしいと思わないか?

という僕の問いは先ほど無視された。
陛下はため息をつく。
ジークハルトが第一王子になったのはジークハルトが弱っていた時だ。
本人が曖昧な時に決めたものも多い。
なんとか持ち直したジークハルトは、いろいろ漸く吟味できたらしい。
そして…主張したのはそれだった。
ラスティの護衛騎士が続ける!!というもの。

「しかしねぇ…それなら私もきちんと意見を言うけども…ジーク…流石に王位継承者になった君を私の妃の護衛騎士のままというのは…。」

ジークハルトは、眉を寄せて陛下に言う。

「分かっていますが…やっぱり嫌です。絶対に続けさせてください。」

陛下は参ったなぁと言いながら僕を見る。
いや…僕に何とかしろというのは厳しいです。
と…頭の中でため息が聞こえた。

ふっと視界が変わる。
『俺』が表に出たのだ。
う…やっぱりか…やっぱり…僕より『俺』のほうが強いのか??

『陛下…その…別に良いのでは?』

陛下が、ええ~と困った顔で僕をみた。

まぁ…『俺』なんだが…。

『俺』は、ジークハルトを見るとにっこりと笑う。
2人とも変化に気が付いていないようだった。
まぁ…変化というかなんというか。
同じだから複雑だ。

『僕は一生懸命なジークハルトが好きだな…だから、一度始めた護衛騎士に責任をもって頑張りたいっていうジークハルトはとってもすごいと思うし、とてもかっこ良いと思う。でもね…正直言ったら…王位継承者として陛下を支えてほしいなと思う。王位継承者っていろいろ覚えないといけないよね?しっかり集中したほうがいいよね?もちろん、護衛騎士として頑張ってるジークハルトも好きだけど…別に王位継承者になったからって僕を守ってくれないってことでもないでしょ?護衛騎士でなくても…ジークハルトは僕の傍にいるのは変わらないと思うのだけど?』

違う?と首をかしげて『俺』はジークハルトを見た。

上目遣い完備。
身長差があるからな!!

『俺』は、ジークハルトに圧をかけているつもりのようだが…ジークハルトにはその圧は効いていない。

圧なんか、かかるものか。
ただ、可愛い目線でウルウルしてるだけだからな。

意外と…いや…まぁ僕だものな。
『俺』に少し天然のようだ。
言っとくけどもラスティが美少年という事を忘れているな?
美少年なのだぞ??
僕も忘れがちだが。

というか、忘れてたけど。

ジークハルトはラスティのこと好きなんだぞ?
他意はない全開の親愛の好きだとは分かっていてもだ。

純粋な美少年が、好き好きいうな。

というか…はっきり言おう。

ちょっとまって、『俺』のほうが行動可愛くない???

なにその甘えた全開のおねだり系の声で、そんなこというのひどくない??
本人媚びてるつもりないようだけど…
ジークハルトを説得しようと本気で思っているのが質が悪い。

ジークハルトがすごい変な顔になってる。
嬉しいんだけど違うのが分かってるから若干情けなくなってる。
口元緩んでるがしかめっ面だ。
すごい葛藤してるんだろうな。
ジークハルトの葛藤はしかたないだろう。
可愛そうになるくらい。

『どうしたの??』

わかってやれよ!!『俺』!!!ジークハルトの葛藤を。
まぁ…これが他人?のふり見て我がふりなおせだな…。
反省しました。
僕もやってますよね?
あれ。
やってるときはわからないけど。
今の立場は一歩引いてるから。
僕があの場にいたら、と思ってしまう。
そもそも、説得する方法は思いつかなかったわけだが。
どした??と首をかしげている『俺』と同じ反応しただろう。
ぐっとジークハルトが情けない顔をして僕…『俺』を見た。

「あのな…他意はないのは分かってるんだが…俺はラスティが好きなんだ。そんなに手軽に好きなどと言わない方がいいぞ…ラスティ…。」

『俺』はいはいと、にこにこと笑う。
まったく本気にしていない。
わかってないとジークハルトは肩を落とした。

『ジークハルト…ロイスがいるのに…そんなこというのおかしくない?』

ジークハルトが青くなった。
違うと首を振っているが、これは僕も思うな。
どんなに否定しても、ロイスも好きだよね?ジーク。
ぷんと『俺』は顔をジークハルトから背ける。

「…えっとその…ラスティの言葉通りだよ。別に護衛騎士の任務がなくともジークハルトがラスティを守ってはいけないなんてないからね??」

陛下がなんとか軌道修正しようとしている。
そうそう…そっちの話だ。
ジークハルトは違う違うと何か言っているけどこれは僕も『俺』も聞く耳を持っていない。

皆、違うというけれどさぁ~。

ぷんと顔を背けているとジークハルトが陛下に向きかえった。

「…陛下…こんなに天然な妃を野放しにして不安はないのですか?」

陛下はきっぱりと言った。

「不安だ。」

ひどくないか???
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