121 / 233
第五章 変わる関係
111 王城の門
しおりを挟む
陛下に王宮に呼ばれて門までマールと一緒に行く。
マールは留守番となっているが門までの護衛として来てくれていた。
護衛というか方向を見失うこともある僕の案内役というか。
流石に王宮で迷わないとは思うのだが。
もう何年もここに居るのだから。
「陛下とバルハルト公が一緒だから大丈夫だと思いますが…はぐれないようにしてくださいね?」
マールの言葉にそこまで子供ではないよと笑うがマールは眉を吊り上げた。
「いいですか?ラスティ様は…金の瞳をもつお方です。王に逆らってでも手に入れようとする不届き者もいるのですよ。王宮と離宮と学園しかラスティ様はしりません。確かに多少力はつけているとはいえ…外では通用しないと思っていてください。王宮の外は…本当に危険なのですから。陛下の手は放さないでください…。」
マールの言葉に僕は首をかしげる。
「マール?」
不安をにじませるマールの言葉に僕は首をかしげる。
「…不安なのです…教会に…ラスティを行かせてはならない…何故か…そう思うのです。」
考えすぎだというのは分かっていますとマールは泣きそうな目で僕を見つめる。
「…ここで手を放したら…ダメだと…」
僕は、マールに頷く。
「うん…陛下の傍にいる、大丈夫だよ。陛下もバルハルト公もいるんだ。怖いことがあってもきっと大丈夫だよ。」
僕が、そう約束するとマールは絶対ですよと頷く。
「絶対に…陛下の傍にいてください。」
何度も言うマールに僕は何度も約束した。
「陛下とバルハルト公の近くにいるようにするから。」
僕の返事にマールは少し不満そうに、それでも納得してくれたように頷いた。
陛下とバルハルト公の所に行くとエスターも立っていた。
僕が首をかしげて陛下を見ると陛下が苦笑する。
「…なんだが…忘れものをしたから一緒に取りに行くと言っているんだ。」
僕はそうですかと頷く。
エスターは少し僕を見ていたがふんと目を逸らした。
マールがお辞儀をして奥の間へを帰っていった。
僕はその後ろ姿を少し見送ってから陛下の方へ歩く。
陛下が僕に手を差し出した。
少しエスターが眉を寄せたが、肩をすくめた。
「…父上は…本当にその子をパートナーと考えているのですね?」
エスターの言葉に陛下は首を傾げた。
「どういう意味だい?」
陛下の言葉にエスターは、肩をすくめる。
「ただの確認ですよ。私はこの子について義母上と呼ぶべきかラスティ様と呼ぶべきかわからなかったので。やはり年下の子供に義母上と呼ぶのは少し抵抗はありますので…確認したかっただけです。」
陛下がなんだそれという風に首を傾げた。
バルハルト公が、まぁなぁと頷く。
「エスター王子にしたら、複雑だろうが…別にラスティ様を義母上と呼ぶ必要はないだろう?」
陛下がそうだなと頷く。
「ラスティは私のパートナーではあるが…別にエスターの母になったわけではないからな。」
陛下の言葉にエスターはそうですかと答える。
「まぁ…立場上は義母だからなぁ。」
バルハルト公はふむと首をかしげた。
「ジークハルトにラスティ様を、義母上って呼ばせてみるか?一応あいつも王子だし」
陛下は、おいおいと苦笑します。
エスターが嫌な顔をしてバルハルト公を見た。
流石に趣味がわるい冗談だとバルハルト公を僕も見る。
エスターの気持ちを考えてみたらそんなの余計に嫌だろう。
彼の母はきちんといるし、僕をそもそも疎んでいる。
ジークハルトだって、王子の立場を奪おうとしているものだ。
無理矢理に家族にしなくてもいいだろう。
「叔父上…やめてやってください。ジークハルトが変な性癖を覚えてらどうするんですか…すでに結構危ないのに…。これ以上変な奴になられると私も困ります。」
僕が首をかしげてエスターを見ると彼はお前は知らなくていいと眉を吊り上げた。
陛下も首をかしげていたが、バルハルト公は確かにと頷いていた。
そういえば…エスターが彼らといるのを目の当たりにしたのは、初めてかもしれないなと思う。
なんだ…仲いいな。
僕の感想はそうだった。
記憶の中のエスターは、陛下に反抗ばかりしていた。
ふとバルハルト公を見る。
僕は知っているエスターと陛下の会話の時にはバルハルト公がいない。
バルハルト公という存在が緩衝材になっているのだろう。
今までだったらこの時点でバルハルト公は辺境へ行っていたと思う。
彼を騎士団長にとどめることも。大切なことだなと僕は思う。
「ここで遊んでいる場合ではないでしょう?そろそろ行きましょう。」
そう言ってエスターがすたすたと歩きだしてしまう。
陛下は、やれやれと言って僕の手を握りなおしてから微笑んだ。
「まぁ…行こうか…。」
そういう陛下に頷いて僕は一緒に歩き出した。
マールは留守番となっているが門までの護衛として来てくれていた。
護衛というか方向を見失うこともある僕の案内役というか。
流石に王宮で迷わないとは思うのだが。
もう何年もここに居るのだから。
「陛下とバルハルト公が一緒だから大丈夫だと思いますが…はぐれないようにしてくださいね?」
マールの言葉にそこまで子供ではないよと笑うがマールは眉を吊り上げた。
「いいですか?ラスティ様は…金の瞳をもつお方です。王に逆らってでも手に入れようとする不届き者もいるのですよ。王宮と離宮と学園しかラスティ様はしりません。確かに多少力はつけているとはいえ…外では通用しないと思っていてください。王宮の外は…本当に危険なのですから。陛下の手は放さないでください…。」
マールの言葉に僕は首をかしげる。
「マール?」
不安をにじませるマールの言葉に僕は首をかしげる。
「…不安なのです…教会に…ラスティを行かせてはならない…何故か…そう思うのです。」
考えすぎだというのは分かっていますとマールは泣きそうな目で僕を見つめる。
「…ここで手を放したら…ダメだと…」
僕は、マールに頷く。
「うん…陛下の傍にいる、大丈夫だよ。陛下もバルハルト公もいるんだ。怖いことがあってもきっと大丈夫だよ。」
僕が、そう約束するとマールは絶対ですよと頷く。
「絶対に…陛下の傍にいてください。」
何度も言うマールに僕は何度も約束した。
「陛下とバルハルト公の近くにいるようにするから。」
僕の返事にマールは少し不満そうに、それでも納得してくれたように頷いた。
陛下とバルハルト公の所に行くとエスターも立っていた。
僕が首をかしげて陛下を見ると陛下が苦笑する。
「…なんだが…忘れものをしたから一緒に取りに行くと言っているんだ。」
僕はそうですかと頷く。
エスターは少し僕を見ていたがふんと目を逸らした。
マールがお辞儀をして奥の間へを帰っていった。
僕はその後ろ姿を少し見送ってから陛下の方へ歩く。
陛下が僕に手を差し出した。
少しエスターが眉を寄せたが、肩をすくめた。
「…父上は…本当にその子をパートナーと考えているのですね?」
エスターの言葉に陛下は首を傾げた。
「どういう意味だい?」
陛下の言葉にエスターは、肩をすくめる。
「ただの確認ですよ。私はこの子について義母上と呼ぶべきかラスティ様と呼ぶべきかわからなかったので。やはり年下の子供に義母上と呼ぶのは少し抵抗はありますので…確認したかっただけです。」
陛下がなんだそれという風に首を傾げた。
バルハルト公が、まぁなぁと頷く。
「エスター王子にしたら、複雑だろうが…別にラスティ様を義母上と呼ぶ必要はないだろう?」
陛下がそうだなと頷く。
「ラスティは私のパートナーではあるが…別にエスターの母になったわけではないからな。」
陛下の言葉にエスターはそうですかと答える。
「まぁ…立場上は義母だからなぁ。」
バルハルト公はふむと首をかしげた。
「ジークハルトにラスティ様を、義母上って呼ばせてみるか?一応あいつも王子だし」
陛下は、おいおいと苦笑します。
エスターが嫌な顔をしてバルハルト公を見た。
流石に趣味がわるい冗談だとバルハルト公を僕も見る。
エスターの気持ちを考えてみたらそんなの余計に嫌だろう。
彼の母はきちんといるし、僕をそもそも疎んでいる。
ジークハルトだって、王子の立場を奪おうとしているものだ。
無理矢理に家族にしなくてもいいだろう。
「叔父上…やめてやってください。ジークハルトが変な性癖を覚えてらどうするんですか…すでに結構危ないのに…。これ以上変な奴になられると私も困ります。」
僕が首をかしげてエスターを見ると彼はお前は知らなくていいと眉を吊り上げた。
陛下も首をかしげていたが、バルハルト公は確かにと頷いていた。
そういえば…エスターが彼らといるのを目の当たりにしたのは、初めてかもしれないなと思う。
なんだ…仲いいな。
僕の感想はそうだった。
記憶の中のエスターは、陛下に反抗ばかりしていた。
ふとバルハルト公を見る。
僕は知っているエスターと陛下の会話の時にはバルハルト公がいない。
バルハルト公という存在が緩衝材になっているのだろう。
今までだったらこの時点でバルハルト公は辺境へ行っていたと思う。
彼を騎士団長にとどめることも。大切なことだなと僕は思う。
「ここで遊んでいる場合ではないでしょう?そろそろ行きましょう。」
そう言ってエスターがすたすたと歩きだしてしまう。
陛下は、やれやれと言って僕の手を握りなおしてから微笑んだ。
「まぁ…行こうか…。」
そういう陛下に頷いて僕は一緒に歩き出した。
0
お気に入りに追加
505
あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
悪役令息の七日間
リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。
気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる