不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第五章 変わる関係

108 再びの災難

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その日はそのままジークハルトの様子を見ながら一日を過ごした。
陛下はなかなか帰ってこない。
先に来たバルハルト公は、少し顔色を悪くしていた。
どうも、良くないことが起こったという。
バルハルト公がジークハルトの付き添いに来た時に眉を寄せてそれだけを教えてくれた。

「何があったのですか?」

バルハルト公は、僕とジークハルトを交互に見て少し考えていたが首を横に振った。

「俺が言うよりはディオスの決定を聞いた方がいいだろう。」

内容については、陛下に方が聞いた方がいいだろうとバルハルト公は頑なに教えてはくれなかった。

ただ、陛下に聞けと言われた。
だったら陛下は無事なのだろう。

嫌な予感を感じつつ僕は、陛下を居間で待っていた。
けれども陛下は帰ってこない。
素石を作りながら僕は陛下を待っていた。

「ラスティ様…寝室の方で待たれては?もう遅いですよ?」

ノルンの提案に僕は頷いた。
作成した礎石を抱えて寝室へ行く。
寝室のテーブルに作った素石を置くと僕は寝る支度を始めた。

「…陛下…大丈夫だよね…」

僕は寝る支度を整えた状態でベットで本を読みながら陛下の帰りを待っていた。
深夜近くなっても陛下は帰ってこない。
辺りは静かで時折、ノルンであろう足音が廊下に響く。
護衛を担当する騎士が中には居ないのでノルンとマールが交代で夜に見回りをしていると言ってたが、彼らはゆっくりと眠れているのだろうかと思う。

「陛下が居たら寝てるとか言ってたけど…」

たぶん、そんなことはないのだろう。
2人は、短時間の睡眠しかとっていないと感じる。
たぶん…不安なのだろう。
漠然とした不安。

ノーマがいるのはジークハルトがいる間だけだ。
見回りなどは、ノエルとマールが行っているのだろうが…昼間のマールの言葉を思い出し、いい加減使用人を増やすことを陛下に提案しようかと思う。
二人という状態を何とかしないとなぁと思う。

僕としては二人のことが好きだし…ずっとふたりがいてくれたらと思っている。

けれど…無理なのもわかっている。

2人の幸せが僕の傍に無いならその旅立ちを応援しようと思っている。
こんこんとノックの音がする。
陛下が顔をだした。

「ただいま~ラスティ…少し来てくれる?」

僕ははいと頷きベットから降りる。
陛下は、ごめんねと言いながら僕を抱き上げた。

「陛下、お帰りなさい。何かありました?」

うんと陛下は僕を居間につ入れていく。
居間にはジークハルトとバルハルト公、ノルンとマールとノーマが揃っていた。
その中心に、目を包帯で巻いたロイスがいた。

「ロイス?」

僕の声にロイスが顔を上げる。

「ラスティ様?申し訳ありません…このような姿で…」

陛下が、僕の耳元でどうする?と囁く。
どうするとは?と陛下を見た。

「ロイスの眼を治す?治さない?どっちにするの?」

陛下の顔を見て僕は、なる程と思う。
微妙な表情の陛下を僕は最近みている。
同じ言葉も聞いた。

「……またという事ですか?人という存在をなんだと思っているのでしょうか…試すためだけにこのような非情なことを…誰が…いえ…何が行っていると??」

陛下にそう僕が問うと陛下は少し考えてから首を横に振った。

「確信が無いからね。確定していないから。けど…確定したら…ラスティの力も借りることになると思う。」

僕は、はいと頷く。
存分にやれるように今は、力を磨かねばと改めて思う。
陛下が、そろそろ反撃と言ってったがどうするつもつもりなのだろう。

「ロイスの治療は…するのだよね。」

はいと僕は頷く。
陛下と僕はロイスの前に座る。
ロイスの眼に陛下は包帯の上から触れる。

「ロイス…しっかりと目を閉じていなさい…いいね?」

陛下の言葉にロイスは、はいと頷く。

「少し、時間がかかるからいくつか質問してよいかな?」

僕は陛下に力を注ぐことに集中しつつ耳はロイスの言葉を聞いていた。

「君を襲ったのは何だった?」

ロイスは、わかりませんとつぶやく。

「人ではなかったと思います…ですが魔物や魔獣かと言われると…」

陛下は、そうとつぶやきつつバルハルト公を見た。
バルハルト公は頷く。

「おそらくは…魔獣だとは思うが…飼われている魔獣だ。」

バルハルト公の言葉に陛下は眉を寄せた。
僕はふわふわとした感覚の中で言葉を聞く。

「誰かの思惑か…やはり…バル…」

陛下の言葉にバルハルト公は頷く。

「わかっている。すでに精鋭に調べさせている。ジェンも魔術師の数人に調べさせている。あれは動いていないことば確認済みだ。どちらかと言えば…大神官のあたりを調べている。」

陛下は眉を寄せた。
バルハルト公は肩をすくめた。

「教会すべてが悪いとは思っていないが…一部の奴だけが欲にまみれているからなぁ。」

陛下も、そうだなと頷く。

「ああ…そうだな…。」

頷く陛下は、考えつつロイスの眼を癒している。

「ん…どうだい?痛みは引いたかな?」

陛下はロイスから手を放す。

「は…はい…」

バルハルト公は、災難な奴だなぁとロイスの頭をなでる。
陛下はやれやれと肩をすくめながら、少し考え込んだ。

「明日は…教会に行ってみるかな…」

陛下の言葉に僕はいやな予感を抱えていた。


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