不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

文字の大きさ
上 下
110 / 233
第五章 変わる関係

100 奇妙な感覚

しおりを挟む
ノーマが、少し気になったから調べてみるとつぶやいてから黙ってしまった。
とりあえず、危険なことはしないように約束させて、僕は、ぼんやりとロイスの額の汗を拭いているマールの背中を眺める。
どうにも…後付けのように設定が出てくるのはなんだろうと。
どこか、僕を混乱させているのではないか。
続編というルートが増えて、それに僕が生き残れるルートがあるならば喜ばしい。
けれど…どこか不安が残った。
何か…安易に喜んでいたら大切なものがなくなりそうな不安。

「ここで…なんでそんなことが増えたんだろう…。」

気持ち悪い。
不安。
不信。
そんな感覚を感じる。

何か…知らないところで何かが動いているのが気持ち悪い。
こんこんとノックの音。
僕の思考が途切れる。

「あ…はい…」

マールが立ち上って扉を開けに行く。

「ロイスはどうだい?まだ目が覚めない?」

陛下がお仕事終わったよと僕を見て笑った。
今まで感じていた不安がふわりと消えるそんな感じがした。
バルハルト公がロイスが目を覚ましていないのでどうしようか考えている。

「ん~バル、私が連れて帰ろうか?おまえの所は、今は無理だろう?」

バルハルト公は、ジークハルトも預かってもらっているだろうと眉を寄せた。

「マール、頼めるかい?」

はいとマールは頷いた。

「ジークと違ってロイスは目が覚めたら大丈夫だろう。一晩くらいなものだ。」

バルハルト公は、なら頼むかとロイスを肩に担いだ。
軽々と。
すごいなと思っていると陛下が、僕も担ごうとするのでそれはやめてもらった。
楽し気に笑う陛下に僕はなんとなく思う。
たぶん、陛下は何か僕が考え込んでいるのを何とかしようと和ませてくれたのだろう。

「陛下…」

たぶん、ディーを通して先ほどのことは聞いていただろう。
陛下は、どう思うのだろう。
そう思ったが、陛下は、ん?と首をかしげただけだった。

「そういえば…ノーマ、さっきラスティと面白そうなことを話していたね。」

ノーマもディーのことは知っている。
だから、素直に頷いた。

「あとで教えてくれるかい?」

ノーマは、はいと頷く。
バルハルト公が首を傾げた。

「何かあったのか?」

陛下は確認だけだと笑う。
バルハルト公は、あーとため息をついた。

「盗み聞きばかりしていたら嫌われるぞ?」

バルハルト公の言葉に陛下は、ずっとしてるわけではないと口を尖らせた。
陛下はバルハルト公とジェン公の前だと少し子供っぽい部分があるなと思う。

そのまま、奥の間に帰った。
バルハルト公は陛下の指示でロイスを客間に寝かせる。
こんなにホイホイ人が入って後宮問題ないのか??と思ってしまう。
が、後宮の主の陛下がいいというならいいのだろう。

流石に、門番の騎士が陛下に軽く説教をしていたが。

バルハルト公を見送り、ジークハルトの様子を少しだけ見て僕は早々に寝室に引っ込んでいた。
少し、一人で考えたかったのだ。
ごろごろと広いベットを転がる。
シーツの感触が気持ちいい。
やわらかな感触を堪能しつつ転がる。
続編があったとは知らなかったなと思う。

「……なにか…気持ち悪いんだよなぁ。」

ノーマはたぶん、情報をくれようと必死に思い出しているのだろう。
だが、続編の情報はいいことなのだろうか。
奇妙な感覚がある。

「何か…しらない何かが動いてる気がするんだよなぁ。」

物事を素直に表面だけ見ていたら痛い目に合うというのは前世での経験上よくあった。
生き残れるルートあった~と単純に喜んで…例えば…ノルンやマールがひどい目にあったりしたら僕はどうしたらいいのか。
どうせなら…知っている人は皆幸せになれるように…。
そんな選択肢を探したい。

僕だけではないんだよなぁ。

繰り返し、死んでることを不幸に思っていたけれど…繰り返しこの世界が滅んでいるなら皆同じだ。
皆繰り返し辛い思いをして死んでしまっているのだ。
今は僕だけが不幸だなんてそんな風には思えないし、今の生活は幸せなのだ。

複雑な所はあるけれど。

続編か~とため息をついてごろんと転がったところで陛下が部屋に入ってきた。

「どうしたのラスティ、可愛いけど…お行儀悪いぞ?」

陛下はくすくすと笑いながら、転がっている僕の顔を覗き込むようにベットの横に跪いた。
楽し気に笑っている陛下を見ながら僕は、口をとがらせる。

「僕はこれでも悩んでいるのです。」

陛下は、そう?と笑いながら僕をなでる。

「ノーマが面白いことを言っていたね。」

陛下はにこにこと笑いながらそう言うと、僕の耳元であることを囁く。
僕は、目を丸くして陛下を見上げた。

「…陛下は…そう思うのですか?」

陛下はニコニコと笑う。

「そろそろ一回反撃したくないかい?ラスティ?」

陛下の言葉に僕は大きく頷く。
確かにやられてばかりはやってられない。
陛下の言っていることが本当かどうかはわからない。
けれど…。

「陛下に協力して上手く行ったら…何か…くれます?」

陛下は、少し目を見開いて寂し気に笑った。

「私に出来ることを」

僕は、首をかしげて少し考える。

「うーん…だったら…陛下とお出かけしたいです。」

陛下は目を丸くする。

「……それでいいの?」

僕は、はいと頷くと陛下は少し困った顔をした。

「難しいことでしたか?」

陛下は、そうではないよと苦笑する。

「ラスティの…精神年齢は子供では無いと私はわかっているんだから…そんな可愛いお願いではなくていいのだよ?遠慮氏だけれどなくてもいいのだけれど?」

僕は首をかしげる。

「?」

陛下はため息をつく。

「お出かけでいいの?」

僕は頷く。

「はい。その…陛下のことをもっと知りたいなと思って…。」

陛下は、そうかと少し困ったように笑った。
何か他にお願いしてほしかったのだろうかと少し不思議に思うのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...