不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第五章 変わる関係

98 バルハルト公との秘密の話

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駆け付けて来てくれた侍従と陛下にロイスの下から引っ張り出されて何とか息をつく。
医務室に運ばれて僕は何ともないという事とロイスは意識が無いが体調に問題ないことは確認した。

「なんてこった…やっぱり休ませるべきだったか??」

バルハルト公も駆けつけてきて僕に謝ってからロイスを見舞っている。
ロイスはジークハルトが心配だったのか寝不足だったらしい。

「とりあえず…大丈夫そうだね…ロイスのことは…内緒にしとくか。」

陛下の言葉にバルハルト公は、すまないと謝っている。
部下の失態にしては、バルハルト公が謝るなぁとぼんやりと思っていると陛下が苦笑した。

「ロイスは…バルが預かっている子でもあるからね。一応は成人してるけれど。過保護だからな。バルは。」

陛下は公務の続きをすると言って少し名残惜しそうに医務室を出て行った。

「さて…ディオスが公務を終わらせるまでは俺がラスティ様の護衛になるか。」

バルハルト公はあらかた今日の公務は終わっていると言って僕の護衛としてついていてくれという。
ロイスの様子も見たいからとバルハルト公に願われて僕も医務室のベットで寝転んだ。

「ん~やっぱり小さい子は可愛いな。」

バルハルト公に頭を撫でられつつ僕は彼を見る。
ロイスの様子を伺いつつバルハルト公は、笑顔で僕を見ていた。
でも、やはりロイスのことが心配なのだろう。
何度もロイスの方に目を向けていた。

「そうだなぁ…暇だよなぁ。」

バルハルト公は、暇だろうと僕にロイスのことを話し始めた。
本人に断りなく話していいのかと思ったが。

「ロイスは…俺のもう一人の息子と言ったところか…」

ロイスは、貴族の子ではあるが両親が亡くなっており両親の友人で会ったバルハルト公が保護者だという。
幼い時から騎士団で育てられていたロイスをバルハルト公は目にかけていた。

「力はないが…技術力がある。ジークハルトとは正反対だな。ジークハルトも技術はあるが…力押しのほうが得意な面がある…ロイスは受け流したりするのが上手い。」

騎士団長にジークハルトがなったら右腕になってくれたらと思っていたようだ。
今は国王となるジークハルトを騎士団長として守ってくれたらと思っているようだが。

「ジークハルトもロイスを兄として慕っているようだったからな…まぁ…それもラスティ様がジークハルトに感情をくれてからの話だ。ジークハルトは結構不気味がられていた。あんなにかわいらしく笑う子だったのかと…感情を得てからのジークハルトは本当に皆に愛されるようになった。」

バルハルト公は、僕の方を見て目を細めた。

「ロイスも…そんなジークハルトを見て喜んでくれてな…ジークの恩人のラスティ様を絶対に守ると張り切っていた…ディオスが提案したようにロイスの後見人になって良かったと思ったよ。」

僕は首をかしげる。

「陛下の勧めですか?」

ああとバルハルト公は、頷く。

「ロイスは騎士団で預かるだけでも生活は出来るからな。わざわざ、後見人などいらないし…教会へという方法もある。ディオスがロイスは見所があるから後見人になってくれと突然言い出した時は何かと思ったが…あいつの眼は確かだったという事だろう。」

ロイスがジークハルトにかまっているのはそういうことなんだとバルハルト公は、苦笑した。

「まぁ…ラスティ様はディオスのものだっていうのは…ほぼ確定だろうな。ジークハルトがどんなに望んでも…ディオスは生きている間はラスティ様を手放さないだろう。あいつは一途だからな。一応王族として政略結婚はしてるが…ラスティ様が生まれる前の話だ。大目に見てやってほしい。正直言えば…望みは薄いとジークハルトも俺もわかっちゃぁいるんだ。けどもジークハルトが納得するまではまだしばらくかかるだろうな。ラスティ様も…ディオス以外は考えてないだろう?」

僕は、少し考えてから頷いた。

「そうかもしれません。よく…わからないというのが本音ですけど…。」

だろうなとバルハルト公は、目を細める。
これは…秘密だぞ?とバルハルト公に微笑まれる。

「ディオスは、ラスティ様を放す気がないだろう。ジークハルトもラスティ様をずっと望むだろうとは思うんだが…俺の眼には…ジークハルトの感情は少し違うように映り始めた。多分なんだが…俺やジェンが感じているディオスへの感情と同じなのだろうってな。ジークハルトは近くなっているからディオスとラスティ様、両方とロイスを欲しがっているんだろうと。ラスティ様から見たら…ずいぶん浮気な奴に見えるだろう?」

僕は、そうですねと苦笑した。
バルハルト公は、けれど…ジークハルトは一途なんだと笑う。
矛盾していないかと僕は首を傾げた。

「ジークハルトの運命は…ロイスなんだと思う。」

バルハルト公は、そう微笑む。

「ディオスなんて顕著だが…俺たち王族の愛ってやつは結構重い。政略結婚が殆どだから、自分の運命だと思える人とパートナーになれるって言うのは実は少ないがな…。俺は…幸運だと思う。ジェンは俺の運命だと思える人だからな。その所為もあるんだろう。運命と思えるくらい愛した者とパートナーになるとな…その人の家族も…未来の家族も愛してしまう。」

未来?と僕は首を傾げた。

「子供とか孫とかだ。」

当たり前だろうと僕は頷く。

「言い方が悪かったな…これでは理解できんな…まだ見ぬ子供とか孫だ。」

僕は首をかしげた。

「血が濃い王族特有のものらしいんだが…王族は意外に他に目移りしないんだ。力でねじ伏せるこの世界だ。王族の力を使えば…幾人でも子を産ませることができるが…それはしない。一応後宮があっても使われていないのが、そのためだな。前王は運命と思えるパートナーに出会えたから後宮を使っていない。まぁ…運命のパートナーを見つけた王は、政略結婚で正妃がいる場合は、側室にそのパートナーを望むこともある。そういう意味では側室がいる国王も昔はいた。」

僕が怪訝そうな顔をしているとバルハルト公は、苦笑する。

「……大体運命を感じて勝負を仕掛けたりするのは一応一人なんだ…王族はな。ジェンを運命だと俺は思っている。けど…俺とジェンはディオスも欲しいと思っている。今はラスティ様もな。思いの種類は…多少違うんだ。欲しいと思う意味が…。家族としてほしいと…守ろうとするんだ。たぶん…これはディオスやラスティ様には無い感情だ。王や王妃…王子は、金の瞳の一族の王となるものは、基本的には国民を家族と考えて公平に愛するという。ディオスがそんな感じだ。特別の意味が分からない…そんな感じだったよ。ラスティ様が来るまでは。」

僕は、よくわからないなと首をかしげる。
バルハルト公は、幼い頃からの王妃のラスティ様も良くわからないかもしれないなと笑う。

「俺や…ジェンのほうの能力をジークハルトは継いでいるんだろう。ちょっとだけ血筋の先がわかるんだよ。ロイスも元々は貴族だし…血筋をたどればこの国の貴族は殆ど王家の血をもっていることになるから、ロイスもだろうとは思う。王家の血を持つものは…先の家族を産むものも、感知して守ろうとする……らしい。」

はい?と僕は首をかしげた。

「えっと???」

ゲームではそんな描写なかったよな???
そんなことを思いながらバルハルト公は、目を細める。

「おそらくだ…ディオスとラスティ様の御子とジークハルトの子…この調子だったらロイスとの間の子がパートナー同士になるってことなんだろう。」

僕は目を丸くする。
何???その無理やり設定。
混乱する僕にバルハルト公は、まぁ…そういう反応だよなぁと苦笑したのだった。

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