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第五章 変わる関係
97 強制力という名の危険
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少し緊張しつつ王宮の廊下を歩く。
エスターにジークハルトとノーマについて説明する。
僕はロイスと共に王宮の彼の部屋へと向か合うことになった。
「ごめんね…ロイス…つき合わせちゃって」
ロイスは首を横に振った。
「いえ…俺も…私もエスター王子を直接見たかったので。」
いつもは和やかな王宮が少し緊張しているかのように感じるのは気のせいではないだろう。
王家の私室のあたりは特にだ。
使用人たちが僕を見て少し困ったように会釈していく。
長らく空けていた部屋に今主が帰っている。
それだけのことだが、昔からいる使用人たちは、彼の癇癪に困らされていた。
彼をしらない使用人たちはどう扱っていいのかわからないのだろう。
王宮に帰ってきたと言っても一時的なもの。
すでに罪人扱いをしている者もいるという。
「エスター王子は部屋から出てきていないようですね。」
僕を護衛してくれているロイスの固い声に僕は頷く。
「…ノーマの証言ではエスター様は今回の事には関係ない。けど…本人は自分が命じたと言ってるからね。」
不器用な人だと、僕はため息をつく。
「本当に関係ないのでしょうか。」
ロイスの言葉に僕は、関係ないとまでは言わないけれど彼が命じたモノではないと答える。
リノは、エスター王子の傍にずっといてエスター王子を唯一信じている人だともいえる。
それは、以前の生でも今回の生でも同じだろう。
以前の生では、リオンと出会ってからはエスター王子は変わるのだが、今回の生ではリオンはかなり早い段階でエスター王子と出会っている。
変わらず、リオンはエスター王子をまともにしようと頑張っていたし、僕自身は今回はエスター王子との接触は少ないが、彼は普通の思考をしていると思う。
以前の生でのわがままばかりの癇癪王子というところは薄まっているように感じていた。
「…俺は…少し…信じられないと感じています…」
ロイスの固い子上に僕はロイスを見る。
悔しそうに唇を噛むロイスに困ったなと僕は首をかしげる。
「ロイスは…本当にジークが好きだね。」
僕がそう言うと少しロイスは悲しそうな視線を僕に向ける。
「ええ…ジークのことは大切な友です…貴方がいなければ…ジークに勝負を挑んでいたでしょう。」
僕に遠慮してるのかなと僕は首をかしげる。
ロイスが僕のことを好きだと陛下は言うけど、ロイスは僕のことを邪魔だとか恋敵と思っているかもだ。
嫌われてるとは感じないから、ロイスも複雑なのでは。
「…ラスティ様も…ジークのことが好きですよね。」
うんと僕は頷く。
「手のかかる兄弟みたいな感じだね。兄のように頼れるけど…最近は弟みたいに手がかかるなって思うこともあるから…兄とも弟ともいえない感じだけど。どっちかというと…弟とか思ってる方が最近は強いかな。」
ロイスが苦笑する。
「ジークが聞いたら憤慨しますよ。」
確かにと僕は頷く。
「強くなりたいなって思う。陛下よりもジークよりも強くなってみんなを守れるくらいに。僕はどうしてもひ弱なようだ…がんばってるつもりだけど…つもりだけなのかな。結構筋肉ついてきたと思うけど…リオンにも身長が負けちゃったよ。」
ため息をつく僕にロイスは苦笑する。
「私が守りますから…強さを求めなくても大丈夫ですよ。」
僕は首を傾げた。
ロイスは聖騎士だ。
ジークハルトが国王になれば今一番騎士団長に近いのが彼だとバルハルト公は言っていた。
「そうだね。ロイスは強いものね。」
ロイスは、少し複雑そうな表情をする。
「ラスティ様は…やはり金の瞳の方なのですね…。愛されるための存在だ…。皆が貴方を欲しがっている。陛下は…気が気ではないでしょうね。」
僕は首を傾げた。
「そんなの瞳の色が珍しいというだけでしょ。可愛さならマールやリオンの方が可愛いし、綺麗さならノルンやジークハルトや陛下のほうが美人だ。僕は目の色が珍しいだけで平凡だよ。多少は整っているとは思うけど…皆が欲しいと思ってくれるような者ではないと思うな。」
ロイスは苦笑する。
「ふふ…少なくとも陛下とジークハルト…私も貴方が欲しいです。」
僕は首をかしげてロイスを覗き込む。
おかしい。
ロイスの瞳に光を感じない。
どこか、操られているようなロイスではない感じが混ざっている。
「ねぇ…ロイス…僕を…『俺』を見て?」
ロイスは首をかしげて『俺』を見た。
何故かわからない。
けれど、このままではダメだと『俺』は感じた。
ロイスを呼び戻さなければ…と強く思う。
「見ています…」
『俺』はロイスの瞳を覗き込む。
ガラスの瞳の中にロイスを探す。
顔の距離が近いがロイスは、ぼんやりとしていて気が付いていない。
「本当に、『俺』を見ているか?」
ロイスは、じっと『俺』を見て首を傾げた。
「ラスティ様?」
不思議そうなロイスの瞳をじっと見る。
ガラスめいた彼の瞳を必死に覗き込む。
呼びかけねばと焦燥感を感じていた。
このままでは、ダメだ。
この状態のロイスをエスターに合わせてはダメだと感じる。
「そうだ…『俺』はラスティだ…お前は…誰だ?」
ロイスは首をかしげる。
覗き込んでい居るのに視線が『俺』から逃げようとする。
それを『俺』は許さない。
「貴方の…護衛騎士の…ロイスです……そう…聖騎士の…」
ガラスめいた瞳に少し光が戻る。
ロイスの中で疑問が出てきたのだろう。
感じている何かをロイスの本来の感情の誤差を広げる言葉を探す。
第二王子ラスティを殺すロイスは、騎士になれずに冒険者になったロイスだ。
今のロイスは違う。
「そう…ロイスは…『俺』の…王妃であり第三王子、ラスティの護衛騎士だ。そうだろう?」
ロイスは、はい…と頷きつつ何か考えるようにつぶやく。
「そう…です…俺は…騎士で…ラスティ様を守るために…貴方を傷つけるものを…」
ふっとロイスが崩れ落ちた。
慌てて支えるが支えきれず一緒に転がる。
強か背中を打ち付けたが、ロイスは意識を失ったままだ。
「ディー誰か…呼んできて…ロイスが倒れたって」
ディーが消えてほどなく陛下の声の大丈夫かいという声が聞こえる。
僕は、ほっとして息を吐いた。
ー …エスターの危機は去ったのか?いや…まだ続きそうだな… ー
僕の中で『俺』が考え込んでいるのを感じていた。
エスターにジークハルトとノーマについて説明する。
僕はロイスと共に王宮の彼の部屋へと向か合うことになった。
「ごめんね…ロイス…つき合わせちゃって」
ロイスは首を横に振った。
「いえ…俺も…私もエスター王子を直接見たかったので。」
いつもは和やかな王宮が少し緊張しているかのように感じるのは気のせいではないだろう。
王家の私室のあたりは特にだ。
使用人たちが僕を見て少し困ったように会釈していく。
長らく空けていた部屋に今主が帰っている。
それだけのことだが、昔からいる使用人たちは、彼の癇癪に困らされていた。
彼をしらない使用人たちはどう扱っていいのかわからないのだろう。
王宮に帰ってきたと言っても一時的なもの。
すでに罪人扱いをしている者もいるという。
「エスター王子は部屋から出てきていないようですね。」
僕を護衛してくれているロイスの固い声に僕は頷く。
「…ノーマの証言ではエスター様は今回の事には関係ない。けど…本人は自分が命じたと言ってるからね。」
不器用な人だと、僕はため息をつく。
「本当に関係ないのでしょうか。」
ロイスの言葉に僕は、関係ないとまでは言わないけれど彼が命じたモノではないと答える。
リノは、エスター王子の傍にずっといてエスター王子を唯一信じている人だともいえる。
それは、以前の生でも今回の生でも同じだろう。
以前の生では、リオンと出会ってからはエスター王子は変わるのだが、今回の生ではリオンはかなり早い段階でエスター王子と出会っている。
変わらず、リオンはエスター王子をまともにしようと頑張っていたし、僕自身は今回はエスター王子との接触は少ないが、彼は普通の思考をしていると思う。
以前の生でのわがままばかりの癇癪王子というところは薄まっているように感じていた。
「…俺は…少し…信じられないと感じています…」
ロイスの固い子上に僕はロイスを見る。
悔しそうに唇を噛むロイスに困ったなと僕は首をかしげる。
「ロイスは…本当にジークが好きだね。」
僕がそう言うと少しロイスは悲しそうな視線を僕に向ける。
「ええ…ジークのことは大切な友です…貴方がいなければ…ジークに勝負を挑んでいたでしょう。」
僕に遠慮してるのかなと僕は首をかしげる。
ロイスが僕のことを好きだと陛下は言うけど、ロイスは僕のことを邪魔だとか恋敵と思っているかもだ。
嫌われてるとは感じないから、ロイスも複雑なのでは。
「…ラスティ様も…ジークのことが好きですよね。」
うんと僕は頷く。
「手のかかる兄弟みたいな感じだね。兄のように頼れるけど…最近は弟みたいに手がかかるなって思うこともあるから…兄とも弟ともいえない感じだけど。どっちかというと…弟とか思ってる方が最近は強いかな。」
ロイスが苦笑する。
「ジークが聞いたら憤慨しますよ。」
確かにと僕は頷く。
「強くなりたいなって思う。陛下よりもジークよりも強くなってみんなを守れるくらいに。僕はどうしてもひ弱なようだ…がんばってるつもりだけど…つもりだけなのかな。結構筋肉ついてきたと思うけど…リオンにも身長が負けちゃったよ。」
ため息をつく僕にロイスは苦笑する。
「私が守りますから…強さを求めなくても大丈夫ですよ。」
僕は首を傾げた。
ロイスは聖騎士だ。
ジークハルトが国王になれば今一番騎士団長に近いのが彼だとバルハルト公は言っていた。
「そうだね。ロイスは強いものね。」
ロイスは、少し複雑そうな表情をする。
「ラスティ様は…やはり金の瞳の方なのですね…。愛されるための存在だ…。皆が貴方を欲しがっている。陛下は…気が気ではないでしょうね。」
僕は首を傾げた。
「そんなの瞳の色が珍しいというだけでしょ。可愛さならマールやリオンの方が可愛いし、綺麗さならノルンやジークハルトや陛下のほうが美人だ。僕は目の色が珍しいだけで平凡だよ。多少は整っているとは思うけど…皆が欲しいと思ってくれるような者ではないと思うな。」
ロイスは苦笑する。
「ふふ…少なくとも陛下とジークハルト…私も貴方が欲しいです。」
僕は首をかしげてロイスを覗き込む。
おかしい。
ロイスの瞳に光を感じない。
どこか、操られているようなロイスではない感じが混ざっている。
「ねぇ…ロイス…僕を…『俺』を見て?」
ロイスは首をかしげて『俺』を見た。
何故かわからない。
けれど、このままではダメだと『俺』は感じた。
ロイスを呼び戻さなければ…と強く思う。
「見ています…」
『俺』はロイスの瞳を覗き込む。
ガラスの瞳の中にロイスを探す。
顔の距離が近いがロイスは、ぼんやりとしていて気が付いていない。
「本当に、『俺』を見ているか?」
ロイスは、じっと『俺』を見て首を傾げた。
「ラスティ様?」
不思議そうなロイスの瞳をじっと見る。
ガラスめいた彼の瞳を必死に覗き込む。
呼びかけねばと焦燥感を感じていた。
このままでは、ダメだ。
この状態のロイスをエスターに合わせてはダメだと感じる。
「そうだ…『俺』はラスティだ…お前は…誰だ?」
ロイスは首をかしげる。
覗き込んでい居るのに視線が『俺』から逃げようとする。
それを『俺』は許さない。
「貴方の…護衛騎士の…ロイスです……そう…聖騎士の…」
ガラスめいた瞳に少し光が戻る。
ロイスの中で疑問が出てきたのだろう。
感じている何かをロイスの本来の感情の誤差を広げる言葉を探す。
第二王子ラスティを殺すロイスは、騎士になれずに冒険者になったロイスだ。
今のロイスは違う。
「そう…ロイスは…『俺』の…王妃であり第三王子、ラスティの護衛騎士だ。そうだろう?」
ロイスは、はい…と頷きつつ何か考えるようにつぶやく。
「そう…です…俺は…騎士で…ラスティ様を守るために…貴方を傷つけるものを…」
ふっとロイスが崩れ落ちた。
慌てて支えるが支えきれず一緒に転がる。
強か背中を打ち付けたが、ロイスは意識を失ったままだ。
「ディー誰か…呼んできて…ロイスが倒れたって」
ディーが消えてほどなく陛下の声の大丈夫かいという声が聞こえる。
僕は、ほっとして息を吐いた。
ー …エスターの危機は去ったのか?いや…まだ続きそうだな… ー
僕の中で『俺』が考え込んでいるのを感じていた。
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