不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

文字の大きさ
上 下
106 / 233
第五章 変わる関係

96 マールの決心

しおりを挟む
ジークハルトを治療して少し休むと僕はマールとノーマと一緒に温室に籠っていた。
エスターは、今日は王宮の元々の自分の部屋にいるという。
陛下が、エスターに王宮での謹慎を言い渡しているからだ。
外にいるよりは危険は少ないだろうと陛下が僕に言った。
確かにそうだろうが…少し不安はある。
それが何かわからないが。

「どうしたの?」

ノーマが首を傾げた。

「うん…何となく不安で…。」

ノーマはうーんと唸る。
リノとしていた時に彼も少しおかしくなっていた経験がある。

「強制力とか…運命力とかそういうのかなぁ。」

僕が首をかしげるとノーマが眉を寄せた。

「この世界に正解というか運命のルートがあって…世界がそのルートに戻そうとして介入してくる力?というのかしら??たぶん…リノはエスター様の代わりだったの。そして…第二王子が悪いって勘違いして毒を飲ませた。」

わかるでしょ?とノーマは言う。
傍にいたマールが首を傾げた。

「なぜ…と聞いて良いことですか?」

ノーマは少し悩んでから頷いた。

「そうね…そうだね…簡単に言うとさっき言ったでしょ。この世界にルートがあるって。ルートって歴史に置きかえれるかしら?世界が決めたルートに戻そうとする力…、陛下は…皆…そのルートに逆らうことを望んでいるということになるわね…。だって…そのルート通りにいったら…第二王子が死ぬ運命になるから。第二王子が亡くなった罪は賢者リオン様が何かしら関わっていることになるの。リオン様はその罪のために試練を受けることになる。そして…リオン様が試練に失敗したら…世界は炎に包まれてやり直しになるの。」

マールは目を見開く。

「なにそれ…そんなのオカシイよ。」

ノーマは視線を落として雑草を丁寧に抜いた。

「そうよ…おかしいわね。本当に。でもそれがこの世界では繰り返されている。一部の人はその記憶を持っているの。わずかずつずれていることとかがあるから…意外に違和感を感じている人は多いでしょ。」

マールはちらりと僕を見る。

「…ラスティ様も…そうだということですか?」

ノーマと僕はそれには答えない。

「誰がその記憶を持っているかは…持っていない貴方は知らない方がいい。ただ…陛下達はそれを理解し…破滅の運命を避けるために第二王子を守ることを選んだという事。もちろん陛下の妃のラスティ様はそのことを理解されている。おそらく…教会も…。…陛下達は第二王子を守ることを選択したけれど…他の人はどうかはわからない。どこを守って世界の破滅を回避するかは…それぞれの考えによるでしょう。」

マールは、眉を寄せる。

「貴方は…違っていたという事?」

ノーマはそうねとつぶやく。

「……そうね…リノは違った。第二王子が死んでから始める試練を求めた…リオン様が完全なる聖者となる運命を選びとるためにね。でも…そのリノはいないわ。ここにいるのは…ノーマ。第二王子を守ってリオン様に辛い試練を回避してもらう方向にシフトした裏切者よ…。」

マールは、よくわからないと言って首を横に振る。

「第二王子という称号を持つ者がということ?だったら王子を一人にしたら…そうしたら……」

マールは少し考えて僕を見た。

「っ……ラスティ様が…第二王子の称号になる?」

そうとノーマは頷く。

「陛下は…ジークハルト様なら…その試練を超えることが出来ると、回避できると第二王子に彼を置いた。けど…リノという裏切者が出てきてジークハルト様は第一の試練に巻き込まれた。超えることは出来たけれど…第二の試練は過酷になる…エスター王子は罰としてその試練に立ち向かわないとならない…試練はあと二回は確認されている。エスター王子が超えることが出来れば…滅びは回避できるかもしれない。」

マールは、僕を見る。
僕は、頷いた。

「信じれないと思うけど…そういう事みたいなんだ…。そうだね…試練という言葉が当てはまるかもしれない。リオンが予言していたよね…ロイスに…。第二の試練は…ロイスも巻き込まれる可能性があった。現状ではその可能性は無いと思う。断言はできないけれど…第三の試練は…トリスティが巻き込まれる可能性があった…たぶん…そそれもないと思う…」

ノーマは、目を閉じる。

「リノが陛下に渡した薬の解析は…あなた方がしているのでは?」

マールが肩を揺らした。

「あれは…」

ノーマがため息をつく。

「リノの…運命に対する脆弱な抵抗。第三の試練に使われる可能性のある薬をかすめ取ったの…。」

マールは目を見開く。

「ここで君にこのことを言うのは、そういう事…。あの薬の解析はとても重要なことなの…それと…今なら…手を引けるからよ。」

ノーマの言葉に僕は目を丸くする。
マールは首を傾げた。

「陛下からの言葉でもあるの…君とノルンにこのことを話して…嫌だと言ったらあの薬の解析から手を引かせるって。解析はジェン公が引き継ぐ。君たちは…この国ではトップクラスの薬学の研究者だ。固定概念に囚われていない若さもある。ジェン公達の研究者が思いつかないような解決法も考えれるかもしれない。だから…君たちに任せたいけれど…この研究を行うということは…世界に逆らう事になる。どんな危険があるかわからないの。」

マールは目を閉じる。

「そういう事ならば…ご心配は無用です。僕だけでもその解析は続けます…ノルンも同じだとは思います。」

目を開いてマールは僕をまっすぐに見た。

「…ラスティ様…もしや……いえ…いいえ…大丈夫です。きっと僕が解析して無効化させます。」

マールはにっこりと笑う。
ふるふると手を震わしながら握りしめている。
ちょっと目が危ない…。

「とりあえず…絶対に陛下には使わせませんから。」

僕は首を傾げた。

「え?なんで??」

陛下は使わないと思うけど…。
僕の顔を見てマールは片手だけ僕の手から外した。
そして、更にこぶしを握り締めていた。

「…なんか…誤解させたか?」

ノーマは頭を痛めていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

お荷物な俺、独り立ちしようとしたら押し倒されていた

やまくる実
BL
異世界ファンタジー、ゲーム内の様な世界観。 俺は幼なじみのロイの事が好きだった。だけど俺は能力が低く、アイツのお荷物にしかなっていない。 独り立ちしようとして執着激しい攻めにガッツリ押し倒されてしまう話。 好きな相手に冷たくしてしまう拗らせ執着攻め✖️自己肯定感の低い鈍感受け ムーンライトノベルズにも掲載しています。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! リクエストの更新が終わったら、舞踏会編をはじめる予定ですー!

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

悪役令息の七日間

リラックス@ピロー
BL
唐突に前世を思い出した俺、ユリシーズ=アディンソンは自分がスマホ配信アプリ"王宮の花〜神子は7色のバラに抱かれる〜"に登場する悪役だと気付く。しかし思い出すのが遅過ぎて、断罪イベントまで7日間しか残っていない。 気づいた時にはもう遅い、それでも足掻く悪役令息の話。【お知らせ:2024年1月18日書籍発売!】

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

処理中です...