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第四章 波乱の学園生活

87 治療

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若干、憂鬱になりつつもジークハルトを元気にするんだと自分を奮い立たせながら、ジークハルトの部屋に行くとジェン公が笑顔で迎えてくれた。

「おはよう!」

少しクマがあるからジェン公は徹夜だったのだろう。
陛下は少し眉を寄せた。

「おはよう、ジェン。寝てないのか?」

ジェン公は少し、気まずそうに笑った。

「今日はバルに頼んで休みにするか?」

陛下の言葉にジェン公は肩をすくめる。

「無理だろ。」

陛下も無理だなと笑う。
僕の状態を陛下がジェン公にいうとジェン公は頷き一応と魔法を使った。

「うん…大丈夫だな。」

ジェン公も鑑定で僕の神力の回復量を調べて問題ないと陛下に笑う。

「何かしたのか?」

昨日の訓練では消費量は抑えていたが、Maxにはならないだろうとジェン公は思っていたらしい。

「魔法で眠らせただけだよ。」

ジェン公は、回復促進させたのかと苦笑する。

「攻撃系の上に回復可能だからお前は怖いんだよなぁ。」

ジェン公はそう笑うと僕を見る。

「大丈夫だ。やるか?」

僕が頷くと陛下は、ジークハルトの寝ているベットの横に座った。

「ラスティ、ほら、おいで」

膝をぽんぽんと陛下は軽くたたく。
膝に座れと?とやっぱり子ども扱いだなぁと思いながら座る。

「うーん…まだまだ小さいなぁ…」

陛下にそうつぶやかれ、貴方が大きいんだとも言えず口を尖らせた。
ジークハルト手を陛下が右手で握った。

「ラスティは、私の手を魔石だと思って力を送り込んで?」

そういうと陛下が呪文を唱え始める。
朗々と長い演唱が続く。
僕は、陛下の手をしっかりと握ると魔石に力を送り込む感覚を思いだしながら流し込む。
ジェン公は何かあった時のためにと少し離れて控えている。
扉が音を立てずに開いてバルハルト公が入ってきた。

「すまん…少し遅れた…。」

昨日のうちに陛下が門番には言っていたらしい。
ジェン公に家の子供たちの様子をバルハルト公は報告しているようだ。
内容は断片しか聞こえないが、ジークハルトを心配していることと寂しがっていることはわかった。
陛下の力が僕を包む。

「ラスティは、ジークが良くなるようにと願いながらディオに力を送るんだ。落ち着け。」

ジェン公の言葉に僕は頷く。

「ん…少し、安定していないか…やはり…少し通路を安定させる必要があるか…」

陛下がそう小さく呟くと左手を僕の服の中に入れた。

「ひゃぁ」

陛下が集中と耳元でささやくと、紋章のあたりに手を置いた。

「ラスティ、少し制御するから…昨日くらいだったら平気だね?」

昨日くらいならと頷く。
陛下は、いい子だと囁くと再び呪文を呟く。

「ん…?」

一瞬背筋に甘い感覚がぞくりと走ったがあとは少し動機が速くなったくらい。
このくらいなら大丈夫かと息を吐く。
僕の手から陛下のほうへ、それからジークハルト方へと力が流れていくのがわかった。

「ラスティ…平気?」

陛下に囁かれてゾクリと背筋に走った感覚は無視する。
イケメンがいい声で囁くな。

「はい。」

陛下は、よしとつぶやくとジークハルトの治療に集中を始めたらしい。
ジークハルトが淡い光に包まれた。

固い表情だったジークハルトの寝顔が穏やかになっていく。
小さな光の球がジークハルトの周りをふわふわと漂う。

朝の光の中。
眠るジークハルトの周りを美しい光が乱舞する。
光と光の競演に僕は一瞬、見とれてしまう。
と、そのとたんに体に甘い感覚が走った。
目の前がくらりと回る。
体が熱くなって呼吸が浅くなる。
まずい…飲まれると思った瞬間、甘い感覚が緩くなった。

「ラスティ…落ち着いて、集中。大丈夫。」

陛下がにっこりと笑っている。

「あ…はい…。」

再び集中する。
なんとか感覚が落ち着いてほっと息を吐くと、何故か陛下も息を吐いた。
陛下が、呼吸を整えているのを感じる。

もしかして…さっき感覚が緩くなったのは陛下が負担を引き取ってくれたからか?

あまり繰り返していたら陛下がまずいことになるんだなと改めて思う。
さっきの感覚がわずかばかり、残っているが耐えられると思う。
集中集中とジークハルトが治ることを願う。
感覚が安定してきた。
落ち着いてきたなと少し安堵する。

「大丈夫そう?」

陛下が、覗き込んできた。

「ふぁ?だ…だいじょうです。」

陛下が動いただけでゾクゾクと感じる感覚を何とか逃す。

うわーん、平気ではなかった。
イケメンで、イケボの陛下が悪い。
絶対陛下が悪い。

ジークハルトを治したいんだ。
陛下のイケメンを堪能したいわけではないんだ。
ジークハルトぉ~。

ジークハルトの治療中なんだってばと自分に言い聞かせる。
穏やかに眠るジークハルトは、ずいぶんよくなっているようにも見える。
半分泣きそうになりながらジークハルトを覗き込んでいると、ジークハルトの瞼が動いた。

「ジーク??」

僕が思わずそう呼びかけるとジークハルトが目を覚ました。

「あ?ラスティ…陛下…??」

ようやくジークハルトが目を開く。

「はぁ…よか…たぁ…。」

ほっとした僕はそのまま意識が落ちていく。

「ラスティ??」

陛下が僕を支える。

「うん…がんばったね。お疲れ様。」

陛下の声を聴きながら僕は意識をおとした。



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