94 / 233
第四章 波乱の学園生活
87 治療
しおりを挟む
若干、憂鬱になりつつもジークハルトを元気にするんだと自分を奮い立たせながら、ジークハルトの部屋に行くとジェン公が笑顔で迎えてくれた。
「おはよう!」
少しクマがあるからジェン公は徹夜だったのだろう。
陛下は少し眉を寄せた。
「おはよう、ジェン。寝てないのか?」
ジェン公は少し、気まずそうに笑った。
「今日はバルに頼んで休みにするか?」
陛下の言葉にジェン公は肩をすくめる。
「無理だろ。」
陛下も無理だなと笑う。
僕の状態を陛下がジェン公にいうとジェン公は頷き一応と魔法を使った。
「うん…大丈夫だな。」
ジェン公も鑑定で僕の神力の回復量を調べて問題ないと陛下に笑う。
「何かしたのか?」
昨日の訓練では消費量は抑えていたが、Maxにはならないだろうとジェン公は思っていたらしい。
「魔法で眠らせただけだよ。」
ジェン公は、回復促進させたのかと苦笑する。
「攻撃系の上に回復可能だからお前は怖いんだよなぁ。」
ジェン公はそう笑うと僕を見る。
「大丈夫だ。やるか?」
僕が頷くと陛下は、ジークハルトの寝ているベットの横に座った。
「ラスティ、ほら、おいで」
膝をぽんぽんと陛下は軽くたたく。
膝に座れと?とやっぱり子ども扱いだなぁと思いながら座る。
「うーん…まだまだ小さいなぁ…」
陛下にそうつぶやかれ、貴方が大きいんだとも言えず口を尖らせた。
ジークハルト手を陛下が右手で握った。
「ラスティは、私の手を魔石だと思って力を送り込んで?」
そういうと陛下が呪文を唱え始める。
朗々と長い演唱が続く。
僕は、陛下の手をしっかりと握ると魔石に力を送り込む感覚を思いだしながら流し込む。
ジェン公は何かあった時のためにと少し離れて控えている。
扉が音を立てずに開いてバルハルト公が入ってきた。
「すまん…少し遅れた…。」
昨日のうちに陛下が門番には言っていたらしい。
ジェン公に家の子供たちの様子をバルハルト公は報告しているようだ。
内容は断片しか聞こえないが、ジークハルトを心配していることと寂しがっていることはわかった。
陛下の力が僕を包む。
「ラスティは、ジークが良くなるようにと願いながらディオに力を送るんだ。落ち着け。」
ジェン公の言葉に僕は頷く。
「ん…少し、安定していないか…やはり…少し通路を安定させる必要があるか…」
陛下がそう小さく呟くと左手を僕の服の中に入れた。
「ひゃぁ」
陛下が集中と耳元でささやくと、紋章のあたりに手を置いた。
「ラスティ、少し制御するから…昨日くらいだったら平気だね?」
昨日くらいならと頷く。
陛下は、いい子だと囁くと再び呪文を呟く。
「ん…?」
一瞬背筋に甘い感覚がぞくりと走ったがあとは少し動機が速くなったくらい。
このくらいなら大丈夫かと息を吐く。
僕の手から陛下のほうへ、それからジークハルト方へと力が流れていくのがわかった。
「ラスティ…平気?」
陛下に囁かれてゾクリと背筋に走った感覚は無視する。
イケメンがいい声で囁くな。
「はい。」
陛下は、よしとつぶやくとジークハルトの治療に集中を始めたらしい。
ジークハルトが淡い光に包まれた。
固い表情だったジークハルトの寝顔が穏やかになっていく。
小さな光の球がジークハルトの周りをふわふわと漂う。
朝の光の中。
眠るジークハルトの周りを美しい光が乱舞する。
光と光の競演に僕は一瞬、見とれてしまう。
と、そのとたんに体に甘い感覚が走った。
目の前がくらりと回る。
体が熱くなって呼吸が浅くなる。
まずい…飲まれると思った瞬間、甘い感覚が緩くなった。
「ラスティ…落ち着いて、集中。大丈夫。」
陛下がにっこりと笑っている。
「あ…はい…。」
再び集中する。
なんとか感覚が落ち着いてほっと息を吐くと、何故か陛下も息を吐いた。
陛下が、呼吸を整えているのを感じる。
もしかして…さっき感覚が緩くなったのは陛下が負担を引き取ってくれたからか?
あまり繰り返していたら陛下がまずいことになるんだなと改めて思う。
さっきの感覚がわずかばかり、残っているが耐えられると思う。
集中集中とジークハルトが治ることを願う。
感覚が安定してきた。
落ち着いてきたなと少し安堵する。
「大丈夫そう?」
陛下が、覗き込んできた。
「ふぁ?だ…だいじょうです。」
陛下が動いただけでゾクゾクと感じる感覚を何とか逃す。
うわーん、平気ではなかった。
イケメンで、イケボの陛下が悪い。
絶対陛下が悪い。
ジークハルトを治したいんだ。
陛下のイケメンを堪能したいわけではないんだ。
ジークハルトぉ~。
ジークハルトの治療中なんだってばと自分に言い聞かせる。
穏やかに眠るジークハルトは、ずいぶんよくなっているようにも見える。
半分泣きそうになりながらジークハルトを覗き込んでいると、ジークハルトの瞼が動いた。
「ジーク??」
僕が思わずそう呼びかけるとジークハルトが目を覚ました。
「あ?ラスティ…陛下…??」
ようやくジークハルトが目を開く。
「はぁ…よか…たぁ…。」
ほっとした僕はそのまま意識が落ちていく。
「ラスティ??」
陛下が僕を支える。
「うん…がんばったね。お疲れ様。」
陛下の声を聴きながら僕は意識をおとした。
「おはよう!」
少しクマがあるからジェン公は徹夜だったのだろう。
陛下は少し眉を寄せた。
「おはよう、ジェン。寝てないのか?」
ジェン公は少し、気まずそうに笑った。
「今日はバルに頼んで休みにするか?」
陛下の言葉にジェン公は肩をすくめる。
「無理だろ。」
陛下も無理だなと笑う。
僕の状態を陛下がジェン公にいうとジェン公は頷き一応と魔法を使った。
「うん…大丈夫だな。」
ジェン公も鑑定で僕の神力の回復量を調べて問題ないと陛下に笑う。
「何かしたのか?」
昨日の訓練では消費量は抑えていたが、Maxにはならないだろうとジェン公は思っていたらしい。
「魔法で眠らせただけだよ。」
ジェン公は、回復促進させたのかと苦笑する。
「攻撃系の上に回復可能だからお前は怖いんだよなぁ。」
ジェン公はそう笑うと僕を見る。
「大丈夫だ。やるか?」
僕が頷くと陛下は、ジークハルトの寝ているベットの横に座った。
「ラスティ、ほら、おいで」
膝をぽんぽんと陛下は軽くたたく。
膝に座れと?とやっぱり子ども扱いだなぁと思いながら座る。
「うーん…まだまだ小さいなぁ…」
陛下にそうつぶやかれ、貴方が大きいんだとも言えず口を尖らせた。
ジークハルト手を陛下が右手で握った。
「ラスティは、私の手を魔石だと思って力を送り込んで?」
そういうと陛下が呪文を唱え始める。
朗々と長い演唱が続く。
僕は、陛下の手をしっかりと握ると魔石に力を送り込む感覚を思いだしながら流し込む。
ジェン公は何かあった時のためにと少し離れて控えている。
扉が音を立てずに開いてバルハルト公が入ってきた。
「すまん…少し遅れた…。」
昨日のうちに陛下が門番には言っていたらしい。
ジェン公に家の子供たちの様子をバルハルト公は報告しているようだ。
内容は断片しか聞こえないが、ジークハルトを心配していることと寂しがっていることはわかった。
陛下の力が僕を包む。
「ラスティは、ジークが良くなるようにと願いながらディオに力を送るんだ。落ち着け。」
ジェン公の言葉に僕は頷く。
「ん…少し、安定していないか…やはり…少し通路を安定させる必要があるか…」
陛下がそう小さく呟くと左手を僕の服の中に入れた。
「ひゃぁ」
陛下が集中と耳元でささやくと、紋章のあたりに手を置いた。
「ラスティ、少し制御するから…昨日くらいだったら平気だね?」
昨日くらいならと頷く。
陛下は、いい子だと囁くと再び呪文を呟く。
「ん…?」
一瞬背筋に甘い感覚がぞくりと走ったがあとは少し動機が速くなったくらい。
このくらいなら大丈夫かと息を吐く。
僕の手から陛下のほうへ、それからジークハルト方へと力が流れていくのがわかった。
「ラスティ…平気?」
陛下に囁かれてゾクリと背筋に走った感覚は無視する。
イケメンがいい声で囁くな。
「はい。」
陛下は、よしとつぶやくとジークハルトの治療に集中を始めたらしい。
ジークハルトが淡い光に包まれた。
固い表情だったジークハルトの寝顔が穏やかになっていく。
小さな光の球がジークハルトの周りをふわふわと漂う。
朝の光の中。
眠るジークハルトの周りを美しい光が乱舞する。
光と光の競演に僕は一瞬、見とれてしまう。
と、そのとたんに体に甘い感覚が走った。
目の前がくらりと回る。
体が熱くなって呼吸が浅くなる。
まずい…飲まれると思った瞬間、甘い感覚が緩くなった。
「ラスティ…落ち着いて、集中。大丈夫。」
陛下がにっこりと笑っている。
「あ…はい…。」
再び集中する。
なんとか感覚が落ち着いてほっと息を吐くと、何故か陛下も息を吐いた。
陛下が、呼吸を整えているのを感じる。
もしかして…さっき感覚が緩くなったのは陛下が負担を引き取ってくれたからか?
あまり繰り返していたら陛下がまずいことになるんだなと改めて思う。
さっきの感覚がわずかばかり、残っているが耐えられると思う。
集中集中とジークハルトが治ることを願う。
感覚が安定してきた。
落ち着いてきたなと少し安堵する。
「大丈夫そう?」
陛下が、覗き込んできた。
「ふぁ?だ…だいじょうです。」
陛下が動いただけでゾクゾクと感じる感覚を何とか逃す。
うわーん、平気ではなかった。
イケメンで、イケボの陛下が悪い。
絶対陛下が悪い。
ジークハルトを治したいんだ。
陛下のイケメンを堪能したいわけではないんだ。
ジークハルトぉ~。
ジークハルトの治療中なんだってばと自分に言い聞かせる。
穏やかに眠るジークハルトは、ずいぶんよくなっているようにも見える。
半分泣きそうになりながらジークハルトを覗き込んでいると、ジークハルトの瞼が動いた。
「ジーク??」
僕が思わずそう呼びかけるとジークハルトが目を覚ました。
「あ?ラスティ…陛下…??」
ようやくジークハルトが目を開く。
「はぁ…よか…たぁ…。」
ほっとした僕はそのまま意識が落ちていく。
「ラスティ??」
陛下が僕を支える。
「うん…がんばったね。お疲れ様。」
陛下の声を聴きながら僕は意識をおとした。
0
お気に入りに追加
499
あなたにおすすめの小説
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
まだ、言えない
怜虎
BL
学生×芸能系、ストーリーメインのソフトBL
XXXXXXXXX
あらすじ
高校3年、クラスでもグループが固まりつつある梅雨の時期。まだクラスに馴染みきれない人見知りの吉澤蛍(よしざわけい)と、クラスメイトの雨野秋良(あまのあきら)。
“TRAP” というアーティストがきっかけで仲良くなった彼の狙いは別にあった。
吉澤蛍を中心に、恋が、才能が動き出す。
「まだ、言えない」気持ちが交差する。
“全てを打ち明けられるのは、いつになるだろうか”
注1:本作品はBLに分類される作品です。苦手な方はご遠慮くださいm(_ _)m
注2:ソフトな表現、ストーリーメインです。苦手な方は⋯ (省略)
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
父親に会うために戻った異世界で、残念なイケメンたちと出会うお話【本編完結】
ぴろ
BL
母親の衝撃の告白で異世界人とのハーフであることが判明した男子高校生三好有紀(みよしあき)が、母と共に異世界に戻り残念なイケメン達に囲まれるお話。
ご都合主義なので気になる方にはオススメしません。イケメンに出会うまでが長いです。
ハッピーエンド目指します。
無自覚美人がイケメン達とイチャイチャするお話で、主人公は複数言い寄られます。最終的には一人を選ぶはずだったのですが、選べないみたいです。
初投稿なので温かく見守って頂けたら嬉しいです。
【完結】もふもふ獣人転生
*
BL
白い耳としっぽのもふもふ獣人に生まれ、強制労働で死にそうなところを助けてくれたのは、最愛の推しでした。
ちっちゃなもふもふ獣人と、攻略対象の凛々しい少年の、両片思い? な、いちゃらぶもふもふなお話です。
本編完結しました!
おまけをちょこちょこ更新しています。
第12回BL大賞、奨励賞をいただきました、読んでくださった方、応援してくださった方、投票してくださった方のおかげです、ほんとうにありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる