不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第四章 波乱の学園生活

77 眠ったままの王子様

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リノを拘束して教師の指示でジークハルトを医務室で寝かせる。
ジークハルトの手ががっちりと僕の手を握っているので僕は、ジークハルトの付き添いをしていた。
僕の護衛という事で、駆けつけたロイスも医務室にいる。
マールは、教室に僕たちみんなの荷物を取りに言ってくれている。
ノルンとトリスティは、リオンとエスターについている。
リノは、数人の教師と警護の騎士が見張っているという。
妙に、静かだなとぼんやりと思う。
ロイスは、黙ったまま僕とジークハルトを少し悲し気に見つめている。

「ジーク…ラスティ様の手…放しませんね。」

ロイスの言葉に僕はうんと頷いた。

「目を覚ましたら…ジークのやつ…驚きますよ。ラスティ様に付き添いをしてもらってるなんて。」

ロイスの言葉にどうかなと苦笑する。

「だって、ずっと手を握られてるし。」

まぁ…握られていなくても付き添いするつもりだったけれど。

「ジーク…起きますよね。」

ロイスの言葉に僕は、頷く。

「陛下も来てくれるって言ってたから…」

陛下にはディーに頼んで知らせてもらった。
バルハルト公とジェン公を連れて陛下が学園に向かってくれていると返事が返ってきた。
陛下が来るというのは、大ごとだけど…第二王子が毒を盛られたのだ。
普通に大ごとだ。

僕は、握られていない手でジークハルトの頭をなでる。
ジークハルトは薬を飲ましてからは落ち着いている。
ノルンの鑑定では、毒は殆ど消えているという。
けれど、毒に侵食された部分は少なからずある。

今の状態では、ジークハルトが目を覚ますかどうかはわからないという。

陛下に事情を伝えるときにそのこともを伝えている。
少し考えていた陛下の返事は、ジークの状態を見ないとわからないが、ジークには自己回復能力がある。それを活性化させたらある程度は戻ると思うという返事だった。

「陛下まで来るし…起きたらすごく驚くだろうな。」

ジークハルトは、息苦しさは無いようだ。
すうすうと寝息を立てて眠っている。

「そうですね…。」

ロイスが、かなわないなぁ…とぽつりとつぶやく。
僕は、何が?とロイスを見ると見たことのない表情でロイスは僕を見つめていた。

「ラスティ様は…ジークと陛下が大好きですよね。」

うんと僕は頷く。
ロイスは、悲し気に微笑んだ。

「陛下と…ジークにかなわないなぁと思って。」

僕は首をかしげた。

「俺は…ラスティ様のことが好きです。言うつもりはなかったけど…もし…俺がジークみたいに倒れたら…少しでも俺のことを気にかけてくれるなら…そうやって手を握って待っていてくれないかなって思ってしまいました…。」

迷惑ですよね。
そう言ってロイスは苦笑する。
僕は目を丸くする。

「ロイスは…ジークハルトのことが好きだって聞いてたんだけど。」

ロイスは、ええと頷く。

「ジークのことは、同じ騎士として尊敬しているし友として好きです。ジークも同じですよ。」

だから、安心してくださいとロイスは寂し気に微笑んだ。
ロイスの感情がどういうものかわからない。
友だというけど、ロイスはなんだかんだと言ってジークハルトを特別だと思っている。

「僕は…陛下もジークハルトもノルンもマールも…バルハルト公もジェン公も…リオンもトリスティも…もちろんロイスも好きだよ。大切だとは思うし、喜んでほしいとも思う。こうやってつらい思いをしていたら…何とかしてあげたいと思う。」

僕は、ぽつりと言葉をこぼした。

「僕は…まだまだ子供なのかなぁ…好きの種類がわからないや。」

ロイスは目を丸くしてから苦笑した。

「ふふ、それなら俺をもっと好きになってもらう余地もあるかな?」

僕は、ロイスったらと笑う。

「ん~しかし…起きませんね。横でラスティ様を口説こうとしていたなんて知ったらジークが飛び起きて決闘を申し込まれるかもしれないなぁと思ったのですが。」

本気ですよと冗談っぽくロイスは笑った。

「もう…ロイスってば、本気か冗談かわからなくなったよ。」

ふふとロイスは微笑んでからジークハルトの頭をなでる。

「はやく、目を覚まさないと俺がお前の分もラスティ様を誘惑するぞ?」

そういってジークハルトをなでるロイスの手も目も優しい。
やっぱり、ジークハルトのことが好きな癖にと僕はロイスの態度に苦笑する。
ロイスが、僕のことを好ましく思ってくれるのはうれしいけど、感じるのは守る対象とか親愛だ。
守るって意識があるから、バルハルト公やジェン公のように手元に置いて囲いたいという思いが出ているだけ。
優しいまなざしでジークハルトをなでているロイスに、君こそ自分の感情わかってないぞ?と心の中で思う。
陛下もそれを知っているから、以前ロイスに勝負を挑まれている時に曖昧な態度だったのだろう。


若いねぇと思わず思ってしまう。
僕の中の『俺』の記憶が、そう思う。
僕は、呆れたような微笑ましいような感情でジークハルトを優しく撫でているロイスを見つめていた。

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