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第四章 波乱の学園生活

66 ジークハルトの変化

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「…ラスティは今日から魔術訓練がんばるんだぞ!」

話をはぐらかそうとするかのようにジークハルトは僕にそう言った。
少し頬が赤い。
かわいいかわいいと言われるのはジークハルトとしては不本意だったのだろう。

「うん。楽しみ。」

そういう僕をジークハルトはぐりぐりと撫でてくる。
そんなジークハルトの笑顔を見て僕は何となく寂しくなる。
下心の無いふれあい。
彼の僕のことが好きだという言葉はやはり、恋愛感情のようには感じない。
僕もジークハルトのことは好きだけれど、やっぱり兄弟のような感覚なのだ。
僕は彼を見て強く思った。

「がんばるよ。」

うんと、嬉しそうにジークハルトは笑った。
学園に通い始めて一番変わったのはジークハルトの僕への接し方だと思う。
嫁嫁と言っていた幼い頃の接し方は敬うような接し方はなくなった。
弟のように家族のように。
暖かく接してくれるようになった。
僕を見てくれるようになったと思う。
幼い頃は、やはり王妃の僕を見ていたのだと思う。

どちらも僕だけど。
ずっと傍にいるようになって、王妃としての僕ではなく、僕という個人を大切にしてくれるようになった。
たぶん、ジークハルトは成長と共に考えも変わった、いや自分の感情に気が付いてきているのだろう。

僕のことをずっと守ってくれる僕の騎士。
その手を放すのは…寂しい。
だけどもだ。
小さな頃の約束など気にしなくていいと僕は思う。
陛下もそのつもりで、ジークハルトには自由がきくようにしたのだから。
ロイスが良いならロイスとジークハルトがくっつけば、おもしろ…げふん…いいと思う。

二人はよくケンカはしているが、じゃれあいのようなものだ。

ケンカップルというやつだっただろうか。
『俺』のそっち系の知識は前世の妹からの入れ知恵なので微妙に曖昧なのだが。

前世の妹の顔が思い浮かんだ。
なにか…力説していた気がする。

そういえば…妹は彼氏ともよくケンカしてたなぁ。
ジークハルトとロイスにみたいな感じではないが。
あれは…バカップルの方だったけ?

まわりが楽し気に話している中、僕は半ば空を見上げていた。
青い空だなぁと思いながら妹を思い出し寂しくなる。
もう会えないし、あちらとこちらの時間や時代がどうかなんてわからない。

ー ロイス条件難しくてなかなかくっつかないんだよぉ ー

しんみりした『俺』のしんみりを返せ。
記憶の中の妹よ…。

そういえば、ゲームでは主人公のリオンの相手が決まってから他の攻略対象もそれぞれの道がある。
彼が選んだ攻略対象以外は攻略対象同士で良い仲になるルートもあった…ような気がする。
任務時に連れて行けるのは3人で、一緒にいった攻略対象達も仲良くなるのだ。
エンディングのその後には一定条件を満たすと、リオンに選ばれなかった攻略対象のその後がある。
ロイスは、条件が厳しくてなかなかくっつかないと妹がぼやいていたような。
そういえば、妹の推しの順位ではロイスは3番目で攻略対象では一番だったけ??
あいつの推しって…陛下とジークハルトだった…かな?。
前世の記憶が薄れてきている感じがするのは、なんでだろう。

もんもんと僕が『俺』の記憶を探っているとマールがきょろきょろと周りを見た。

「そういえば…リオン様は今日は遅いですね。お休みかな?」

マールの言葉にそうだねと僕は頷いた。
いつもはリオンは朝早くから来ていて、僕らを校門のところで待っているか教室で待っているかだ。
教会の朝が早い。
リオンは、きちんと教会のお勤めを終わらせてから学園に来ている。
彼の学園に通う条件がそれらしい。

真面目なんだよなぁ。

相変わらず僕は、少しリオンに苦手意識はあるけれど。
それでもリオンはすごいなとも思う。
早朝からお勤めをきっちりこなしてから学園に来て成績は上位。

はやく来て教室で勉強していることもある。
ここにいないならば、教室だ。
教室に要るときは彼は窓際に
ここからでも教室は見える。
教室にリオンが居たら、今頃、窓からぶんぶん手を振っている。
今日は、その様子もないので来ていないのだろう。
教会の仕事があったらリオンは来ない。
最近はお休みの頻度が上がってる。
教会でのお勤めが忙しいのだろう。

「そろそろ教室に入るか。」

ジークハルトの言葉に頷いて教室に向かおうとした時だった。
後ろから、リオンの声がした。

「おっはよぅ~うーん今日もラスティ様かわいいぃ~。」

そう言って飛びついてくるリオンに苦笑しつつ振り返る。
と、リオンの隣に見慣れているが見慣れていない人物が立っていた。

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