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第四章 波乱の学園生活

62 魔術訓練

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「今日から、魔術訓練だし、いいのかなって今になって不安になってるのもあるんと思う。」

あんまり皆に心配をかけるのもなぁと思っていたら、もう一つ不安に思っていたことが口に出ていた。
そう、今日からなのだ。
魔術訓練。
初歩の初歩の魔石の使い方からだけど。
ああとジークハルトは、頷いた。

「ふふ、ラスティ様、張り切っておられましたから、考えすぎて逆に不安になったのですね。」

ノルンに言われて少し赤くなる。
昨日の夜に確かに明日だと張り切っていたのだ。

「楽しみにしていたものね。ラスティ様。」

マールも嬉しそうに笑っている。

「だって、僕は初めての魔術訓練なんだもの。」

今日は、授業に魔術訓練がある。
本来は14から実践訓練参加だ。
13歳の時は見学になるのが普通。
けど、簡単なものなら大丈夫だろうと今日から僕は参加できることになった。
座学も完璧に近いから、実技訓練でも制御できるだろうという判断らしい。
座学の成績で、参加が前後するのは他の子もそうなので、特別扱いということではないとは思う。
勉強もすでに何度も繰り返していることだから上位を保てている。
マール、僕、リオンという順番だろうか。
本当にマールは優秀で毎回ほぼ満点の成績なので、頑張ってるけど順位が変わらない。
こういうところは手加減無し。
それがマールのいいところでもある。

「リオン様も今日からですね。」

ノルンの言葉に僕は頷く。
リオンも、今日から参加だ。
魔力はリオン低めなのだけれど、彼の場合は訓練したら伸びるはず。
たぶん…。
聖者リオンは発展途中と僕は考えている。
理由は能力値だ。
鑑定スキルで見たらリオンは神力0のまま。
特殊能力も…ないままだ。
予言の力は、眠ったら見れるという予知夢のようなものだというけれど。
僕は、たぶん彼が見ている夢は繰り返している以前の生の記憶なのだと思っている。
リオンが聖者だというのは間違いないと思う。
きっとこれからなんだと僕は思っている。

ただ、今は力がない。

国の防御結界は、リオンが力を失ったからその代わりに生み出されたのだろう。
ストーリーの強制力というものだろうか。
そう考えると、僕の死も同じだろうか。
いままで結構頑張っているが、やはり僕の死というものを避けるのもなかなか難しそうだ。
いつの間にか暗い考えになっていたから、表情も暗くなってしまっていたようだ。

「心配しなくても最初は基礎の基礎ですから。」

にこにこのマールが僕の頬を両手で包んで顔を無理やりに近い形で上を向かせてきた。
学校に入って、頑張って体も鍛えたし、しっかり食べたけど僕が一番身長が低い。
リオンにすら負けている。
同じくらいだったマールも僕より身長が頭一つ分くらい違う。
マールを軽く見上げつつ頷く。

「うん…基礎だものね。」

そう、僕はやれることをやるだけだ。
…16歳の死を逃れること。
そのために、次の目標を考えないと。
その後は…今は考えれないけども。

「魔石が作れるようになったら、温室のお世話も楽になりますよ。生活魔法を頑張りましょう。」

最初は生活魔法から。
身体をきれいにする洗浄魔法とか、水やりの魔法とか。
洗濯、掃除も、あとは料理の時にも使うから結構種類が多い。

「生活魔法といえば魔石です。」

生活魔法は魔石を使う。
属性とかを考えなくても使えるように開発された魔法で魔石に込められている魔法を発動する物。
魔石一つで色々なものに使えるけど、一つで色々できる魔石は高額だ。
普通はそれぞれの効果で複数の魔石を持たないとダメなので嵩張るのが難点。
初心者が最初に習う魔法だし、魔力が無くても使えるのは利点だが。

「ラスティ様が魔石を作られるようになったら薬草の品種改良も進みますよ。」

マールがニコニコと僕の気分を上げようとしてくれている。
申し訳ないなと思いながら、なんとか笑顔を張り付ける。

「そうだね。いろんなことができるようになるね。」

魔術訓練では魔石を作るところまで行う。
魔石に魔力を込めるというところは、実は誰でもできる。
子供でもできるので、小遣い稼ぎに行っている人たちも多い。

「魔石が作れるようになったら…薬草つくりも変わるかな…。」

今も薬草を研究はしている。
色々な薬を中和したりする効力をもつ薬の調合はある程度は形になってきている。
けれど、どれも既存のものばかり。
あと2年で、見つけられるだろうかと思ってしまうし、そもそもトリスティが僕にあの薬を使わないだろう。
目標がぶれてしまったということもあるのだろう。
何をしたらいいかわからない。
でも、薬は回復魔法が一般的でないこの世界では重要なのだ。
研究することは大切なことだ。

「できることが増えるのは…いいことだものね。」

ともかく、今は自分のできることをだと顔を上げる。

「そうですとも。魔石が作れるようになったら格段にかわりますよ!」

すでに魔石を作れるマールはそう言って微笑む。




まずは魔石が作れるようにならないと…僕は、きりりと顔を引き締めた。
何故かジークハルトは、僕の顔を見てふきだしたが…。



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